Netflix映画『ドント・ルック・アップ』(Don’t Look Up)はレオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスが扮する科学者が彗星による人類の危機を回避しようと奮闘するおバカコメディです。
メリル・ストリープなどの超大御所が集結し、超おバカな展開に乗せて現実社会の実話・あるあるといった様々な問題を突きつけています。
2022年・第94回アカデミー賞では作品賞・脚本賞・編集賞・作曲賞の4部門にノミネート!スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』や、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、日本の『ドライブ・マイ・カー』と肩を並べています。
キャスト解説、正直な感想・評価、ネタバレありでテーマ考察を知りたい人向けに記事をまとめました。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです)
Netflix映画『ドント・ルック・アップ』キャスト・作品情報
原題:『Don’t Look Up』
監督・脚本:アダム・マッケイ
撮影:リヌス・サンドグレン
音楽:ニコラス・ブリテル
アダム・マッケイ監督はサタデイナイトライブの作家からキャリアをスタートさせた政治を風刺するコメディが得意な人。
ウィル・フェレル主演のコメディ映画『俺たちニュースキャスター』『タラデガ・ナイト オーバルの狼』などで知名度を上げ、『マネー・ショート華麗なる大逆転 』や『バイス』などでも有名。
ランダル・ミンディ博士|レオナルド・ディカプリオ
©︎Netflix
ミンディ博士は彗星の危機を大統領に伝える天文学の教授。
レオ様が全然イケてないオタク系天文学者に変身!地球の危機を訴えるはずがメディアにチヤホヤされ、徐々に自分を見失っていく感じが面白かったです。
レオナルド・ディカプリオ代表作:『タイタニック』『インセプション』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『ワンス・アポン・アタイム・イン・ハリウッド』。
ケイト・ディビアスキー|ジェニファー・ローレンス
©︎Netflix
ケイトは地球に接近する彗星を最初に発見した人物。大学院生でミンディ博士と一緒に研究をしています。
ディビアスキー星と自分の名前をつけてしまい、それが人類を滅ぼす星だと気づいてパニックに。
ミンディ博士とは対照的に大衆のヘイトを買ってしまい、SNSでボロクソにこき落とされる哀れな感じが笑えます。
ジェニファー・ローレンスの代表作:『世界にひとつのプレイブック』『ハンガーゲーム』
オーリアン大統領|メリル・ストリープ
©︎Netflix
人類滅亡より中間選挙が大事な大統領。しかし、地球を救うことで支持率が上がると知るとコロッと寝返りました。
現実の悪い政治家の集合体みたいなキャラ。メリル・ストリープが体を張っておバカな大統領を熱演しました。
メリル・ストリープ代表作:『ディア・ハンター』『マディソン郡の橋』『プラダを着た悪夢』など。
その他の登場人物・キャスト
ピーター・イッシャーウェル(IT社長)|マーク・ライランス(『ブリッジ・オブ・スパイ』『ダンケルク』『レディプレイヤー1』)
クレイトン・テディ・オグルソープ博士|ロブ・モーガン
ブリー・エヴァンティ(TV司会)|ケイト・ブランシェット(『オーシャンズ8』『ブルージャスミン』)
ジェイソン・オルレアン(大統領の息子)|ジョナ・ヒル(『マネーボール』)
ユール(ケイトを好きな青年)|ティモシー・シャラメ(『Dune砂の惑星』ポール役)(『フレンティ・ディスパッチ』ゼフィレッリ)(『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』)
ベネディクト・ドラスク(軍人)|ロン・パールマン(『ヘルボーイ』『モンスターハンター』)
フィリップ(ケイトの恋人)|ヒメーシュ・パテル(『イエスタデイ』『TENET』『シカゴ7裁判』)
ライリー・ビーナ役|アリアナ・グランデ(歌手)
ジャック・ブレマー(TV司会者)|タイラー・ペリー(『モンタナの目撃者』)
ピーター・イシャウェル役|クリス・エヴァンス(カメオ出演『アベンジャーズ』『キャプテンアメリカ』)
ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
あらすじ:天文学の教授ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)と大学院生ケイト(ジェニファー・ローレンス)は、ある彗星が半年後に地球に衝突し、人類が滅亡すると知ります。オーリアン大統領(メリル・ストリープ)に知らせようとしますが、中間選挙の前なので、黙認されることに…。
豪華キャストを集結させ、存続の危機に瀕した人類の愚かさを描いたブラックコメディ。
わかりやすい笑いばかりではなく俯瞰的な社会風刺の笑いで、ボーっと見るよりちょっと集中して考えながら見た方が面白いです。
見る人によって好みがはっきり分かれるタイプで、少なくとも日本で万人受けはしないと思います。全然合わなくて、つまらないと感じてしまう人も多いのでは?
