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映画『新聞記者』ネタバレあり考察:羊の意味やシム・ウンギョンのキャスティングがひどい?

映画『新聞記者』は藤井道人監督、シム・ウンギョンと松坂桃李のW主演です。

加計学園問題を軸に伊藤詩織さんの性的暴行問題などを扱い、色々と賛否両論のこの映画。

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個人的には映像も人間ドラマも楽しめました。一方で、メッセージ性はあるものの社会派としての帰結は予想の範疇という印象。

感想や評価目をつぶされた羊の意味シム・ウンギョンのキャスティングの是非内調の描き方の是非を知りたい人向けに記事をまとめました。

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです)

映画『新聞記者』キャスト・作品情報

映画・新聞記者

公開・制作国・上映時間:2019/06/28・日本・113分
監督:藤井道人(『余命10年』『ヤクザと家族』)
脚本:詩森ろば/高石明彦/藤井道人
製作:河村光庸/岡本東郎
制作会社:The icon/スターサンズ
編集:古川達馬
おすすめ度80%
シリアスな社会問題87%
ストーリー80%
IMDb(海外レビューサイト)6.0(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新批評家% 一般%

※以下、映画『新聞記者』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『新聞記者』ネタバレ感想・評価

映画『新聞記者』の評価は76点。

社会派としてはオーソドックスで、実際の加計学園問題をテーマにしたストーリーのメッセージは強烈ながらも、松坂桃李が官僚システムに屈するラストは凡庸なイメージ。

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社会派というより、松坂桃李の上司との絆や、シム・ウンギョンのひたむきさなど、ヒューマンドラマとして楽しめました

本作は、第43回日本アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ、シム・ウンギョン最優秀主演女優賞を獲得し、松坂桃李が最優秀主演男優賞に輝いています。

結構この映画は賛否両論で、日本アカデミー賞受賞はどうなのか?的な意見がネット上にチラホラ散見していますが、個人的にはそこまで的外れな評価ではないと感じました。

たっぷり時間をかけて登場人物をクローズアップしていくようなカメラワークにより、主演2人に大きく感情移入することができました。

米倉涼子主演のNetflixドラマ版『新聞記者』(2022)の方がクオリティは高かったですが、個人的に楽しめたのは映画版です。

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Netflixドラマ『新聞記者』

目を黒く塗りつぶされた羊の意味

新聞記者で目を黒く塗りつぶされた羊

©︎The icon/スターサンズ/フィルムパートナーズ

東都新聞にFAXされた羊の絵は、目が黒く塗り潰されています。

目を黒く塗りつぶされた羊は、キリスト教の「迷える子羊」のメタファーのようです。

この羊は飛び降り自殺した官僚・神崎自身を表現しているのでしょう。

不正に絡んだことを苦にし、自分には真実が見えなくなってしまったと感じているわけです。

それだけではなく、官僚で働く職員全員、ひいては国民全体をも暗喩しているのだと思います。「お前ら全員、目の潰れた羊だよ!」という痛烈なメッセージですね。

羊が映画において、そこまで効果的だったかは微妙なところですが、メッセージは伝わってきました。

シム・ウンギョンのキャスティングについて

シム・ウンギョン

©︎The icon/スターサンズ/フィルムパートナーズ

シム・ウンギョンは、イカゲームを大ヒットさせたファン・ドンヒョク監督の『怪しい彼女』(2014)主演や、ヨン・サンホ監督の『サイコキネシス』のシン・ルミ役などで有名。『新幹線ファイナルエクスプレス』にもカメオ出演しています。

映画『新聞記者』も個人的にはハマり役だったと思います(賛否分かれていますが)。

日韓ハーフで、報道の正義を健気に追求する姿勢と、新聞記者だった父が世間に追い詰められて自殺してしまった過去を背負い涙するコントラストが良かったです。

シム・ウンギョンの演技が良いのはもちろん、キャスティングが功を奏した面もあるでしょう。たどたどしい日本語で過酷な取材を続けるキャラクターに感情移入してしまうギミック(仕掛け)です。

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言葉よりも熱い思いが先行していると伝わってきます。

例えばですが、あなたはバリバリ東洋人差別のある国で、相手の非を追求するようなインタビューを、たどたどしい言葉でする勇気がありますか?

