映画『アナログ』ネタバレ感想・評価,ラスト結末の考察!ビートたけし原作,あらすじ解説

  • 2024年3月7日

映画『アナログ』。二宮和也が波瑠演じるスマホを持たない女性と毎週木曜日にカフェで待ち合わせするラブロマンス。

シネマグ
ただの感動作ではなく、アナログな生き方の重要性を現代社会に突きつけるすばらしい映画です。ラストは心を切り裂かれるような展開に!

作品情報・キャスト

ネタバレなしの感想

物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

ストーリー考察

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『アナログ』作品情報・予告

公開:2023年10月6日(金曜)
上映時間1時間59分
ジャンル:ヒューマンドラマ・ラブロマンス
年齢制限:なし
監督:タカハタ秀太(『ホテル ビーナス』『鳩の撃退法』)
脚本:港岳彦(『宮本から君へ』『MOTHER マザー』『とんび』『ゴールドボーイ』『正欲』)
原作:ビートたけしの小説「アナログ」
音楽:内澤崇仁

タカハタ秀太監督は「天才・たけしの元気が出るテレビ」を担当していました。きっとその縁で本作を監督したのでしょう。

ビートたけしは2023年には映画『首』でも監督・脚本・主演・原作を務めました。才能がすごいですね。

『アナログ』キャスト

水島悟|cast 二宮和也

水島悟|cast 二宮和也

頼りないけど信念がある男を演じると唯一無二の二宮和也さん。大ヒットドラマ日曜劇場『VIVANT』でも存在感を放っていましたね。

ジャニーズはジャニー喜多川の性加害問題で解散しちゃいますが、二宮さんには今後も役者として頑張ってほしいと思いました。

最近だと映画『ラーゲリより愛を込めて』を見ましたが、個人的には本作『アナログ』のほうが好きです。

2023年10月から放送の月9『ONE DAY 聖夜のから騒ぎ』でも主演を務めています!

二宮和也の出演作レビュー↓

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美春みゆき|cast 波瑠

美春みゆき|cast 波瑠

浮世離れした携帯持たない系の美女・みゆき役は、正直いって波瑠さんだからこそ務まったと思います。それぐらい役にピッタリハマっていました。

波瑠さんの作品はアマプラのドラマ『恋に落ちたおひとりさま』も好きでしたが、今作はその演技を超えたと思います。

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キャストその他

映画アナログの全キャストと登場人物名

高木淳一(悟の親友)|cast 桐谷健太

山下良雄(悟の親友)|cast 浜野謙太

水島玲子(悟の母)|cast 高橋惠子

浅井陽子(悟の母の担当看護師)|坂井真紀

高橋俊和(悟の会社の大阪支部の人間)|宮川大輔

香津美(みゆきの姉)|cast 板谷由夏

田宮(カフェPianoのオーナー)|cast リリー・フランキー(『コットンテール』(2024))

『アナログ』あらすじ

『アナログ』あらすじ

建築デザイン会社で設計を担当している水島悟(二宮和也)は、ある日自分が設計したカフェ・ピアノでみゆき(波瑠)と出会う。

みゆきは窓のノブなど細かいところを褒めてくれた。

悟はうれしくなり、みゆきが持っているカバンのデザインを褒める。母の形見でイタリアでオーダーメイドしたものらしい。

再びカフェ・ピアノでみゆきと会った悟は、彼女を食事に誘った。

別れ際、悟が連絡先を聞こうとするとみゆきは「携帯電話を持っていない」と言う。

そこで2人は毎週木曜日の夕方にカフェ・ピアノで会うことにした。

2人は惹かれ合う。しかしみゆきは自分の素性を話そうとしない。

ある木曜日、悟はみゆきを待っていたが彼女は一向に現れなかった…。

ネタバレなし感想・海外評価

期待を軽々と超えてきました。

泣かせにくるよくある「お涙頂戴系の邦画」かと思いきや、感動だけでなくアナログな生き方を問い直してアナログの美しさを提示してくれる素晴らしい作品でした。

ビートたけしが原作だけあって、一味も二味も違います。

海での糸電話などため息が出るほど美しいシーンもたくさんあり、映像の美しさがストーリーに密接に絡み合っている点もすばらしいです。

二宮和也、波瑠、桐谷健太らキャストが織りなす雰囲気も最高です。キャスティングは完璧だと思いました。

感想を語る犬
ただの恋愛映画と思わず、一回観に行ってほしいです。
おすすめ度 95%
世界観 90%
ストーリー 86%
Filmarks 3.8/5点中
IMDb(海外レビューサイト)※随時更新 (10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新 批評家 %
一般の視聴者 %
メタスコア(Metacritic)※随時更新 (100点中)

※以下、『アナログ』のストーリーネタバレありなので注意してください!

