ネタバレ考察『マスカレード・ナイト』映画と東野圭吾原作を比較考察!犯人の違い,ラスト結末のセリフの意味解説/木村長澤バディの感想あらすじ評価

映画『マスカレード・ナイト』は刑事役の木村拓哉とホテルマンの長澤まさみがタッグを組み、ホテルで予告された殺人事件に立ち向かうサスペンス!

原作はヒットメーカー・東野圭吾の同名小説です。

豪華キャスト揃い踏みで、サスペンスとしてもヒューマンドラマとしてもハイクオリティな作品に仕上がっていました。

記事では、ネタバレあらすじ解説東野圭吾の原作小説との相違点を比較ラスト結末のメタ考察ぶっちゃけ感想・評価ちょっと残念だった点など、わかりやすく解説していきます。

CineMag
完成度は前作『マスカレード・ホテル』と同じかそれ以上!サスペンスとしてもヒューマンドラマとしても期待以上に楽しめました!にちなみにマスカレード(Masquerade)の意味は仮面舞踏会や虚構。

映画『マスカレード・ナイト』の評判・評価アンケートまとめ

映画『マスカレード・ナイト』キャスト・作品情報・予告編

公開:2021年9月17日・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
監督:鈴木雅之
脚本:岡田道尚・若松央樹
原作:東野圭吾『マスカレード・ナイト』(2020発刊)
撮影:江原祥二
ー主要キャストー
主演:木村拓哉(『レジェンドアンドバタフライ』)
出演:長澤まさみ
出演:小日向文世
出演:石黒賢
ー宿泊客ー
出演:沢村一樹
出演:田中みな実
出演:凰稀かなめ
出演:勝村政信
出演:高岡早紀
出演:木村佳乃
出演:麻生久美子
出演:博多華丸
ーホテル側ー
出演:石橋凌
出演:東根作寿英
出演:鶴見辰吾
出演:石川恋
ー警察ー
出演:渡部篤郎
出演:篠井英介
出演:梶原善
出演:泉澤祐希
ーその他ー
出演:中村アン

ネタバレなし感想・見どころ

46億円以上の大ヒットを記録した前作『マスカレード・ホテル』(2019)も完成度が高かったですが、本作もそれに引けを取らないか、むしろ勝っているくらいの勢いです。

豪華キャスト多数でそれぞれに見せ場がありますが、本筋のストーリーを崩しておらずバランスが取れています。

映像も臨場感と重厚感があり、美しいホテルとスリリングな雰囲気に浸れます

サスペンスのストーリーも穴がなく予想ができません。

ぜひ劇場へ見に行って欲しい作品です。

これから観に行く人は、この記事をブックマークして、観賞後の考察にも使っていただければ幸いです。

CineMag的おすすめ度 4.5
サスペンスのクオリティ 4
ストーリー全体の完成度 4.5

ちなみに前作『マスカレード・ホテル』はU-NEXTやAmazonプライムの初回無料体験で0円視聴できるので、まだ見てない人はそちらもぜひ!

※以下、映画『マスカレード・ナイト』のストーリーネタバレありなので注意してください。

徹底考察!マスカレード・ナイト

ついに仮面を外した新田と山岸

新田と山岸と仮面

宿泊客の仮面を剥ごうとする刑事、客の仮面を守るホテルマンという対立が前作以上に印象的でしたが、それと対比して新田と山岸もお互いに仮面をつけていたことがラストでわかります。

CineMag
むしろ、そこがストーリーの本質な気がしますね。

ラストで山岸がホテルに来た新田を見て、周囲が仮面舞踏会の景色に変わるシーンがとても印象的でした。

山岸は、新田が仮面を外す幻を見ます。そして彼のディナーの予約に対して「無理です!」と言いました。

「ホテルマンは無理と言わない」と、新田に説教しまくっていた山岸の素が出た瞬間です。

新田の表情から刑事の仮面を着けていないと感じた山岸は、ついにホテルマンという仮面を脱いだのでしょう。

ホテル・コルテシア東京での新田と山岸は、お互い惹かれ合う部分がありながらも、ずっと仮面をつけていたのです。

仮面舞踏会(マスカレード)が終わり、犯人の仮面をはいだ新田と山岸は、自分の仮面も外して最後にやっと人間同士として向き合ったのでしょう。

新田刑事は、犯人だけでなくずっと山岸の仮面を外そうとしていたと考えるとロマンチックで味わい深いです。

CineMag
仮面をつけていたのは主人公2人だったんですね。原作にないこのラストは秀逸。サスペンスで始まり、ヒューマンドラマで終わりました

対立に存在する仮面

映画『マスカレード・ナイト』では、二項対立がテーマになってましたね。

  • 正反対のバディ、新田と山岸
  • 密告者VS殺人犯
  • 山岸VS氏原
  • 刑事とホテルマンの対立
  • 曽野の妻・万智子VS友人で夫の浮気相手・由里
  • 練馬と埼玉の2人の被害者
  • 仮面VS本性

