映画『月の満ち欠け』ネタバレ感想:ホラーなの?どら焼きや傘の意味・ラスト考察!伏線解説

  • 2023年3月24日

人気小説を実写化した映画『月の満ち欠け』。大泉洋・有村架純・柴咲コウ・目黒蓮(Snow Man)ら4人が織りなす生まれ変わりの物語。

CineMag
感動はありつつ、ぶっちゃけ〇〇でした…。怪作です。

作品情報・キャスト・あらすじ、忖度なしのぶっちゃけ感想・評価どら焼きや傘の本当の意味を考察、伏線解説ストーリーネタバレ結末解説、を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『月の満ち欠け』作品情報・キャストと演技の印象

公開・上映時間:2022/12/02・128分
ジャンル:ヒューマンドラマ・恋愛・ファンタジー
英題:『Phases of the Moon』
年齢制限:G(年齢制限なし)
監督:廣木隆一
脚本:橋本裕志
原作:佐藤正午の小説「月の満ち欠け」
音楽:FUKUSHIGE MARI(ゲスの極み乙女)

廣木隆一監督の作品は2022年にかなりたくさん公開されていて『ノイズ』、『母性』、アマプラの『モダン・ラブ東京』などたくさん拝見させていただきました。

本作『月の満ち欠け』は大衆に寄せているようでかなり個性的な不思議な作品となりました。

月の満ち欠け/登場人物・キャスト紹介

主人公・小山内堅(おさないつよし)役の大泉洋さんは、明るい演技とシリアスな演技の切り替えがすごかったです。

近年の映画ではNetflix『浅草キッド』(2021)の深見師匠役がとってもよかった。『新解釈・三国志』はアレでしたけど(笑)。山田洋次監督の『こんにちは、母さん』(2023年公開)にも出演します。ミュージカル映画『シングフォーミーライル』では主人公ライルの日本版の歌唱も務めました。

有村架純さんはミステリアスな人妻・瑠璃役。影のある役柄が印象的でした。『るろうに剣心最終章The Final / The Beginning』(2021)の巴役がすごく良かったと記憶しています。

三角哲彦(みすみあきひこ/アキラ)役の目黒蓮(Snow Man)さんは哀愁あるイケメン感がぴったり。前夜祭ライブビューイングでは大泉洋さんとの掛け合いがとっても楽しそうで、笑えました。

小山内の妻・梢(こずえ)役の柴咲コウさんは、あどけない笑顔が素敵すぎます。個人的には柴崎コウさんが妻役だったから感動が生まれていたと感じました。2022年は実写『ホリック xxxHOLiC』、『ガリレオ沈黙のパレード』『劇場版/Dr.コトー診療所』など大活躍。

伊藤沙莉さんは小山内の娘の親友役。高校の制服が似合ってました。映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021)のヒロイン役が印象に残っています。『ミステリと言う勿れ』にも出てましたね。

正木竜之介役の田中圭さんはとにかく怖かった…。いつもは優しそうな表情なのに。

月の満ち欠け・あらすじ

映画『月の満ち欠け』

©2022「月の満ち欠け」製作委員会

これは生まれ変わりの物語。

8年前に不慮の事故で最愛の妻と娘を亡くした小山内堅(おさないつよし/大泉洋)のもとに、高校の頃に娘と同級生だった緑坂ゆい(伊藤沙莉)から電話がかかってくる。

小山内は新幹線で東京へ行き、妻と娘の事故現場に花を添えたあとにホテルで緑坂ゆいと会った。母親になった彼女は娘を連れていた。

ゆいは死んだ瑠璃について小山内が知らなかった事実を語り出す。

瑠璃は妻の梢(こずえ/柴咲コウ)の運転で事故に遭ったとき、ある男に会いに行こうとしていたという。

生まれ変わりなど信じていなかった小山内だが、驚きをかくせなくなり…。

ネタバレなし感想・海外評価

シネマグ
見る人や捉えかたで評価や感動がおおきく分かれる作品だと思いました。

映画は理屈でなくハートで感じるタイプの人や、スピリチュアル系が好きな人はハマるかもしれません。

逆にいろいろ考えてしまうと感動以外に疑問点やある種の恐ろしさが感じられ、作品と距離ができてしまいます。

個人的には廣木隆一監督なら戸田恵梨香さんと永野芽郁さんの『母性』のほうが好きでした。

おすすめ度 60%
世界観 70%
ストーリー 55%
IMDb(海外レビューサイト) 5.7(10点中)

