Netflixで配信された映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール報復の荒野』を観ました!血が飛び散るガンアクションがスタイリッシュで見応え抜群!
ストーリーはシンプルながら、ブラック・ミュージックと銃殺のコラボレーションが非常にエンタメ的で楽しめる異色の西部劇です。
タランティーノ監督の『ジャンゴ 繫がれざる者』に通じるカタルシスがありました。
ちなみにザ・ハーダー・ゼイ・フォールは英語のことわざ「The bigger they are the harder they fall(大きくなった権力は激しく倒れる)」が由来と思われます。
(そのほかに、The Harder They Fallだけだと「倒れない!」的なニュアンスもあります。)

映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』キャスト・作品情報
原題:『The Harder They Fall』
監督:ジェイムズ・サミュエル
脚本: ジェイムズ・サミュエル/ボアズ・イェーキン
原案:『The Life and Adventures of Nat Love: A True History of Slavery Days』
主演:ジョナサン・メジャース/ナット・ラブ役
出演:イドリス・エルバ/バック役
出演:レジーナ・キング/トルーディ役
出演:ザジー・ビーツ/メアリー役
出演:デルロイ・リンドー/保安官役
出演:ラキース・スタンフィールド/ビル役
ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
あらすじ:無法者から金を奪う賞金首のガンマン/ナット・ラブは、幼い頃に自分の両親を殺した極悪非道のルーファス・バックが刑務所から世に解き放たれたと知り、かつての仲間たちと復讐のため立ち上がる…。
ストーリーはシンプルな西部劇の復讐譚です。
1番の見どころは銃撃戦・アクションシーンなので、何も考えずに見られるアクション映画が好きな人は楽しめると思います。流行りの韓ドラ・イカゲームのようにキャッチーで終始痛快です。
ただストーリーを重視する人には向かないでしょう。
個人的には好きな作品で、海外レビューサイトの評価もわりと高いです。
おすすめ度 | 80% |
西部劇の独特な世界観 | 85% |
ガンアクション | 95% |
ストーリー | 65% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.7(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト | 89%(100%中) |
※以下、映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』ネタバレ感想・評価
考察:ザ・ハーダー・ゼイ・フォール
黒人賛歌:ブラックミュージック最高
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』は主要な登場キャラ全員が黒人だったのが非常に斬新でした(白人はモブキャラ)。
そして劇中歌もウエスタン寄りのものに加えて、ゴスペル・ブルース・R&B・ファンク・HIPHOPなどのいわゆる黒人音楽が多用されています。
ジェイ・Zがプロデュースしているのも大きいですね。(ジェイ・Zによる挿入歌↓)
ブラックミュージック好きにはたまりません。
ラストのメアリーとトルーディのキャットファイト中にゴリゴリのファンクが流れる演出なんかは特に最高でしたね。
エンタメ性抜群のガンアクションを楽しむ映画ですが、ブラックミュージックを全面に押し出した黒人讃歌になっているとも思いました。
もうマイノリティだけで映画作るよ
『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』は西部劇の時代には差別されている黒人だけの物語にしていたのが印象的で、支配階級の白人を倒すというステレオタイプの映画ではありません。
一方で、しっかりと白人に対する不満・憎しみもサラッと描かれており、ヴィランのルーファス・バックが町で金を集めようとしているのも、町が白人によって金で買い叩かれそうなのを防ぐためです。
本作は、あえて白人を出さずに黒人の差別問題を突きつけている意味でとても画期的。
ハリウッドなど世界的に映画制作でマイノリティ人種を登場させる多様性が叫ばれていますが、本作のストーリーだけでなくキャスティングまで視点を広げてみると、その思想が尖った最先端の形態といえるのではないでしょうか。
十字架が追ってくる
ナット・ラブの両親を殺したルーファス・バックですが、彼はなぜそのときにナットのひたいに十字傷をつけたのでしょうか。
深読みすると、悪に染まってしまった自分を十字架を背負ったナット・ラブに止めて欲しかったのだと思います。
十字架はキリスト教で“救済の象徴”ですが、悲しい過去のせいで悪に染まったルーファス・バック自身も心の奥底で負の連鎖を止めたかったのでしょう。
だからこそ、ナット・ラブに殺されるときに涙を流したのだと思います。
また十字架は、ナット・ラブが暴力で負の連鎖を止めても人の道に戻れるようにという願いもあるのでしょう。
黒人同士は「ブラザー!」と呼び合ったりしますが、本作では主人公と敵を文字通り義兄弟にすることでルーツを同じにする者同士争うなというメッセージを伝えていたようにも感じられますね。
