エマ・ストーン主演の実写映画『クルエラ/Cruella』は、ディズニーヴィランの誕生秘話を描いたセンセーショナルな作品だと期待していましたが、ガッカリの駄作でした。
絶賛の声が多いので批判覚悟で書きますが、音楽とキャラがマッチしてなくて、正直“ダサい”…。ポリコレ意識しすぎのストーリーにもあまり見どころはありません。
記事ではぶっちゃけ感想や評価、なぜつまらなかったのかの理由や、ストーリーをあらすじネタバレありで解説していきます。
宣伝文句の“I am a woman hear me road(私は女、心の声に従う)”とは一体何だったのか?エマ・ストーンがかわいいだけの映画。ちょっと過激な酷評レビューなので本作を好きな人は読まないでね…。
映画『クルエラ』キャスト・基本情報
『クルエラ/Cruella』スタッフ・キャスト
監督:クレイグ・ガレスピー
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
原作:ドディー・スミス 『ダルメシアン 100と1ぴきの犬の物語』 ビル・ピート映画『101匹わんちゃん』
撮影:ニコラス・カラカツァニス
主演:エマ・ストーン/クルエラ(エステラ)役
出演:エマ・トンプソン/バロネス役
出演:ジョエル・フライ/ジャスパー役
出演:ポール・ウォルター・ハウザー/ホーレス役
出演:マーク・ストロング/ジョン役
出演:エミリー・ビーチャム/キャサリン(クルエラの母)役
クルエラ・ド・ヴィルというキャラは1996年の映画『101』でも実写化されましたね。
女優エマ・ストーンは、『ララランド』『ラブ・アゲイン』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 』『ゾンビランド』『女王陛下のお気に入り』などで有名。
日本で2024年に公開されたヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』は超傑作でした。
エマ・トンプソンは『ハワーズ・エンド』でアカデミー主演女優賞を獲得した演技派で、『メン・イン・ブラック:インターナショナル』などに出演。
マーク・ストロングは『裏切りのサーカス』『キングスマン』で知られる。エミリー・ビーチャムはNetflix『デンジャーゾーン』で知られる。
クルエラ/Cruella酷評・感想 パンクじゃない!
©︎ディズニープラス+
ぶっちゃけ映画『クルエラ/Cruella』の評価は69点くらい。
エマ・ストーン主演でディズニーヴィランを実写化ということでDC映画『ジョーカー』(2019)みたいになるのか?と期待していたのですが、全然面白くなかったです。
最大の理由は、ハードロックな曲とクルエラのキャラクターがまったくマッチしていないこと。「ダサい…」という印象でした。
イギリスのロックバンド、クイーンやレッド・ツェッペリン、ローリング・ストーンズなどなどの70年代当時の名曲をアレンジして劇中で流していたのですが、白黒のゴシックビジュアルのクルエラがハードロックの楽曲にマッチしておらず、イタいなあと思ったシーンがたくさん…。ダルメシアン(犬種)もハードロックと組み合わせが悪いです。
ファッションとエマ・ストーンの美しさだけ見てればゴージャスで楽しいのですが、楽曲との相性がイマイチ。無難にクラシックやオーケストラ、古いポップスだけを流した方が良かったと思います。
あと個人的に気になったのが、宣伝では「パンクロックエンターテインメント!」とうたっていたにもかかわらず、劇中の楽曲はハードロック寄りのアレンジが多かったこと。
おそらく「パンク!」っていう宣伝をしたかったのでしょう。
ハードロックバンドの曲をモダンにアレンジしているだけなので、パンクロックエンタメより、ハードロックエンタメと言った方が近いでしょう。
ファッション映画でもあるはずなのに、ファッションと音楽のジャンルがズレているのは致命的だと感じました。
まあサウンドについては、パンクロックとハードロックの明確な線引きはむつかしいのですが、それでもギターのパワーリフ全開の曲や、メロディアスな主題歌はやっぱりパンクという感じはしません。
また、クルエラ・ド・ヴィルのキャラクターもまったくパンクではないです。
クルエラは緻密に計画を立てる意外としたたかなタイプで、行動や思想も全然パンクとは異なります(アホさと勢いがパンクの醍醐味なので)。
映画『クルエラ/Cruella』を観て「パンクでかっこよかった!」と感想をつぶやいている人たちは、パンクの音楽や思想をよく知らないのかもしれませんね。
パンクロックエンタメって普通は映画『トレインスポッティング』みたいな作品をさすと思います。
話は変わって、ストーリーもわりとひどいと感じました。
全体的にストーリーは『プラダを着た悪魔』と『オーシャンズ8』を混ぜて失敗した印象です。
プラダの要素であるファッション自体は見応えありましたが、先ほど書いたように楽曲との相性が微妙でシーン全体としては違和感がありました。
裏工作にもオーシャンズシリーズほどの緻密さがなかったのが残念です。
また、ストーリーについて1番不満だったのは“女性の強さ”にスポットが当たっていないことです。
予告編では『I am a woman hear me road(私は女、心の声に従う)』をフューチャーしていたので“女性の自立”をさらに超えた斬新なテーマがあるのでは?と当然期待していました。
しかし“身内の揉め事”みたいな展開とラスト結末で女性ヴィランとしての見どころにかけていたと思います。このキメ台詞もオープニングの独白で1回出てくるだけです。
酷評になって申し訳ないですが、映画『クルエラ/Cruella』はエマ・ストーンのファッション以外は見どころがゼロの駄作だったと思います。
映画クルエラ相関図(ネタバレ)
画像の権利元:ディズニー
ストーリーのひどい点を考察!ヴィランじゃない!