現地の人がインタビューするよりも、罵倒されたり誹謗中傷されたりすることも多そうですよね。

シム・ウンギョンが演じる主人公・エリカが最初からこの高いハードルをクリアしているとわかり、彼女の実直さや決意が伝わってきます。

実は当初、日本の宮崎あおいや、満島ひかりをキャスティング予定だったらしいですが、反政府映画に出たくなかったのか断られたようです。

それでシム・ウンギョンに主人公エリカ役が回ってきたとのこと。

もし日本の女優が演じていたら、映画としてのテイストはまったく異なるものになっていたでしょう。もしかすると、感動が薄れる結果になったかもしれません。

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カタコトの日本語が気になると感じる人もいるでしょうけど、個人的にはシム・ウンギョンで結果オーライだと感じました。

と思います。

松坂桃李の演技や口パク

新聞記者の松坂桃李

©︎The icon/スターサンズ/フィルムパートナーズ

映画『新聞記者』の松坂桃李の杉原の演技はかなり好きでした。

家族を支えるパパとして、精神的に辛い仕事を淡々とこなす杉原終盤は耐えられなくなって精神的に追い詰められ、ポーカーフェイスが崩壊していきます

なんか日本のパパの代表というか、誰もが少なからずあまり好きでないことを仕事としてやっているわけで、その象徴としてピッタリハマっていたように感じます。

最後の横断歩道でシム・ウンギョンと対峙して、口パクになるシーンは、「ご、ごめん」と言っていたのではないでしょうか。メンタルボロボロの演技もさすが松坂桃李という印象。

そしてストーリーは、社会システムに屈する形でバチーンと強制終了!

このラストも賛否分かれると思います。

社会派としては微妙ですが、ヒューマンドラマ・ノワール作品と見れば、まあ納得できます。

内調というファンタジー

新聞記者 内調の多田

©︎The icon/スターサンズ/フィルムパートナーズ

内閣情報調査室・略して内調が、薄暗い青みがかったトーンで描かれていたのが印象深いというか、「電気もっと明るくしろよ!」と突っ込んでしまいそうでした。

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暗い部屋で淡々と作業する内調の大部屋だけが、なんかファンタジーっぽかったですね。

この内調についても、あからさまにダークサイドとして描きすぎていてリアリティにかけているというような批判が多いです。

実際、内調には各方面からの出向者が多いので、情報操作を直接その場所でやるかは微妙です。

ただ映画として描く場合、政府支援者や情報操作を委託された民間企業まで描くと複雑になりすぎるという判断だと思います。

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結果、田中哲司演じる多田智也という、いい感じの敵が生まれましたね。彼はネトフリ版でも続投しています。

内調が政権に有利に情報操作を進める心なき部署だという設定は、物語としてはわかりやすいですが、政府による情報操作の構造を単純化しすぎているような気もします。

一連の事態の単純化はネトフリのドラマ版の欠点でもあり、結局政権による隠蔽問題の本質は何なのか?考えてみた下記記事もぜひ呼んでみてください。

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最後のまとめ

映画『新聞記者』はシム・ウンギョンと松坂桃李の演技やカメラワーク・音楽によりヒューマンドラマとしては楽しめたものの、社会派としては一部リアリティに欠ける作品になってしまったと思います。

シム・ウンギョンのキャスティングの意図が見えにくかったり、あらゆる要素のバランス感覚が従来の作品と異なるので、多くの批判を受けてしまったのかもしれません。

個人的にはわりと良い作品だと思いました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『新聞記者』レビュー終わり!