なぜ名作?映画『市民ケーン』ネタバレ考察・ラスト結末の解説,バラのつぼみ意味は?感想と評価

  • 2024年4月11日

オーソン・ウェルズの映画『市民ケーン(1941)』とても挑戦的でジャンルレスな映画だ。いわば社会派ファンタジーともいえるだろう。

新聞社を経営するケーンという男の物語なので、てっきり社会派のヒューマンドラマかと思っていたが、最後は、なんかファンタジーチックに終わるのだ。テーマも社会派ではなく、人間の根幹・本質についての話である。

歴史的名作といわれる、市民ケーンのテーマとは何か?チャーリーとチョコレート工場との意外な類似性についてネタバレありで解説していく。

映画『市民ケーン』ネタバレあらすじ:ラスト結末解説

チャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)という新聞王が、城で「バラのつぼみ(rose bud)」という言葉を残して死んで行った。

記者のトムスンは、バラのつぼみという言葉の意味と、ケーンがどんな人物だったか確かめるため、生前のケーンに近しい人物に取材をしていく。

トムスンは話を聞いているうちに、ケーンがどこか感情が欠落した人物だとわかり、バラのつぼみは彼の人生に必要だったピース(破片)だろうという結論に達したが、バラのつぼみの詳細は不明。

ケーンの城で執事が、生前ケーンが集めたガラクタを焼却炉で燃やしていく。

その中に、”ROSE BUD(バラのつぼみ)”と書かれた子供用のソリがあった。ケーンが子供のころ、暴力を振るう父から逃れるため、母親に養子に出される前に乗っていたソリである。

映画『市民ケーン』終わり。

映画『市民ケーン』ネタバレ考察/バラのつぼみの意味女性器?

市民ケーンというからには、市民とか民衆がテーマなのだろう!と思ってたら全然違う。

あくまでケーンという人物がどういう人間だったか!?というストーリーで、他の人間にはほとんどスポットが当たっていない。

そんな「市民ケーン」という映画のテーマ・メッシー時は何なのか!?

いろんな意見はあると思うが、僕は、子どもの頃欠けたピースは一生戻らないだと思う。

友達でも、仕事でも、富や名声でも、結婚でも、たくさんの美術品でも、贅を尽くした大きな城でも、どんなものでも、欠落した感情は埋められないのだ。

子どもの頃に母親から愛情ゆえ引き離された。その結果ケーンは最後まで満ち足りることはなかった。

彼が求めていたのは、子ども時代に充分受けられなかった母親からの愛情や、楽しく遊んだ思い出だったのである。

市民ケーンの燃えるソリ

母親からの愛情の欠落は、大人になっても尾をひくという、とてもリアルで、人間の根幹に根ざした暗いテーマだったという印象。

はっきり言って絶望を描いている!

ちなみに『市民ケーン』の脚本家のマンクが「バラのつぼみ(rose bud)」について、ケーンのもとになった新聞王ハーストの愛人の性器というメタファーとして登場させたという裏の意味もあるらしいけど、映画全体で見ると本質はそこにはないだろう。

市民ケーンはチャーリーとチョコレート工場に似てる?

映画『市民ケーン』はどこが、ティム・バートンのチャーリーとチョコレート工場(2005)と似ていると感じた。

まず、ケーンとウィリー(ジョニー・デップ)はとてつもない大富豪という点が似ている。

そしてケーンは理想の新聞社作り、ウィリーは理想のチョコレート作りに没頭しているという点も似ている。

ケーンは謎の大きな城、ウィリーは謎の大工場にいるという点も似ている。

さらに、人としての感情が欠落していて、他の人と噛み合わないという点も似ているし、それが父親のせいだということも似ている。

大きな違いは、ウィリーはチャーリーと仲良くなり、チャーリーの家族と一緒に暮らし、自身の父親と和解するというハッピーエンドで終わるが、

ケーンは欠けたピース(感情)を埋められないまま、誰もが彼の元を去り、大きな城で孤独に死ぬというところだ。

以上のことから、「市民ケーン」は、チャーリーとチョコレート工場のダーク版!だと言えるだろう。

ケーンが本当に不憫でならない・・・市民ケーンには心をえぐるものがある。

ロアルド・ダールが1964年に発表した原作絵本の「チョコレート工場の秘密」は、市民ケーンを参考にしているか分からないが、ティム・バートンはもしかすると、ウィリーとケーンを重ね合わせたかもしれない。

最後に感想・評価まとめ

映画『市民ケーン』は、人間として欠落してしまった感情は埋めることができない!

とずばり言い切っているような気がする。自分のせいでなく、親や環境のせいでそうなってしまった人間について、夢も希望も救いようもない話だった。

しかし、悲劇物語としては極めて完成度が高い!

現代映画のお手本のようなその撮影技法などが注目されているが、市民ケーンのこのような超悲劇的ストーリーが、観る人に大きなインパクトを与えたことは無視できないだろう。

マンクによる当時としては大胆な構成の脚本も見逃せない!

家族の絆が希薄化した現代人が根幹に持つ、心の大きな隙間に気づかせてくれる、だからこそ市民ケーンは真の名作と呼ばれるのかもしれない!

映画『市民ケーン』感想レビュー終わり!

P.S. 市民ケーンの脚本家にスポットを当てた映画『Mank/マンク』も傑作だった。両作品見てみると、また違った見解も出てきて面白い。考察記事はこちら↓。

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