アメリカンのファミリーが抱える様々な問題を非常にシニカルに描いた映画『アメリカン・ビューティー』!
アメリカはもとより、現代社会を痛烈に風刺するモダンアート的な作品になった。
ジャンルレスでコメディかヒューマンドラマかサスペンスかわからねえ!でも社会問題を笑って考えることができる超傑作で、映像や構図も素晴らしい。絶対見るべき!
この記事では、アメリカン・ビューティーの意味不明な点をあらすじネタバレ有りで徹底解説・考察。登場人物キャストも紹介。
アメリカン・ビューティー(american beauty )の意味
タイトルになっているアメリカン・ビューティーはバラの一種。
アメリカ原産で、真っ赤な色が特徴だ。
映画内でもこのアメリカン・ビューティーというバラが主人公・レスターの妻が育てていて、花びらが映像を彩ってくれる。
プラスしてアメリカン・ビューティーには文字通り「アメリカの美徳」という意味もかけられている。
古き良きアメリカの美徳は、現代に通用するのか?そんなメッセージが込められているのだ。
抽象的なメッセージを持つバラを噛み締めろ!
映画アメリカン・ビューティーの作品情報・キャスト
社会的な問題をコミカルに捉え、アカデミー作品賞も受賞したアメリカン・ビューティーのキャストや製作陣はこの人たち。
監督 | 主要キャスト | 公開年 製作国 上映時間 | 世界興行収入(円) | 受賞歴![]() |
サム・メンデス | ケヴィン・スペイシー アネット・ベニング ソーラ・バーチ ウェス・ベントリー ミーナ・スヴァーリ クリス・クーパー | 1999年 アメリカ 2時間2分 | 391億円 | アカデミー作品賞 アカデミー監督賞 アカデミー主演男優賞 アカデミー脚本賞 アカデミー撮影賞 |
脚本![]() | 撮影 編集 | 音楽![]() | 主題歌 |
アラン・ボール | コンラッド・L・ホール タリク・アンウォー | トーマス・ニューマン | – |
監督のサム・メンデスは「007スカイフォール」の監督としても有名。『アメリカン・ビューティー』は「サンセット大通り(1950)」や「アパートの鍵貸します(1960)」を参考にして作ったようだ。
アカデミー賞総ナメ
アメリカの中流家庭が抱える問題を描いたこの作品はアカデミー賞でも5部門を受賞。(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞)。非常に完成度が高い社会風刺ムービーを描くことに成功したといえる。
興行収入391億円の大ヒット
興行収入は391億円!1999年の全公開作品の中で第8位!
面白いが正直そこまで稼げる映画か?とちょっと思ったが、テーマ的にアメリカ人が観れば大爆笑なんだろう。
あらすじ(ネタバレなし)
広告代理店に勤めるサラリーマンのレスター(ケヴィンスペイシー)は中年になり、夫婦間の危機や反抗期の娘(ソーラバーチ)を抱え、生きる活力を失っていた。
そんなある日、娘のチアリーダーダンスを嫌々見に行くと、娘の友達であるアンジェラ(ミーナスヴァーリ)に一目惚れしてしまう!
映画『アメリカン・ビューティー』登場人物・キャスト
レスター・バーナム=ケヴィンスペイシー
レスターは、妻・キャロラインと喋ることにストレスを感じ、娘に関心を持たない、生きる希望を失った、典型的な中年の危機の男性。
娘のチアリーディングダンスを観に行った際、センターで踊っていたアンジェラにズッキューンしてしまう非常に痛いおっさん。
青春時代にすがりつき、年下が無害だとわかると調子に乗り出す「あっ!こんなヤツいるいる!」というキャラクター。
この冴えない変態嗜好の中年男性を、ケヴィン・スペイシーは完璧に演じ切りアカデミー主演男優賞の栄冠を手にした。
セブンやユージュアル・サスペクツから個人的に大好きな俳優!