被差別人種・貧困層同士で争ったら富裕層の意のままだという社会風刺のテーマが垣間見えます。
ザ・ハーダー・ゼイ・フォールの伏線
金の指輪
中盤でヴィランのルーファス・バックが、捕らえた主人公ナット・ラブが持っていた指輪を奪いしみじみ眺めていましたが、これは2人が兄弟だったというオチの伏線になっていました。
鏡の前の自分の方が速い
個人的にかなり好きだった挙動不審な女ガンマンのカフィー。
彼女は早撃ちが自慢のジムに「鏡の前でもっと早く抜く人物を見た」(自分のこと)と言っていました。これが伏線的というかラストに繋がるセリフでしたね。
カフィーは終盤で敵のチェロキー・ビルを早撃ちで負かし、「ジムの方がお前より早かった」と仲間への敬意を口にします。
何を考えているかよくわからない目をひん剥いた表情が特徴的なカフィーでしたが、早撃ちにプライドを持っており、ジムを尊敬していたと分かったことで、彼女の内面が一気にあふれてきた印象です。
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール報復の荒野』ネタバレあらすじ解説
過去
幼いナット・ラブが家族で団欒をしていると、ルーファス・バックという父に恨みを持つガンマンが現れ、母と父を目の前で銃殺します。
バックはカミソリを取り出し、ナット・ラブのひたいに十字傷をつけたのでした。
現在
成長したナット・ラブは、かつてルーファス・バックの仲間だった右手にサソリの刺青を入れた男を銃殺。
ナットの仲間ピケットとジムは、街で銀行強盗をしたクリムゾンフッドという集団を谷間で待ち伏せして殺害し、金を奪います。
しかしその金はルーファス・バックの一味のものでした。
ルーファス・バックの復活
ルーファス・バックはすでに逮捕されていましたが、仲間のトルーディとチェロキー・ビルが移送中の列車を襲って警備兵士たちを皆殺しにし、彼を外へ出します。
ルーファス・バックはかつて自分が作った町レッド・ウッドへ行き、自分を裏切って保安官になっているワイリーをボコボコにしました。
レッド・ウッドの住民たちに、この土地が白人たちに買収されないために金をかき集めろと脅しました。
ナット・ラブの決起
ナット・ラブは元恋人メアリーの店へ行き彼女に殴られます。メアリーは復讐ばかりで帰ってこないナットに我慢ならなかったのです。店の用心棒の女性ガンマン・カフィーが横目で見ています。
かつてルーファス・バックを逮捕した保安官が店にやってきて、ナットを逮捕しました。しかしそれは2人が仕組んだ芝居でした。
ナットは仲間たちを復讐に巻き込みたくなかったので、保安官と2人だけでバック一味への復讐をしようとしていたのです。
メアリーたちはそれに気づき、復讐に加わることにします。
ナット・ラブは父から受け継いだ金の指輪をメアリーに渡しますが、彼女は受け取りません。
メアリーはルーファス・バックたちがいる町レッド・ウッドへ偵察へ行き、捕まってしまいました。
ナットはメアリーを助けるために町へ行きますが人質を取られているので手が出せず、ボコボコにされます。
バックはナットを放し、「金をもってこればメアリーと交換する」と言います。
ナットはカフィーたちと白人だけの町メイズ・ビルの銀行を襲い大金を手に入れました。
最後の銃撃戦のあとの真実
ナット・ラブたちは金を持ってレッドウッドへ舞い戻ってきます。トルーディがメアリーを外へ連れてきました。
ジムが敵のチェロキー・ビルと早撃ち対決をしようとしますが、ビルはカウントが終わる前に彼を撃ち殺します。
ナット・ラブは怒り、仲間のピケットに狙撃させ金をダイナマイトで爆破。ナットとバックの人間たちの激しい銃撃戦が幕を開けます。
カフィーの助けで拘束を逃れたメアリーは、トルーディを追って彼女と格闘し、銃でブン殴り戦闘不能に。
ピケットは敵の銃弾を受けますが銀貨が弾丸を受け止めて助かりました。しかし直後、チェロキー・ビルに後ろから撃たれます。そばにいたカフィーは怒り、早撃ち勝負でビルを倒して「ジムの方が早い」と言いました。
ナット・ラブは肩に銃弾を受けながらもバックの前に立ちます。
バックは丸腰で泣きながら、「昔父親が母を殺して家を出ていき、その復讐のためにお前の親を殺した。自分たちは義理の兄弟だ」と話します。
ナット・ラブは衝撃の事実にショックを受けますが、ルーファス・バックを殺害。
復讐と抗争が終わり、カフィーは保安官見習いになることになりました。
ナットはジム、ピケットの墓に加えて自分の墓も作って死んだことにし、メアリーと旅立ちます。
遠くの丘から謎の人物(トルーディ)がナット・ラブたちを見つめています。
最後のまとめ
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』は、スタイリッシュで無慈悲なガンアクションがたっぷり堪能でき、黒人讃歌にもなっている斬新かつハイクオリティな西部劇でした。
復讐の仇が義兄だったというショッキングな展開も良かったですし、ガンマンたちを黒人だけで固めることによって、差別の問題なども社会性も逆説的に表現していたのも興味深いです。
最後に敵だったトルーディがサラッと出てくるあたり、続編も期待していいのかもしれません。楽しみですね!
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』レビュー終わり!
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