映画『CUBE 一度入ったら、最後』(キューブ)は、1997年のカナダ製作『CUBE』の日本版リメイク作品。菅田将暉、杏、斎藤工など豪華キャストが絶望の脱出ゲームで理不尽なトラップに怯えまくります!
とはいえ、抽象的で考察しがいがあるストーリーではあります。
本作を見て意味不明だったという人は、考察パートを参考にしていただければ幸いです。
記事では、
感想・評価ぶっちゃけ
キューブが何のメタファーか深掘り考察
立方体の解釈(なぜ1辺が27部屋かなど)
ヴィンチェンゾ・ナタリのオリジナル版『CUBE』との比較
ストーリーネタバレあらすじ解説をしていきます!
ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
映画『CUBE 一度入ったら、最後』は、登場人物らが目覚めると立方体の部屋に閉じ込められていて、部屋の6面の扉から他の部屋に行けるが、トラップがあり死ぬかもしれない恐怖に怯えつつ脱出を目指す物語。
キューブのビジュアルが素晴らしく、グロい死に方などエンタメ性もあります。ただ日本版もオリジナルと同じく抽象的なメッセージが強く、ストーリーがちゃんと解決しないタイプの映画が好きでない人には向かないでしょう。
おすすめ度 | 65% |
ビジュアル・世界観 | 85% |
グロ度 | 85% |
意味不明度 | 90% |
ストーリーの面白さ | 68% |
IMDb(海外レビューサイト)※随時更新 | (10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト※随時更新 | %(100%中) |
※以下、映画『キューブ日本版』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『キューブ/日本版』ネタバレ感想・評価
映画『キューブ日本版』考察
キューブは何のメタファー?
オリジナル版と同じく日本リメイク版でもキューブの目的は明かされません。
ただ、キューブの外側が少し描かれるので、邦画版オリジナルの解釈ができます。
キューブを見たまんま箱型のトラップだと捉えてしまうと、本作はただの意味不明なつまらない脱出ゲームになってしまうでしょう。キューブが何のメタファーなのか考察する必要があります。
ただし手がかりは少なく、1つの答えに限らず多くの解釈ができるでしょう。
私なりの解釈になりますが、大まかな前提として登場キャラクターは罪を浄化する目的でキューブに入れられたのだと思います。
その解釈だと仮定して、キューブが何のメタファーなのか(何を表現しているか)、有力だと思うものを具体的に解説していきます。
「煉獄」
キリスト教(カトリック)で考えると、キューブ=煉獄に近いでしょう。
煉獄を簡単に説明すると天国と地獄の中間にある場所で、天国に直行できるほど良い人間ではないけど、地獄へいくほどではない人々が一時的に収容されて苦しみを受け、魂を浄化させて天国へいく中継地点です。
ちなみにキリスト教で考える理由は、キューブのハッチ(扉)の取っ手が十字架に見えるからです。
あと、キューブは立方体(部屋)が27×27×27集まった空間ですが、27という数字は新約聖書を構成する27書からきているとも考えられます。
キューブのキャラクターを監視していた黒幕は杏演じる甲斐麻子です。彼女の正体はざっくりいうと煉獄の案内人なのでしょう。
つまり端的にいうと、登場人物はみんな現実で死んでいます。煉獄的な役割のキューブの中で恐怖して、魂を浄化させるのが目的なのだと思います。
ダンテの『神曲』で描かれた煉獄を現代風に解釈したのが、立方体(キューブ)ではないでしょうか。
ラストでは6面体にみんなの顔が並び、みんなCOMLETED(完了)となっていました(ちなみに、なぜ登場キャラが6人なのかの理由も、立方体が6面体だからです)。
