Netflix『新聞記者』全6話ネタバレあらすじ感想:森友学園と比較考察!全キャスト実話モデル解説,海外評価

Netflix『新聞記者』(The Journalist)は、米倉涼子演じるジャーナリストが実際の森友学園問題をモチーフにした首相夫人関与や文書改ざんを追及するヒューマンドラマ。

モリカケ問題の実話に沿ってノンフィクション的に再現され、吉岡秀隆、横浜流星、綾野剛など豪華俳優陣のシリアスな演技が堪能できる一方、社会派の側面が非常に強く、エンタメ性はありません。

CineMag
見る価値はあるけど、正直いうと面白味はないタイプのドラマです。

キャストやモデルとなった人物ぶっちゃけ感想・評価良い点・悪い点・海外での評価ラストシーンを現実の森友学園と比較社会派としてメッセージのチープさシーズン1の全6話ネタバレあらすじ/結末解説を知りたい人向けに記事をまとめました。

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです)

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Netflixドラマ『新聞記者』キャスト/モデル・作品情報

公開・制作国・話数:2022/01/13・日本・全6話
英題:The Journalist
監督:藤井道人(ヤクザと家族)
脚本:小寺和久/山田能龍/藤井道人
原案:望月衣塑子『新聞記者』
制作:Netflix/スターサンズ
撮影:今村圭佑(『ヤクザと家族』)
企画:河村光庸
音楽:岩代太郎(『殺人の追憶』)

映画版『新聞記者』と同じく藤井道人が監督ですが、一部キャストや設定を除き、ストーリーは全く新しいものです。(ちなみに2022年には、藤井監督の映画『余命10年』も公開。2023年には横浜流星主演の映画『ヴィレッジ』が公開されました。)

映画では加計学園、Netflix版では森友学園についての不祥事を扱っており、モリカケ問題を真っ向からぶった斬っています

本作は権力に立ち向かう実在の記者・望月衣塑子(もちづきいそこ)さんによるノンフィクション本『新聞記者』がモチーフのドラマです(原作ではなくアイデア元)。

Netflix新聞記者のキャラ相関図

Netflix新聞記者の登場人物の相関図

松田杏奈役|キャスト 米倉涼子

松田杏奈役を演じる女優・米倉涼子

©︎Netflix

松田杏奈は、東都新聞のジャーナリスト。正義感・倫理観が強く、会見で権力に容赦無く立ち向かいます。

米倉涼子は抑えた演技を心がけていたようですが、やっぱり華がありました。

モデルはジャーナリストの望月衣塑子でしょうけど、サバサバしたオーラがちょっと似てますね。

米倉涼子さんはアマプラのドラマ『エンジェルフライト-国際霊柩送還士-』(2023)でも主演を務めました!

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アマプラドラマ『エンジェルフライト -国際霊柩送還士-』

村上真一役|キャスト 綾野剛

村上真一役を演じる俳優綾野剛

©︎Netflix

村上は総理夫人付きの官僚。学園の土地売買問題に関わり、その後、内閣情報調査室(内調)に移動して、苦悩します。

綾野剛の、もはやかっこよさとか考えていない演技がリアルでした。

木下亮役|キャスト 横浜流星

木下亮役を演じるキャスト横浜流星

©︎Netflix

亮は就活を控える大学4年性で、新聞配達のアルバイトをしています。社会問題に関心がまるでありません。

横浜流星はカッコ良さもありつつ、現代の学生の代弁者を巧みに演じていました。藤井道人監督が自分自身の視点を入れたいということでこのキャラが追加。ある面モデルは監督自身といえるでしょう。

俳優・横浜流星は実写映画『嘘喰い』に斑目貘役で主演。

鈴木和也役|キャスト 吉岡秀隆

鈴木和也は、名古屋の中部財務局に異動になった倫理観の強い官僚。文書改ざんを命じられ、心がボロボロになっていきます。

モデルになっているのは、近畿財務局の職員で森友学園問題で文書改竄に関わり、自殺に追いやられた赤木俊夫さん。

吉岡秀隆による善人が精神を病んでいく演技が凄すぎて、もう1人の主人公といえる存在感です。この演技に関しては近年の日本でベスト3に入る名演だったと思います。

吉岡秀隆の狂気じみた名演(ドラマ『新聞記者』)

