2023年11月23日(木・祝)公開の北野武監督・最新作 映画『首』。
ビートたけし演じる秀吉と、西島秀俊ふんする明智光秀が、信長の跡目を争って腹黒い駆け引きと合戦を繰り広げる戦国アクションコメディ!
作品情報・キャスト
ネタバレなしの感想・アンケート評判
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
考察:秀吉と明智光秀の対比構造
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
映画『首』作品情報
制作国:日本
上映時間:2時間11分
ジャンル:時代劇・アクション
年齢制限:R15+ (15歳未満は不可)
監督・脚本・編集:北野武
原作:北野武の小説「首」
製作・配給:KADOKAWA・東宝
音楽:岩代太郎
製作費:約15億円
映画『首』登場人物/キャスト 相関図
©︎公式サイト
羽柴秀吉|cast ビートたけし(『ソナチネ』『HANA-BI』『アウトレイジ』『アナログ(原作)』)
明智光秀|cast 西島秀俊(『ドライブ・マイ・カー』『シン・ウルトラマン』『仮面ライダーBLACK SUN』『グッバイ・クルエル・ワールド』『クリーピー 偽りの隣人』)
織田信長|cast 加瀬亮
難波茂助|cast 中村獅童(『怪物の木こり』)
荒木村重|cast 遠藤憲一(『エンジェルフライト』『地獄の花園』)
徳川家康|cast 小林薫
黒田官兵衛|cast 浅野忠信
斎藤利三|cast 勝村政信
服部半蔵|cast 桐谷健太
曽呂利新左衛門|cast 木村祐一
般若の佐兵衛|cast 寺島進
森蘭丸|cast 寛一郎
羽柴秀長|cast 大森南朋
弥助|cast 副島淳
為三|cast 津田寛治
安国寺恵瓊|cast 六平直政
間宮無聊|cast 大竹まこと
清水宗治|cast 荒川良々
千利休:岸部一徳
映画『首』あらすじ
家臣だった荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こし、織田信長(加瀬亮)は怒り心頭!
反乱は武将たちに鎮圧させるが、当の村重には逃げられた。
逃げた村重は千利休(岸辺一徳)に召し抱えられていた抜け人の曽呂利(木村祐一)に捕まる。
千利休は明智光秀(西島秀俊)に村重の身柄を引き渡した。
村重と恋仲だった光秀は、彼を自分の城にかくまった。
百姓の茂助(中村獅童)は武将になりたくて仕方なかった。親友と一緒に秀吉の軍勢に参列し、敗戦兵の首を取った親友を殺害してその首をとる。
曽呂利は茂助を気に入り、連れて歩くことにした。茂助の妻子は武士の軍団に皆殺しにされたが、茂助は「家族が死んで身軽になった」と笑う。しかし殺した親友の幽霊が見えるようになってしまった。
いっぽう、豊臣秀吉(ビートたけし)は、信長の跡目を狙ってさまざまな策略を部下に立てさせていた。
武将たちが互いの首を狙う騙し合いの戦国合戦が火蓋を切る。
ネタバレなし感想・アンケート評判・海外評価
(これから視聴する方の参考になるよう、映画『首』についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓)
世界の北野武だけあって映像のセンスは抜群で、度肝を抜かれるような迫力の首切りシーン、合戦アクションも満載!
ビートたけしと大森南朋のコントっぽい掛け合いも最高に笑えます!
