映画『ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち』は、スキージャンプ団体で金メダルを獲得した1998年の長野オリンピックの舞台裏の“テストジャンパー”にスポットを当てた感動のヒューマンドラマ。
記憶に残らない彼らの勇姿に目頭が熱くなりました。
ただ、もっと傑作になりそうだったのにもったいないと感じるポイントがあったので、そこを深掘り解説していきます。
ストーリーネタバレあらすじや、率直な感想や評価レビューも!
『ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち』作品情報・キャスト相関図
監督:飯塚健
脚本:杉原憲明,鈴木謙一
撮影:川島周,山崎裕典
主演:田中圭(『総理の夫』)/西方仁也役
出演:濱津隆之/原田雅彦役
出演:土屋太鳳/妻・幸枝役
出演:古田新太/神崎コーチ役
出演:小坂菜緒(日向坂46)/小林賀子役
出演:眞栄田郷敦/南川崇役
出演:山田裕貴/高橋竜二役(『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』)
出演:落合モトキ/葛西紀明役
©2021 映画「ヒノマルソウル」製作委員会
原田役の原田雅彦は『カメラを止めるな』でブレイクした個性は俳優。
眞栄田郷敦は千葉真一の息子で、『るろうに剣心 最終章 the final』(2021)にも出演した新田真剣佑の弟です。
山田裕貴と眞栄田郷敦は映画『東京リベンジャーズ』でも共演。
古田新太は『半沢直樹シーズン2』(2020)にも出演していましたね。
葛西役の落合モトキはドラマ『竜の道二つの顔の復讐者』などに出演しています。
ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち 感想・評価81点
映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』の評価は81点。
長野オリンピックラージヒル金メダルを影ながら支えたテストジャンパーたちの奮闘に感動しました。彼らがいてこその金メダル!25名プラス代表の全員で勝ち取った金メダルという美しいメッセージが伝わってきました。
観客は大切な役割を担うテストジャンパーに見向きもしない!という対比も良かったですね。注目されてない中ガッツポーズするテストジャンパーたちからは、自分の価値を自分で決められる強い意志が見えてとってもカッコ良かったです!
東京オリンピックでもさまざまな種目で彼らのようなテスト競技者がいると考えると感慨深いというか、感謝したい気持ちになりますね。
全体的には良かったですが、個人的には名作になりそうでならない印象もあり、次の項目ではヒノマルソウルの何が残念だったのか見解を書いていきたいと思います。
ヒノマルソウルが残念だった4つの理由
登場人物たちが清廉潔白すぎる
映画『ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち』が、ヒューマンドラマとして強烈な感動!までいかなかったのは、登場人物たちが清廉潔白すぎたからのような気がします。
全員マジでいいヤツ!です。田中圭演じる主人公・西方にしても、親友原田が代表に選ばれて悔しすぎる気持ちまでは伝わってきますが、人間味のあるドロドロとした感情が見られなかったのが個人的にはちょっと残念でした。
唯一の女子ジャンパー・小坂菜緒も、まるで漫画のような純真さです。
それだけならまだよいのですが、原田と神崎以外はクセのあるキャラがいません。
人間の表面の綺麗な部分だけすくったような感じといえばよいでしょうか。『ミナリ』や『ノマドランド』とまではいかなくても、もう少しディープに人間を描いてほしかったです。
スパイスがなく、小綺麗にまとまってしまった感じがします。
テストジャンパーの物語への切り替わりが遅い
全編は田中圭演じる西方の物語で、中盤にやっとテストジャンパーたちが出てきます。映画のメインはテストジャンパーの奮闘なので、西方がメインのシーンをもっと削ってもよかったかもしれません。
テストジャンパーたちの青春のシーンが少し駆け足だった印象です。
緊張感がない
実話をもとにしているのである程度は仕方ないですが、25人のテストジャンパーが全員成功するのはわかっていたため、一番の見どころで緊張感が足りなかったような気がします。
女子ジャンパー小坂菜緒(日向坂46)のシーンが多い
『ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち』はヒューマンドラマの軸となる関係性やストーリーを盛り込みすぎていた気がします。
メインは25名のテストジャンパーの健闘と、西方と原田の友情です。そして西方の妻子との絆もしっかり描かれています。
そこに小坂菜緒さん演じる女子ジャンパー小林の想い!のシーンが思ったより多く入ってきたので、ヒューマンドラマ要素が4つになり全体的に散漫になってしまいました。
あと小坂菜緒さんは可愛すぎるせいか、ガチのスポーツマンっぽい感じが弱いのも気になりました。
小坂菜緒さんはファンが多いし、シーンをたくさん入れたほうが集客を見込めるのは分かるのですが、その分メインテーマが薄れてしまった印象です。
キャストの演技について
演技では、選手の西方を支える妻・幸枝を演じた土屋太鳳がよかったと思います。女性としての強さと母としての強さを、あどけない笑顔で表現していました。
実写映画『るろうに剣心』シリーズやNetflixドラマ『今際の国のアリス』など、話題作に多数出演している彼女の今後に注目です。
濱津隆之演じる原田も良かったですね。彼の人たらしな感じがヒシヒシと伝わってきて引き込まれました。
最後にまとめ
『ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち』は実話をもとにした素晴らしいストーリーに感動できましたが、個人的に弱点も目についてしまい「名作になったはずなのに」という惜しい気持ちが残ってしまいました。
ただ、テストジャンパーという縁の下の力持ちの存在に気づかせてくれたという面では、価値のある作品だと思います!
