Netflixホラー映画『ノー・ウェイ・アウト』(原題:No One Gets Out Alive)は、メキシコから不法移民した女性がボロアパートで霊や摩訶不思議な出来事に遭遇する不条理ホラー。
ストーリーネタバレあらすじ、伏線・蛾や石の箱の意味など物語の深掘り考察、ぶっちゃけ感想・評価をしていきます!
映画『ノー・ウェイ・アウト』キャスト・作品情報
監督:サンティアゴ・メンギーニ
脚本:ジョン・クローカー/フェルナンダ・コッペル
原作:アダム・ネヴィル著者『No One Gets Out Alive』
アンバー/クリスティーナ・ロドロ
アンバー・クルーズはメキシコからアメリカのオハイオ州・クリーブランドに不法移民してきた若い女性。
母親が病死し、それを機にアメリカにやってきました。服飾工場でミシン仕上げの仕事をしています。
女優クリスティーナ・ロドロは、Netflixドラマ『エル・ヴァトー』や、アマプラの『トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング』への出演で知られています。
レッド/マーク・メンチャカ
レッドは古い屋敷を貸している管理人。
女性に冷たい嫌な感じの中年男性です。
ベッカー/デヴィッド・フィグリオーリ
ベッカーは屋敷で暮らしているレッドの病気の兄。夜中に頭をドアに打ちつけるなど、精神的な病を抱えていると思われます。
ネタバレなし感想・見どころ
若い女性がある屋敷に間借りして、不条理なホラー現象に巻き込まれるストーリーです。
メキシコの古代アステカ文明などとの関連もあり、蛾が常に飛んでいるなど個性的な世界観が楽しめます。
蛾の意味を考えるとストーリーの味わい深さが増すので、色々考えながら見るタイプの人は楽しいかもしれません。
一方で怖さや緊張感はイマイチで、シンプルにエンタメホラーが好きな人には向いてないと思います。
同時期に公開されたNetflixホラー『サムワン・インサイド』よりは面白いです。
おすすめ度 45% |
世界観 77% |
ストーリー 50% |
不条理度 90% |
IMDb(海外レビューサイト) 7.1/10点中 |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト 73% |
※以下、映画『ノー・ウェイ・アウト』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『ノー・ウェイ・アウト』ネタバレあらすじ解説
〜オープニング〜
1963年メキシコ。アーサー・ウェルズ教授がメキシコの古代アステカ文明の遺跡から謎の石箱を発見。
〜前日譚〜
あるボロい屋敷(アパート)に入居したメキシコ系女性・シモーナの前に石の箱が現れ、何者かに襲われます。
〜現在〜
母親が病気で死亡し、その後メキシコからクリーブランド(アメリカ・オハイオ州)に不法移民してきた若き女性アンバー・クルーズは、ミシン工場で働きながら格安のボロ屋敷アパートを見つけます。
管理人・レッドと会い、部屋を借りることにしました。屋敷にはフレイヤという女性と自分の2人だけしか入居していないようです。
鍵の掛かっている1室があり、レッドから入るなと言われます。
後日アンバーは、新しく入居したマリアとペトラと会いました。レッドの兄で病気(精神異常?)のベッカーが夜に扉に頭を打ちつけ、何かをつぶやいています。
アンバーは亡き母のいとこ・ベトの家族に会います。アンバーはアメリカで生まれたと嘘をつき、ベトが仕事を紹介してくれるということで、そのときにはIDカードを必ず持ってくるように言われました。
アンバーは職場の女性キンシになけなしの3000ドルを預け、闇のIDカードの発行を依頼。しかし、キンシはその金を持ち逃げして職場もバックれます。
