清水崇監督の映画『忌怪島/きかいじま』!南の島で呪いと仮想空間(メタバースが融合する!)
作品情報・キャスト
あらすじ
考察:ラストシーンの意味・エンドロール・仮想空間ループ説!
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
小説版で判明した事実や小ネタ!
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
映画『忌怪島/きかいじま』作品情報・予告
制作国:日本
英題:『IMMERSION(没入)』
上映時間:109分
ジャンル:ジャパニーズホラー・SF
年齢制限:PG12(小学生以下は保護者の助言が必要)
監督:清水崇
脚本:清水崇/いながききよたか
原作:なし、映画オリジナル、ノベライズ小説あり
撮影:伊集守忠
清水崇 監督
『リング』の中田秀夫監督と並んでジャパニーズホラーブームを巻き起こした鬼才。
映画『呪怨』シリーズはサム・ライミのプロデュースでハリウッドでセルフリメイクまでされました。
2020年代は犬鳴村・樹海村・牛首村の恐怖の村シリーズもまずまずの成功をおさめ、本作からは恐怖の島シリーズへと突入!
2023年には『ミンナのウタ』も公開され、2024年には続編『あの子はだあれ?』も公開。
新時代のJホラー『みなに幸あれ』をプロデュース!
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映画『忌怪島/きかいじま』キャスト相関図
©︎「忌怪島/きかいじま」製作委員会
主人公・友彦役を務めるジャニーズ・なにわ男子の西畑大吾さんは、ギャグ映画『KAPPEI カッペイ』(2022)にも出演していましたね。
秋奈役の大谷凜香さんは清水崇監督の『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』でもYoutuberアキナ(アッキーナ)として出演。それぞれの作品のアキナは別人の設定ですが、こりずに呪いに巻き込まれます。作品を超えて登場するキャラクターです。
アキナは本作でも呪われるのか?
相関図以外の人物では恐怖の存在として、赤い女=イマジョを祷(いのり)キララさんが務めます。
※以下、ホラー映画『忌怪島/きかいじま』のストーリーネタバレありなので注意してください!
忌怪島/きかいじま 考察(ネタバレ)
ラストシーンの意味:仮想空間
ラストは主人公・友彦と環がフェリーに乗って去る結末。
環はフェリーから燃えたはずの鳥居がまだ海にあるのを眺めていました。
そして友彦の腕には004、環の腕にはVISITORという文字が浮かび上がっています。イマジョが現れた際の鎖を引きずる音も聞こえていました。
環が友彦を仮想空間から救い出したと見せかけて、結局は仮想空間から抜け出せてなかった…友彦と環の魂は仮想空間から出られなくなったのでしょう。
フェリーで島を脱出したのは、イマジョの呪いから逃れる意味があるのだと思います。呪いから逃れて二人だけの世界で生きていく決意ともとれました。
ただ小説版では結局フェリーが島に戻り、呪い自体が解けていない終幕です。
友彦と環は冒頭で島へ向かうフェリーでも会っているので、最初にループしてしまったと考えることもできます。
エンドロールで海に沈むリン
エンドロールで高校生のリンが三線(サンシン)を弾いて歌った後、海の中に入って鳥居のところで沈んでいきました。
未央たちが磔台(鳥居)を現実で燃やし、友彦が仮想空間でイマジョを海に封じたはずでしたが、結局はイマジョの呪いは解けておらず、島の人たちに呪いがふりかかってしまったのでしょう。
シゲさんと親しかったリンは呪いの影響を受けやすかったのかもしれません。小説だとリンがユタの後継者として指名されていたこともわかります。
(ちなみに小説だとトキや島の人たちもたくさん死んでしまいます。)
