映画『ディアハンター』ネタバレ考察・狂気ラスト解説/ロシアンルーレットや設定の裏話,感想と評価

  • 2024年4月11日

ロバート・デ・ニーロとクリストファー・ウォーケンが出演している傑作映画『ディアハンター』(1978)!

ディアハンターは、若者が青春を謳歌するシーンが長く、全体としても3時間と長い。

戦争のシーンが少ないなど、色々型破りな部分が多いが、中でも注目するべきはロシアンルーレットだろう。

ディアハンターの考察をしながら、ロシアンルーレットの重要性について解説して結論を出してみたので読んでほしい。

映画『ディアハンター』ネタバレ感想・評価レビュー

いきなり夜道で真っ裸になったり、いろんな面で少し神経質に見えたりと、元から少しおかしかったマイケル(ロバート・デ・ニーロ)が、戦争後も大きなショックを受けながらも、普通の生活に戻れたのに対し、気立てがよく誰からも好かれそうなニック(クリストファー・ウォーケン)が、ベトナムに残り、精神崩壊し、廃人当然になってしまう。

戦争後、変人は実生活に復帰し、いわゆる“いい奴”は廃人になってしまう。これは非常に興味深いし、とても恐ろしいことでもある。

現実でも、第二次世界大戦や、ベトナム戦争、イラク戦争で、多くの民間人が兵士として志願して戦場へ行く。

そのあとで、精神に支障をきたさず、普通の生活に戻れた人は、ちょっと変な人だった可能性もあるのではないか。

もちろん、生き残った人を責めているつもりは毛頭ないが、戦争がある度に、人の感情を読めたり、共感できる“よい人”たちの割合は、どんどん少なくなっている可能性がある。

そう考えると、ディアハンターって深いし怖い映画だなあ、としみじみ思ってしまう。

映画『ディアハンター』ネタバレ解説/狂気のロシアンルーレット

ディアハンターが、他の戦争映画と一線を画していると感じる理由は、ロシアンルーレットだ。

激しい戦闘の後で、さらにロシアンルーレットをやらなければいけないと考えたら、それだけで気が狂いそうになる。

もともと、不条理な戦争に、さらにロシアンルーレットを足したところが、ディアハンターの革新的な部分だろう。スリルは100点満点だ!

実際のベトナム戦争中、ベトナムでロシアンルーレット賭博が流行っていたという記録は見つけられなかった。

戦争でも死者がたくさんいるのに、さらに死体が積み上げられるロシアンルーレットをするのは非常にバカげているし、そんなことは無かったと思いたい。

裏話/ベトナム戦争の設定は後付け!

もともと、ディアハンターはラスベガスでロシアンルーレットをするという脚本だったものが、ベトナム戦争という設定が後から付け加えられた。

マイケルやニックたちロシア系移民が、ロシアンルーレットをするというのが、大元のストーリーとしてあったのだ。

ディアハンターは反戦映画なのか?それとも友情の映画なのか?どちらの側面が強いのか混乱してしまうが、設定を付け加えたことにより、戦争と友情というテーマが重なっているようで、重ってないという面白い構造を持つことになった。

傑作たるゆえんも、この二重性あるのだと考えられるのではないか。

戦争によるPTSD(精神的トラウマ)もしっかり描かれている点では反戦映画だが、ベトナム戦争そのものについて深く描かず、マイケルとニックのロシアンルーレットに重点を描いていることについては、友情や関係性の移り変わりが主になっている側面が強い。

映画『ディアハンター』ネタバレラスト考察/唯一の解決手段はロシアンルーレット

ストーリー中盤、ベトナム側に捕虜に取られ、ロシアンルーレットをさせられるマイケルとニック。

マイケルが銃に弾を3つ詰め、ロシアンルーレットを行い、隙をついてベトナム兵を射殺して二人は逃げ出すのだが、このとき、ニックの中で決定的に何かが壊れてしまったようにみえる。

ニックロシアンルーレット

ニックは、ロシアンルーレットという、命を捨てるゲームで命を救ってしまったのだ

異なる二つの強烈なメッセージが混在して、頭がおかしくなるのも無理はない。

その後、ニックにとってロシアンルーレットは、生きている実感と、兄貴分のマイケルとの繋がりが得られる、唯一の手段となったのだろう。

最後にマイケルと勝負し、何かを思い出しかけたニックは、そのまま引き金を弾いて死んでしまう。

クリストファー・ウォーケンはこの鬼気迫る演技で、アカデミー賞助演男優賞を獲得した。

マイケルについても、ニックを救う唯一の手段が、彼を殺してしまうかもしれないロシアンルーレットだった(2回とも)ということで、これまたニックと同じように、相反する状況になっている。

ロバートデニーロロシアンルーレット

ディアハンターにとって、ロシアンルーレットは、登場人物に相反する葛藤をさせるための最高の手段だったのである。

助けようとしても、助けられないこともあるという無常観も漂う。

映画『ディアハンター』おかしなポイント

ディアハンターでちょっと疑問に思ったのが、ニックはロシアンルーレットをやりながら、2年間ずっと生存していたということ。

ロシアンルーレットの胴元になっていたのならともかく、プレイヤーとして生き延びるのは、確率がめちゃくちゃ低くなるので、不自然な気もする。

ニックは現地で伝説的なプレイヤーになっていたようだが、ロシアンルーレットは100%運のゲームであるし、ずっと勝ち続けるのは無理だろう。

この辺から、ディアハンターが現実的に戦争を描いているという側面が弱くなってきたように感じる(それがまた、この映画を特別なものにしてくれているのだが)。

最後のまとめ

強烈な問題作かつ傑作といえる映画ディアハンター。

戦争と友情というテーマの2重構造と、ロシアンルーレットによる感情の相反性が、傑作かつ個性的な要因になっているとわかっていただけただろう!

現状のハリウッドでは、3時間を超える個性的な名作が生まれる余地は少ないかもしれないが、それでもディアハンターに影響を受けた作品は数多く誕生している。

ディアハンターは長い映画史で観ても、特別な作品だといえるだろう。

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