普通の作品よりも、2つの事柄の対立関係が多いですね。

個々の対立そのものより、“対立を生み出している抽象的な概念”にフォーカスが当たっている印象です。

それが仮面=マスカレードなのでしょう。

仮面は顔だけでなく心も隠す装置であり、それゆえ対立を生み出す原因にもなりえます。

社会ではみんな仮面をつけて生きていますが、その奥まで見ないと真実には辿りつきません。

さらに、勇気を持って仮面を外すことで一歩前に進めるという抽象的かつポジティブなメッセージが込められているのではないでしょうか。

つまらないと感じた点

映画『マスカレード・ナイト』はかなり完成度が高かったのですが、あえてストーリー的に微妙だった点を挙げてみます。

まず、仲根緑が怪しいとなってから他に有力な手がかりが何もないまま、ストーリーが中盤以降まで進んでいくのでちょっと中だるみします。

予想できないラストを作るためだと考えれば全然許せるのですが、「この行動が怪しい、あの行動も怪しい」という感じでフワフワと時間が過ぎていくのがちょっともったいない気もしました。

『マスカレード・ナイト』がつまらないと感じた人は、ミステリーとしてのこの中だるみが微妙だと感じたのではないでしょうか?

あと特に気になったのは、犯人の森沢が山岸の腕時計を見て感電のタイマーをセットしたという点。

犯人・森沢はかなり頭がいい人物だと思うので、デジタルに比べて正確性にかけるアナログの腕時計を見るのはちょっと変です(スマホもあるはず)。それが他人のものなら尚更不自然ですね。

あとは、日下部の正体に誰も気がつかなかったのもちょっと違和感でした。

日下部はかなり目立っていましたし、ロサンゼルス支部といっても日本の系列でも働いていただろうし、ホテル側の人間がもっと早く気づいてもよかったはず。

警察は日下部が偽名だとわかっていたので、それをホテル側にしっかり情報共有していたなら(むしろしていないと変ですが)支配人・藤木もそれを見てすぐわかったはずです。

そして、「ごめん、今殺人犯いるから人事テストやめて」と言えたはずです。

東野圭吾の原作小説と比較!

原作の映画と違う点

東野圭吾の原作小説と映画では大まかな流れこそ一緒ですが、かなり異なる点多くありました

映画では設定が変更されていたシーンについて、原作小説ではどうだったか解説していきます。

犯人・森沢光留の性別について

原作小説では犯人・森沢が女装した生物学的に男性。普段は男の顔で、化粧をバッチリして変装している設定です。

対して映画では麻生久美子が演じており、見かけ自体が完全に女性よりで生物学的に男性と明言されてなかった気がします(間違いだったらコメントで教えてください)。

新田の発言で「男性として生きてきた…」みたいなことを言っていたので、映画では生物学的には女性で、心は男性という、原作と逆のトランスジェンダーなのでしょう。

映像にすると、女装して変じゃない男性キャストが探せないし、演技にも違和感が出るから設定を変えたのかもしれません。

ちなみに小説での森沢は性同一性障害の疑いがあり、声変わりがなく中性的な声だったので女装がバレなかった設定です。

あと細かい点では、映画のラストで森沢は仮面貴族みたいな格好でしたが、小説では教会での犯行時はホテルマンに扮し、ラストのパーティー会場ではマイケル・ジャクソンに変装していました。

また森沢は礼信会・モリサワクリニックの医師で御曹司。

森沢は過去には、仲根緑でなくマキムラ緑を名乗っていた点なども映画ではなかった設定です。

映像ショーが「ハッピーバースデー」じゃない

原作では仲根緑(森沢)が見せされる向かいのビルの映像ショーは「ウェルカム・トゥ・ホテル・コルテシア」というメッセージです。

これは正直、映画版の「ハッピーバースデー」の方がいいと思いました。

双子の妹・世羅の誕生日(命日)を、犯人・森沢が思い浮かべて泣いているのだという、涙の理由が後で発覚して、しみじみと伝わってくるからです。

新田VS氏原

原作では新田と山岸は刑事とホテルマンのプライドをぶつけ合う描写はほとんどなく、協力関係にあります。

代わりに氏原と新田のバトルがバチバチです。

氏原は映画以上に有能に描かれていて、巧みな推察はもちろん、「ホテルマンは刑事以上に人を見抜ける」っぽい発言までしています。

ちなみに原作では、氏原と山岸のキャリアアップバトルもありませんロサンゼルス転勤に推薦されているのは、山岸だけです。

映画ではどちらかといえば新田VS山岸のバトルが強調されていましたね。

能勢の功績がでかい

「初犯にしては、犯人が手慣れすぎている」など、映画で新田の閃きになっているものが小説では能勢のアイデアです。

能勢の出番と功績は映画以上に大きいです。

ホテル潜入捜査が3日前から

映画では12/31に潜入捜査が始まりますが、原作では大晦日の3日前くらいから始めています。

映画的には24時間のタイムリミット!とした方が聞こえがいいと考えてのことでしょう。

新田と山岸のラストシーンの違い

原作ラストでは、新田は事件から少し後にホテル・コルテシアに宿泊に来ます(氏原が部屋が空いているからと、なんと仲根緑(森沢)が泊まっていた1701号室に泊まることに)。

