映画『流浪の月』ネタバレ考察!ラスト意味/ロリコン関係性,キャスト演技や映像解説,感想評価

映画『流浪の月』傑作でした!広瀬すずや松坂桃李、横浜流星らのシリアス演技と重厚な映像がシンクロしています。

本作は孤立した10歳の少女がある男性と一緒に暮らし、社会的にはロリコン事件とされて居場所を失う物語。

CineMag
観賞後は感動だけでなく苦しさも深煎りテイストな人生を突きつける2022年の傑作です

作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価ネタバレありストーリー徹底考察を知りたい人向けにレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)

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映画『流浪の月』作品情報・キャストと演技の印象

映画『流浪の月』登場人物3人

©︎『流浪の月』製作委員会

公開・制作国・上映時間:2022/05/13・日本・150分
英題:『The Wandering Moon』
ジャンル:ヒューマンドラマ・
監督:李相日(リ・サンイル)
脚本: 李相日
原作:凪良ゆう「流浪の月」(2019)

撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:原摩利彦
配給:GAGA

『フラガール』『悪人』『怒り』など重厚なヒューマンドラマに定評のある李相日監督がメガホンを取り、『パラサイト半地下の家族』『バーニング劇場版』のホン・ギョンピョが撮影を務めています!

叙情的かつ濃密な映像は見応え抜群です。

家内更紗|cast 広瀬すず

更紗は10歳の時に佐伯文と同棲していたことで、ロリコン誘拐の被害者とされた女性。現在は恋人・亮と暮らしている。

本作の広瀬すずは凄かった。過去のトラウマから恋人・亮との肉体関係を嫌がる表情、血だらけで街を歩く狂気など、強烈なインパクトを残すシーンの数々に圧倒されっぱなしでした。

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 佐伯文|cast 松坂桃李

佐伯文は、公園で悩んでいた当時10歳の更紗を自宅に連れ帰って一緒に暮らしたことでロリコン犯罪者とされた男性。

松坂桃李さんは心を失った無の表情、それでも弾ける絶望を完璧に演じ切ったと思います。

痩せこけ、挙動不審な仕草に圧倒され、引きずり込まれました。

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中瀬亮|cast 横浜流星

亮は更紗と同棲している恋人。束縛するタイプ。

横浜流星さんはNetflix『新聞記者』実写化『嘘喰い』でも素晴らしい演技を見せてくれましたが、本作ではもう1段階上にいったと思います。

自己中のクズな役柄がこんなに上手くできるとは…。ギラギラした目つき、怒りの溢れさせ方など、リアリティ抜群で怖かったほど。

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その他の登場キャラ・キャスト

10歳の更紗|cast 白鳥玉季→鼻や口が広瀬すずに似ていて親戚か?と思うほど。素晴らしいキャスティングのおかげで感情移入できました。よくある「子役が本人に全然似ていない」とは真逆の成功パターン。

谷あゆみ(佐伯文の彼女)|cast 多部未華子→登場シーンは多くないですが、涙のシーンは凄かったです。日曜劇場『マイファミリー』も毎週見てます!

安西佳菜子(更紗の同僚)|cast 趣里→シングルマザーというある意味でのキーパーソン。趣里さんはクセのある同僚という役柄を完璧に演じていました。(趣里さんは実写『ホリック』の美咲役でも出てましたね。)

バイト先の店長・湯村|cast 三浦貴大→人の良さが伝わってきました。出番は少ないけどいい味出してます。

安西梨花|cast 増田光桜

佐伯音葉|cast 内田也哉子→出演シーンは少ないけど説得力がありました。

阿方(アンティーク骨董品店の主人)|cast 柄本明→さすが俳優一家・柄本家の主。印象的なセリフを残していました。

『流浪の月』ネタバレなし感想・あらすじ・見どころ・海外評価

映画『流浪の月』広瀬すずと松坂桃李

©︎映画『流浪の月』製作委員会

あらすじ:15年前、ある理由から家に帰りたくなかった10歳の更紗は青年・佐伯文に声をかけられ、2ヶ月一緒に暮らします。しかし警察に見つかり、更紗は保護されました。文はロリコン犯罪者というレッテルを貼られてしまいます。それから15年後、更紗はファミレスでバイトをしていました。同棲している恋人・亮がいます。ある日、更紗が隠れ家的なカフェへ行くと店長が文だと気づき…。