アンバーはキンシの住所を教えろと経営者に迫り、態度が悪いとクビになってしまいました。
夜、屋敷の風呂の排水溝の中から「助けて」と声が聞こえます。さらに老婆の霊・メアリーが「アーサーに苦しめられる…」と言って、ある女性の霊を地下室へ連れて行くビジョンをみます。
アンバーは屋敷を出ますが、地下鉄で石の箱から何かが出てくる夢をみました。
レッドに電話をかけ前金を返してもらうためにまた屋敷に戻ります。
レッドはアンバーを部屋に閉じ込め、ベッカーがやってきてアンバーに無理矢理酒を飲ませました。マリアとペトラもアンバーの部屋にやってきて「ベッカーたちが眠ったら外へ逃げよう」と言います。
アンバーは眠ってしまい目を覚ますと、ベッカーがマリアとペトラを縛っています。アンバーも縛られましえた。
直前に電話を受けていたベトがアンバーを助けるために屋敷に入ってきますが、ベッカーに撲殺されました。
屋敷で死んだたくさんの女性霊が周りを取り囲みます。(シモーナもいました。)
レッドは、石の箱に生贄の儀式をするとベッカーの病状が良くなること、石の箱は父アーサー・ウェルズ教授が発掘したもので父が母・メアリーを殺したこと、自分たちが父・アーサーを殺してベッカーが石の箱を受け継いだことを話します。
ベッカーはアンバーを地下室へ連れて行きました。首がちぎれたペトラの死体が運ばれていきます。アンバーはの石箱の前に縛られて寝かされました。
石箱から恐ろしい何かが現れる気配があります。ベッカーは部屋から出て行きました。
生きていたベトがやってきてアンバーの拘束をとき、2人は地下のドアに体当たりして逃げます。
しかしドアの向こうは真っ暗で、石の箱の中に続いていました。アンバーの意識はそこから母との最後の思い出の病室に出ます。
アンバーは夢の中で母と喋りますが、実際はまだ地下に縛られており、石の箱から怪物が現れました。
アンバーは夢の中に自分をとどめようとする、怖い表情の母の首を絞め殺害。すると目が覚めて、怪物は石の箱の中に逃げて行きました。中には赤子の死体があります。
アンバーは地下から外に出て、書斎にあった古代の剣でレッドを殴ります。しかしベッカーに足の骨を折られました。マリアがベッカーに襲いかかりますが、彼女は階段から突き落とされて死亡。
アンバーはベッカーを剣で撲殺しました。
アンバーは生きていたレッドを儀式にかけて怪物に首を喰わせます。
アンバーが屋敷の正面ドアから出ようとすると、折れていたはずの足が治りました。手から蛾が出てきます。横を向くと、石の箱の中へと続く道が見えました。
Netflix映画『ノー・ウェイ・アウト』END!
ラスト結末の解釈と伏線
『ノー・ウェイ・アウト』のラスト結末の意味は何でしょうか。
まず、アンバーは足がいきなり治ったりしているのですでに死亡していると解釈できるでしょう。
彼女は死んだ後も、屋敷の中で悪夢をみながら彷徨い続けているのです。
彼女が結局邪悪から逃れられない結末は、タイトルで示唆されています。邦題は『ノー・ウェイ・アウト』で、日本語だと「出口はない」という意味です。
英題も『No One Gets Out Alive』で、こちらも「誰も生きて出られない」という似た意味。
つまり、タイトル自体がストーリー結末の伏線というかネタバレになっているわけです。特に英題はラストのオチそのままですね。
アンバーは屋敷に来てから悪夢を見るようになるわけですが、石の箱から怪物が出てくる儀式の際も夢を見てましたし、いつから死んでいるのかが不明確です。
最後の儀式で実際に怪物に首を食いちぎられていたとも解釈できますし、物語の中盤までにすでに死んでいた可能性もあります。
蛾のメタファー考察:怖すぎ…
屋敷の中では蛾が飛び交い、作品のモチーフになっていました。蛾が何らかの意味を持っていると考えられます。
主に2つの意味があると思います。
蛾=母親
