映画『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』ネタバレ考察ラスト結末の解釈と感想レビュー

  • 2024年4月8日

映画『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』=バードマンは、ワンカットの撮影で出演者の心理や裏側をシニカルに描いた超傑作で非常に楽しめた!

マイケル・キートンのバットマンを小さい頃VHSで何回も観ていたので、この映画はマイケル・キートンのリアルにしか見えなかった。芸術、名声で悩む役者にとっては真実の物語なのかもしれない!

そこでバードマンがなぜ成功したか?様々な角度から核心に迫っていきたいと思う!

映画『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』あらすじ

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かつてヒーロー映画バードマンで一世を風靡したリーガン(マイケルキートン)はブロードウェイの舞台に全てを捧げ復活を目指す。

演技が下手な共演者が怪我で降板し、マイク(エドワード・ノートン)急遽代役を務めることになった。

しかしプレビュー公演では予期せぬハプニングが続出することに。

映画『バードマン』の見どころは?

役者のコミカルな葛藤

マイケルキートン演じるリーガンの葛藤が非常に見応えがある。

現実と”バードマンの囁き”の狭間で苦しみ、楽屋をメチャクチャに破壊したりする一見シリアスなシーンだが、映像や演技で一歩引いて冷静に観ることができ、何だが面白おかしいという変な感情が湧き上がる。

マイケルキートンの感情の出し入れが非常に上手く見応えバッチリ!

エドワードノートンのマイクは最低な奴だが、心の何処かにもろい部分を垣間見せる。

エマストーンの不良娘役も儚げで虚ろな雰囲気がすごくいい!

全編ワンカット

撮影のエマニュエル・ルベツキは構図やコントラストがメチャクチャ綺麗な映像を、全編ワンカット(完全なワンカットではない)でみせてくれる。

ワンカットで全部美麗にまとめあげる技術に脱帽!

場面が途切れないので観ている人は登場人物に入り込みやすくなり、その空間にいるかのような素敵な気分を味わうことができる。

芝居や役者に興味がある人はもちろん、誰が観てもコミカルな葛藤に引きこまれること必至!

バードマンを見る前にバットマンを観ておこう

バードマンは昔売れた役者がカムバックのため奮闘するというものだが、これは主演マイケルキートンの境遇そのまま。

彼が実際に演じていたのは1989年ティムバートン監督の「バットマン」この映画を事前に観ておけば、バードマンを見るときにさらに感情移入できることは間違いない。

バットマンはダークなヒーローものだが、非常に評価が高く楽しめる傑作!

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映画『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』ネタバレあらすじ解説

不遇の役者リーガン

バードマンの続編を断って以降ヒット作に恵まれないリーガン(マイケル・キートン)はブロードウェイでレイモンド・カーヴァーの短編『愛について語るときに我々の語ること』を上演し、かつての名声を取り戻そうとしていた。

プレビュー公演直前に”ヘボ共演者”が怪我で降板したことを契機に、同じく共演者のレズリー(ナオミ・ワッツ)の恋人で人気俳優のマイク(エドワード・ノートン)のキャスティングに成功する。