社会に居場所がない人間の絶望と希望を濃度高めに抽出した一杯。

深い味わいだけど苦味もすごいエスプレッソをマグカップで頂く感覚です。

感想を語る犬
個人的には2022年ベスト3に入る重厚なヒューマンドラマ。上映時間は長いですが、かなりおすすめです。

長谷川博己と綾瀬はるか主演の『はい、泳げません』に並ぶ傑作です。

性的な描写やDVなどバイオレンスなシーンもあるので、苦手な人は注意してください

おすすめ度88%
映像92%
演技91%
ストーリー84%
IMDb(海外レビューサイト)7.0(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新批評家% 一般%

※以下、映画『流浪の月』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『流浪の月』ネタバレ感想・評価

映画『流浪の月』の評価は88点。重厚すぎるヒューマンドラマの傑作でした。

狂気に満ちたシリアスな演技や映像による没入感が半端なく、2時間半という上映時間があっという間。

大コケした特撮パロディ『大怪獣のあとしまつ』ポエム妄想作『真夜中乙女戦争』コスプレ実写化『ホリック xxxHOLiC』豪華スタッフが集結した駄作アニメ映画『バブル/Bubble』などなど、2022年は邦画駄作祭りでしたが『流浪の月』で救われたと思います。

本作はかなり重い内容で、希望だけでなくありったけの絶望が込められていました。

観ていて苦しかったですし、観終わってからも余韻の湖に溺れている感じです。

広瀬すず演じる主人公・更紗が彼氏に殴られて血だらけで雨の街を歩く場面

華奢すぎる松坂桃李の挙動不審かつ狂気的な演技

絵力が凄すぎる名シーンが多かったです。

横浜流星演じる彼氏・亮が広瀬すずを殴るシーンなども生々しくてみていられませんでした。

更紗と文の、社会に禁じられていながらもお互いを必要とする唯一無二の関係を軸にしつつ、同じように親に捨てられた梨花や、出奔した母親にトラウマを持つ亮など、心に大きな傷を抱える人物が周囲に位置します。

負の螺旋構造の中心に、流浪の月のような更紗と文の唯一無二の関係がある構図は美しいです。

その一方で、負の部分に取り返しのつかない重みを感じます。

近年の邦画で1番腹にずっしりくる感じ。

希望だけでなく、人の醜さや取り返しがつかない心の傷なども生々しく描かれています。

観終わったあとに「感動した!」というポジティブな感情だけが出てくる映画ではありません。

だからこそ同時に人生を重ねることができる観る価値のある作品だと思いました。

演出やカメラワークについて

セリフのない空間で俳優との距離をジリジリと詰めていくホン・ギョンピョの映像に圧倒されました。

心理描写の解像度が高い映像というべきか、登場人物がどんな絶望を抱えているかヒシヒシと伝わってきました。

テンポを重視するあまり、観客が演技に没頭できない昨今の映画の真逆のアプローチです。

ヒューマンドラマを撮る場合は本作のようにスローテンポで登場人物を見つめるのが正しいのではないかと改めて感じました。

映画『流浪の月』ネタバレ考察!

衝撃のラスト!佐伯文はロリコンか?