日本と違うタイプのシュールさを肌で感じたい人にはおすすめ。
海外レビューサイトの評価もあまりよくないですね…。つまらないというより、豪華キャストによる期待値を超えられなかったのが原因でしょう。
おすすめ度 | 75% |
爆笑度 | 84% |
ストーリー | 84% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.2(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家56% 一般78% |
※以下、映画『ドント・ルック・アップ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ドント・ルック・アップ』ネタバレ感想・評価
スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』とティム・バートン監督の『マーズアタック』を足して2で割ったような、ハイクオリティなブラックコメディ。
序盤はジェニファー・ローレンス演じるケイトと、レオナルド・ディカプリオ演じるミンディ博士が、半年後に地球に彗星が衝突して人類が滅亡すると予測するのですが、シリアスな音楽をバックに登場人物同士のやり取りはアホ丸出し!そのコントラストがシュールで素晴らしいです。
ミンディ博士が現実逃避のために計算式を手で消したり、高官への電話で待たされて、ちょっと冷静にハンズフリー設定にしてみたりと、大爆笑というよりは「ハハッ」と笑えるシーンで多くが構成されていました。
アダム・マッケイ監督は間の使い方がうまく、カットを突然割るタイミングが絶妙で何回もププってなります。
歌手のアリアナ・グランデが「空を見上げて彗星が地球に墜落する現実を受け止めよう!」というストーリーに沿ったヘンテコな歌詞を、超美声で歌いあげるなど、豪華キャストで本当にやりたい放題。
人類がしっかり滅亡する結末もインパクト抜群です。
ラストシーンで2万2740年後にメリル・ストリープ演じる大統領が、別の惑星でブロンテロックという謎の生物に喰われ、IT企業家ピーターのアルゴリズムの伏線回収がなされるオチも最高でした。
メリル・ストリープはもう大御所ですが、すっ裸で喰われるシーンに全力で挑んでいます。これが役者魂でしょうか。おバカコメディの幕をしっかり下ろしました。
映画『ドント・ルック・アップ』の難点は2時間18分という尺の長さだと思います。『マーズアタック』より全然長いです。1時間半くらいでよかったというのが正直な感想。
笑いがツボにハマらなかった人にとっては長すぎる時間だったでしょう。わかりやすい笑いが好きな人はつまらないと感じたかもしれませんね。
ネタバレ考察:人類のアホさを俯瞰した映画
©︎Netflix
大手スマホ会社が彗星を調査し、価値のあるレアメタルで構成されていると発見!
マーク・ライランス演じるIT企業家ピーターが大統領にゴリ押しして最初の爆破計画を急遽中止→彗星をうまく分裂させて地球に落として金を儲けよう!という流れが強烈な社会風刺になっていましたね。
実話ではないですが、規模を無視すればこれと似たような話は現実社会で山のようにあります。
ホワイトハウスや政治家との関係で言えば、現実にアメリカでは全米ライフル協会がスポンサーになり、「銃で身を守ろう!」という本末転倒な主張がまかり通ってしまっています。
ボーイングやユナイテッド・テクノロジーズといった軍事企業が戦争などで多大な利益を生み出しており、政治への影響力も強いです。
映画『ドント・ルック・アップ』では、全米ライフル協会や、軍事企業をIT企業に置き換えているのでしょう。
もちろん軍事会社だけでなくIT企業もGAFAを筆頭に、SNSやECサイトで利益と情報データを独占し、年々世界への影響力を強めています。
CEOのジェフベゾス、イーロン・マスクあたりが、いずれ米大統領より強い権力を持つかもしれませんね…。マーク・ザッカーバーグはないか(笑)
市民の身の安全を度外視して、権力者が金儲けや保身に走る現実の構図は映画内の「隕石を墜落させて金を儲けよう」と変わらないのが笑えるようで、笑えなかったり。
映画の後半では彗星がどんどん近づいてきて、ケイトたち若者が「Look Up(空を見上げろ→現実を受け止めろ)」と主張するのに対し、大統領たちは「Don’t look Up(空を見るな!→現実なんか見なくてもなんとかなるから大丈夫だ)」と大真面目に主張。
笑える一方で、深刻な環境問題や社会問題に目を背け続ける人類全体をデフォルメするとこうなると、微妙な心情になりましたね。
『バイス』『マネー・ショート華麗なる大逆転』『俺たちニュースキャスター』シリーズなどもそうですが、爆笑の裏で社会の真理をストレートに突きつけるのがアダム・マッケイ監督の得意技であります。
『ドント・ルック・アップ』では、彗星で人類の危機という1番大きな設定はフィクションですが、それに付随する政治家、学者、企業家、メディア、市民などの俯瞰的に見ると超おバカな行動は、現実をトレースした作りになっています。
本作の人類滅亡の危機でのドタバタも、現実のアメリカの大統領選挙などでの動向も、程度問題で差はないとストレートに表現したのが『ドント・ルック・アップ』という映画なのでしょう。
キャッチコピーも“実話に基づくかもしれない物語”となっています。
登場キャラについても、現実にいる政治家やIT長者のデフォルメにとどめられており、例えばTVの司会が「世界のために真実を伝えるぜ!」なんていう“いかにもフィクション”みたいな、役割を逸脱する行動はさせていません。
『ドント・ルック・アップ』は、今この瞬間、コロナ・環境問題・経済・戦争などすべての社会問題において最悪な決定をしているプロセスを、メタ的にボロクソに酷評した映画なのだと思いました。
↓映画『ドント・ルック・アップ』のあらすじ・ラスト結末解説は2ページ目へ↓
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