ヒノマルソウル舞台裏の英雄たちネタバレあらすじ解説
リレハンメル五輪の団体戦。西方仁也(田中圭)は大ジャンプを記録し、日本が優勝かと思われましたが、原田雅彦(濱津隆之)がまさかの大失敗をしたため、銀メダルに終わります。
西方は原田に文句を言うこともできず、うなだれて長野に帰ってきます。妊娠中の妻・幸枝(土屋太鳳)が西方を慰めました。
西方と原田は気持ちを切り替え、鬼コーチ神崎(古田新太)のきびしい練習に耐え、次の長野オリンピックの代表を狙います。西方は順調に調子を上げていましたが、長野五輪まで1年を切ってからオーバーワークにより腰を痛め、ジャンプでも失敗してケガを負ってしまいます。生まれた息子のために、西方はそれでもあきらめずにリハビリをして、五輪直前の大会で優勝しましたが…。
西方は大会で勝ったにもかかわらず、代表メンバーには選出されず落胆します。
神崎コーチは西方に長野五輪のテストジャンパーを打診。西方は代表に選ばれなかった怒りをぶつけますが、妻・幸枝や息子をこれからもスキーで食わせていくために引き受けました。
大会が近づくとテストジャンパー25名は全員同じ民宿に泊まって、毎日代表選手が飛ぶレーンの雪落としと安全確認のために何回も飛びます。次の五輪を狙う南川崇(眞栄田郷敦)はやる気を見せず、サボってばかりいました。
女子高生のジャンパー小林賀子(小坂菜緒/日向坂46)は張り切りすぎて何回も飛び、着地に失敗してあわや怪我寸前。西方仁也はそんなに頑張り過ぎるなと言いますが、「女子スキージャンプが五輪の種目にないから、これが私にとってのオリンピック」と怒鳴られます。
小林の父は娘のスキージャンプに反対して宿まで連れ戻しに来て、喧嘩をしていました。西方は小林のスキージャンプが好きだという気持ちを聞いてあげます。小林は西方に「ジャンプを教えてください」と頼みました。
聴覚障害と吃音持ちのテストジャンパー高橋竜二(山田裕貴)は、神崎コーチのウイスキーをくすねてきて、西方と南川の3人で楽しい夜を過ごします。
ついに長野オリンピック当日。原田が西方に会いにきて「アンダーシャツを貸してくれ」と頼みます。西方はシャツを渡しますが、「お前の金メダルなんか見たくない」と言い放ちました。
ラージヒルの団体戦が始まり、1本目で悪天候の中で飛んだ原田は記録が伸びず、日本は4位につけてしまいます。リレハンメル五輪の悪夢再びの状態です。
悪天候が続いて試合が続行不可の場合は、1本目の記録のみで順位が決まってしまいます。審判たちは25名のテストジャンパーが全員しっかり飛べれば続行と決断しました。
神崎コーチは危険だと言いますが、小林や高橋が熱い想いを語りテストジャンプが決行されることになります。
悪天候の中、南川は怪我のトラウマを克服して最初にジャンプ。小林や高橋ら他のメンバーも抜群のジャンプを決めていきます。
神崎コーチは、「原田が4年間世間からのバッシングに耐えて長野五輪まで来れたのは、あのとき自分のせいで西方と葛西を金メダリストにできなかった思いがあるからだ」と言います。
25人目の西方は決死の想いで飛びました。幸枝と息子が見ています。最高のジャンプを飛び、テストジャンパーたちと抱き合います。
観客は誰もテストジャンパーの健闘に興味を持っていませんが、西方は息子から手作りの金メダルをかけられて涙を流しました。
大会は続行され、最後のジャンパー原田が位置につきます。西方のアンダーウェアと葛西のゴーグルをつけていました。原田は起死回生の大ジャンプをみせ、日本は見事金メダルに輝きました。
その後、西方はもトップ選手として3年間活躍。のちにスキージャンプ女子の部もオリンピックの正式種目となりました。
映画『ヒノマルソウル舞台裏の英雄たち』終わり!
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