映画『キャラクター』(Character)は、殺人現場を目撃した漫画家が狂気の作品を創りあげて連続殺人犯と共鳴する狂気のサスペンスエンターテインメント!
期待以上にハイクオリティなサスペンスで、背筋が凍りつくシーンも多々ありとても面白かったです。
- ネタバレあらすじを結末まで解説
- エンドロール後の悲劇、犯人・両角と辺見の関係性
- 漫画と小説版のストーリーやラスト紹介
- 本作の元ネタ
などを徹底考察しています!
緻密なストーリーで近年の邦画サスペンスではNo.1!漫画版と小説版との犯人や結末違いも比較!実はあの映画と酷似!?
『キャラクター』基本情報・キャスト
スタッフ・キャスト詳細
監督: 永井聡
脚本(原案): 長崎尚志
撮影:近藤哲也
主演: 菅田将暉/漫画家・山城圭吾役
出演: Fukase/犯人・両角役
出演: 高畑充希/妻・川瀬夏美役
出演: 小栗旬/刑事・清田俊介役
出演: 中村獅童/刑事・真壁孝太役
出演: 中尾明慶/編集者・大村誠役
主題歌:ACAね(ずっと真夜中でいいのに。)×Rin音 Prod by Yaffle「Character」
主演の菅田将暉は『キネマの神様』(2021)でも存在感を放っていました。カルト映画をリメイクした『CUBE 一度入ったら、最後』でも主人公を務めています。2023年は『銀河鉄道の父』の小説家・宮沢賢治役で話題になりました。
映画『銀河鉄道の父』。作家・宮沢賢治を支えた父・政次郎は息子にどんな思いを描いていたのか? 役所広司、菅田将暉、森七菜さんが家族の絆とその大切さを痛感させてくれます。シネマグこの家族なしでは宮沢賢治は誕生しなかったであろ[…]
本作は映画版と別で、漫画版と小説版(小説は原作ではなく映画ありきで作られた)があります。
それぞれ犯人や結末が大きく異なりますので、それぞれの犯人やラストを解説をしています。
キャラクター/登場人物 相関図
映画に出てくる登場人物・キャストの相関図です。ストーリーの補足にどうぞ。
『キャラクター』感想・評価89点/伏線よりミスリードが巧み
映画『キャラクター』の評価は89点!
ストーリーやオチ完成度とキャストの演技力、スリリングな描写が三位一体となった傑作サイコサスペンスだったと思います。
死体とか刺殺も超グロいというわけではないですが、リアリティがあり生々しかったです。
邦画では割とサスペンスのオチが論理的でなく微妙だったりすることも多いですが、本作は想像を上回りました。
夏美の友達が指で2とやっている(双子についての会話だった)シーンや、山城圭吾が母親によそよそしく、再婚家庭だったとわかるなど伏線の回収も丁寧です。
しかし映画『キャラクター』が優れていたのは伏線よりもむしろミスリードでしょう。
1番驚いたのは、小栗旬演じる清田が両角ではなく、冤罪だと思っていた辺見に殺されるシーン!(木村拓哉と長澤まさみの『マスカレード・ナイト』にも通底しますね。)
「捕まって釈放された辺見は犯人側でないだろう」と、ミスリードに見事引っかかりました。
2人のサイコパスがお互いに協力していたのが斬新だったと思います。
逆にいうと両角と辺見の2人の殺人者が共謀していた驚きがなければ、映画『セブン』の模倣の域を出なかったでしょう(あとで詳しく書きます)。
死んだはずの清田の携帯から山城に電話が入るシーンもゾクッとしましたね。素晴らしい演出です。
また、主人公の漫画家を演じた菅田将暉をはじめ、小栗旬、高畑充希など豪華キャストの演技も最高でした。
作品にリアリティーを与えていたと思います。
『ゴジラvsコング』でハリウッドデビューもした小栗旬の清田がよかったですね。
あとはSEKAINO OWARIのFukaseは映画初出演ということですが、予想以上に上手でサイコ殺人者の役がハマっていました!
