映画『ミッドサマー』は、『ヘレディタリー/継承』の アリ・アスター監督による、新感覚サスペンスホラー。
この映画は批評家は絶賛しているが、一般の視聴者は支持していないというちぐはぐな評価となった。
見ていてたいして怖くないし、何をテーマにしているか意味不明な人も多かったのではないか。
この記事では『ミッドサマー』の登場人物/キャスト、あらすじネタバレを踏まえて、本質的なテーマやメッセーを考察してみたい。

ミッドサマー考察/最悪なラストの意味(ネタバレ)
『主人公ダニーがボーイフレンドのクリスチャンを生贄にすると決め、火刑の儀式が行われる』というミッドサマーのラスト結末。物足りなさや意味不明な感想を抱いた人は多いのではないか。
オチこれで終わり?とガッカリしたかもしれない。
このミッドサマーという映画は、テーマをしっかりつかみ取らないと、面白味が薄いキレイなホラー映画で終わってしまう。テーマをハッキリさせておこう。
1つの解釈だが『ミッドサマー』のテーマは、“精神病質者にとっての希望”だろう。
絶望を背負い、トラウマで頭がおかしくなって現実世界では生きられないようなダニーのような人物にとって、ミッドサマーに出てくる村・コミューンこそが、最高に幸せな場所ではなのかもしれない。
悲しいことに、精神病者であるダニーが楽しく暮らせて、かつ受け入れてくれる集団は、まともな人間から見れば狂気そのもの。
ミッドサマーは、狂人がどうすれば幸せに生きられるか?という“タブー”に1つの答えを出したちょっと危険思想な映画なのだ。
コミューンの狂気がダニーの癒しとなった。彼女は現実へ戻らず、ここでの暮らしを選ぶだろう。
エミリー・ブラントの『クワイエットプレイス破られた沈黙』のように、ジャンプスケアでびびらすタイプのホラー映画ではないが、コンセプトは素晴らしいといえるだろう。
映画『ミッドサマー』特徴解説(ネタバレ)
美しく明るいホラー
ひと言でいうと、“美しく明るいホラー”だったという点が挙げられる。
従来のホラー映画では暗い画面が続くことが多い。
一方。ミッドサマーは冒頭以外ずっと明るいシーンだ。
グロテスクな描写についてはどうか?
人の身体が潰れるよなグロいシーンもあるのだが、スウェーデンの牧歌的な景色や花で彩られることで、奇妙な美しさを添えて表現している。
そう、ミッドサマーは、常識を覆した明るく美しいホラー映画なのだ。
(ちなみにミッドサマーの外のテーブルで食事をするシーンをオマージュしたNetflix映画『クラッシック・ホラー・ストーリー』なども出てきました。)
ラストは閉塞でなく解放を描いた
恐怖に追い詰められて、どんどん逃げ場がなくなっていく!というのが、ホラー映画のセオリーだ。
しかしミッドサマーは、この論理を覆している。
なぜなら主人公ダニー自身は、カルト集団にどんどん打ち解け受け入れられ、ある種の希望を持ってラストを迎えるからだ。
主人公ダニー視点で考えると、どんどん心が解放されていくのがわかるだろう。
ミッドサマーは賛否両論となっているが、常識を覆したホラーであることは確かで、監督のアリ・アスターもここを一番のウリにしたかったのだと推測できる。
映画『ミッドサマー』ネタバレ感想・酷評
ありふれたプロット
閉鎖的な集団に外部の若者がとらわれ、殺されていく。
このプロットはありふれており既視感がすごい。
ニコラス・ケイジ主演でリメイクした、『ウィッカーマン』などが代表的(それをモチーフにしたのだろう)。
集団の設定が面白ければ成立するのだが、ミッドサマーで特に興味深い点はなかった。
衣装や人々の暮らしぶりが美しくオリジナリティもそれなりにあるが、胸おどる感じまでにはならなかった。
強いて言えば、女性が好きな男性の食べ物に自分の隠毛を混入するという生々しさくらいだろうか(ただこれも良く聞く話)。
画期的なアイデアやテーマを除けば、ミッドサマーは退屈な映画かもしれない。
ホルガ村の慣習に違和感がある
「ホルガ村では、飲み物を飲む前に、グラスを対面する相手の肩へ一度くっつける」など、いくつもの慣習があるが、違和感があった。
この人たち、普段はこんなことしてないだろうな、と感じてしまうようなリアリティのない動作が多かったからだ。
演者がその所作に慣れていないのか、慣習の設定自体がまずいのかはわからないが、少し気になった。
木の建物がキレイすぎる
ミッドサマーのスウェーデンのホルガ村の木造の建物がキレイすぎるのが気になった。
大草原の中にあるわけだから、壁が土で薄汚れているのが普通ではないか?セット感満載だ。
建物に代表されるように、セットにリアリティがなかったのが残念だ。
リアリティのなさで、非日常的な違和感を表現したかったのかもしれないが、そう考えたとしても、上手く機能していない。
ミッドサマーの独自解釈
ミッドサマーのストーリーを独自解釈してみよう。
スウェーデンのホルガ村での出来事はすべて、ドラッグでラリったダニーの幻想!と考えても面白いのではないか。
ダニーは村に入る前に、 マジックマッシュルームで幻想と真実の区別がつかなくなっている。
ホルガ村の儀式もその延長上で、すべてダニーの頭の中の映像だと言えないだろうか。あくまで1つの解釈である。
そして新たな解釈をしておいてなんだけど、この物語はダニーの心理変化にスポットが当たっているので、真実か幻想かというのは重要ではない。
幻想であっても真実であっても大きな違いがないのも、ミッドサマーの大きな特徴で、いろいろな解釈が楽しめるという点は素晴らしいと思う。
映画『ミッドサマー』作品情報・キャスト
基本情報・キャスト
監督・脚本/アリ・アスター
アリ・アスターは2018年公開のホラー映画『ヘレディタリー/継承』で一斉を風靡した若手の映画監督。
ダニー・アーダー/フローレンス・ピュー
ダニーはパニック障害を患う女子大生。心理学を専攻している。妹は双極性障害。
女優のフローレンス・ピューは、2019年の映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』演技力を評価された若手実力派!
リーアム・ニーソンの映画『トレインミッション』や、マーベル『 ブラックウィドウ』にも出演。
クリスチャン・ヒューズ/ジャック・レイナー
クリスチャンはダニーの彼氏。すぐにパニックになるダニーを受け止めきれず、別れを考えている。文化人類学専攻。
俳優ジャック・レイナーは、『トランスフォーマー/ロストエイジ』への出演で有名。
マーク/ウィル・ポールター
マークはクリスチャンの大学の友人。楽観的でドラッグや女遊びのことしか考えていないアホ。
俳優ウィル・ポーター『メイズ・ランナー』などで有名。
ジョシュ
クリスチャンの友だち。文化人類学専攻で、スウェーデンのホルガ村を熱心に研究する。
ペレ
スウェーデンのホルガ村のコミューン(共同体)出身で、クリスチャンの大学の留学生。
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