フリーターの越智や、おっさんの安東は好き勝手に死んでいきますが、恐怖と罰を受けて罪を吐き出して死んだので、魂は浄化されたのかもしれません。
ただエンドロールで菅田将暉演じる後藤裕一だけ、CONTINUE(つづく)と書かれていました。トラップの部屋で死亡確定だったはずが、まだキューブの中で生き残っているのが不思議です。
裕一は、いじめ、もしくはDVを受けていた弟を救えなかった罪の意識にまだ苛まれており、贖罪を終えていないのでしょう。
キューブを煉獄的なものと訳すと一応いろいろ説明がつきますが、子供の宇野千陽は脱出してどこへ行ったのかという疑問が残ります。
おそらく子供の千陽は魂の浄化が不要で、そのまま天国に行ったのだと思います。
次は、他の解釈もしてみましょう。
主人公の深層心理
キューブを「教会の告解室」、もしくは「サイコセラピー(精神療法)」のメタファーと捉えることもできます。
つまり、1人の人間の深層心理の葛藤を仮想空間で表現したということ。(ジョン・キューザック主演の映画『アイデンティティ』のオチに近い解釈です)
まず、キューブの案内役(黒幕)だった甲斐麻子を除いた5人は全員男性で、一見関係なさそうですが、それぞれの関連性が非常に強いです。
まず、子供の宇野千陽は大人からDVを受けているようで、主人公が助けられなかった弟・博人と同じ境遇。
井出は大切な人を救いたいけど「もう無理かも」と言っており、弟を救えなかった主人公後藤の心情と似ています。
越智とおっさん安東は、若い世代と年配世代として対立関係にあり、越智は人生がうまくいかないのを安東のせいにしています。安東は主人公の弟・博人を追い詰めた父親像に近いでしょう。
それぞれの人格は、主人公・後藤裕一の心の葛藤だと取れなくもないです(なぜ裕一の心なのかというと、キューブの端に来たときに裕一の現実のビジョンが映っていたから)。
すべてが裕一の心の中の出来事だと考えると、キューブが教会の告解室(懺悔室)に見えてきます。もしくは精神病質者を治療するサイコセラピーでもいいでしょう。
越智が怒るとトラップが発動するのは、彼の性質が不必要なトラウマを排除する役割なのかもしれません。
おっさん安東が「俺は罪まみれだ…」と言って部屋が分断されて二手に分かれるのも、トラウマ解消に都合が良かったからでしょう。
結果、心の葛藤から解き放たれたのは罪なき純粋な子供の人格(千陽)です。
他の人格は罪の意識と共にキューブ(深層心理)に閉じ込められたのではないでしょうか。
主人公は晴れて懺悔・心の治療を終え、正常な心を取り戻したというわけです。
このように1人の人間の心の葛藤・苦しみの過程を映像化したものが映画キューブでの出来事だという解釈もアリだと思います。
ただこの説の場合には、ラストでまた別の人々がキューブに新しくやってきたのは何故か疑問が浮かびますね。まあ、懺悔室への新しい訪問者なり、精神病院への新しい患者がきたなりと考えれば良いでしょう。
人生の縮図・愚かさの風刺
メタファーというよりメッセージに近いですが、キューブでの一連の出来事は人生・社会の縮図・人間の愚かさの風刺とも取れます。(これはオリジナル版により近い解釈です。)
人間がお互いに言い争ったり、数字による根拠のない決断で生死が決まったりと、人の一生はキューブのようだとあざけり笑っているのかもしれません。
伏線
一応ラスト結末の伏線と呼べるのは、杏演じる甲斐麻子が1人だけ常に冷静だった点。
こんな極限下で普通の精神状態は明らかに不自然でした。甲斐麻子は連れてこられたわけではなく、キューブの案内役でした。(甲斐は人間でなく、キューブのシステムを司るA.I.なのかもしれません。)
その他に越智が怒るとトラップが発動するという不条理な展開もありましたが、これは伏線というより、更なる謎を投げかける演出でしたね。
ヴィンチェンゾ・ナタリのオリジナルと比較考察
※映画『キューブ』シリーズ全部のネタバレがあります。