なぜイマジョの呪いが解けなかったのか?は次で説明します。
仮想空間ループ説:ずっとメタバースの中
友彦たちが環の父・哲夫の脳波データから彼が死ぬ直前に見た映像を復元した際に、仮想空間(メタバース)の画面の中にまた画面が映る、合わせ鏡のように連なっているシーンがありました。
このシーンから、仮想空間の中に仮想空間が無限に生成された可能性が考えられます。
友彦は物語のある地点から仮想空間にいたのかもしれません。
もしかすると、友彦は島に到着してVRゴーグルを装着し、イマジョ姿のチーフ・井出を見たときからずっと仮想空間の中にいたのかも。
友彦がバスから降りて環とユタの家へ行くシーンもなぜか島民がまったくいないなど不自然な描写でした。物語の序盤から仮想空間にいた可能性もあるでしょう。
また友彦だけでなく、未央たちもみんな仮想空間にいたとも考えられます。
シゲさんが飛ばした折り鶴が友彦がいる隔絶されたラボにまで飛んできた物理的にありえない点からも、みんなが現実と思っている地点がすでに仮想空間である可能性が浮かんできます。
磔台を現実と仮想空間で破壊したにもかかわらずイマジョの呪いが解き放たれた説明もつきますね。
そしてこの仮想空間のループ説なら、友彦と環の結末や、リンが呪いで海に沈んでいったことに納得ができるのです。
友彦の場合は仮想空間から環に助けられたと思いきや、現実だと思っていた場所が仮想空間で、抜け出せていないという解釈。
そもそも未央たちは仮想空間の鳥居を燃やしただけで現実の鳥居は残っており、イマジョの呪いが島に解き放たれてリンたちまで犠牲になったと考えることができます。
映画のほとんどが仮想空間の出来事だということです。
ちょっと飛躍した考察になりますが、海でイマジョに引きずり込まれたらその世界では死んでもう1段階上の仮想空間に連れて行かれるのかもしれませんね。
全体としてシンプルに「仮想空間に現れたイマジョが現実世界に解き放たれてしまった」と考えることもできますが、清水崇監督はそんな単純な発想で考えていない気がします。
清水崇監督は『呪怨』や恐怖の村シリーズもそうですが、呪いが消えずに無限ループしていく結末のストーリーが多いですよね。物語の構造がねじれているものが多い印象です。
本作は仮想空間の技術が発達することによって、自分が仮想空間にいるのか現実にいるのかわからない恐怖をイマジョというカタチでビジュアル化したのだと思いました。
メタバース自体があの世と区別できないというアイデアも興味深かったです。
忌怪島は実在?ロケ地、イマジョ伝説について
『忌怪島』のロケ地は鹿児島県の奄美大島と加計呂麻島(かけろまじま)。
忌怪島(きかいじま)は実在しませんが、ロケ地・奄美大島群の1つに漢字違いの喜界島(きかいじま)があるので名前の参考にしたのかもしれません。漢字を変えれば奇怪島にもなりますしね。
また奄美大島には本作に登場する赤い女・イマジョ(今女)についての逸話もあります。
イマジョの話を簡単に説明すると奴隷身分の女性が主人の奥さんや村人たちに惨殺され、そのあと村人たちに呪いがかかったという内容。本作でもこの話が出てきます。
映画『忌怪島』ネタバレあらすじ解説
赤い女・イマジョの呪い
井出文子チーフはバグを起こした被験者・園田哲夫の視覚データをモニタリングしていた。井出は園田のリンクがいきなり切れないように彼が見ている仮想現実の中に自分も入る。
園田は井出を見てひどく怯えた。2人とも仮想空間の中で海中に沈んだ(現実では園田は自宅で溺死。井出は変死)。
島にやってきてチームに加わった友彦は、自分のデータとシンセカイの研究データを組み合わせて潮の香りなど嗅覚まで再現した仮想世界を作りあげ、チームメンバーを驚かせた。
仮想空間の中には海のそばに古民家があった。急にみんなが消えて天気が悪くなる。ボロボロの赤いドレスを着た女性が現れ、友彦に襲いかかる。
