Netflixオリジナル映画『Mank マンク』は、2021年度 アカデミー賞で最多ノミネートをされた。 デヴィッド・フィンチャーと ゲイリー・オールドマンがタッグを組み、クオリティと革新性を兼ね備えた素晴らしい作品に仕上がった。
ユーモアにあふれるセリフ回しなど、見どころは多い傑作。ただし『 市民ケーン』を見ていないと意味がわからず楽しくないだろう。
映画『Mankマンク』の概要(ネタバレなし)
オーソン・ウェルズが監督した歴史的傑作映画『市民ケーン』の脚本家マンクにスポットを当てたフィクション。2021年の アカデミー賞最多ノミネート作で、『ミナリ』や『シカゴ7裁判』とともに注目されている。
『 市民ケーン』のストーリーにどんな背景があったのかが社会風刺たっぷりに描かれている(本作を見る前に『 市民ケーン』を絶対に見た方がいい)。
監督は『セブン』『ゲーム』『 ファイトクラブ』『 ゴーン・ガール』などで知られる鬼才 デヴィッド・フィンチャー。
脚本はなんと フィンチャーの父でジャーナリストのジャック・ フィンチャーが生前に書き上げたもの(2003年頃)。
主演は、『レオン』『フィフス・エレメント』『ダークナイト・ライジング』などで名俳優として知られる ゲイリー・オールドマン。
『Mankマンク』ネタバレ感想・評価まとめ/かなり社会派
ゲイリー・オールドマン演じるマンクが、ユーモアと知性あふれる言葉で社会風刺をしまくる。その裏に、マンク自身の葛藤と苦悩が確かに垣間見える。
マンクのセリフが常にウィットに富んでいて、特に会話シーンが見応えがある。後述するが デヴィッド・フィンチャーの映像のこだわりも半端なく、映画ファンが 歓喜する仕上がりだった。
ただ、『 市民ケーン』を見てないとストーリーの意味がわからないし、政治や選挙に興味がない人は置いていかれるだろう。
フェリーニの『 8 1/2』やそれをもとにした『NINE』のような映画人がスランプに陥る話かと思ったけど違って、権力と選挙の癒着などに対抗する社会派の側面が強い。
ストーリーのスパイスになっていたのが、助手リタの存在。彼女の夫が生きていたとわかるラストシーンは、一筋の光のようで感動できた。
Mankのセリフはもはや金言!
『Mank』は主人公マンクのセリフを中心に、ウィットに富んだ金言にあふれていたので、個人的に印象に残ったものを紹介する。
マンク「 キングコングは巨大。 メアリー・ピックフォードは40歳の処女」
マンクが、大衆が映画をどのように捉えるか語ったセリフ。ミニチュアを使って撮影した キングコングは巨大だと思い込んでおり、 サイレント映画の大スター メアリー・ピックフォードは処女だと信じている人がいるということ。切れ味がよすぎる皮肉。
結果的にこのセリフが、捏造選挙ドキュメントを作らされた友人監督 シェリーを追い詰めたと考えると、感慨深い。
『Mankマンク』考察! フィンチャー流“ 市民ケーン”
『Mank マンク』を見た人は誰もが感じるだろう。「 デヴィッド・フィンチャーの 市民ケーンオマージュがすごすぎる」。
まず本作は白黒で、現在と回想を行ったりきたりする構成自体が『 市民ケーン』を模したものだ。
パンフォーカスや、ライティングはもちろん、フィルムの黒い点や画面ノイズ、継ぎ目が不自然な感じまで、わざわざ当時を再現している。
セリフのトーンも昔っぽいし、その上モノラル録音にして古さを感じるリ バーブ感が出ている。
なぜここまでやる必要があったのか?狂気としか言いようがない。
昔の名作が好きな人や年配の方は嬉しいかもしれないが、そうじゃない人には全く響かない努力だろう。
フィンチャーが当時のクラシック映画のファンだということもあるだろう。彼は 市民ケーンの続編のような意気込みで作ったのかもしれない。
そしてそれ以上に、時代の空気感を再現したかったのだろう。
現代で書き上げたストーリーを当時の空気感で再現したらどうなるのか?
『Mank マンク』はその疑問に答えを与えてくれた。
登場人物・キャストや演技について
ゲイリー・オールドマンが演じたマンクは、自分の才能の自覚、権力への憎しみ、正義感に揺れる、まさに“脚本家”という感じで、やっぱりすごかった。上流階級の皮肉やというキャ ラクターの好みは分かれるかもしれないが。
2021年第93回アカデミー主演男優にノミネートされていて、『マ・レイニーのブラックボトム』の チャドウィック・ボーズマンと争うことになるだろうと思ったら、『ファーザー』の アンソニー・ホプキンスが受賞した。
アマンダ・サイフリッド(ネトフリ映画『闇はささやく』などに出演)もバカっぽい女優を好演した。アマンダはアカデミー 助演女優賞にノミネートされたが受賞を逃した。
ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のタイウィン役だった チャールズ・ダンスが演じた新聞王ウィリアム・ハーストも、凍りついているような表情が印象的でよかった。
↓Netflix映画『Mankマンク』のあらすじラスト結末解説は2ページ目へ↓
- 1
- 2