映画『シェイプ・オブ・ウォーター』ネタバレ考察・ラストの意味を徹底解説/半魚人の愛はティール色,感想評価

  • 2024年4月11日

映画『ナイトメア・アリー』(2022)のギレルモ・デル・トロ監督による、第90回アカデミー作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の4冠を勝ち得た映画『シェイプ・オブ・ウォーター』。

アカデミー賞を取っているから良いとか悪いとかの談義は一旦置いて、個人的な感想を述べさせてもらえば、ストーリー、映像ともに最高に楽しめる傑作だった。

ギレルモ・デル・トロ監督の至上の美意識と、計算されたストーリーが融和していたからだ。具体的にどんなところが素晴らしかったのかを解説していく。

※記事は全編ネタバレありです!!

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』ネタバレ解説/ティール色の陶酔感

シェイプオブウォーターのワンシーン

シェイプ・オブ・ウォーターは、全編を通してティール色で溢れている。ティールとは、緑が青みがかったような色で、真鴨(マガモ)の羽の色が元になっている。日本語でいうと鴨の羽色というものだ。

シェイプオブウォーターの半魚人

シェイプ・オブ・ウォーターでは、イライザ(サリー・ホーキンス)の洋服から、壁紙、パイ、車に至るまで、なんでもティール色にすることで、統一感が出ており、さらに、映像のコントラスト調整で一種の陶酔感が得られるような映像になっている。

ファンタジーな映像の秘密はこんな工夫にあるのだ。

また、主人公イライザが、モンスターと愛を交わしたあとに、緑っぽい服装から赤色の服装に変わるのもポイントである。

シェイプ・オブ・ウォーターでは、“色“”がとても効果的に使われている映画なのだ。

ちなみに、同じく前年アカデミー作品賞を獲った映画「ムーンライト(2016)」では、ブルーが強調された映像になっていることから、近年の映画界隈では、物やコントラストを利用して画面の色を統一するという手法が流行っていることがわかる。

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』ギレルモと女性脚本家の共同執筆

シェイプ・オブ・ウォーターのストーリーの完成度が非常に高かった理由の一つに、脚本を男女で書いたからというのもあるように思える。

シェイプ・オブ・ウォーターの脚本はギレルモ・デル・トロと、ヴァネッサ・テイラーという女性脚本家による共同執筆だ。

脚本を分担することでストーリーが独りよがりにならなず、バランスが保たれ誰もが楽しめるものになるというのは、よくある話だが、男性脚本家と女性脚本家が協力しているという図式は、世に広まっている映画ではまだまだ少ない気がする。

シェイプ・オブ・ウォーターは脚本の中に、男性目線と女性目線が混在することで、男女共に納得でき、かつ深い恋愛観を描くことができたといえるだろう。

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』ラスト・ネタバレ考察

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』のラストは、ストリックランドに撃たれたイライザが、水中で彼(モンスター)に抱かれ、傷が治り、首の傷跡がエラに進化して目をさますというもの。

イライザの正体が半魚人の親戚なのか、子孫なのか、それとも半魚人と恋したことで進化したのかはわからないが、彼女は水中という夢の世界で、彼と幸せに暮らすのだ!という未来が示されている。

悲劇を乗り越えたハッピーエンドに、思わず涙がこぼれ落ちる。

デル・トロ監督自身は「大アマゾンの半魚人(1954)」をベースにしてシェイプ・オブ・ウォーターを製作したと語っているが、パンズ・ラビリンスのハッピーエンド版という解釈ができるというところを見落としてはならない。

(※パンズ・ラビリンスのネタバレもあるので観てない人は注意!)

シェイプ・オブ・ウォーターとパンズ・ラビリンスは、

  • 孤独な女性
  • 戦争状態の社会
  • 暴力的な独裁者

という3つの大きな共通点がある。メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督の根底にある大きなテーマなのだろう。

パンズ・ラビリンスでは、オフェリアが現実的に考えるとバッド・エンドとなっている(ある種の救いはある)ことを考えてみると、イライザが最後に助かるシェイプ・オブ・ウォーターはパンズラ・ビリンスのラストが真逆になったハッピーエンドだと言えるだろう。

そういった意味で、シェイプ・オブ・ウォーターは、パンズ・ラビリンスで死んだオフェリアの魂を慰めるレクイエム的な作品だといえる

パンズラビリンスのオフェリア

パンズラビリンスのオフェリア

shape-of-waterのポスター

シェイプオブウォーターのイライザと怪物

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映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の疑問点

シェイプ・オブ・ウォーターは素晴らしかったが、個人的に納得のいかなかった部分がある。

それは、イライザは、なぜ水の中にいるモンスターに惹かれ始めたか!?という点だ。

イライザは言葉を発することができない、いわば障害を持っており、それが彼女と周りの世界を隔て、孤立していたことはわかる。

それが知性を持つ水中のモンスターである彼が、囚われの身となって感じているであろう孤立と重なったという、疎外されたもの同士惹かれたという理屈もわかる。

しかしながら、“喋れない孤独”と“異種である孤独“”は同じだろうか。同じだと思えるだろうか?

端的にいうと、孤独だからといって、まったく人間とは別の種族にすぐ好意を抱くだろうか。

ファンタジーだから、理由はそんなに重要でなくても良いのかもしれないが、イライザが彼に惹かれた理由がもう少しわかるようなシーンが欲しかった。

最後に感想まとめ

シェイプ・オブ・ウォーターには、映像のティール色への統一、男女共同執筆、といった傑作になり得る素晴らしい要素があったことに加え、パンズ・ラビリンスのレクイエム的な側面もあると考えてみたがどうだろうか?

ギレルモ・デル・トロ監督が、今後もシェイプ・オブ・ウォーターのような、素晴らしい作品を撮り続けることを願う!