ネットフリックス映画『群がり』は、シングルマザーがイナゴに血を与え、徐々に狂気に染まっていくフランスのサイコホラー!
狂気的かつ予想不可なストーリーはとても面白いのですが、かなり衝撃的で虫グロ注意!
忠告しておきますが、虫が苦手な人は絶対に本作を見ない方がいいです。
虫がそんなに苦手じゃない筆者でも気持ち悪さに打ちのめされました(笑)。
ネタバレあらすじ解説、ぶっちゃけ感想と評価、抽象的な視点やゾッとしたグロシーンを考察していきます!
序盤はわりと淡々と進んでいくけど、 終盤になると見たことを後悔するトラウマ級のゾクゾク感が味わえます。
Netflix映画『群がり』キャスト・作品情報
公開・制作国:2021年8月6日 Netflix・フランス
監督:ジュスト・フィリッポ
脚本:フランク・ビクトール
原題:『La nuée』英題『The Swarm』
主演:スリアン・ブラヒム/母ヴィルジニー役
出演:マリー・ナルボンヌ/姉ローラ役
出演:ラファエル・ロマン/弟ガストン役
出演:ソフィアン・カーメ/カリム役
ヴィルジニー/スリアン・ブラヒム
ヴィルジニーは夫を亡くし、イナゴの養殖で生計を立てているシングルマザー。
取引先が値段を下げてくるため、いつもイライラしています。
女優スリアン・ブラヒムはNetflixのドラマシリーズ『不感地帯』でも知られています。
ローラ/マリー・ナルボンヌ
ローラはヴィルジニーの娘で高校生。
母がイナゴの養殖をしているせいで学校で笑われていますが、負けん気の強さがあり男子に殴りかかったりします。
引っ越しして母には他の職業についてほしいと考えているようです。
ガストン/ラファエル・ロマン
ガストンはヴィルジニーの息子でローラの弟。
イナゴが嫌いではなく、部屋で自分用のものを数匹飼っています。
飼っているヤギのユゲットを友達のように大切にしています。
『群がり』感想・評価
Netflix映画『群がり』の評価は86点!
最初はわりとゆっくりなテンポで進んでいきますが、中盤から後半にかけての怒涛のイナゴラッシュが味わえます。
序盤は、イナゴってよく見るとキモいな〜というほのぼの雰囲気ですが、終盤はこれでもかというほど予想外の展開とイナゴグロシーンの連続。
ストーリーの完成度も高くNetflix『真夜中のミサ』『キングダムアシンの物語』に並ぶような倫理崩壊でドロドロの内容。
特に、娘ローラがハウスに入って母ヴィルジニーがイナゴに自分を喰わせているのを発見してしまう場面は、近代ホラー映画の中でも名シーンに数えられるでしょう。
イナゴで表現できる恐怖を100%表現し尽くした印象です。
なぜ母親がこんな奇怪な行動に出るのかという点についても、母ヴィルジニーを演じたスリアン・ブラヒムのヒステリックな演技でそれほど不自然に映りません。
登場人物のキャラも上手くマッチしていました。
個人的に『群がり』はアリ・アスター監督の『へレディタリー継承』や『ミッドサマー』などに並ぶと思います。
次の項目では、『群がり』の完成度が高かった理由を詳しく考察していきます。
授乳のメタファー
映画『群がり』は母・ヴィルジニーの狂気がとても印象に残りました。
イナゴに自分の血を吸わせるのが、子供に母乳を与えることのメタファーのようになっているのがその理由でしょう。
イナゴ養殖で生計を立て、子供を食わせていたヴィルジニー。
頭がおかしくなっていく過程でイナゴ養殖と子育てとが意識下で直結してしまい、自分の体をイナゴに食わせる狂気に走ったのだと思います。
女性の狂気ではなく、自分の身を犠牲にしても子供を育てようとする母の狂気が見えたからこそ怖さが倍増したのでしょう。
また授乳のメタファーと考えれば、ローラが母ヴィルジニーが自らをイナゴに喰わせているシーンについても、母が狂った恐怖だけでなくイナゴに母を取られてしまった子供の失望感もプラスされ、より奥深い構造になっているのもわかります。
母の無償の愛が蝗害(イナゴによる農作物危機)で世界を震撼させるイナゴとシンクロし、新たな恐怖を生み出しました。
最近のNetflixホラーでも母子愛をテーマにした『ブラッドレッドスカイ』がありましたが、それと比べても物語のクオリティは高いと思います。
サスペンスドラマ『忽然と』もそうでしたが、ネトフリ配信のフランス作品は完成度が高いものが多い印象です。
『群がり』は設定・ストーリー構造からして巧さが際立っているといえるでしょう。
トラウマ級グロシーンに震えた
多くの人にとって血+大量の虫は最悪の組み合わせでしょう。
『ウォーキング・デッド』とかでグロい描写には慣れているつもりでしたが甘かったです。違う種類のゾクゾクです。
ヴィルジニーが腕をイナゴに食わせて、その後でボロボロの皮膚からイナゴの足をピンセットで取るシーンは気持ち悪かったですね。
今文章を書いているだけで冷や汗が止まりません…。
あとは飼っていた羊のユゲットがイナゴの大群に襲われて喰われていたシーンも最悪でした。
血だらけの羊に群がる大量のイナゴ…。
Netflix『群がり』は、個人的にグロカルト映画『イレイザーヘッド』より、数倍気持ち悪かったです。
