邦画『夏目アラタの結婚』
ストーリー考察:可哀想な目で激怒する理由とネグレクト、エンドロールや×印の意味
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
正直な感想・評価(ネタバレあり)
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
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※以下、『夏目アラタの結婚』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『夏目アラタの結婚』考察
なぜ真珠は可哀想な目で見られると激怒したのか?
真珠はアラタからお前は人を殺したと言われたときは笑ったが、可哀想な目、哀れんだ目で見られたときはブチ切れて法廷で叫んだ。
真珠は、アラタが児童相談所の職員だと知ったこともあり、幼少期に経験したような面倒を見る側(アラタ)と世話をされる側(真珠)の二項対立で括られるのが耐えられなかったのだろう。
アラタに可哀想と思う気持ちがあれば、それはかつての養護施設の職員が持った真珠への気持ちと一緒だからだ。過剰な保護の姿勢は相手を弱者だと決めつけており、相手の内面を見ていない無関心が宿っているのかもしれない。
真珠はアラタに自分と向き合って欲しかった。
アラタもそれを悟り、心のどこかで真珠や児童相談所にくる友達を助けなきゃと思っていたことに気づく。相手を助けてやるという気持ちがある限り、対等な関係ではない。
アラタは真珠に心から惹かれていき、その過程で相手と対等になる大切さを学んだのだろう。
また、真珠がネグレクト気味だった過去も関係している。真珠は母親から一週間分のパックごはんとツナ缶を渡され、1人で家で過ごすネグレクトを受けていた。ずっと同じごはん。猫か犬と似た扱いである。
母は真珠を大切にしていたシーンもあったが、1人の人間としてではなく、世話するべき動物として大切にしていたわけだ。真珠は子供ながらに母の愛する感情のいびつさに気づいていたが、どうすることもできず自分も病んでいった。
自分を壊す母親に同情してしまい、結果壊されてしまったのだ。
エンドロールの意味:×印のタオル
エンドロール中(ミッドクレジット)のシーンで、アラタはアパートの前で空虚を見つめている真珠に声をかけた。
2人は実は過去に会っていた。
このとき、アラタは赤いクロスのライン(バッテンマーク)が入ったフェイスタオル(ハンカチ?)を真珠に渡した。
真珠は嗅覚が鋭いようで、拘置所でアラタの匂いをかぎ、タオルを渡してくれた人物だと気づいていたようだ。
拘置所を上空から移した映像、フェンスなどバッテンに見えるものがマッチカットでつながれていったが、これはアラタとナツメの運命の赤い糸が拘置所でクロスしていたとの表現だろう。
アラタが若い頃に真珠と会った際、傘を渡すことはしなかった。つまり過剰な保護をしなかった。ある面、弱者に対してでなく、対等に向き合っていたのだと思う。真珠もアラタの態度は可哀想ではないと気づいたのだろう。
『夏目アラタの結婚』あらすじネタバレ・ラスト結末解説
殺人鬼にプロポーズ
児童相談所の職員・夏目アラタは、バラバラ殺人で殺された山下の息子・卓斗から、「犯人の品川ピエロに会って見つかっていない父の首を見つけてほしい」と頼まれる。
卓斗は「アラタの名前を使って拘置所にいる品川ピエロと文通していたが“面会してくれたら首の場所を教える”」と手紙が来たと語る。
アラタは通称・品川ピエロ=品川真珠(黒島結菜)と面会。自宅アパートで3人を殺してバラバラにして埋め、壁に4人目の血痕まであったというシリアルキラーだ。警察が家に踏み込んで捕まえた当初。真珠は太っていたが、今はスレンダーだ。
真珠は文通していた人物じゃないことに勘付き、アラタに「こんにちは」を「こんにちわ」と書いていたね…とカマをかける。アラタは引っ掛かり、文通していた人物じゃないとばれた。
アラタは面会を終えようとする真珠に「結婚しよう」とプロポーズ。真珠はガラス越しにアラタの匂いをかぎ、プロポーズをOKした。
相談所に戻ったアラタは桃山香(丸山礼)にプロポーズの件を相談し、驚かれる。
アラタの前に真珠の弁護士・宮前光一(中川大志)がやってきて、真珠さんは婚姻届を書いた。冷やかしで結婚するならやめてくれと言う。アラタは本気だと返した。宮前は、真珠は小学生の時はIQが低く、大人になってからテストしたら急激に上昇した謎があると語る。
真珠は、バラバラ殺人の見つかっていない遺体の一部を埋めた場所をアラタに教える。警察に伝えると本当にその場所から遺体が出てきた。しかしまだ卓斗の父の首の場所は聞き出せない。
アラタは白のタキシードで面会に来て、記入した婚姻届を突きつける。真珠は喜んだ。
裁判で語る真珠
真珠は1審では沈黙を貫いていたが、アラタのプロポーズを機になのか、控訴審では話し出す。「看護学校時代に入院してきて再会し、自分につきまとうようになった父・三島正吾(平岡祐太)が、私が付き合った男たちを殺した」と証言し、私は誰も殺していないと言った。
しかし検察は、三島正吾の実家から検出された彼のDNAと真珠とを鑑定した結果、親子ではないと判明したと発言。
アラタは真珠から自殺した母・環(たまき)の遺品が埋めてある場所を探して、その林へ行ってトランクを掘り起こす。すると中には赤ちゃんの遺体が入っていた。
アラタは、本物の真珠は生後まもなく死んでしまい、母・環がその代わりとして父親不詳の子供を産み、真珠として育てたと確信する。
真珠は実年齢より2歳下だった。だから小学生の時のテストで同学年より低い数値が出て、大人になってからのテストでは数値が上昇していたのだ。
それを聞いた宮前は、真珠が犯行時に未成年の17歳だった可能性を考える。アラタは母・環の昔の携帯を調べ、妊娠時期から真珠が犯行時17歳だったと突き止めた。
その結果を受け、裁判長は上訴を棄却。検察側はすぐに再逮捕しようとするが、アラタはそのすきを狙って真珠をバイクで連れ出した。
ラスト結末:アラタと真珠の結婚はどうなる?