『アナログ』ネタバレあらすじ解説

みゆきが来なくなる

悟(二宮和也)はクラシックコンサートにみゆき(波瑠)を誘う。しかし演奏を聞いていた波瑠は泣きながら途中退席してしまった。

悟は木曜日にカフェ・ピアノでみゆきを待つが、彼女はこなかった。

そんな中、悟の母が病死。

悟は数週間後の木曜日にみゆきとカフェで会う。

みゆきに誘われて悟は夜の海を見た。

後日、悟とみゆきは海で糸電話をする。悟は「ずっと一緒にいたい」と告白するが、みゆきには聞こえていないようだった。2人の仲は深まっていた。

悟がプロポーズしようと意気込んだある木曜日、みゆきは現れなかった。

その後も、みゆきはカフェに来なくなった。

まもなく悟は大阪支部に移動になる。

ラスト結末

それから1年後。

悟は親友の高木と山下から「みゆきの本名がなおみで、元有名なバイオリニストで、音楽家だった夫と死別した過去がある」と聞いておどろいた。

さらに、高木はみゆきが1年前の木曜日にタクシーで事故に遭い、病院にいると聞かされる。

悟はみゆきの姉・香津美と会い、病院へ。

みゆきは頭に一応意識があるものの、自分の意志はほとんどない状態だった。

悟は香津美からみゆきの日記を渡される。海での糸電話のとき、「私もあなたと一緒にいたい」と言っていたようだ。

悟は涙を流した。

さらに1年後。悟は事務所から独立して、会いている時間は車椅子でしゃべれないみゆきと散歩をして過ごしていた。

海辺でみゆきの手が動く。「今日は木曜だ」と言った。悟は泣いた。今日からずっと木曜日だ。

映画『アナログ』終わり

映画『アナログ』ネタバレ感想・評価

伝えられない時間が育む愛

『アナログ』の評価は90点。今年見た邦画実写の中ではNo.1でした

めちゃくちゃ感動したし、切なかった。そして美しい愛の物語でした。

LINEで相手にすぐ想いを伝えられるデジタル社会の昨今ですが、相手に想いを伝えられない時間がこんなにも尊いものだと気づかされました

二宮和也さん演じる悟と、波瑠さん演じるみゆきは毎週木曜に喫茶店で会う約束をします。

相手への想いをつのらせ、いろいろ聞きたいこともあるでしょう。でも みゆきはスマホも持っていないしメールもできないので、彼女から実際に答えを聞けるのは1週間後です。

1週間 みゆきのことを何度も考えて、彼女が自分の質問に対してどう答えるか、どんな表情だけで話してくれるかを細かに想像してその日を迎えるわけです。

みゆきについての想像が間違っているかもしれませんが、間違いなど大した問題ではありません。

悟はみゆきに対しての質問の答えを自分で想像する過程で、彼女のことを真剣に考えているはずです。つまりより深く理解しようと努めています。

LINEなどで毎日やり取りする恋愛と比較すると、相手のことを考える時間は同じでも、相手の立場に立って物事を考える時間がぜんぜん違うのです。

それだけでなく、1週間会えないと思ったら木曜に会ったときにはより真剣に相手のことを見つめるでしょう。

シネマグ
伝えられない時間、伝わらない時間、それこそが2人の愛を育む宝物なのです。

「アナログはいいよお!昔はよかったよお!」みたいな懐古の感情ゴリ押しではありません。アナログな恋愛にはこんな良さがあると、ちゃんと論理立って伝わってきます。

映画『アナログ』で描かれた愛は、時間とコミュニケーションにおいて、スマホの文面=文字やスタンプだけのやり取りとは一線を画しているのです。

原作小説は未読ですが、このストーリーを考えるビートたけしもさすがですね。感性がずば抜けているし、観察眼が常人とはぜんぜん違います。

原作も読みたくなりました。Kindleで!、じゃなくて『アナログ』の精神を受け継いで書店で本を買います。

演出も演技も素晴らしい、MVPは波瑠

まず悟(二宮和也)の親友、高木(桐谷健太)と山下良雄(浜野謙太)の関係性がめちゃくちゃいいですよね。

この3人の会話がすごく自然で、本当の親友のように見えてきます。くだらない話のさえぎり方やひやかし方が絶妙なんですよ。この3人をずっと見てられます。

二宮和也さんは終盤までずっと涙を見せないのがよかったです。

泣くだけが感情を伝える手段ではありません。涙を最後まで取っておくことで、ストーリーに起伏が生まれたと思います。

また、ヒロインみゆきを演じた波瑠さんがめちゃくちゃ良かった。元海外で活躍するバイオリニストで、携帯も持っていないミステリアスな美人を演じて不自然にならないのは彼女くらいでは?