犯人・両角の部屋の壁の狂気的なアートワークもFukaseが描いたようで、才能にあふれてますね。
キャラクターが手に入らないパラドックス!
ラストの両角の「僕はだれ?」という問いかけも印象的でしたね。
犯人・両角には自分という個性がなく、殺人の“狂気の器(うつわ)”でしかないことの証明にもなっています。
彼は空っぽな人間なのです。
それは、自分1人では漫画のキャラクターを生み出せなかった圭吾も同じ。
圭吾も結局は殺人の狂気を媒介する“器”でしかありません。
両角と圭吾がお互いを映す鏡であったことは確かですが、中身が空っぽで殺人の狂気が感染しやすい人間同士だったとも解釈できます。
そう考えると本作は、キャラクター(個性)を狂気的に追い求め、結局手にできなかった2人の悲劇のパラドックスといえるでしょう。
両角も圭吾も狂気におかされただけで、個性は獲得できてないとも捉えられます。
痛烈な皮肉ですね…。
犯人両角と辺見の衝撃の関係!殺人鬼になったきっかけ考察
両角は裁判で「最初辺見のファンで、後に辺見がファンになった」と証言しています。
この言動から、両角が34年前に一家惨殺を起こした辺見に影響を受けた模倣犯だったと考えられるでしょう。
また両角は九條村というカルト集団で辛い経験をしたからか、「4人家族は死ぬべきだ!」との思想を持ったと思われます。
さらに、辺見からの手紙が両角の家にたくさんあったことから、手紙でやりとりをしていたことも事実です。
辺見は1年前に捕まってからも、刑務所から両角宛に手紙を送っていたのかもしれません。
両角は辺見に接触し、船越一家を惨殺したあと一旦捕まるよう頼んだのでしょう。
さらに踏み込んだ考察ですが、辺見の一家惨殺の被害者遺族が両角だった可能性もある気がします。
殺人事件で加害者から遺族へ手紙が贈られることは現実でもあるようなので、両角の部屋にあったのは加害者辺見からの手紙だったのかもしれないですね。
九條村に住んでいた両角の家族は、村が廃村になった1989年以降に他の地域に移り住み、そこで辺見に襲われたのでは?
ただその場合、映画『キャラクター』の時代設定が現代だとすれば、両角の年齢は30代後半である必要がありますね。
真実は分かりませんが両角と辺見の関係性からは、ドス黒い負の連鎖が浮かび上がってきます!
山城圭吾の漫画のタイトルが「34」というのも、連続殺人は34年前の伏見の事件から全てつながっていた!というメッセージがあるのでしょう。
きっと、狂った事件は続いていくのだろう…
エンドロールのあとの悲劇
映画『キャラクター』はエンドロールあとに“包丁が2回鳴らされて”終わります。
これは辺見による“夏美殺害”を予告しているのでしょう。
“2回”鳴らされているので、夏美と子供の2人を殺すつもりでしょうか?
モヤっとする胸糞バッドエンドですね。
夏美を思うとかわいそうですが、サスペンス的には余韻を残した素晴らしい結末だと思います。
また、単純に辺見が狙っているのではなく、両角を真似した新たな模倣犯が出現した可能性もあるでしょう。
終了後もさまざまな考察をして楽しめるのは、映画『キャラクター』が傑作サスペンスだった証明ですね!
模倣でなく殺人鬼との一体化・ダガーの意味
圭吾は両角を模倣してキャラクターと漫画『34』を描き、今度は両角がその漫画の通りに殺人をするのは、単なる模倣でなくお互いの同一化といえるでしょう。
殺人鬼が漫画家・圭吾の体の中に憑依し、圭吾が漫画で表現した狂気もまた殺人鬼に大きく影響を与えたのです。
作中の漫画「34」に出てくる両角をモデルにした殺人鬼は“ダガー”というキャラですが、そもそもダガーとは諸刃の短剣をさす言葉。
ちなみに“両角”も両サイドが尖っている意味ですね。
つまり圭吾と両角2人の関係性・依存性こそが真のダガー(凶器)だといえるだろう。2人が出会って共鳴してしまったからこそ、多くの悲劇がうまれたのだ!