しかしマイクはプレビュー公演で酔って起こり出したり、レズリーと舞台上で”本番行為”をしようとしたりと破茶滅茶な行動で周囲を困惑させる。

リーガンは堪忍袋の尾が切れ、勝手に日焼けマシーンを購入して使っているマイクを叩き起こしてブン殴る。

バードマンの囁きと狂気

プレビューはマイクの評価ばかり目立ち、怒り狂うリーガン。

頭の中でバードマンが低音ボイスでブロードウェイなんかやめろと勝手なことをいい、ブチ切れて楽屋を破壊する。

しかし、ジェイク(ザック・ガリフィアナキス)に、「マーティン・スコセッシ」が観にくると嘘をつかれ、何とかやる気を取り戻す。

プレビュー公演中、娘のサマンサ(エマ・ストーン)がまだマリファナを吸っており、悪態をついた挙句、マイクと良い仲になっているのを目撃したリーガン。

リーガンは気持ちを抑えようと外で一服している最中ドアから締め出され、パンツ一丁でブロードウェイのストリートを走る羽目になり世間から笑い者にされる。

恋人のローラにもひどい言葉を浴びせ傷つけてしまったリーガン。

バーで酒を飲んでいると批評家の頂点に君臨するタビサ(リンゼイ・ダンカン)と口論になり、最低の批評を書くことになるだろうと罵られる。

ウイスキーを買い、通りで泥酔(でいすい)するリーガン。明け方バードマンが囁き、ストリートを縦横無尽に飛び回る妄想を見る。

衝撃のブロードウェイ

公演初日。第一幕は観客が絶賛の反応をみせていた。

リーガンは第2幕で小道具を本物の拳銃をすり替え、自殺する場面で引き金を引いた。

会場はスタンディングオベーション。公演は大成功に終わった。

リーガンの最期

リーガンは鼻が吹き飛んだだけで死なずにすみ、すでに新しい鼻がつけられている。

批評家のタビサも”無知がもたらす予期せぬ奇跡”だと大絶賛。ジェイクも大喜びだった。

リーガンは顔に包帯を巻いたまま、娘と抱擁を交わす。

サムが病室に入るとリーガンはいなかった。慌てて窓の下を覗き込むとそこにもリーガンはいない。サムは上を見上げて微笑むのだった。

映画『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』END

映画『バードマン』ラストをネタバレ考察

ラストでリーガンは窓に出ていなくなるが、サムは上を見上げて微笑んでいる。

これはどんな意味だろうか。

  1. サムはリーガンが飛び降りてバードマンとして満足げに天に召されているのを見たのか?
  2. 彼女が嬉しそうに笑っているところをみると、もしかすると窓の上で元気にバードマンの真似事でもしていたのか?

この2つのパターンが考えらるが。重要なのはリーガンが窓の外に立つ前、名声も家族の愛も全て満たされ幸せな気分で窓の外を眺めていたということだと思う。

バードマンにも別れを告げていたし、過去の名声も、もう必要ないという決意だろう。

いずれにせよ、彼は世間の評判をひっくり返すという目標を達成し、娘サムも父親を理解した。というハッピーエンドには変わらない。

どちらとも取れる結末、想像が難しい結末を選んだところが面白い。

本当に飛び降りたか、そうでないか、どちらとも取れるということは、それは重要でないということだろう。

個人的には「飛び降りてない」と思いたいが、飛び降り自殺をしていたとしてもハッピーエンドに捉えられる超斬新なラストだった。

ドラム一発!バードマンは音楽面でも革新的

気づいたかもしれないが、バードマン上映中に流れている音楽はほぼドラム1台による演奏。リーガンなど登場人物の心情を反映させた生なましいドラムサウンドが劇中鳴り響いている。

ドラムだけで映画の背景音楽を支えるというのは非常に奇抜で斬新。今作は音楽面でも評価も高かったが、オーケストラなどの演奏でないせいか、アカデミー賞のノミネートにもならず。

しかし、彼の演奏が素晴らしかったことには変わりはない、どんな解説映像があったので貼っておく。

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映画『バードマン』の好きなところ!

バードマンでは見応えがあるシーンが非常に多かった。特に好きな点はこれら。

バードマンと会話するリーガン

リーガンに「もうやめてバードマンの新作を作ろう!」と皮肉を言いまくるバードマンとリーガンの葛藤が面白い。

楽屋で叫んだり物に八つ当たりしているだけなのだが、マイケルキートンの圧巻の演技力とエマニュエルルベツキの撮影により、ものすごく引き込まれ見応えもバッチリ!

意外と繊細なマイク

舞台の役作りのためなら人のことなんかどうでもいいと見えるマイクだが、リーガンに殴られても許したり、EDで気弱になっていたり、舞台の上でしか自分を出せないとサマンサに打ち明けたり、意外に憎めないキャラクターになっている。

さすが演技派のエドワード・ノートン!!

バードマンそのものになったリーガン

舞台上で自分を撃ったリーガンは、包帯でグルグル巻きにされている顔がバードマンそっくり、おまけに新しい鼻もバードマンに似ている。

バードマンを乗り越えたのか?

