映画『悲哀の密林』ネタバレあらすじ感想!メキシコの詩をダークに映像化,ローカル愛と悲劇のNetflix作品評価

Netflix映画『悲哀の密林』はメキシコ南部の美しい自然や文化をダークサスペンスで紹介する斬新すぎる作品

深い緑に囲まれて、悲劇の女性が静かに変貌していく様子が堪能できます。

本作のストーリーネタバレあらすじを解説して、本作の感想や評価をしてみましたのでぜひ!

雰囲気は抜群だが抽象的なストーリーは好みがはっきり別れるだろう!悲惨な展開の一方、現地の文化を丁寧に紹介するかなり変わった作品。

Netflix映画『悲哀の密林』基本情報・キャスト

youtu.be

公開:2021年6月9日 Netflix

制作国:メキシコ

原題:Selva trágica

英題:Tragic Jungle

監督:ユレネ・オライゾラ

主演:インディラ・ アンドレウィン/アグネス役

出演:ギルベルト・バラーサ/アウセンシオ役

受賞:ウィーン国際映画祭・ ヴェネツィア国際映画祭受賞

映画『悲哀の密林』感想・評価

映画『悲哀の密林』

映画『悲哀の密林』評価は80点くらいでしょうか。

メキシコと ベリーズ(旧 ホンジュラス)の国境にあるオンド川とジャングルの 雄大かつ底なしの美しさ・静けさ・恐ろしさを体感できた作品だと思います。

現地のサル・ワニ・虫のみならず、サポジラの木から樹脂を取り煮詰めてチクル(天然ゴム)を作る過程まで、ドキュメンタリーのように丁寧に見せてくれるのが大きな特徴です。

一方でストーリーは、悲劇の女性・アグネスが男を誘惑して殺す 中南米の妖怪シュタバイに変貌するというダークなもの。

ローカルドキュメンタリーを堪能させる一方、密林で人々が無常に死んでいく コントラストが斬新過ぎます!

映画『悲哀の密林』は、メキシコの詩人アントニオ・ メディス・ボリオ(Antonio Mediz Bolio)の「The land of the Pheasant and the deer」に着想を得て作られたようで、ストーリーを楽しむというより、詩と映像が織りなすダークな雰囲気に浸るタイプの作品です。

最近の映画で言えば『私というパズル』(2020)や『触手』(2016)などに近いでしょう。

個人的には好きなタイプの映画ですが、ストーリー性やエンタメを求める人にとっては意味不明で、好みが分かれると思います。

話は変わって、男性の中に女性1人という設定は怖いですね。

第二次世界大戦後の太平洋西部 マリアナ諸島・ アナタハン島に流れついた男性32人が、沖縄出身の比嘉和子という女性を奪い合って殺し合ったとされる実際の出来事「アナタハンの女王事件」を思い出しました。

アグネスが妖怪シュタバイになった理由!

妖怪シュタバイになったアグネス

『悲哀の密林』のストーリーが意味不明だった人のために個人的な解釈を述べます。

大まかには婚約者からに逃げたアグネスが、シュタバイという男を誘って一夜を共にしたあと残虐に殺害する妖怪になったというもの。

論理的な物語ではないですが細かい考察を付け足すと、序盤で撃たれたアグネスはそこで1度死んで、妖怪に生まれ変わっていたのかもしれません

処女だったアグネスは、案内役の男性とセックスをしていたフローレンスに感想を聞くなど性行為に興味がある様子でした。

好きでもない男性から逃げて撃たれた恨みもそうですが、そこに一度もセックスを経験しない心残りが加わって怨念が肥大化して妖怪になったのかもしれません

そう考えると、抽象的なテーマに思考が深く沈み込むようですね。

美しい自然や文化の裏側にたくさんの悲劇があったということを、妖怪で表現したのでしょう。妖怪として語り継ぐことで、悲劇の歴史を忘れ去らない意味もあるように思えます。

ときどき語りで入るアントニオ・ メディス・ボリオの詩(ポエム)もあいまって、密林や川の緑色の恐ろしさを肌で感じられ、ある種の カタルシスが得られます。

中南米の妖怪・シュタバイってあまり日本ではメジャーじゃないですが、存在を知ると興味が湧いてきますね。

ちなみに Netflixには『インビジブル・シティ(Invisible City)』というブラジルの妖怪が出てくるドラマもあるので興味がある人はぜひ視聴してみてください。

メキシコのチクル密売人を取材した ウルルン滞在記のダーク版

チクルの製造過程

『悲哀の密林』は、現地人のドキュメンタリーのような感じでストーリーが展開するコンセプト的には第93回アカデミー賞作品賞を獲得した『ノマドランド』と共通する部分があるといえます。

チクル(天然ガム)の密採や加工など非常に丁寧に描かれており、ドキュメンタリー色はかなり強いです。

ストーリーは悲哀を描きながらも「 世界ウルルン滞在記」を見ている感覚で現地での生活について知れるのが『悲哀の密林』の大きな特徴でしょう。

「メキシコ現地のチクルの密採人に密着しました!」という感じ。

サポジラの木に マチェーテで斜めに傷を入れていき、白い樹液を集めて煮て粘度を上げ、四角形に固めて運ぶという、チクルについての具体的な知識が得られました。

余談になりますが、エンドロール「現地のチクルを100%使用しています。フェアとレードです」の字幕が面白かったです。

悲哀の裏にローカル愛が滲み出てますね。

チクルのスポンサーがついていたのかもしれません。

現地の名産品をダークサスペンスで紹介するのが奇抜です!

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