映画としてのクオリティは非常に高いです。
ただ、戦国のドロドロの潰し合いを描いた作品にしてはシリアスさと笑いが半々くらいなので、人によって面白いかつまらないか好みがハッキリ分かれるでしょう。
エンタメ性のある戦国の裏切り合戦をしつつ、ビートたけしらしいお笑いも存分にあり。私のような凡人にとっては少し斬新すぎるテイストです(微ネタバレの感想続きはこちら)。
おすすめ度 | 80% |
世界観・映像美 | 97% |
ストーリー | 75% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.7(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 70% 一般の視聴者 % |
メタスコア(Metacritic) | 67(100点中) |
※以下、北野武監督『首』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『首』ネタバレあらすじ解説
羽柴秀長(大森南朋)は、曽呂利を気に入って家来にする。実際は使い捨てと考えていた。
秀吉は、曽呂利が得た情報から「信長が自分の息子に家督を継がせ、豊臣家などなんとも思っていなかった」と知って大激怒。
光秀の城に村重がいる件に関しては「謀略に使える」と考えた。
秀吉の腹心の部下・黒田官兵衛(浅野忠信)は、光秀を利用して信長をおとしいれようと計画する。
秀吉は光秀を呼び、「信長はおまえに跡目を継がせる気はさらさらない」と教えた。光秀は信長への怒りでうち震える。
さらに秀吉は家康に頭を下げ、「どうか俺に天下を継がせてくれ」と頼んだ。しかし腹の裏では信長が倒れた後に家康を追いつめるつもりだ。
秀吉に悪知恵を吹き込まれた光秀は、信長に「謀反人の村重をかくまっているのは家康だ!」と嘘をついた。
光秀はこれ以上村重を城に置いていては天下人になれないと考え、村重をひっとらえさせる。
村重は好きだった光秀に裏切られて泣いた。そして光秀の部下によって崖から突き落とされて死亡。
信長は家康を呼び出して鯛に毒を盛った。しかし、勘が鋭い家康は鯛を食べたフリをしてことなきを得た。
光秀は信長に「茶会を開催する」と嘘をついて本能寺に呼び出した。そして夜に軍を派兵して攻め入らせる。
追い詰められた信長は蘭丸を介錯(首を刎ねる)。信長は弥助に首を刎ねられて死亡した。
明智光秀は信長の首を見つけられずに焦る。
逃亡を続ける家康は明智の部下・斎藤利三(勝村政信)に何度も狙われるが、ことあるごとに影武者を代わりに殺させて命をひろった。
秀吉の軍勢は長い距離を戻り、明智光秀の軍勢と対峙する。
秀吉には特に計画などなかったが、軍勢を勢いよく突っ込ませて明智の軍団を散り散りにした。
曽呂利は戦のまえに秀吉のもとを離れ、千利休の家にやってきた。そこで千利休の部下・間宮(大竹まこと)に刺される(秀吉が知りすぎた曽呂利を殺せと言った)。
曽呂利も間宮を刺した。2人とも倒れて死亡する。
武将になりたい茂助は必死に明智光秀を追う。そしてとうとう、瀕死の光秀を見つけた。
光秀は「おまえに首をくれてやる!」と言って、刀で自らの首を刎ねて死亡。
茂助は首を手に入れて歓喜の雄叫びをあげた。しかし首狙いの男たちに殺されてあっさり死亡。
天下を取った秀吉は、茂助の首の横に置かれた首(光秀の首)を蹴っ飛ばし、「首なんかいらねー」と言い放った。
映画『首』終わり
映画『首』ネタバレ感想・評価レビュー
良かった点
まず北野武の映像のセンスに脱帽。どのカットを見ても天才的だと見惚れてしまいました。絵力が強すぎます。
合戦が終わったあとの死体の群れを上から映すシーンは、青と黄色の旗が入り乱れて美しすぎる。
娼婦たちの列が雨傘をかぶって城へ向かう場面は、アウトレイジで黒塗りの車が連なるような、この世のものとは思えない独特の雰囲気でした。
般若の佐兵衛(寺島進)の村のシーンは、北野武が敬愛するデヴィッド・リンチっぽい雰囲気が漂っていました。もはや異世界です。
基本的にどのカットからも北野武の美的センスがうかがえました。いつもヘラヘラしていますが、センスの底なし沼ですよねこの人。ワンシーン見ただけでなぜ世界で評価されているかすぐにわかります。
信長が突然光秀を足蹴にしたり、刀に刺した饅頭を食わせて村重の口が血だらけになったり、坊主の首が突然村重にぶった斬られたり、味方があっさり銃で殺されたりなど、心が震えるようなスリリングなシーン多数でした。
北野武はボクシングも嗜んでいますし「どんな暴力がもっとも恐ろしいか」を体で知っているのでしょう。
突然に首がぶった斬られるシーンは黒澤明さながら。
木村祐一が勝村政信と戦うときに手裏剣を叩き落とすシーンなんかキレッキレでビビりました。
キャストの演技も最高!ボーイズラブBL(笑)
キャストの演技もみんなバッチリハマっていましたが、特に織田信長役の加瀬亮さんが良かったです。本作のMVPじゃないですかね。
訛り全開で武将たちを罵倒しまくる狂った人間性!これぞ信長って感じでした。
村重に刀に刺した饅頭を食わせる場面など基本クズすぎですが、ずっと見ていられます。
ストーリーも、信長ら戦国武将らが男好きだった史実を踏まえてボーイズラブ全開だったのが笑えました。
特に、光秀役の西島秀俊さんと村重役の遠藤憲一さんがカップルだった流れは爆笑してしまいました!
エンケンが西島さんに「わしゃあ妬くぞ」!おっさんずラブです!この2人のピロートークが見られるとは!