日本版の『CUBE 一度入ったら、最後』は、基本的なストーリーの流れはヴィンチェンゾ・ナタリ監督が1997年に作ったオリジナル版と一緒です。(ヴィンチェンゾ・ナタリはこの日本版にクリエイティブで参加しています。)
決定的に違うのは、
- キューブ内のゲームマスター的な甲斐麻子の存在
- 次の参加者が出てくる結末
- 主人公後藤の罪の意識
これらは日本版にしかない設定です。
この設定の違いから、
- オリジナル版は答えのない不条理な人生
- 日本版は贖罪の過程
というテーマの違いが感じ取れます。
あとルールでいうと、オリジナルは
- 素数
- デカルト座標
- 因数
- 順列の組み合わせ
とキューブを攻略して行ったのに対し、邦画版はシンプルに素数とデカルト座標だけになっており、主人公裕一が誰かが書いたキューブの設計図を見つけるアッサリとした流れです。
あとはキャラ設定が異なっており、オリジナルの登場人物は警官、精神科医、数学科の女子大生、脱獄囚、自閉症青年、設計者です。
また、オリジナルの『CUBE』には、『キューブ2』『キューブゼロ』という続編がありますが、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督は関与していません。
よって日本版『CUBE 一度入ったら、最後』との関連性は薄いと考えて良いでしょう。
ちなみに、
- 『キューブ2』は、政府の陰謀
- 『キューブゼロ』の結末は 死刑囚への実験
という結末になっています。
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映画『CUBE 一度入ったら、最後』キャスト・作品情報
監督:清水康彦(『MANRIKI』『その日、カレーライスができるまで』)
脚本:徳尾浩司(『おっさんずラブ』)
原作:ヴィンチェンゾ・ナタリ『CUBE』
撮影:栗田豊通
主題歌:星野源「CUBE」
後藤裕一|菅田将暉
後藤裕一(ごとうゆういち)は29歳のエンジニア。ある衝撃的なトラウマを抱えています。
菅田将暉は2021年にサスペンス映画『キャラクター』、ヒューマンドラマ映画『キネマの神様』に出演していましたね。若手演技派です。
甲斐麻子|杏
甲斐麻子(かいあさこ)は37歳。職業なども不明
女優・杏の代表作:映画『妖怪人間ベム』『プラチナデータ』『真夏の方程式』。声優としては長編アニメ映画『鹿の王 ユナと約束の旅』のサエ役など。
越智真司|岡田将生
越智真司(おちしんじ)は31歳のフリーター。
俳優・岡田将生は映画『Arc アーク』(2021年)にも出演しています。
井手寛|斎藤工
井手寛(いでひろし)は41歳の整備士。
俳優・斎藤工:出演作:映画『昼顔』 『ヲタクに恋は難しい』。『blank13』では監督も務めました。
安東和正|吉田鋼太郎
安東和正(あんどうかずまさ)は広告代理店の役員。62歳。
吉田鋼太郎出演作:『劇場版 おっさんずラブLOVE or DEAD』『カイジ ファイナルゲーム』。ドラマ『SUITS/スーツ』シーズン2。
宇野千陽|田代輝
宇野千陽はいじめられっ子の中学生。13歳。
後藤博人|山時聡真
後藤博人は裕一の弟。
俳優・山時聡真は映画『約束のネバーランド』などに出演。
最初に死ぬ人間|柄本時生
キューブにきて最初にトラップで死んだ人間。
俳優・柄本時生は柄本明の息子。出演作:『スラッカーズ』『蟹工船』など。
映画『CUBE 一度入ったら、最後』ネタバレあらすじ解説
立方体CUBE(キューブ)の中で、ある男性(柄本時生)がトラップの部屋に入り、四角い柱で腹をくり抜かれて死亡。
エンジニアの後藤裕一(菅田将暉)が目覚めると、囚人服のようなものを着せられて、立方体の部屋(キューブ)の中にいました。
おしゃべりなフリーターの越智真司(岡田将生)と、まだ子供の宇野千陽(田代輝)という人物も同じ部屋にいます。
立方体の6面にはそれぞれハッチがあり、十字になっているレバーを回せば扉が開いて次の部屋に行ける仕組みですが、トラップが仕掛けられている部屋があるようです。