©︎Netflix

本人がもともと焦点があっていない感じなこともあり、目が別々の方向を見ているようで、狂気が凄まじいです。

鈴木真弓役|キャスト 寺島しのぶ

鈴木真弓役を演じる女優・寺島しのぶ

©︎Netflix

真弓は和也の妻。公務員として苦悩する夫に何もしてあげられず、悩みます。

寺島しのぶは何をやらせても素晴らしい。夫を想い悲しむ妻の姿がドラマ一番の泣きどころでした。

モデルになっているのは、文書改竄を苦に命を絶った赤木俊夫さんの妻・雅子さん。

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ちなみに、赤木雅子さんは制作サイドに脚本の書き換えを要求したそうですが、フィクションだからと無視されてドラマ制作が始まってしまったようです…。

その他の登場人物・キャスト

内閣情報調査室・多田役|田中哲司(映画版から続投)

財務省理財局長・毛利役(モデルは当時の理財局長・佐川宣寿)|利重剛

総理補佐官・中川役|佐野史郎

IT企業CEO兼内閣参与・豊田進次郎役(山口敬之がモデルのよう)|ユースケ・サンタマリア

名古屋地方検察検事・矢川役|大倉孝二(映画版では編集長役)

中部財務局・黒崎役|田口トモロヲ

内閣参与・松田康平役|萩原聖人

東都新聞編集者|吹越満

東都新聞社員|柄本時生

東都新聞社員|土村芳

東都新聞デスク|橋本じゅん

新聞配達員|でんでん

新聞配達員兼就活生・まい役|小野花梨(Amazonオリジナル『恋に落ちたおひとりさま』小沢役)

ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ

あらすじ:首相夫人が栄新学園の土地売買に関与していたとリークが入り、内閣府は資料の改ざんを命じます。正義感の強い新聞記者・松田杏奈(米倉涼子)は過去の因縁もあり、学園問題の闇を暴こうとしますが…。

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森友学園の問題をモチーフにし、文書改ざんの裏側や葛藤がリアリティたっぷりに描かれます。

日本の官僚システムの問題点を知る上ではピッタリの社会派ヒューマンドラマ

一方で、エンタメ性は皆無。ストーリーが面白いタイプの作品ではありません…。

とはいえ、2022年公開のNetflixオリジナル日本ドラマだと『金魚妻』よりは全然完成度が高いです。

年齢制限はPG12。

おすすめ度70%
社会問題90%
演技87%
ストーリー68%
IMDb(海外レビューサイト)7.0(10点中)

※以下、Netflixドラマ『新聞記者』のストーリーネタバレありなので注意してください!

ラストシーン考察・森友の実話とドラマを比較

現実での森友学園問題は、遺族からすれば最悪な結末を迎えました。

文書改ざんに関与して自殺した赤木俊夫氏の妻が国を訴えましたが、2021年12月に国側が賠償金の支払いのみに応じる“認諾(にんだく)”を行い、訴訟を終わらせてしまったのです。

赤木俊夫の妻ら原告側は、真実が明らかにならずにお金だけ支払われる形で終わりました(まだ係争するとのことですが)。

原告側は請求を高額に設定して、赤木俊夫氏を死に追いやった全貌を明らかにしようとしましたが、国が一定の責任を認め金だけ払うということに。

毛利局長のモデル・佐川宣寿元理財局長の指示があったであろうことは赤木ファイルで明らかになりましたが、そこからの責任はうやむやです。

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平たくいえば、「真実や詳細は明かさないけど、一定の責任は認めるよ」で強制終了。

一方でドラマ『新聞記者』の最終回では、綾野剛演じる総理夫人付きだった官僚・村上が裁判の証言台に立つ意気込みだったので、現実とは違う結末を暗示しているのでしょう。

現実の森友問題では、総理夫人周辺職員・谷さん(本作の村上にあたる)という人物が安倍元首相の妻・昭恵夫人の関与を否定したようですが、ドラマでは一筋の光が差したという結末ですね。