アンバーが、屋敷のベッドの横の蛾を手で潰して殺した後に、その蛾がまたパタパタと羽ばたき、母親が現れます。このシーンの意味は母親=蛾でしょう。
この場面と、終盤でアンバーが儀式の最中に見た夢で母親を殺しているシーンが連動している気がします。
1つの解釈では、アンバーは実際は母親を殺しているのだと思います。
アンバーはキンシとバーで飲んでいるときに、「全てが終わってから(母が死んでから)再スタートを切った」と言っていましたが、本当は病気の母親を殺していたのではないでしょうか。
ラストでアンバーの手の中から蛾が出てきたのも、殺したはずの母親と同じ世界にいるという証明でしょう。
アンバーが聴いていた母親のボイスメッセージは「今日はありがとう。明日も会いにきて(母親)」でした。普通に考えると病気の母からの最後の言葉だったのかもしれませんが、いつもお見舞いに行っていたなら「明日も会いにきて」とはならないはずです。
実際に殺してはいなくてもあまりお見舞いに行かずに、そのまま母親が死んでしまったのかもしれません。
アンバーはメキシコの古代文明の呪いの石箱に殺されたように見えますが、石箱の中には母親の呪いも入っていたという解釈もできて、面白いと思いました。
蛾=現実と夢の境界線
蛾がアンバーの母親の霊のメタファーになっていることから派生して、現実と夢の境界線を表しているとも考えられます。
抽象的な発想ですが、蛾の片方の羽は現実、もう片方は夢や死の世界と捉えると、蛾が羽ばたくと現実と夢がクロスするようなイメージになりませんか。
エンディングで蛾の羽が左右反転になった万華鏡のような映像が流れていましたし、蛾は現実と夢や死後の世界の境界線を表現しているのだと思います。
先程のアンバーがいつ死んだのか?いつからが夢か?の話につながりますが、もしかするとアンバーがベッドの横の蛾を殺したとき、悪夢の中に飲み込まれたのかもしれません。
石の箱と怪物の意味
石の箱(映画『樹海村』のコトリバコみたいですね)は、メキシコの古代アステカ文明で生贄の儀式に使われていたと推測できます。
石の箱には横たわる赤ちゃんの霊?もいましたし、生贄にされた女性・子供などの怨念がこもっているのでしょう。
この石の箱から出てきた女性の顔をした変な怪物は、調べてみたところアステカのトウモロコシの女神チコメコアトルだと思われます。チコメコアトルは生贄を斬首するようなので、『ノー・ウェイ・アウト』の怪物と一緒ですね。
ただ、怪物にはもっと抽象的な意味もありそうです。
アンバーは、死んだ母親の「明日も会いに来て」というボイスメッセージにすがっており、母子の仲が良かったのか微妙ですし、彼女自身が母親を手にかけた可能性も捨てきれません。
また、冒頭に出てきてすぐに怪物に襲われた女性シモーナも、電話の会話から家族と何らかのトラブルがあってアメリカに来ていました。
2人の女性から、親に対して後ろめたい感情が共通して浮かび上がってきます。
彼女たちの親に対しての良心の呵責と、親が抱いたであろう情念の対比は、まるで蛾の2枚の羽のようです。
視点を広げると彼女らは親だけでなく、母国を捨てたという捉え方もできます。
石の箱はメキシコ・アステカの神様が、土地を離れる若者たちの魂を悪夢に封じ込めるための装置なのかもしれません。
ちょうど、親が子供を箱入りにするイメージですね。
Netflix『ノー・ウェイ・アウト』ネタバレ感想・評価
最後のまとめ
Netflixホラー映画『ノー・ウェイ・アウト』は、蛾をモチーフにした美しいテーマや主人公アンバーと母親の関係など含みのある奥深いストーリーが堪能できる一方、ホラー的な恐怖や面白さが足りなくて残念でした。
もう少し全体的に緊張感があれば良作になっていたと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。『ノー・ウェイ・アウト』レビュー終わり!