※以下、『月の満ち欠け』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『月の満ち欠け』ネタバレ感想・評価

感動と怖さが入り混じる

映画『月の満ち欠け』の評価は56点。
シネマグ
感動と困惑が同時に押し寄せる複雑な作品でした…。

ラストで小山内(大泉洋)が、事故死する前の妻・梢(柴咲コウ)が自分への想いを語ったホームビデオを見て涙を流すシーンが1番感動しました。

ただ正直、メインテーマである生まれ変わりについては感動よりも困惑の気持ちが強かったです。

1番の理由は、生まれ変わった7歳の瑠璃がかたくなに前世の願いを果たそうとしていた点。一体だれの人生を生きているのか?と疑問がわいてしまいました。

母の緑坂ゆい(伊藤沙莉)は7歳の娘・瑠璃を1人で高田馬場駅の前に行かせます。

瑠璃は有村架純の姿に戻って三角(アキラ)と抱き合っていましたが、それは魂をヴィジュアル化した映像でしょう。

実際は7歳の女子と30代後半の男性が交差点で抱き合っていたかと思うとちょっと怖くなります(笑)。

シネマグ
瑠璃が前世の恋愛を成就させるためだけに生まれてきたかのようで没頭できませんでした。

今後2人がどう生きるかも気がかりというか、7歳と30代後半で恋愛するのか、想いを告げあって次の人生に進むのかも不明瞭な感じでした。

タイトルが『月の満ち欠け』なので、魂は死んで終わりでなくずっと生き続けるというメッセージがあるのでしょう。

輪廻転生(りんねてんせい)を繰り返し、死んでしまっても次の人生で幸せになれるというわけです。そこには問題ありません。

問題は相対的に現世の意義がうすく感じられる点です。

現世は前世の悲願を成し遂げるためにあるようにも見えて、少し違和感でした。

成就しなかった恋愛を来世で達成するだけならまだいいです。

しかし生まれ変わった瑠璃は正木竜之介という負の因縁まで引きずっており、梢も巻き込むかたちで事故にあって死亡します。

生まれ変わった7歳の瑠璃もまた、竜之介に追われる可能性があります。よく考えてみるといろいろ怖いです。

また、小山内の子供として生まれ変わった瑠璃がどんな心情で生きてきたかもフワッとしています。

アキラの顔などかなり詳細に覚えているので、記憶はかなり鮮明に残っているようです。

だとしたら普通の子供の感情ではなく、子供の皮を被った大人みたいな感じでずっと過ごしてきたのでしょうか。

いちおう映画を見ていると小山内の子供としての幸せもしっかり噛みしめているとわかります。

ただ心のどの程度が前世に占められているのかがわかりにくく、瑠璃に感情移入しずらかったです。

何かのきっかけで前世の記憶を思い出す程度ならわかりますが、緑坂ゆいの子供として生まれ変わった瑠璃は目つきからして鋭く大人びており、前世の意識をしっかり持っていることがわかります。

7歳の瑠璃は、アキラにたいして恋愛感情があるのでしょうか?そこも疑問です。

小山内と妻の梢(こずえ)が瑠璃のようすがおかしいとヒソヒソ話しているときに、瑠璃がヌッと現れるシーンも怖かったです。

感想を語る犬
ここだけホラー映画でした。

生まれ変わりを気づかれたくないのか、幼い瑠璃は明らかに小山内と梢の生まれ変わりの話をさえぎろうとしてました。

生まれ変わりの感動を伝えるなら、子供が前世の記憶をぼんやりとしか持っていないとしたほうが良かったのでは?

目つきが鋭かったり、大人の女性のように髪をかきあげたり、話を遮ろうとしたり、前世の夫・竜之介に「なんも変わってないわね」と言ったりしているシーンから察するに記憶がバリバリあるようです。

そう考えると感動にホラーのような不気味さが混じってしまいます

シネマグ
記憶がどの程度のこっているか?その受けとりかた次第で評価が180度変わってしまうと思いました。

前世と現世どっちの気持ちが大事なんじゃ?とか考えなければおおきな感動があります。

まあ私はいろいろ考えてしまうタイプなので疑問点が多く浮かんでしまいましたが、会場にいた女性たちは結構みんな泣いていましたし、理屈で考えたり、多角的なものの見方をするとダメな映画なのかもしれません。

演出について、説明しすぎ

生まれ変わり系の作品は余韻が大事だと思うので、考える余白を残さず全部セリフで説明しちゃうのが個人的には好きじゃなかったです。

7歳の瑠璃が「生まれ変わりはわたしだけとは限らない」と発言します。

その前の墓参りのシーンでゆいの娘とみずきが同じ7歳だとわざわざ言っている時点で、みずきが妻・梢の生まれ変わりだとわかります。わたしだけとは限らない発言はべつになくても良かったのでは?