みんな信長と性的関係を持っているとも示唆されていましたし、戦国時代ってもしかすると忠義の中に情愛も含まれていたのかもしれませんね。
ビートたけし演じる豊臣秀吉が、実は作戦もなんも立てられないただのオヤジだという設定もいいですね。
たけしが大森南朋と浅野忠信にいいように転がされている感じが、「世界まるみえテレビ」で所ジョージがたけしに遊ばれている構図によく似ていて微笑ましい!
「おまえ、死んでこい!」って言ってとりあえず突っ込ませる…。豊臣秀吉というより、ほとんど芸人のビートたけしでしたが、ところどころで狂犬のような目つきが垣間見えてカッコよかったです。
最後は秀吉の味方以外全員死ぬアウトレイジパターンでしたが、戦国時代はそんなに高尚なもんじゃない!という北野武の独特の視点が存分に入れ込まれていて面白かったです。
曽呂利役の木村祐一さんもほんと最高でした。腕は立つけど見ていると笑えてくる…彼にしか表現できないキャラクターですよね。
あとは茂助(中村獅童)が本当好きでした。貧しい百姓だからこその人間性の卑しさ、親友殺し、家族が死んでも「せいせいする」と言ってのける畜生感。
今とは価値観や倫理観が違いますし、こんな人間性が終わっているヤツが戦国時代には結構いたのかもしれません。
茂助のような人間性が腐ったやつを真正面から捉えることも北野映画の大きな魅力だと再認識。作品の根底にエネルギーを吹き込んでいたのが茂助だと思いました。
ダメな点、微妙なとこ
個人的にはアウトレイジみたいに、シリアスさの中にクスッと笑えるシーンが散りばめてあるくらいのバランスのほうが良かったと思います。
首をぶった斬る残酷なシーンの中で、コントっぽいやり取りをする豊臣秀吉。
戦国バイオレンスとゆるい笑を対比させるコンセプトはすごく斬新なのですが、斬新すぎて全体を消化し切るまでにまだ時間がかかりそうです。
あと数回見ないと『首』の真価はわからないと思いました。
というか正直いって戦国バイオレンスをメインにしてお笑いのテイストを減らせば、日本の一般層にも世界にもさらに評価される作品ができたような気がします。これだけすごいシーンのオンパレードだったのですから。
でも北野武は自分ができること、これまでしてきたことにあぐらをかくのではなく、挑戦がしたかったのでしょう。そんな漢気が十分つたわってきます。
あとは最後の秀吉の軍勢が明智軍を滅ぼすくだりは結構あっさりしていたので、もう少し尺を伸ばして裏切りの駆け引きをじっくり見せてくれてもいいと思いました。
今作の明智光秀は真面目なぶん、主君・信長の裏切りから豹変しましたよね。
その豹変っぷり、クズっぷりをもっとたくさん見たかったです。
『グッバイ・クルエル・ワールド』なんか見てもらえるとわかりますが、一見やさしそうなクズ人間を演じさせたら西島秀俊さんの右に出るものはいません。
映画『首』考察ネタバレ
首が欲しい光秀、首なんかいらない秀吉
本作で興味深かったのが、明智光秀と豊臣秀吉の対比です。
明智光秀は、真面目に信長の首を探し回りました。
逆に秀吉は不真面目に「首なんかいらねー」と言ってのけます。
真面目な光秀と、適当な秀吉。2人のパーソナリティの違いが明暗を分けたと伝わってきました。
戦国時代の頂点にも、現代の映画界・お笑い界の頂点にも、真面目なだけでは決して届かないのかもしれません。
クズのまま散った茂助
秀吉、光秀に続く本作の第3の主人公は中村獅童さん演じる茂助でしょう。
茂助は百姓ながら、秀吉のように成り上がろうと必死になります。家族の死さえ笑いました。
しかし、最後に明智光秀の首を手に入れたものの、あっさりと殺されてしまいます。
秀吉は百姓あがりですが、同じく百姓あがりの茂助を気にも留めていなかったような印象でした。
茂助と秀吉の間にも対比構造があります。秀吉のような天下人の背後に、茂助のような人物の無数の屍が横たわっているのでしょう。そんな詩的なラストでした。
身分なんか関係なく、食うか食われるかしかありません。メッセージ性が弓矢の如く突き抜けてますね。
最後のまとめ
北野武監督の『首』は、戦国時代・本能寺の変を独特の視点で切り取った怪作でした。
一般受けするかはかなり微妙なテイストですし、興行収入も心配ですが、世界の北野の名に違わぬすごい作品であったことは間違いありません。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『首』レビュー終わり!
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