友彦は3月14日に井出チーフが研究室で血を流して死んだこと。全く同じ時刻に被験者だった園田哲夫という男性も海のそばの古民家で死亡したことを聞いて驚いた。
友彦は、役所で死亡した父・哲夫の遺骨を取りにきた環と出会う。帰りのバスがエンストし、友彦と環は途中で降ろされた。不思議と周囲に人の気配がまったくない。2人は別々の方向に歩いていくが、知らないうちにユタ・南トキの家の前に来ていてバッタリ会った。
2人は招かれるようにトキの家の中へ。トキは環に「お前の父は水で死んだ」と言う。さらに友彦に向かって「こっちも水で死んだ」と告げた。
友彦は哲夫の脳のデータをインストールして彼が死ぬ前に見ていた映像を再現。左目がつぶれている赤い女が映っていた。
シンセカイチームはその謎を解くため、ユタのトキと環を対面させてトキの脳波データをとることに。トキの脳波を解析することで、自分たちも超常現象を理解できると考えたのだ。その実験中に環は父の霊を見た。父は「島を出ろ」とつぶやいている。父の遺骨を入れた箱が水浸しになり、トキの腹から長い腕が飛び出してきた。環はパニックになった。
役所勤めの肥後は秋奈と酒を飲んだ帰りに長い腕の女性に襲われて死亡。
夜中にトキの脳のデータのPC上の再現が完了。チームメンバーはいなかったが酔っ払った北島が研究室にやってきた。
北島はトキのデータをインストールしたVRゴーグルを被った。
翌日、研究室に来た友彦や環たちは床が水浸しなのを見て驚く。北島の姿がなかった。監視カメラの映像を見ると、北島は海に浸かった鳥居で赤い女に引きずり込まれたようだ。
友彦たちはどうしてよいかわからずユタのトキに話を聞きに行く。
トキは赤い女をイマジョと呼んだ。昔、身分が低い女性が男性の慰み者にされた挙句、正妻の怒りをかって酷い苦痛を与えられ、鳥居に縛り付けられて海に沈められたという。
その後、境島ではイマジョの呪いによって気が狂って死ぬ人が急増したらしい。
さらにシンセカイチームの世話をしてくれている老人・シゲさんの母親も昔・イマジョに取り憑かれて何人もの男を家に連れ込むようになり、母親は行方不明。父親は自殺。シゲさんは村八分にされたと話す。
トキは、島とまったく同じ地形のあの世があり、海にある鳥居を破壊してあの世にイマジョを閉じ込めれば呪いを封じられると言った。
友彦は研究室で仮想空間に入って海のそばへ。鳥居の場所でイマジョに引きずり込まれ、アバターを破壊された。
山本は海に入り現実の鳥居を破壊しようとする。しかしイマジョに襲われて死亡。
研究室にシゲさんが入ってきて「イマジョを解き放て!」と言って、鉈(ナタ)で機器を破壊して去っていった。
シゲさんは自分の家に親しい高校生・リンを閉じ込めた。彼女にまで呪いが及ばないためだ。
部屋を見たリンは、イマジョの掛け軸に祈ったあとがあるのを見て驚いた。環がやってきてリンを見つける。掛け軸が取れて壁が崩れ、死体(シゲの母)が出てきたのを見る。
友彦はVRでシゲさんの記憶を見て、シゲさんがイマジョに取り憑かれた母親を殺していたと知って驚いた。
シゲさんは丘の上から折り鶴を飛ばし、倒れた。
ラスト結末
未央や葵が海で山本と北島の死体を発見。岸に打ち上げられた鳥居にガソリンをかけて燃やした。
仮想空間で水中に引きずり込まれそうだった友彦は、環の呼びかけで現実に戻って来ることができた。
友彦と環はフェリーで島を出る。環が島を見ると燃やしたはずの鳥居がまだあった。鎖の音が聞こえる。イマジョの呪いはまだ消えていないようだ。
エンドロールの映像
高校生のリンはシゲさんが歌っていた呪いの歌を歌い、鳥居が浸かっている海に沈んでいった。
映画『忌怪島/きかいじま』終わり
小説『忌怪島』ネタバレ:細かい伏線の解説
シゲルはイマジョの血筋
シゲル(シゲさん)の母親がイマジョに取り憑かれていることは映画でもわかりました。結論から言うとシゲルの母(シゲルも)はイマジョの血筋です。