映画『群がり』ネタバレあらすじ解説
シングルマザーのヴィルジニーは、食用イナゴ(粉末用)の養殖で生計を立てていました。
畑にイナゴ養殖ハウスを建て、その中で育てていましたが、卵を産む量が減り十分な量が取れません。
高校生の娘・ローラと小学生の息子・ガストンと暮らしていますが、取引での値段を下げられ途方に暮れて…。
ヴィルジニーは、亡き夫・ニコがいるときからの友人でワインを作っている男性・カリムにお金を借りました。
娘のローラは母がイナゴを育てていることで周囲にからかわれ、男子生徒と殴り合いの喧嘩をします。
カリムが他の業者を紹介してくれましたが、値段があまりに安かったためヴィルジニーはその業者の男性に八つ当たりしました。
イライラしたヴィルジニーは、イナゴ養殖ハウスの中に入り中をめちゃくちゃにします。しかしそのはずみで転倒して気絶してしまいました。
起きると、イナゴが腕にできた傷から出ている血を舐めています。
数日後、イナゴが増えていることに気づいたヴィルジニーは、手の包帯を取ってイナゴがいるビニールの中に入れました。
イナゴは傷口を食べ始めますが、ヴィルジニーは耐えます。また数日後、イナゴはすごい勢いで増えていました。
ヴィルジニーは看護師だった時のコネで、輸血用の血液を30リットル買ってゼリー状にしてイナゴに与え始めます。
イナゴは爆発的に数を増やし、収入がどんどん増えていきました。
ヴィルジニーはイナゴハウスを増やします。
ローラはイナゴ業がまだまだ続くことにイライラして、ハウスを1つ壊してしまいました。
イナゴの群れが飛び出し、ガストンが飼っていたヤギ・ユゲットが襲われて逃げます。
ガストンが探してもユゲットは見つかりません。
ヴィルジニーは離れた場所で、血だらけで倒れてイナゴに喰われているユゲットを見つけますが、そのままエサとしてハウスに入れ、息子には「ヤギは見つからなかった」と言います。
イナゴはどんどん増殖していく中、血液を買うことができなくなってしまいました。
ヴィルジニーは焦り、自分の血を抜いてイナゴに与え始めます。
カリムといい関係になりそうでしたが、体の傷やハウスの秘密が知られるのを恐れて突き放しました。
夜、ヴィルジニーは隣に住む老人・デュビビエの飼い犬を見つけ、イナゴハウスに入れて餌にしました。
さらに、他の農場から家畜を盗んで殺し、イナゴに与えます。
ある日、ガストンはサマーキャンプに行きました。
弟を送って家に帰ったローラですが、母がいません。
ハウスの中をのぞくと、裸でうずくまって自分の体を喰わせている母ヴィルジニーの姿がありました。
ローラは恐怖で家の中に走ります。カリムに「母がおかしい」とメールして助けを求めました。
やってきたカリムはヴィルジニーとローラを自分の家に連れていきます。
しかしヴィルジニーが帰ると言って聞かないので送りました。
カリムは家に帰らずに、ヴィルジニーの家の周囲を見張ります。
カリムが車を降りてハウスの中に入ってみると、イナゴの大群に喰われて死んでいる老人・デュビビエ(犬を探していてハウスに入って喰われた)を発見。
パニックになったカリムは、ハウスにガソリンを撒いて火をつけます。しかしイナゴの大群が焼けずに外に飛び出してきました。
カリムは家に逃げ込みますが、イナゴの大群が窓を割って侵入し、喰われてしまいました。
ローラは走って湖まで逃げます。湖の中に入ってボートをひっくり返して身を守ろうとしますが、イナゴの大群がボートを攻撃。
ヴィルジニーがやってきて自らの手をナイフで切り、血を顔に塗って湖に入ります。
イナゴの大群はヴィルジニーから出る血の臭いを目指して突っ込み、そのまま溺れて死んでいきました。
ローラは大声で母を呼びます。生きていたヴィルジニーが浮かんできました。
2人は抱き合います。
Netflix映画『群がり』終わり!
ストーリーの疑問点を考察
映画『群がり』で1番疑問だったのは「普通に肉を買って与えれば良くない?」という点。
輸血用の血を与えていたので、新鮮な血や肉でなければいけない縛りはないでしょう。
肉だけじゃダメであくまで血が必要だとしても、家畜業者から血を買うことはできそうです。
すぐに餌を与えないとイナゴが餓死してしまうのかもしれませんが、その間はつなぎで別の餌を与えればいいと思います。
まあ、母・ヴィルジニーは頭がおかしくて正常な判断ができなかったということですね。
最初にイナゴに喰われた時、精神も蝕まれたのでしょう。
最後まとめ
Netflix『群がり』は、恐怖のアイデアに富んだイナゴのフルコース料理のような傑作ホラーといえるでしょう。
毛並みは違いますが同時期公開のネトフリホラー『フィアーストリートシリーズ』と同じくらい楽しめました。
蝗害はアフリカなどの多くの地域で今なお問題になっています。
現状ではイナゴの大群にn人が襲われることはないようですが、イナゴが血の味を知って人間に襲いかかる日も近いでしょう(冗談です)。
それはないとしても、見終わったあとは確実にイナゴに対しての距離を置きたくなり、サイコホラーとして成功しているといえます。
映画『群がり』感想・評価・考察レビュー終わり。