©︎ディズニープラス+
伝説のヴィランの誕生秘話を実写化!と聞いて、真っ先に2019年に大ヒットしたDCの『ジョーカー/Joker』(2019)を思い浮かべた人も少なくないのでは?
しかし『クルエラ/Cruella』はテーマ性が薄く、貧困層の障害者という社会派の側面も持つジョーカーとはまったくテイストの違う社会派要素の薄いエンタメだけの作品でした。
今作のクルエラを「女性版ジョーカー」と評している方々もいらっしゃいますが、完全に似て非なるものです。
さらに女性の自立的な側面もないので、DCの『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』と比較してもクルエラ・ド・ヴィルは主張のないヴィランだといえるでしょう。
「白黒つけるのはわたし」というふれこみでしたが、本作のクルエラからはそもそも何が彼女にとって白黒なのか伝わってきません。
女性がファッションで貧困からの這い上がる設定なら、いくらでも社会的なテーマを盛り込めそうですが、ディズニーが対象年齢を下げたいからなのか、そのようなリアリティはほとんど追求されていませんでした。
マーベルもDCコミックスも、実写化するときはほぼ必ず貧困、政治腐敗、家庭問題、軍事産業などの社会的なテーマを盛り込みます。そうした方がヒーローやヴィランが浮世離れしないからです。
しかし『クルエラ/Cruella』ではそれをしなかった結果、主人公が浮きまくりです。
まあぶっちゃけテーマ性が薄くても、ストーリーにエンタメ性があって楽しめればよかったのですが、「職場のボス・バロネスが実母で、育ての親を殺していた」という、盛り込みすぎ+ご都合主義なストーリーが残念でした。
ちょっと無理矢理すぎです。
また、エンタメに仕上げるためかクルエラは序盤でトップデザイナーに弟子入りをして『プラダを着た悪魔』みたいになり、中盤では『オーシャンズ』シリーズのようにチームで裏工作を繰り広げます。
しかしどちらの要素も取り入れたせいか、デザイナーとしての飛躍はともかくヴィランとしての悪事や思想が中途半端です。
クルエラは侵入と窃盗とゲリラショーしかしておらず、そもそもヴィランっぽい悪事はやってないですし、社会に向けたメッセージも持っていないようなので、本作のクルエラはそもそも“ヴィラン”の資格なし!ともいえます。
普通の主人公ではないでしょうか?
憎いはずの犬(ダルメシアン)を結局殺さなかったのも、“ポリコレ”を意識したかのようです。パンクキャラのはずが良識ある普通の人物に見えます。
白黒はっきりしてません。
今作のクルエラ・ド・ヴィルは原作ではトレードマークのタバコも吸ってなかったですしね。
ラストではロジャーとアニータに子犬を送り、2人が結婚してダルメシン同士も結ばれて子犬が大量に生まれる結末から、映画『101匹わんちゃん』へのつながりが示唆されていましたが、今作のクルエラが犬をさらって毛皮にするとは到底思えません。
飼い犬のバディやウィンクはもちろん、クルエラはダルメシアンも大好きな“ただの犬好き”になってしまったのではないでしょうか。
「ヴィラン誕生のストーリー」の謳い文句でしたが、むしろ今作のヴィランは普通にバロネスで、クルエラはファッションリーダーという印象でした。
ディズニーによる“大人向け実写ヴィラン”という感じは皆無ですね。対象年齢を下げ、ルールはしっかり守り、空気を読んだストーリーとヴィランでした。
クルエラにキャラの魅力がない
本作で残念だったのが、クルエラのキャラクターが薄っぺらかったことです。
エマ・ストーンの演技が下手とかではないのですが、感情移入できるセリフや仕草が少なかったので共感できませんでした。
あと全体のモノローグ(独白)に関しても、クルエラの幼い頃の人間味やシリアスさが薄れただけだったので、必要なかったと思います。
また。女性ゆえの強さなども期待していましたが、もとからサイコっぽいキャラが強すぎるせいで、女性のたくましさという見どころはスポイルされます。
女性が戦うというよりは、サイコな人物が暴れる印象です。
『クルエラ/Cruella』が描いたのは運命や苦しみを乗り越えたヴィランではなく、ファッションサイコ女と偶然の悲劇でした。
©︎ディズニープラス+
なぜ大ヒットしたのか考察!
海外大手レビューサイトRottentomatoesでの映画『クルエラ』評価は、
批評家74%、一般視聴者97%と映画として大きく成功した部類に入ります。
ただ、批評家と一般の人々の評価が23%も違う点には注目しなければなりません。
批評家たちの意見の否定的なパートをまとめると、「キャラデザインやビジュアルは素晴らしいが、それだけ」となります。ストーリー性やテーマを求めると物足りないという印象ですね。
対して、一般の視聴者的にはエマ・ストーンのクルエラのキャラデザインやビジュアルが楽しめたことが映画の満足度に直結し、ヒットに繋がったのでしょう(もちろんこの楽しみ方が間違っていることはありません)。
ヒット理由考察をまとめると、ディズニーは映画としての完成度より一般層が何を求めているかを最優先し、誇張したパンクヴィランの宣伝も功を奏し、戦略的にヒットを生み出したといえるでしょう。
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