最後に救いを残したのは良かったと思います。

実際の森友学園問題とさらに踏み込んだ比較は下記の記事をご覧ください。

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ネットフリックス『新聞記者』

Netflixドラマ『新聞記者』ネタバレ感想・評価

森友の社会問題を改めて伝える価値

Netflix 新聞記者

Netflixオリジナルドラマ『新聞記者』の評価は77点。

Netflixオリジナルドラマ『新聞記者』の評価チャート表

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キャストも実力派ぞろいで、闇深き政権の構造問題に葛藤するシリアスな演技が大きな見どころでした。

幅広い世代の登場人物がそれぞれの問題を抱え、政権の闇・組織と個人・若者と新聞・忖度・コロナなどなど、さまざまなテーマが提示されていましたが、打ち消しあうことなくバランスよくまとまっていたと思います。

シンメトリーかつノワール調の映像が、社会問題や登場人物の揺れ動く心情を真っ向から捉え、不穏な音楽も非常に効果的。

安倍元首相の「事実なら議員辞めます」答弁が完コピされているなど、ノンフィクション並の破壊力がありました。

日本の官僚システムが抱える問題を知るうえでは大人には絶対に見てほしい作品です。すべてが事実でないにせよ、ドキュメンタリー的な価値があると断言できます。

本作を見るまでぶっちゃけ森友学園問題に強い関心はありませんでしたが、恥ずかしながら本ドラマを見て強い問題意識を覚えました。

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首相の問題発言で人が死ぬ過程が理解できます。

時間はかかるでしょうが、日本の官僚構造の問題は正すべきです。

民放でなくNetflix配信だから、実話をもとにここまでシリアスに描けたと思います。グローバル時代の良き点ですね。

記事冒頭でのアンケートも2022/01/23時点で796件頂き、超面白かった70%・まあまあ21%で、好意的に評価している人が全体の91%と一般的な評判も非常に良いですね。

ただ、本作は遺族の赤木雅子さんに事前相談をしたものの、シナリオを変えてくれという彼女の願いが無視されてプロジェクトが進んだようですね。これはさすがに問題だと思います。

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ちなみにNetflixは『全裸監督』でも「村西とおるさんの原作本が元だから…」と元AV女優の黒木香さんに許可を撮らずにドラマ化して問題になりました。

フィクションの場合、当事者の許可は取る必要がないという解釈もありモヤモヤします。

正直ハマれなかった理由

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素晴らしい点も多い『新聞記者』ですが、悪くいってしまえば問題提起に終始し、新たな考え方など斬新さがなかったのが残念です。

森友学園問題をそのままトレースし、実際の出来事や人物を反映させたことでリアリティは抜群なのですが、事実とほとんど同じ内容が災いして、最終回でどうなるか最初から大まかにわかっています。サスペンスとしての面白さはありません。

映像ではブルーの色彩を強調するなどノワールテイストも強めでしたが、第2話で吉岡秀隆演じる官僚・鈴木和也の自殺し、はやくもノワールとしての物語は終了…。

残ったのは不条理さに立ち向かう社会派ドラマ要素。しかし先ほど述べたように結末がわかっているうえに、答えが出ない問題に正直に取り組んでいるためストーリーにパンチやカタルシスがありません

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唯一、記者と自殺する官僚が交錯し、真実を追求することで権力者でなく善人が死ぬという視点は素晴らしかったです。

クオリティ自体は高いので一定の評価はされるでしょう。ただドラマとして面白いかと言われると正直微妙でした。

全裸監督』や『浅草キッド』のように、大きな話題になるのは難しいかもしれません。

あとは世界的に成功している韓国ドラマと比較するとコメントで批判が来そうですが、ドラマとしてのギミック(仕掛け)の個数が圧倒的に少ないと思います。

鈴木が持っている家族写真を半分だけうつし、第3話で横浜流星演じる亮が鈴木の甥っ子だとわかる伏線・回収などもあるのですが、ほとんどの謎が第3話で全て解けてしまうのです。

さらにいえば、2話で鈴木が自殺してからこれといって「次の話が気になる!」みたいな展開・仕掛けがありません

社会的に価値があるドラマだからこそ、エンタメ性も両立して普段社会問題に関心がない層の間でも流行る作りになっていればと、惜しさが残ります。

映画版『新聞記者』と比較解説

藤井道人監督は映画版『新聞記者』(2019)と同じように間をたっぷりつかって登場人物をアップで映し、感情移入させる撮り方は素晴らしいです。

しかし、それが50分×6話だとちょっと間延びに感じました。

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2時間の映画版だとゆったりとしたテンポによって逆に没頭できたのが、ドラマではテンポスローに映ります。