井出寛(斎藤工)という男性が、紐で結ばれた靴を後藤たちがいる部屋に投げ入れてきました。靴を投げてトラップがあるかどうか確認しているのです。
まもなく、甲斐麻子(杏)という女性も部屋に入ってきます。
5人はしばらく井出を先頭に靴でトラップを確かめて脱出を目指し、進んでいました。ある部屋に安東和正(吉田鋼太郎)というおじさんがいます。
安東は助けが来たと安堵しますが、みんなが自分と同じ閉じ込められただけの状況だと知ると、イラだちはじめました。
ある部屋で天井から回転刃物が6人に迫り、急いで床下のハッチを開けて逃げます。井出はパニックになった後藤を責めました。
靴だけで確かめられないトラップがあると知り、一同は絶望。
子供の千陽がそれぞれの部屋に入る前の通路に書かれたナンバー(3桁の数字×3つ)に注目し、「素数(1とその数字以外で割れない)がある部屋にはトラップがある」という仮説を立てて進んでいきます。
ある部屋に来ると、どの出口にも素数があります。井出が扉を開け、次の部屋のピアノ線トラップが音に反応することを確認し、みんなで音を立てずにその部屋を越えることに。
しかし、越智が誤って靴を落としてしまい、最後尾にいた安東がトラップで足を怪我してしまいます。安東は越智をクズ呼ばわりし、激しく責め立てました。
後藤は壁に立方体の設計図が描かれているのを発見し、キューブ全体が27×27×27部屋(立方体)で構成されていると考えます。
そんな中、トラップがなかったはずの部屋で急にガスが吹き出し(越智の怒りに反応)、その部屋から移動せざるを得なくなりました。
一同はさらに進もうとしますが、素数がない部屋でもレーザーのトラップが発動し、井出が後藤と千陽をかばって死亡。
さらに進み、安東が「俺は罪まみれの人間だ」と告白すると部屋が鉄格子で2つに分断され、後藤・千陽・甲斐の3人と、安東と越智の2手に別れることに。
越智たちは別の部屋に進みますが、安東の罵声に耐えられず、彼をハッチに挟んで殺します。
後藤は、数字がデカルト座標を表していると気づき、27×27×27の立方体の端に行けばいいと考えます。
ある部屋で、後藤たちの前にビジョンが現れました。後藤が弟(虐待かイジメを受けていた)の飛び降り自殺を止められなかったときの映像が映ります。
後藤はトラウマに絶望し、千陽は弟を救えなかった後藤を責めます。しかしその後、後藤は振動で下の部屋に落ちそうになった千陽を助け、生きる希望を取り戻しました。
面の端の部屋へ出ると、外は暗闇で高さがあり、そこから降りられそうにありません。その時、ある部屋が移動していくのが見え、後藤はY座標の3桁の数字を足して27になる999の部屋が、出口に移動すると考えます。
他の部屋を進んでいた越智が偶然合流し、ついに一行は999の手前の部屋へ到着。しかし、「出ても希望はない」と狂った越智が後藤を引き留めます。
トラップが迫り越智は死に後藤も金属で突き刺されました。すでに999の部屋にいた千陽と甲斐は部屋ごと出口へと移動します。
ついに出口に辿り着き、甲斐は「行って」と千陽に言いました。千陽は光の中へ走っていきます。
キューブの観察者だった甲斐は、新たにキューブにやってきた人々の前に現れ、何者かを問いかけます。
後藤は大怪我を負いながらも、まだキューブの中で生きていました。
映画『CUBE 一度入ったら、最後』END!
最後のまとめ
邦画『CUBE 一度入ったら、最後』は、幅広い考察ができる抽象的な作品であることをプラスしても、良作とはいえない中途半端な作品だったと思います。
たくさんの解釈があると思うので、もし意見があれば記事下からコメントをお願いします♪
ここまで読んでいただきありがとうございます。『CUBE 一度入ったら、最後』レビュー終わり!
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