表情も姿勢も本当に美しい、完璧なキャスティングだったと思います。二宮和也さんや桐谷健太もすごく良かったですけど、個人的なMVPは波瑠さんかな。

現実にいるかいないかギリギリのラインをついていたと思います。コーヒーの飲み方や細やかにしか変わらない表情も、すべてがストーリーにマッチしていました(監督の力も多分にあるのでしょうけど)。

あとは、車椅子に乗ったみゆき(なおみ)が悟に押されて散歩しているときに、教会のコーラス隊にくる前あたりでみゆきの頭の中に悟の声がどう響いているかを演出しているシーンも良かった。演出が細かいですよね。

欲をいえば交通事故で脳障害が残ってしまった後のみゆきをもう少しリアルに描いて欲しかった気もします。化粧とかは薄めなんですけど、波瑠さんの顔が美しすぎて、意志がない状態で1年経過していたという現実味はなかったです。

そしてリリー・フランキーは相変わらずカフェのマスター役がよく似合う。基本的に表情は変わらないですし余計なことは一切しゃべらないんですけど、それでも彼を見ているとさまざまな想いが伝わってきます。すごい技術ですよね。

映画『アナログ』考察(ネタバレ)

時間を超えた糸電話

映画『アナログ』糸電話のシーン

悟とみゆきが海で糸電話をするシーン。長く伸びた糸が水平線に重なります。

このとき悟はずっと一緒に生きていきたいとみゆきに告白しました。この言葉はみゆきに聞こえていましたが、みゆきの「私も一緒に生きていきたい」という返事の声は悟には聞こえていません。

悟は1年後にみゆきの日記をみたときに、彼女が糸電話で返事していたことをはじめて知りました。

一連のシーンは、「想いが伝わるのに1年かかった」といえますし、ちょっと詩的に解釈するなら「糸電話の声が水平線をつたって地球を一周し、時間を超えて伝わった」と考えることもできます。

海での糸電話が映像としてすごく美しかっただけでなく、ストーリーのコンセプトにも密接に絡み合っていると思いました。

みゆきはバイオリンを触るとそのときにしか出せない音が鳴ることが奇跡だと言っていましたが、バイオリンと糸電話にも通底するものがあります。美しいリンクですね。

残酷な物語

『アナログ』の舞台はほとんどが喫茶店で、それ以外は飲み屋、会社、海、病院などしか出てきません。

しかし物語としてはかなり残酷でした。

天才バイオリニストだった美春みゆきは夫・ミハイルと死別を経て、音楽を捨てて日本に戻ってきていたとわかります。

悟に言った美春みゆきは偽名で、美春=ミハイルだということも判明。死んだ夫の影をバリバリ引きずっています。

お互いに愛し合っていたなら、死別なんて耐えられないですよね。

みゆきが悟とのデートでクラッシックコンサートのピアニストを見て感情が高まって泣いてしまい去ったことから、ミハイルがピアニストだったとわかります。

人生の一部である音楽を最愛の人と演奏していた。しかし最愛の人が病死したことでバイオリンへの情熱まで心の棺(ひつぎ)にしまわないと精神が壊れそうだった。そんな心情だったのだと思います。

そんなみゆきは、悟のおかげで心の棺からバイオリンを出すことができました

しかしここで交通事故。みゆきは半身不随で、意識はあるけど自分の意志はほとんど喪失した状態になります。

悪い意味ではなく、展開が残酷すぎて見ていてつらかったです。

みゆきからしたら悟に自分のこんな姿を見せたくないでしょうし、

悟の人生を縛るみゆきは、みゆき自身にとってのバイオリンのような存在なのかもしれません。

みゆきは自分にとってのバイオリンのような存在になりたくなかったでしょう。

映画なのでみゆきの意志が戻って少し手を動かせるようになって終わりましたが、一生コミュニケーションが取れない状態のままだったら…など恐ろしいことを考えてしまいました。

深淵を見つめて描かれた物語だと思います。

最後のまとめ

映画『アナログ』は、ビートたけしによるすばらしい物語が最高のキャストで実写化された美しい愛の物語でした。

相手にすぐに伝わることがすべてじゃない。伝えられない時間によって蓄積されていく想いが確かにある!そんなメッセージが伝わってきました。

昨今の邦画は“その場で全部セリフで説明しないといけないルール”的な奥ゆかしさのない空気感に支配されていましたが、『アナログ』はそれらと一線を画す作品でした。

日本アカデミー賞はとってもいいと思います。また、『ドライブ・マイ・カー』のような文学性・芸術性を前面に押し出した作品ではないですが、海外の人にも見てもらいたいと思いました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『アナログ』レビュー終わり!

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