小説では、イマジョは磔にされるまえに男たちに慰み者にされて2人の子供(男女)を産んでいた(1人は身分の低いイマジョを所有していた主(あるじ)の子。もう1人は呪いをかけられた子)と書かれています。
本土に売り飛ばされた2人の子供(男女)が大人になって島に帰ってきて、異父きょうだいだと知らずに結婚した血筋がシゲルの母親なのです。
友彦と井出チーフの関係
井出チーフは終盤の仮想現実内で友彦がイマジョに引きずり込まれそうなときに助けてくれます(左目が潰れた姿で)。
このときに「友彦くんならできる…大きくなったね」と言っていたので、友彦が小さい頃に近所に住んでいた中学生のお姉さんが井出チーフだと考えられます。
(ただ友彦は中盤で井出チーフと環はあのお姉さんに容姿でなく雰囲気が似ているとも言っていたので、井出チーフ=お姉さんと完全に確定はできないです。)
近所に住んでいたお姉さんは一家で突然姿を消したようです。
また、井出チーフは境島を研究場所にすると強引に決めたらしいので、彼女もイマジョの血筋の可能性があります。
結局、井出チーフ=イマジョではなかったですが、血は繋がっていたのかもしれません。
その他の小ネタ
環の父・哲夫もイマジョの血筋。もちろん環も。
秋奈は赤い服を来て島を出た→イマジョに取り憑かれてるっぽい。
山本春樹は未央と葵りょうほうに二股をかけていた。さらに春樹は他社からのスパイで、シンセカイシミュレーションの技術を売ろうとしていた。
映画『忌怪島/きかいじま』ネタバレ感想・評価レビュー
ホラーとして面白い!というよりは、命の終わりも結末もない仮想空間の怖さ!を表現したような多層的な作品でした。
「あの世とメタバースのどちらも現実世界のコピー的な世界」だと共通点を持たせたことで、仮想空間があの世につながることに説得力がありました。
島全体をスキャンしてメタバース(仮想空間)をつくり、そこが惨劇の舞台になるひねりの効いたアイデア、最新技術と奄美大島の美しい風景の対比など構図的なおもしろさが光ります。
脳をデータでスキャンして再現する詳細や、赤い女・イマジョが現実にもメタバースにも現れる設定など、よくわからない点やツッコミどころは多かったです。しかし、よくわからない部分は呪いということで納得できます。全体的に、いい具合にフワッと表現できていたと思いました。
呪いが人間の技術(今作の場合は仮想空間)で増幅・拡散されてしまうという物語は『リング』の系譜ですね。呪いのデジタル化は『リング』を現代風にアップデートしたようなストーリーでいろいろ考えさせられました。
初回鑑賞特典のQRコードを読み取ると赤い女・イマジョのギョロ目があり、「スクショしてたくさんの人に見せないと3日以内に呪いがふりかかる」と書いてあります。
今作はいろいろ自分で考察するのが面白いタイプの作品でした。
いっぽう、めちゃくちゃ怖いかというとそうでもなく…。赤い女・イマジョが迫ってくるところがちょっと怖いくらいですかね。
ホラー映画を見慣れている人には物足りないかもしれません。
ホラーやエンタメとしてはそこそこだった印象です。
コンセプトがおもしろいタイプのSFホラーという点ではAI人形が暴走する『ミーガン』と通底する部分があります。
おすすめ度 | 75% |
世界観・コンセプト | 88% |
ストーリー | 70% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新 | 批評家 % 一般の視聴者 % |
メタスコア(Metacritic)※随時更新 | (100点中) |
最後のまとめ
邦画『忌怪島/きかいじま』は、仮想空間と呪いが融合する時代にマッチした興味深いホラーでした。
いっぽうでホラー映画としての怖さやおもしろさは普通どまり。
ここまで読んでいただきありがとうございます。ホラー映画『忌怪島/きかいじま』レビュー終わり!
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