キャロライン(妻)=アネット・ベニング
キャロラインは、レスターの妻。
ヒステリックで上昇志向が強い不動産屋。
思い込みが強く、自分の趣味を他人に押し付ける。「あっ!こんなオバサンいるいる!」
中年になり、恥じらいなどのタガが外れてしまった女性をアネットベニングが強烈に演じる。
このキャラでアカデミー助演女優賞にノミネートされるが受賞はならず。
女優アネット・ベニングは『マーズ・アタック』や『ナイル殺人事件』に出演。
アンジェラ(娘の親友)=ミーナ・スヴァーリ
アンジェラは、レスターの娘・ジェーンの友だち。
性に対して抵抗がなく、他人を見下すモデル志望の女子高生。
キワどいというか、ポロリというか、高校生役なのにモロ上半身裸のシーンもあり、アメリカって1999年当時はコンプライアンスまだゆるいのか?と思ったらミーナ・スヴァーリは当時20歳。ギリOKだったのかな。
ジェーン(娘)=ソーラ・バーチ
ジェーンは、レスターの反抗期の娘。彼女もモロにポロリのシーンがあるが、公開当時17歳。
ありゃ。今のハリウッドだとポロリもアウトな年齢だろう。
ちなみにソーラ・バーチは、ウォーキング・デッド10(2020)にガンマ役で出演。
ウォーキング・デッドシーズン10の後半、9話〜16話まであらすじを完全ネタバレ解説。キャロルの精神状態は、相変わらずヤバイ状態だ。一方で、ニーガンとアルファという最強 カップルが誕生・・・マジか…。TWD10各話の[…]
リッキー・フィッツ=ウェス・ベントリー
レスター家の隣に越してきた高校生。ハンディカメラでの撮影オタクでマリファナの売人という、今作で一番トリッキーな役柄。
親への反抗は立場を悪くするだけだと変に達観し、怒る父・フランクに「イエッサー」と返答する。
演じるウェス・ベントリーの目力は異常(笑)
フランク・フィッツ=クリス・クーパー
リッキーのパパ。アメリカ軍の大佐で典型的な愛国主義者とおもいきや、リッキーが悪さをすると躾のために殴る。
ある重大な秘密を隠している。
見どころ
社会問題ネタがわんさか!
- 妻の話にストレスを感じ、娘の友人に恋するロリコン親父
- 綺麗な庭や高級家具を大事にする妻
- 親に反抗できない子ども
- マリファナ
などなど、そういった問題がアメリカのスタンダードなんだよ!とコミカルに描くから面白い
社会問題のネタは日常に潜んでいるのだ!
映像が非常に凝っている
アメリカン・ビューティーの撮影を担当したコンラッドLホールはアカデミー賞常連の超一流で、今作でもアカデミー撮影賞を受賞。
バラを敷き詰めた幻想的な映像から、日常的なシーンまでが、非常に重厚感があって見応えがあるものになっている。
アメリカン・ビューティーを点数評価!観るべき?
アメリカン・ビューティーの点数は84点!
すごく面白い場面がありつつも、映像はめっちゃ重厚感があるのでコメディとヒューマンドラマの中間のような、他の作品にない独特の雰囲気が出来上がっている。
文化の違いから、アメリカ人にバカウケ間違いなしの場面でも日本人はスルーしてしまう可能性がある。
各シーンに笑いが詰まっていると意識して見れば楽しめるだろう!
68%くらいの人間は楽しめるであろう作品。
完成度は間違いなく高く、映画好きは絶対に観ておくべき!
※以後ネタバレになりますので、まだ映画を観てない人は絶対に次の項目には行かないでください!