次の章でこの点とラストシーンについて詳しく考えてみよう。

映画『バードマン』登場人物・キャスト

リーガン・トムソン=マイケル・キートン

20年前にバードマンで人気者になったが、その後は鳴かず飛ばず。

娘がドラッグに溺れてしまったこともあり、ブロードウェイで文芸劇を演じることで世間の”昔の人”という評判をひっくり返そうとする。

バットマン後は傑作に恵まれず、主演のマイケルキートンの人生そのまんま表現している。

マイケルキートン出演作品

マイケル・キートンはティム・バートン監督の『ビートル・ジュース』『バットマン』『バットマンリターンズ』でブレイクした後、一時期低迷。

本作バードマンで再ブレイクして『スポットライト/世紀のスクープ』『スパイダーマン/ホームカミング』『シカゴ7裁判』などに出演。

マイク・シャイナー=エドワード・ノートン

舞台役者が怪我で降板したため、急遽キャスティングされたブロードウェイの有名俳優。

全てのセリフを覚えてアドリブやアドバイスをしてくるなど、役者として非凡な才能をみせるが、舞台以外では破天荒な厄介者。

演技力に定評があるエドワード・ノートンの性格がキャラにそのまま反映された印象を受ける。

エドワード・ノートン出演作品

エドワード・ノートンは、若手のときに見せた狂気の演技『真実の行方』でブレイク。

その後もフィンチャーの『ファイト・クラブ』など話題作に出演し続ける。

サマンサ(サム)=エマ・ストーン

リーガンの娘で彼の付き人の仕事をしている。以前はドラッグに依存して更生施設に入っており、いまも少量のマリファナを吸っている。

サマンサを演じたエマ・ストーンは映画『ラブアゲイン』や『ララランド』『クルエラ』で有名な女優。

レズリー・トルーマン=ナオミ・ワッツ

ブロードウェイの出演が夢であったなかなか売れない女優、恋人のマイクを代役に選んでしまったことでトラブルが続出!

売れない女優というのはナオミ・ワッツ自身でもある。彼女もデヴィッド・リンチ監督のマルホランドドライブで注目されるまで、役が貰えずっと苦労してきた。

本作においてキャストの大半が自分の半生をそのまま映画の登場人物に背負わせている。

ナオミワッツ・出演作品

女優のナオミ・ワッツはデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライヴ』で主演を務めてブレイク。

同じくリンチ監督の『ツイン・ピークス:リミテッドイベントシリーズ』(2017)にも出演。

ジェイク = ザック・ガリフィアナキス

リーガンの親友で舞台プロデューサー(弁護士)。上手くリーガンを持ち上げて何とかブロードウェイの初公演を成功させようとしている。

ハングオーバーシリーズで有名なザック・ガリフィアナキスだが、バードマンでは資金面やトラブルを解決してくれるよき良心。

ローラ・オーバーン=アンドレア・ライズボロー

リーガンの恋人で舞台役者。気丈に見えるが、舞台前の様々なトラブルでイライラするリーガンの言動で傷つく。

映画『バードマン』作品情報

公開年/制作国 2014年・アメリカ
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
ニコラス・ジャコボーン
アーマンド・ボー
アレクサンダー・ディネラリス・Jr
キャスト マイケル・キートン
ザック・ガリフィアナキス
エドワード・ノートン
エマ・ストーン
エイミー・ライアン
ナオミ・ワッツ
音楽 アントニオ・サンチェス
受賞 アカデミー作品賞
アカデミー監督賞
アカデミー脚本賞
アカデミー撮影賞

監督は「バベル」や「レヴィナント蘇りし者」でも有名な アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。彼は登場人物の心情を映し出すことに優れている。

バードマンは2時間全編ワンカットにみせる繋ぎや、コントラスト、構図なども非常に見応えがあるが、撮影担当のエマニュエル・ルベツキは「ゼロ・グラビティ」「バードマン」「レヴィナント蘇りし者」で3年連続アカデミー撮影賞の快挙を達成した天才!

バードマンの終始画面に惹きつけられる感覚はエマニュエル・ルベツキが担っている部分が大きい!

最後に感想まとめ

マイケルキートンやエドワードノートン、ナオミワッツなどキャストの背景や感情をそのままワンカットの秀麗な映像と生々しいドラミングでまとめ上げたバードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)は、映画史に残る革命的な作品になった。

感性や感情を揺さぶる映画『バードマン』のような素晴らしい作品が、今後のハリウッドで名作が数多く誕生する契機になればと願う!