終盤の圭吾と両角がお互いに重なり合っている姿が漫画の「34」のラストと、実際に真壁が見た現場で、2人の体の位置が入れ替わっているのも面白いですね。
2人は表裏一体で、圭吾が両角のような殺人鬼なったとしてもおかしくない意味の表現でしょう。
また、両角が最後に「僕は誰ですか?」と問うシーンが病室で寝てる圭吾にオーバーラップしていました。
これは圭吾のマインドが殺人者・両角のそれと完全に重なってしまった証明です。
ダガーというキャラを作り上げた圭吾ですが、実際は自分の存在を両角の狂気に明け渡していただけなのでしょう。
圭吾は両角を殺しませんでしたが、心は侵食されてしまったのです。
ちょうど34年前の殺人鬼・辺見の心に両角が侵食されてしまったように。
もしかすると圭吾は、漫画家を辞めて連続殺人に目覚めてしまうのかもしれません。
映画『キャラクター』はそんな深いメッセージが見て取れる素晴らしい作品だと感じました。
コミック版と映画版の犯人の違い比較!
※コミカライズ版『キャラクター』のネタバレを含みます。
『キャラクター』は漫画化もされていて、セリフや設定などは同じ箇所も多いですが映画版とは結末が全然違います。
大きな違いは、コミック版では清田は辺見に刺されますが死にません。
そして辺見が清田を刺した直後に「主役になりたいから」と、両角まで殺してしまいます。
漫画版の終盤→圭吾が夏美がいるマンションに駆けつけると、そこにいるのは両角ではなく辺見でした。
圭吾は辺見と争ったあとに殺されそうになりますが、復活した清田が辺見を撃って終わります。
まさかの辺見オチ!
ラストは圭吾が自分の子供が読みたくなる漫画を描くと決意するハッピーエンドです。
あとはコミック版のほうは、
- 九條村設定はナシ
- 圭吾と両角の同一化がより具体的
- 圭吾が自分で夏美が危ないと気づく
などなど、細かい違いがたくさんあります。
ちなみに、原案の長崎尚志は浦沢直樹の漫画『20世紀少年』『MASTERキートン』などの原作者でもあります。
そういえば『キャラクター』の作中漫画「34」の元同じクラスで殺人鬼を追う設定が『20世紀少年』に似てますね。
小説版のオチや映画との違いを解説
※『キャラクター』小説のネタバレあり。
『キャラクター』の小説版も映画と異なる点が多いです。
まず大きな違いとして小説は、圭吾、清田、両角の3人の群像劇になっています。小説ならではの表現ですね。
犯人・両角の心理描写も楽しめるのが小説版の大きなポイント!
あとは最後のオチも大きく異なり、映画では圭吾が両角を刺そうとして撃たれましたが、小説では、清田が両角を撃ち殺します。
さらに捕まった辺見が「殺人は選ばれた人に伝染する」と言います。
ラスト、清田は両角を射殺したとき、両角の殺意が自分に憑依していたことに気づきました。
また、圭吾はアットホームな新連載を描いたつもりが、担当の大村から登場キャラに悪意がすごい!と変な褒め方をされ、「俺は一体何なんだ?」と終わります。
つまり、犯人・両角の“殺人病”は山城圭吾と清田に引き継がれたというオチ!
キャラクター小説版では旧約聖書のカインとアベルの話まで引用され、世の中には人類最初の殺人者・カインと被害者・アベルのどちらかを引き継いだ2種類がいるのかも!という壮大な話も差し込まれます。
“絶対悪の伝染”は、ちょっとスティーブン・キングの話っぽいですね。
また、『キャラクター』小説版は
- 清田じゃなく、真壁が刺されて死亡
- 両角が姉・綾の恋人として登場
- 両角の母親が両角キララというホラー漫画家だった
- 両角はカルト集団の長である父を毒殺した
など、映画と違うところがたくさんあります。
小説・漫画と映画の異なる点について解説しましたが、あくまで映画がメインです。
個人的に、ストーリーの面白さや完成度は、映画>小説>漫画です。
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