アメリカン・ビューティー評価84点Aランク
各要素と、序盤・中盤・ラストの合計を100点満点とし計算しています。
結果アメリカン・ビューティーは
84点 Aランク評価 ☆(星)4.2
評価詳細を
映画の各要素(10点満点中)
ストーリー | キャスト・演技(ハマり役) | テンポ | 演技・シーン |
8 | 9 | 7 | 10 |
セリフ | 映像の見やすさ(構図) | 音楽・楽曲 | 印象度(記憶に残る) |
8 | 10 | 7 | 7 |
序盤・中盤・ラスト(5点満点)
序盤 | 中盤 | ラスト・結末 | 話の筋が通っているか? |
5 | 3 | 5 | 5 |
映画『アメリカン・ビューティー』ラストのオチや結末を徹底考察!
なぜ大佐はレスターを撃ち殺したのか?ちょっと唐突なシーンだと感じる人もいるだろう。
まず、大佐がレスターにキスするシーンの意味を考えることが大事である。
一見意味不明で、レスターがゲイかどうか確かめているのか?と思ってしまうが、そう考えてしまうと面白くない!
レスターはその後「あんたは勘違いしている」と言っているので、ゲイなのかどうか確かめていたなら疑いが晴れたレスターを殺す動機はない。
実際はフランク大佐自身がゲイであり(コレが第一のオチ)、それがノンケのレスターにバレてしまったので殺した(第二のオチ)と考えるのが妥当だろう。
フランク大佐は立場や教育上ゲイを忌み嫌う発言をしていたことに加え、息子を勘当して失意の底にあったという条件もあり、混乱してレスターを撃ち殺すという悲劇に走ってしまったのだ。
自分がゲイだと心に偽り続け、隠して男らしく振る舞うために息子に暴力を振るい、そのすべてを間違いであると悟ったのだ。
フランク大佐の妻が廃人のようになっているのも、彼がゲイだと知ったからだと推測できる。
フランクの一家もまたアメリカン・ビューティー(アメリカの美徳)の犠牲者なのだ。
エンディングの別パターン提案
アメリカン・ビューティーでラストでは、フランク大佐が血だらけになっていたので、彼が犯人だったということがわかるが、あえて誰が殺したかわからない!というオチも面白いのではないか?
アメリカを象徴するウザすぎ妻・キャロラインや、ティーンエイジャー代表の気取ったアンジェラにもう少しだけ動機を持たせれば、それも可能だったと思う。
誰がレスターを撃ったのかわからなければ、アメリカが抱えている問題それぞれが彼を殺す可能性がある抽象的なラストになる。
それもまた乙だが、製作陣はあまりサスペンスチックにしたくなかったのかもしれない。
素晴らしいシーンを紹介
ゴミ袋が舞っているシーンに感動するリッキー
リッキーはジェーンを部屋に呼び、一番美しい映像ということで、ゴミ袋が同じ場所で宙に舞い続ける映像を見せている。
「美しいと思っているものは実際はゴミだ!」というアイロニー(皮肉)な表現とも捉えられるが、僕は逆にゴミに美しさを見出すリッキーの感性と、それに感動するジェーンの姿に感動した。
まさに素晴らしいモダンアートの世界であり、見る人によって解釈が違う”事象”の一例である。
窓のジェーンを映すリッキー
窓辺でこちらを向いて服を脱ぐジェーンをリッキーがビデオカメラで撮影するのだが、リッキーがモニターに映しているものを流しているので、ジェーンの方向からみると、リッキーと大画面に映る自分の姿が見える。
それが窓越しなのがとても良い。非常に考えられた構図。
アンジェラとの会話で自分を見つめ直すレスター
アンジェラを抱くことはせず、自分を見つめ直しながら会話するレスター!自分がすでに持っていた幸せや美徳を噛みしめる彼の佇まいに心が揺さぶられる。ケヴィン・スペイシーの演技に感服!
死んだレスターを見て微笑むリッキー
死んだで血で染まったレスターの顔が笑っていたのを見て、「彼は幸せに旅立てた」とでもいうかのように一人納得して微笑むリッキー。
アメリカン・ビューティーは死を越えたところにあったのか?とても考えさせらるシーン!
なんかリッキーばっかりで、今更自分が彼のキャラを好きだったと気がつく。
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