周囲だけでなく更紗も文のことをロリコンだと思っていましたが、文は服を脱ぎながら衝撃の事実を見せつけます。なんと男性器が異様に小さい…。彼は病気だったのです。

染色体に異常があり、ホルモンが正常に分泌されないカルマン症候群クラインフェルター症候群だと言われています。

この結末は、一見すると文はロリコンではないとも取れます。

確かに、本質的なロリコンではないのでしょう。

一方で、社会に居場所のない文は15年前に更紗に出会って救われ、当時10歳の彼女を大切に想う気持ちに恋愛感情も入っていたのは確かです。

母親から愛情を受けず社会につまはじきにされ、目の前にいてくれたのは10歳の少女だけだった。

自分が対等に接することができるのは少女・更紗だけだった。ということですが、結果的にはロリコンの枠に入ります

大人になっても性器が成長しない文は、体が発育しきっていない点で10歳の更紗にシンパシーを感じたのかもしれません。

更紗の口についたトマトケチャップを拭うときに文が抱いた感情は、居場所がない孤立した者同士の傷の舐め合いという意味だけではないのです。

文と10歳の更紗は確かにお互いに惹かれ合っていました。恋愛感情と共感が織り混ざった複雑なものです。

CineMag
社会的には許されないながらも、かけがえのない唯一無二の関係なのです。

体育座りの理由

文がよく体育座りするのも、男性器のコンプレックスの現れなのでしょう。

彼が更紗に何を隠したかったのか、秘密が序盤で既にほのめかされていたんですね。

体育座りして見つめるのは文の異様さを演出しているのかと思いきや、別の意味もあったんですね。

流浪の月が意味するもの

暗闇の中にある唯一の光。それが月です。

闇の中に輝く月は、社会や親族などから拒絶され、最後に残った更紗と文の関係のメタファーになっているようですね。

月は2人の心の拠り所として描かれていますが、手を伸ばしても届きません。

そこで2人はお互いの心に安住の場所=月を見いだしたのです。

しかし誘拐事件の犯人と被害者という関係上、ひとつの場所にはとどまれません。

2人は流浪の月として生きていく決心をしたのでしょう。

更紗が隣のベランダから鏡に反射させた光で文をからかっていましたが、それにも流浪の月のイメージが重ねられている気がします。

文と更紗が15年間気がかりだったこと

佐伯文は、15年前に更紗が警察に保護され、自分が捕まる時は微動だにしませんでした。

しかし梨花が警察に連れ去られるときは大声で喚いています。

15年前の光景を繰り返したくないという気持ちですが、この対比に文や更紗がこれまで何を後悔して生きてきたかが反映されている気がします。

15年前にかけがえのない存在である更紗が連れ去られるときに文は自分の感情を出さず、更紗に自分の想いを伝えきれなかった後悔があるのでしょう。

更紗は文がしっかり手を握ってくれたことで彼の気持ちは十分理解しつつも、自分を連れ去るときに感情を見せて欲しかったという気持ちが潜在的なトラウマとして残っている可能性もあります。

15年間の後悔を経て、文は梨花が連れ去られるときに感情を爆発させることで、更紗がかけがえのない存在だと再認識したのでしょう。

母親不在の連鎖を考察

(※シングルマザーや片親で立派に子育てをしている人たちもたくさんいます。母親不在の良し悪しについて書いたものではありません)

映画『流浪の月』からは母親の不在の負の連鎖が物語の大きな格子でした。

  1. 更紗は母親出奔
  2. 文は病気のため母からネグレクト
  3. 亮が小さい頃に母親が出奔
  4. 更紗の同僚だった佳菜子も梨花を残して帰ってこない

登場人物は皆、心のパズルのピースが欠けています。

道徳的に許された価値観では、欠けた部分は埋まりません。

母親のトラウマを抱える亮は居場所のない女性・更紗にDVを働き、執着します。

佳菜子は子供を捨てて男に逃げることで、梨花の心の穴を作ってしまいます。

心の喪失を他者を傷つけることで埋めようとしている亮や佳菜子に対して、お互いにピッタリとハマるピースが更紗と文でした。

相手を自分の欠けたピースと同じ形に捻じ曲げ押し付けるのとは違う、奇跡の出会いです。

社会的には許されない更紗と文の関係ですが、劇中の文のセリフで「更紗は更紗自身のものだ。他人の好きにさせちゃダメだ」とあったように、許されないかどうかは本人たちが決めるべきものなのもまた事実です。

CineMag
自身を肯定できる唯一無二の関係が社会的に許されなかったとき、あなたならどうしますか?

『流浪の月』はそんな疑問を私の胸に突き刺しました。

残念だった点

柄本明演じる1階のアンティークショップの阿方さんはどこへ行ったのでしょうか?かなりいいキャラだったので、彼がどうなったか描いてほしかったです。

あとは多部未華子演じる谷あゆみが、挙動不審すぎる文をなぜ好きになったのか理由が描かれていないのもちょっと違和感でした。

現実なら、あゆみのような美人が挙動不審で孤立した男性を好きになるってあまりない気がしますが。(カフェオーナーに憧れたとかですかね)

まあ全体的には、映画『流浪の月』には多少リアリティや整合性に欠ける部分があったものの、重厚なカメラワークと狂気に迫る演技でカバーできていたと思います。

最後のまとめ

映画『流浪の月』は、心理描写を深く捉えたカメラワーク・迫真と狂気の演技・道徳的な問題提起が非常に高いレベルでシンクロした傑作でした。

CineMag
観て良かった一方、現実に置き換えて真剣に考えさせてくれる。映画の本質ってここにあると思いました!

ここまで読んでいただきありがとうございます。『流浪の月』レビュー終わり!

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