2人は海辺でキスをする。その後、宿に泊まるが、体の関係は持たなかった。
翌日、アラタが起きると真珠はいない。1人で歩いているところを逮捕されたのだ。
真珠の置き手紙に、卓斗の父の首のありかが書かれていた。真珠が仲が良かった老人の墓の中に首があった。しかしそれは卓斗の父のものではなく、三島正吾の首だと判明。
真珠から離婚届が送られてくるが、アラタは記入しなかった。
その後の裁判で真珠は、「三島正吾は母・環のパートナーでトランクに入っていた赤子(姉)の父親ではあるが、私の父ではない。看護学校時代に再会して自分が死んだはずの真珠でないと知っており、金をせびり、体の関係まで迫ってきたから殺した」と語る。
他の3人の犠牲者については「母・環も自分の存在のせいでなかなか自殺の決断ができず、最後まで苦しんでいた。私は3人の男を毒物の注射で殺したが、それは人生から解放してあげるためだった」と語る。殺害時に太ったのは、痩せていると死体処理ができないからだ。
真珠はアラタが自分に憐れみの視線を向けているのに気がついて激怒した。
その後、真珠は懲役12年が確定する。
しばらくのちアラタは真珠に面会にくる。そして離婚届を破り捨てる。アラタは明日神前式の結婚式をやるから来いと言う。
翌日、アラタは和装で神社にいた。真珠は拘置所からアラタの匂いを感じている。アラタも真珠の和装姿を思い浮かべた。
エンドロール
真珠が幼い頃、雨の中アパートの外で呆然としている。アラタが真珠にタオルを渡した。2人は昔、会っていたのだ。真珠はそのときのアラタの匂いが忘れられなかった。
『夏目アラタの結婚』ネタバレ感想・評価
猟奇殺人のサスペンスかと思わせて、幼い心の傷に向き合う女性とそれを受け止める男のラブストーリーに大胆に変化するコンセプトが素晴らしかった。
柳楽優弥と黒島結菜の演技合戦も良かった。(真珠の演技はもう少し控えめでも良かった気もするけど、その辺は演出の好みだろう)
ただ、結局は真珠が3人を殺してバラバラに切り刻んでいた事実はあるわけで、後半のラブストーリーに完全に乗っかりきれなかった部分はある。2人の結婚をもう少し異質な恋愛として描けば良かったような気もする。
真珠の気持ちもアラタの気持ちも真っ直ぐすぎるので、猟奇殺人者が普通の人と何ら変わらない恋をするところに違和感を感じてしまった。猟奇殺人者なので、もう少しサイコパスっぽい恋愛模様でも良かったのでは?
映画『夏目アラタの結婚』作品情報
上映時間:2時間0分
ジャンル:サスペンス
年齢制限:G
監督:堤幸彦(『TRICK』『SPEC』)
脚本:徳永友一(『翔んで埼玉』『はたらく細胞』)
原作:乃木坂太郎の漫画「夏目アラタの結婚」
撮影:神田創
主題歌:オリヴィア・ロドリゴ 「ヴァンパイア」
『夏目アラタの結婚』キャスト
夏目アラタ|cast 柳楽優弥(『ガンニバル』『浅草キッド』『HOKUSAI/北斎』)
品川真珠|cast 黒島結菜(『SPECサーガ完結篇「SICK’S 恕乃抄』『呪怨: 呪いの家』)
宮前光一|cast 中川大志(『御手洗家、炎上する』)
井出茂雄:今野浩喜(『忍びの家』)
桃山香|cast 丸山礼
大高利郎:立川志らく
桜井健:福士誠治
|cast 平岡祐太(『忌怪島/きかいじま』)
|cast 藤間爽子(『マイファミリー』)
|cast 藤田信吾:佐藤二朗(『新解釈・三國志』『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』)
|cast 神波昌治:市村正親
ここまで読んでいただきありがとうございます。『夏目アラタの結婚』レビュー終わり!
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