ラストシーンも、みずきの東京のホテルのどら焼き〜発言はよけいだったと思います。

人差し指でシー(黙って)のジェスチャーするだけで梢の生まれ変わりだとわかるはずです。

見ればわかることを口で説明されるとちょっと白けてしまいます。

感想を語る犬
わかりやすくするためにあえてやったのかもしれませんが、映画のよさは映像で伝えられることですから…。

伏線もたくさんありましたがわりと単純明快なものが多かった印象です。

また時系列も人妻の瑠璃と大学生・アキラが恋愛した1981年、瑠璃が成長した80年代〜90年代、瑠璃が死亡した1999年、現在とコロコロ変わるので、もう少しシンプルにしたほうが見やすかったのでは?と思いました。

少なくともクリストファー・ノーラン監督の『メメント』みたいに複雑さが売りではないはずです。

かなり偉そうに言ってしまいましたが、正直な感想なのでお許しください。

動画のレビューも作りましたのでよろしければどうぞ

月の満ち欠け 考察(ネタバレ)

瑠璃が小山内夫婦を選んだ理由は傘

「生まれてくる子供が親を選ぶ」。梢やゆいが言った言葉です。

梢は妊娠中に夢で瑠璃が出てきて「名前を瑠璃にしてと言われた」と話します。

なぜ瑠璃が小山内夫妻を選んだか考えた時に、傘が関係していると思いました。

瑠璃は雨の日にアキラから傘を渡されて優しさに涙します。

梢もビデオで、先輩だった堅(つよし)に傘をもらったことが好きになったきっかけだと語っていました。

瑠璃は天国で自分とアキラと同じように傘で優しい出会いを果たした小山内夫婦のもとに生まれたいと願い、梢の夢に現れたのでしょう。

どら焼き=月

ホテルでゆいの7歳の娘が、小山内のまえでどら焼きを注文します。

小山内がこの場所でよくどら焼きを頼んでいたから、娘の瑠璃だと気づいてほしくて注文したわけです。

ホテルのどら焼きについてはラストで7歳のみずきも言及し、彼女が梢の生まれ変わりだったことが判明します。

シネマグ
個人的にはどら焼きは月の満ち欠けのメタファーだったと思いました。

食べるまえは満月、食べたら半月のカタチですよね。

瑠璃も玻璃も照らせば光る

人妻の瑠璃の「瑠璃も玻璃も照らせば光る(るりもはりもてらせばひかる)」という発言は、小山内の娘の瑠璃にも受け継がれます。

「優れた人はどこにいても目立つ」という意味のこのことわざ。

単なる伏線としてだけでなく、生まれ変わって見た目は変わっても、あなたは私を見つけてくれるという意味が込められていると思いました。

正木竜之介も生まれ変わり?

瑠璃の夫で彼女が子供を産めないとわかると暴力を振るった竜之介(田中圭)。

瑠璃がショップで働いていたときからジロジロ見つめていたり、瑠璃が家から出ていくことを許さなかったり、小山内の娘として生まれ変わった瑠璃の存在に気づいたりと怪しいですよね。

察するに竜之介も生まれ変わりである自覚を持っているのだと思います。

いくらなんでも瑠璃に執着しすぎです。瑠璃と前世で因縁があったのでしょう。

竜之介は「君に見合う幸せを提供できる」的な発言が気になります。

竜之介は前世でもまあまあ金持ちで、金の力で瑠璃に近づいてフラれたのかもしれません。

竜之介が7歳の瑠璃にまで執着しなければいいですけど…。

その他の伏線

冒頭で7歳のみずきが小山内になついていたのは、彼女が梢の生まれ変わりである伏線です。

ホテルでゆいの娘の瑠璃が書いていた花の絵は、小山内の娘・瑠璃が書いていたのと同じ花の絵です。

幼少期の瑠璃がオイルライターを扱えたのは、前世の瑠璃がライターを扱うショップで働いていたからです。

また小山内の娘の瑠璃も、ゆいの娘の瑠璃も小さい頃に原因不明の高熱を出します。高熱を出したあとに前世の記憶を取り戻す設定のようです。

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