新田は今日か明日のディナーに山岸を誘うのですが、重要なのは山岸が「無理です」という前に新田が「無理ですか?」と言ってしまうところ。

ここは山岸に「無理です!」と言わせて、心の仮面を取るような意味を匂わせた映画の方が良かったと思います。

映画でカットされていたシーン

犯人の元恋人・笠木奈緒

原作では男性恐怖症でマネキン絵師の笠木奈緒という森沢の元恋人が証言をしました

この笠木が、森沢の自殺した双子の妹・世羅(せら)との関係について

「森沢は妹・世羅が大好きで美しいと感じていたらしい。中学のときに世羅に化粧をされたら彼女そっくりだったことが、女装に目覚めるきっかけだったのだと思う」と語ります。

笠木奈緒は別に男が出来て、その男性の手引きで森沢の洗脳から逃げられたようです。

殺された春菜の旧友・早川

能勢が殺害された和泉春菜の旧友・早川(研修医)を訪ね、春菜が実家を出たのは母の再婚相手に性的な行為を強要されたからだとわかり、犯人森沢が春菜に妹を重ねた理由がより明確です。

日下部と仲根が一緒に食事している

日下部の誘いを仲根が断るのは一緒ですが、原作で彼は仲根の打ち明け話(パートナーとの死別)を聞いた成り行きで仲根の部屋で食事をしています(結局、日下部は何も気づかずに終わった)。

日下部が山岸に「2人きりで会わせてくれると約束したのに、なぜ仲根さんに夫婦で会ってもいいと言った?」と詰めよったので、仲根が山岸をかばうように死んだパートナー(作り話)を自然な流れで切り出しました

ちなみに原作では、日下部(ホテル・コルテシアの人事部で本名は香坂)を推薦したのは支配人・藤木。

年末の大変な時期で、しかも殺人犯が来る予定で潜入捜査があるのに、山岸のテストをした違和感がより強いです。

映画と小説どっちがいい?

東野圭吾の原作小説も良かったですが、総合的にはやっぱり映画のストーリー(脚本)の方がほんの少しだけグレードアップしていたような気がします。

特に映画では小説と違って、

  1. 新田VS山岸の展開が熱い
  2. 映像ショー「ハッピーバースデー」により犯人森沢の涙の理由がより明確
  3. 山岸の「無理です」の心情変化が、ストーリーの締めくくりとして美しかった

どちらがいいかは好みにもよると思うので、ぜひ原作も読んでみてください。

『マスカレード・ナイト』ネタバレ感想・評価

『マスカレード・ナイト』の評価は88点。
豪華俳優陣がたくさん参加する映画ってハズレも結構多いですが(『新解釈三国志』とか…)、『マスカレード・ナイト』は大当たりだったと思います。
木村拓哉はいつも通り華があってかっこいいですし、小日向文世、石黒賢などなど脇を固めるキャストにも味わい深さがありました。
ストーリーもミスリードや伏線が不自然でなく散りばめられ(タンゴは若干不自然かもですが)、サスペンスとしての完成度も高かったです。サスペンスとしては、今年公開だと菅田将暉主演の映画『キャラクター』に次ぐ完成度でした。
ラストのほっこりする新田と山岸のバディの行く末など、安易な恋愛関係で終わらずに含みがありヒューマンドラマとしても素晴らしかったと思います。
監督・鈴木雅之や、撮影・江原祥二など制作陣が生み出すシンメトリーな映像ホテルの景観やストーリーに重厚感を与えていて見応え抜群でした(前作もそうですが)。

伏線的シーン

木村拓哉のアルゼンチンタンゴ(冒頭と終盤)は見応えある美しいシーンである一方、中村アン演じるダンスインストラクターが“足の動き”をほめ、それがラストにつながるなど伏線的な演出も絡めていたのが素晴らしかったと思います。
序盤で田中みな実演じる宿泊客の要望で窓から見える明石家さんまの巨大看板の前に白い風船をたくさん並べて隠したシーンも、これからくる宿泊客たちは仮面を被っていて正体がわからないと暗示しているようでしたし、ホテルウーマン山岸の人の仮面の内側まで見たくないという深層心理を表現している感じもあってよかったです。
『マスカレード・ナイト』は、数ある東野圭吾原作の映画の中でも個人的にNo.1に推したい作品でした。

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