Netflix映画『Passing 白い黒人』ネタバレあらすじ感想!ラストシーンや社会問題考察・パッシング評価・解説

  • 2022年12月14日

Netflix映画『Passing 白い黒人』(パッシング)は黒人差別の問題をめずらしい視点から描いた社会派作品。

白人になりきった黒人女性を冷ややかな視点で描き恥の感情に大きくスポットを当てているのが特徴です。

女優レベッカ・ホールが監督デビューした作品で、テッサ・トンプソンが主演を務めます。

感想・評価ラストシーンの考察ストーリーネタバレあらすじ解説をしていきますよ!

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Passingの意味は白人としてパス(Pass)するところから由来していて、「白人として通用している」という意味。日本人には馴染みがないタイプの人種問題です。

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映画『Passing 白い黒人』キャスト・作品情報

公開・制作国・上映時間
原題:『Passing』
監督・脚本レベッカ・ホール
原作ネラ・ラーセンの小説「Passing」(1929)
主演:テッサ・トンプソン
出演:ルース・ネッガ
『それでも恋するバルセロナ』や『ゴジラVSコング』で有名な女優レベッカ・ホールが監督デビューしました。レベッカ・ホールはホラー映画『ナイト・ハウス』(2022)でも主演しています。
主演テッサ・トンプソンは、HBOドラマ『ウエストワールド』シリーズ、映画『メン・イン・ブラック・インターナショナル』、『クリード2 炎の宿敵』に出演している女優です。

ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ

あらすじ:肌が白く、白人のフリをして買い物をしていたアイリーン(テッサ・トンプソン)が、白人として生きる黒人クレアと偶然再会し、彼女がプライベートに踏み込んできます…。

黒人の人種差別問題を今までと異なる切り口で描いた映画です。

何かに抗議するわけでもなく、たんたんとモノクロで進んでいくため、エンタメ系が好きな人や社会問題に興味がない人にはオススメできません

一方で美しく印象的なラストがあり、人種問題のリアルを考えるキッカケという意味で見る価値があります。

おすすめ度 70%
ストーリー 77%
社会問題 90%
IMDb(海外レビューサイト) 6.8(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト 89%(100%中)

※以下、映画『Passing 白い黒人』のストーリーネタバレありなので注意してください!

Netflix『Passing 白い黒人』ネタバレ感想・評価

Netflix映画『Passing 白い黒人』

映画『Passing 白い黒人』の評価は82点。
小説家ネラ・ラーセンが書いた小説Passing(1929)を元にした映画で、生まれつき肌が白く、白人として生きることを選ぶ黒人女性を描いたエリア・カザン監督の『ピンキー/Pinky』(1949)の系譜の作品です。
日本人の私からすると、白人のフリをする肌の白い黒人がいるとあまり考えたことがなく、リアルで割り切れない差別の問題がずっしりと伝わってきました。
主人公アイリーンがクレアをこっそり突き落としてしまう悲劇も印象的で美しかったです。余韻に浸ってしまいました。
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「黒人の文化を誇れ!黒人差別に反対!」と抗議するわかりやすい人種差別映画とは一線を画しており、被差別側が白人に歩み寄ってしまう“恥”をテーマにしていたのが斬新に映りました。
差別に抗議するでもなく、著名な白人とも交流がある俯瞰した考えを持った女性の視点から描かれており、それだけに感情の機微にリアリティがあります。
心がわかりやすくデフォルメされていないのです。
映画『パッシング』にはアカデミー作品賞を受賞した『ムーンライト』(2016)や『グリーンブック』(2018)のようなわかりやすさはなく見る人を選びますが、良作といえるでしょう。
冷静に分析すると黒人差別をテーマにしながらも、黒人対白人でなく黒人対黒人の構図にするのが近年の傾向で、ブルースマンの悲劇を描いた故チャドウィック・ボーズマン『マ・レイニーのブラックボトム』(2020)や、登場人物が黒人だけの西部劇 Netflix『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』(2021)に似たコンセプトですね。

ラストシーンの意味考察

アイリーンがクレアを殺害した理由

主人公アイリーンとクレア Netflix映画『Passing 白い黒人』

テッサ・トンプソン演じる主人公・アイリーンはなぜクレアを突き落としたのでしょうか?

クレアと夫ブライアンの仲が怪しいからにも見えますが、それとは別に大きな理由があります。

アイリーンは自分が白人として生きていた過去を恥じており、それを周囲に絶対に知られたくなかったのです。

序盤のホテルでの会話でクレアが、アイリーンも白人の男性と結婚して白人の子供を産んでいると思ったと言ったことからわかります。

現在のアイリーンは黒人というアイデンティティに誇りを持っており、黒人として生活をしています。

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慈善家としての立場もあるアイリーンが、「昔白人の真似をしていた」と周囲に知られるのは、社会的な抹殺に等しいでしょう。

きっと、アイリーンはPassing(別の人種として生きる)して、また黒人社会に戻ってきただけに強烈な恥の感情を抱いていたのです。

本作は差別を恥の視点から描いたという意味で価値があると思います。

クレアを見ていると、かつての自分を思い出して葛藤したことでしょう。

本来差別されている側が同じ人種同士で争ってしまう悲劇につながりました。

雪で白く染まる黒人たち

ラストシーンではアパートに雪が降り、全体を俯瞰して終わります。

アパートにいた黒人たちが、みんな白く染まっていくようです。

利益のために黒人のアイデンティティを自ら捨ててしまうことのメタファーになっていると思います。

非常にアイロニカルで、社会問題を別の視点で提示した秀逸なラストでした。

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