また、映画では女性記者と内調の官僚の2人が主だったのですが、ドラマは登場人物が多く群像劇になっていたことに関しても、事件としての客観性は増しつつ、感動やエンタメ性が下がる要因になってしまった気がします。

シーンの切り替えが多くそれぞれの立場の関連性は見えやすい一方、登場キャラに寄り添える時間が短かったです。

主役・米倉涼子の出番もそこまで多くないですし、綾野剛は重要な役ではあるものの、予想をはるかに下回る出演時間。(俳優目当てのファンはちょっとがっかりするかも)

適度な距離感ができてしまい、物語が淡々と進行する印象です。

個人的にはより感情移入できる映画版の方が好きでした。

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映画『新聞記者』(2019)

まとめると、『新聞記者』は、実際の社会問題をモチーフにした問題提起やキャストの演技は素晴らしく映像の完成度も高いものの、ドラマとしてハマれるかと言うと微妙な作品といえるでしょう。

欲をいえば、フィクションなのでエンタメ性をもう少し持たせてほしかったです。でもまあこのキャストでまたシーズン2にも期待したいですね(また他の社会問題を扱う形で)。

海外の評価は?動画でまとめ

藤井道人監督はネトフリ版『新聞記者』で日本だけでなく、海外視聴者の評価も意識したようです。

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ただ、忖度なしで語るならこのストーリーで海外受けは難しいと思います。

先ほど説明したように、物語自体に謎や求心力が少ないからです。

実際海外のドラマ愛好家のレビューなどをSNSで見ていると、「権力に対抗する世界共通のテーマで、映像や演技はいいが、夢中になれない、展開がスロー」的なものが多かったです。

大手レビューサイトRotten Tomatoesをみると、英紙ガーディアンなど主要メディアが軒並み5点中3.5と平凡な評価。日本での評判と比較して、海外では温度差があります。

日本人からすれば、誰もが知っている豪華キャストですし、ニュースでもかなり話題になった森友学園問題を真摯に扱っているので、それなら見てみよう!という人は多いでしょう。

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ただ、逆に考えてみて欲しいのが、もしドラマ『新聞記者』が同じような内容で海外作品だったなら、あなたは満足できましたか?の問いです。

そう考えると、海外受けには少し弱いかなと思います。

海外受けしなくても別にいいじゃん!という人もいると思いますが、実際の社会問題を扱っているので、海外でも受けて多様な意見が出れば、その方がより有意義です。

また、あまりにも海外受けしなければ、長期的にNetflix Japanの予算が減らされ、結局日本では攻めたドラマが作れない環境に戻ってしまうでしょう。

あと、これは言葉の壁・翻訳の難しさの問題ですが、「英語吹き替えのみだとニュアンスが正確にくみ取れない箇所があり、演出で紙面が重要な場面もあるので、字幕も読んだ方がいい」とレビューしている人もいました。

僕個人の感想や、海外での評価はYouTube動画でもまとめてますので、よろしければこちら↓もご覧ください!

ネトフリ『新聞記者』ラストのメッセージが単純…

面接の質問は社会の希望に繋がらない

横浜流星演じる大学生・木下亮は、東都新聞の最終面接でお偉いさんに「新聞はこの先どうなるべき?」と聞かれ、何と答えたかわからない演出になっています(映画版の松坂桃李の口パクと同じ演出ですね)。

これは視聴者が新聞の意義や、報道の正義について考えてください」という問題提起です。

ただ正直、物語終盤の第5話でこの問いかけは、少し浅く感じられました。考えれば考えるほど、世の中の不条理さが浮かび上がるだけだからです。

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この質問に対する正しい回答などあり得ず、むしろなす術のない絶望に向き合わなければなりません。

