ネタバレ考察!映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』ラストシーン,ドーナツとナイフの意味,伏線とあらすじ解説

  • 2024年9月7日

映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(Knives Out)はミステリーにありがちなシナリオで観客をミスリードさせ、さらに二転三転させる凄すぎる超絶技巧作品!

CineMag
クラシックな手法を逆手に取った筋書きが見応え抜群でした!

作品情報・キャスト、ぶっちゃけ感想・評価伏線・プロットのネタバレ考察ドーナツとナイフのメタファー考察を知りたい人向けに記事をわかりやすくまとめました。

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)

↓続編『ナイブズ・アウト2: グラスオニオン』の解説レビューはこちら↓

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映画『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』

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映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』作品情報・キャスト

公開・制作国・上映時間2019/11/27・アメリカ・2時間10分
原題:『Knives Out』
ジャンル:サスペンス・ミステリー・コメディ
監督:ライアン・ジョンソン(『LOOPER』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』)
脚本:ライアン・ジョンソン
撮影:スティーヴ・イェドリン
音楽:ネイサン・ジョンソン
製作スタジオ:メディア・ライツ・キャピタル/Tストリート・プロダクションズ

全登場キャラ|キャスト

アナ・デ・アルマスとダニエル・クレイグは『007ノータイム・トゥ・ダイ』でも共演しましたね。

『ナイブズ・アウト』ネタバレなし感想・あらすじ・見どころ・海外評価

あらすじ:有名ミステリー作家ハーラン・スロンビーの誕生日に家族全員が集まり、翌日ハーランは首をナイフで切られた状態で死んでいた。自殺と認定されるが、謎の人物から依頼を受けた探偵ブランは、他殺だと考えて家族全員を尋問していく。それぞれ浮気、融資などの問題を抱えており、遺産を考慮すると家族全員が容疑者だった。ブランはハーランの看護師で友人だったマルタと一緒に捜査を進めていくが…。

古典的なミステリーのプロットを逆手に取った緻密なストーリーが魅力です。

ただ、昔のミステリーの筋書きをある程度知っていることが前提で面白くなるタイプの映画なので、アガサ・クリスティの小説とか、『刑事コロンボ』とかまったく見たことない人にとっては、つまらないかもしれません。

海外評価を見ても、批評家の方が一般視聴者より高評価を与えている傾向があるとわかります。

見る人によって評価は大きく分かれるでしょう。

おすすめ度 80%
脚本の巧みさ 90%
ストーリー 80%
IMDb(海外レビューサイト) 7.9(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家97% 一般92%

※以下、映画『ナイブズ・アウト』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ナイブズ・アウト』ネタバレ感想・評価

映画『ナイブズ・アウト』の評価は86点。

ミステリーのプロットのみで考えた場合、間違いなく傑作なのですが、ストーリー自体には完全にハマれませんでした。

序盤でアナ・デ・アルマス演じる看護師マルタの医療ミスでハーランが死ぬことになったと判明。刑事コロンボのようにマルタVS探偵ブランの構図になるかと思いきや、ブランとマルタが協力して事件の裏にいた黒幕ランサムを炙り出します。凝ってますね。

物語のどんでん返し的な結末より、全体の構造を俯瞰することで楽しめるタイプでした。

まあどんでん返しという意味では、実は証人フランは死んでおり、嘘をついたマルタが嘔吐して吐瀉物が黒幕ランサムにぶっかかり、ランサムが偽物のナイフでマルタを刺そうとするラストは痛快でしたね。一気に3連コンボ!!

ミステリーとして突き詰めると穴というか違和感が結構ありますが、コメディテイストでごまかしているのも悪い意味でなく巧みだと思いました。

ウソをつくと吐いてしまうマルタの設定も笑えますよね。

監督・脚本を務めたライアン・ジョンソンの手腕が凄すぎです。

本質のメタ考察/ドーナツとナイフ・ラスト(ネタバレ)

ドーナツ=マルタのラストシーン

©︎IMDb

探偵ブランが何度も言及していた「ドーナツのような事件だ」が本作の本質を表しています。

ブランは「つなぎ合わせていくと自殺とは思えない穴がある」とも言っていました。

穴にハマるのは誰かと考えると、看護師マルタです。

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ドーナツの穴にハマる存在=マルタだと言えますね。

また、中心がない=死に事件性がないと示唆しているようにも思えます。

老人ハーランはマルタの勘違いから自分で首を切って死んだわけですし、事件の中心に事件はありません

ここで椅子に飾られた円形の数百のナイフも考慮すると、ストーリーに奥行きが出てきます。

英題のKnives Outとは、いくつかナイフの刃が剥き出しの状態という意味です。これは、広間の椅子のサークル状の数百のナイフを示しており、遺産を狙う家族たちが敵意をむき出しにしていることのメタファーにもなっています。

さらにサークル状に配置された数百ものナイフが、ドーナッツの形状と重なるところも映像的なメッセージとして巧みだと思いました。

ラストシーンではマルタが数百ものナイフに囲まれた椅子に座ります。ここでもマルタがドーナツにハマる存在だとわかりますね。

死んだハーランは、家族にマルタが必要だと知って全体像を描いたのかもしれません。

ドーナツやナイフを軸に映像やブランのセリフを深掘りすると『ナイブズ・アウト』のストーリー全体を俯瞰して絵画のように眺めることができます。

本作が批評家から超高評価を受けている理由は、抽象的に捉えてもメッセージが美しく浮かびあがるという点もあるのでしょう。

プロット・伏線の考察(ネタバレ)

映画『ナイブズ・アウト』のラストシーン

プロットの1番革新的だったところは、黒幕がいるにも関わらず、事件性がないところです。

クリス・エヴァンス演じる黒幕ランサムは遺産目当てでハーランを殺そうとしていましたが、マルタの優しさによりそれが事件性のない自殺になりました。

ユリイカ!!とても斬新なアイデアですね。思いつこうとしても絶対無理でしょう。

また、伏線の散りばめ方が巧みでした。

オープニングで2匹の黒い犬をスローモーションで描いており、家族なのに唯一吠えられるランサムが黒幕だと暗示していました。

ハーランが「ランサムは芝居の道具と本物のナイフの区別がつかない」というセリフも、ラストシーンで、ブチ切れたランサムがマルタを先が引っ込む偽物のナイフで刺してしまうオチにストレートに繋がっています。

マルタの靴についた血の雫をブランが最初から見抜いていたのも面白いですね。

ブランは最初からマルタが関わっていると知っていましたが彼女の優しさを見てとり、事件の本質がここにないと勘づいたのでしょう。人情味溢れていますね。

また『ナイブズ・アウト』のうまいところは、コメディテイストを入れ込んだところ。

ウィットに富むクラシックミステリーのような雰囲気を醸し出しつつ、リアリティラインを下げることに成功しています。

もし本作にコメディ要素がなければ、外の格子を犯人がよじ登った時点でなぜ指紋照合をしなかったのか?マルタは吐くのを都合よく我慢できるのか?なぜランサムは血液検査の施設を簡単に燃やすことができ、データもクラウド上に保存されていないのか?

などなどたくさんの疑問が浮かびます。コメディテイストでリアリティラインを下げ、細かい疑問は無視するように観客に伝えているのです。

最後のまとめ

『ナイブズ・アウト』は、よくあるミステリーのプロットだと観客をミスリードさせ、さらに二転三転させる斬新な展開が素晴らしかったです。

続編の『ナイブズ・アウト2』も同じくダニエル・クレイグ主演でNetflixで配信。こちらも最高のクオリティでした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『ナイブズ・アウト』レビュー終わり!