厳しい言い方になってしまいますが、この質問を国民全員がしっかり考えたところで社会問題が根本的に解決することはないでしょう。

少々うがった見方ですが、質問自体がある種の気休めや偽善に映ってしまいました

希望だけを述べてよいなら、「新聞は利益でなく正義を追求する唯一の媒体になる!」など、答えようはあります。

ただ現実問題として社員を抱える会社は、正義だけを追求するのは不可能です。ある程度利益がないと倒産してしまいます。

ライバル会社よりパイを握れなければ、縮小していずれ潰れます。

多くの人は、家族がいれば保身に走りたくなるでしょう。お金の面で苦労をかけたくないと思うでしょう。自分の意に反することをしなければならないときがあるでしょう。

それは悪いことでしょうか?自分を貫いた結果、借金まみれになれますか?

本作でいえば、主人公・松田は兄が植物状態になると知っていても「真実を追求しろ」と言うでしょうか?

それらの葛藤に対して正しい答えなどないと知りつつも、「新聞はどうあるべきか?」の質問の奥に希望があるような演出で、あまり好きなシーンではありませんでした。

新聞やTwitterによる限界

ネトフリ『新聞記者』では、新聞の正義と価値、Twitterによる#ハッシュタグ運動などが肯定的に描かれていました。

ただ、人々の意識を変えるべく作られた社会派ドラマだからこそ、もっと深掘りしてメディアの負の側面まで見つめるべきだったと思います。

まず、新聞やTwitterを武器にある程度の犠牲を覚悟で正義を追求するとしても、どの立場で誰から見るからの視点で正義の内容は変わります

例えば、田中哲司演じる内調の多田は、本ドラマでは絶対悪です。

もちろん前提として情報操作はダメです。しかし彼が、絶対悪かと問われれば断言は難しいでしょう。

仮に本ドラマと逆パターンで、政権が一切関わっていないことがメディアで真実であるかのように報道されれば、極論その説明・対応に追われることは時間の無駄で、国民全体の利益に反します。

この場合、情報操作で対抗ニュースを流して時間をかけずに火消しができれば、ある面での正義といえるかもしれません。

使い古された言葉ですが、彼には彼なりの正義があります。

また、就活生・まゆがバスの中で「メディアも国も国民も一緒に考えていける未来…」的なことを言っていましたが、みんなで考えても立場の違いで正しさが違うので、争い・分断は必ず起こります

競争が必然の資本主義・社会システムの根本的問題にもつながり、特定の誰かの闇を暴くことでは解決しないでしょう。似たような出来事が次から次へ起こるだけです。

もちろん悪人の糾弾は必要ですが、普通の人の少しの忖度がいくつも積み重なって重大な問題が発生する側面もあるという視点が欠けています。

新聞やTwitterだけでなく、根本的には社会システムや教育を変えて長い年月が経たないと、本ドラマのような悲劇を回避するのは難しいでしょう。

『新聞記者』では複雑な社会システムがやや単純化され、ひとりひとりが意識を変えれば社会は変えられるというかなり安易なメッセージになってしまっていた印象です。

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その先へ進むための斬新なアプローチが欲しかったですね。

映画『スポットライト 世紀のスクープ』と比較

新聞記者を扱った社会派作品として大きな成功を収めたのが、カトリック教会の神父による児童虐待を暴露した実話に基づく映画『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)です。

ネトフリ『新聞記者』を見た後に『スポットライト』を見なおしてみると、社会派としてのメッセージについて大きな違いがわかります。

『スポットライト 世紀のスクープ』ではマイケル・キートン演じる主人公・ロビーが、「神父個人をスクープにするより、教会システム全体を暴こう」と決断します。

個人を吊し上げても、別の場所で同じことが起こると考えてのことです。

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個人でなく、構造にメスを入れているわけですね。報道機関としてより正しいメッセージはこちらではないでしょうか?

(映画はそれを元に事実を公表して片隅で性被害者からの反響の電話が鳴るという、味わい深くカタルシスのある終わり方になっています。)

扱った史実も違いますし、作品として『新聞記者』より『スポットライト 世紀のスクープ』の方が優れている!とかそういうことを言いたい訳ではありません。

ただ、メッセージだけを比較するとドラマ『新聞記者』の白と黒がハッキリしていて、みんなで考えれば社会が少しずつ変わるという訴えかけは、少し子供っぽいと感じました。

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