Netflixホラー映画『サムワン・インサイド』(原題:There’s Someone Inside Your House)は、アメリカの田舎町で被害者の顔のマスクをつけた犯人が高校生を惨殺していくスリラー。
ナイフで刺殺するシーンはそれなりにグロくて迫力があるものの、全体を通しスリリングさに欠けており恐怖がなく、ホラーとしては残念な作品でした。
記事では、ネタバレあらすじ結末解説、ぶっちゃけ感想・評価、ストーリーの本当の意味考察をしています!
映画『サムワン・インサイド』キャスト・作品情報
監督:パトリック・ブライス
脚本:ヘンリー・ゲイデン
原作:ステファニー・パーキンス『There’s Someone Inside Your House』
人気Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス未知の世界』や『死霊館』ユニバースのスタッフが制作に携わっています!
2017年に発売されたステファニー・パーキンスによる原作小説は、各方面で絶賛されたようです。
マカニ/シドニー・パーク
マカニは、ハワイからアメリカのカンザス州オズボーンに転校してきた女子高生。
成績優秀で大人しいフリをしていますが、ある秘密を抱えています。
みんなに内緒で、ソシオパスと非難されるオリーと付き合っています。
女優シドニー・パークはドラマ『ウォーキング・デッド』のシンディ役で有名。
オリー/テオドール・ペルラン
オリー(オリバー)は、マカニのボーイフレンド。
両親が飲酒運転で事故死し、「オリーがソシオパスだから心中したのだ」と噂され、孤立しています。
ザック/デール・ウィブリー
ザックは、地域のサンドフォード農場の息子。
父親が住民たちから土地を買い叩いているため、自身も誹謗中傷されています。
ネタバレなし感想・見どころ
田舎町で高校生たちが、自分と同じ顔のマスクを被った人物にナイフで殺されていくストーリー。
怖さやスリルがなく、正直面白くなかったです。
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や『死霊館』のスタッフが関わっているという触れ込みでしたが、それらの作品と比較してもクオリティは格段に落ちます。(別に同じチームで作ったわけではなく、あくまで数名が関わっていただけなのでしょう。)
おすすめ度 | 40% |
グロさ、痛さ | 70% |
怖さ・スリル | 30% |
ストーリー | 40% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト | 52%(100%中) |
※以下、映画『サムワン・インサイド』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『サムワン・インサイド』ネタバレ感想・評価
ストーリーの意味を考察
心の中に侵入される物語
映画『サムワン・インサイド』のストーリーの意味を考察していきます。
タイトルのサムワン・インサイドは日本語で「誰かが中にいる」という意味です。
原題は『There’s Someone Inside Your House』で、「家の中に誰かがいる」という訳になります。
冒頭ではアメフト部のジャクソンが侵入者に殺されてましたし、続く教会やパーティー、主人公マカニが狙われる場面でも、家や建物の中に何者かがいることがわかります。
ただ、それらのシュチュエーションをタイトルにしたかと思いきやそれは表面上で、真の意味は「心の中に誰かが侵入した」ということでしょう。
ジャクソンはイジメと暴行を、ケイティは白人至上主義の思想を、ロドリゴは鎮痛剤依存症を、マカニは親友に大火傷を負わせて起訴された過去を、心の底に隠していました。
犯人がそれぞれの秘密を暴くのは、被害者たちの心の中に踏み込むのと一緒です。
本作は、被害者がただ家の中で殺されるだけでなく、ロックされた心に無断侵入され、心を踏みにじられて殺されるストーリーなのです。
なぜ殺人鬼は被害者のマスクを被る?
真犯人ザックは犯行時、殺害した人物と同じ顔のマスクを被っていましたね。
マスクの人物(被害者)になり切ることで「俺はお前の秘密を知っている」というメッセージになるのでしょう。
仮面の下のお前は卑劣で、自分と変わらないという意味もあると思います。
隠し事が本人を追い詰めて殺すというメタファーなのかもしれません。
差別への抗議と見せかけたミスリード
一応『サムワン・インサイド』にも斬新なポイントがありました。
それは、犯行動機が差別や抑圧など社会的弱者の抗議と見せかけて、土地を買いまくって嫌われている農場主の息子が犯人だったところ。
社会的弱者の犯行か?と思わせるためのミスリードですね。
金持ちという差別の加害者側が、イジメやヘイトスピーチを告発した形なのがひねりが効いていて面白いと思いました。
ただ真犯人ザックの境遇を考えてみると、そんなにシンプルではありません。
農場主のザックの父親が地域住民から土地を買い上げていたせいで、ザックまで誹謗中傷の被害者になってきたからです。
ザックは金持ち側にもかかわらず、差別される側なのです。そのねじれ構造が彼の人格を破綻させてしまいました。
アファーマティブ・アクションは、黒人やヒスパニックへの入試の点数割増し、雇用で採用枠を設けるなど、これまで差別に苦しんできた黒人やヒスパニック、女性の社会参画を増やそうというもので、悪い措置ではありません。
ただ、同じ能力を持つ白人(特に男性)の機会は反対に失われるので、逆差別だと指摘されることもあります。
実際に近年白人(特に男性)の自殺率が増えているようです。当事者(白人側)からすれば不満も起こるのも仕方ないでしょう。
ザックの心が壊れたのも、白人の金持ちはゴミだと非難され続け、誰も救ってくれなかったからではないでしょうか。
映画のラストではハワイ系?であるマカニに「恵まれた人生の被害者?ふざけるな」的なことを言われて刺し殺されます。
ザックは殺人鬼なのでそう言われるのも仕方がないですが、彼の境遇を考えると、友達であったはずのマカニにさえまったく悩みを理解されないまま殺されてしまいました。さぞ無念でしょう。
白人の逆差別に対するアイロニーみたいですね。
映画『サムワン・インサイド』には、差別の複雑な問題点を露呈するメッセージが込められているのかもしれません。
映画『サムワン・インサイド』ネタバレあらすじ解説
アメフト部のいじめ問題と第一の殺人
酔ってゲイのアメフトのチームメイト・ケイレブに暴力を働いたジャクソンは、家の中で自分の顔のマスクを被った何者かに巨大なナイフでアキレス腱を切られ、心臓を刺されて死亡。
ジャクソン不在でアメフトのゲームが始まっており、ケイレブがゴールを決めた瞬間、観客たち全員のスマホに、ジャクソンがケイレブを殴っている動画が送られてきます。
第二の殺人とヘイトスピーチ
ハワイから転校してきたマカニは、友達のアレックス、ダービー(性同一性障害)、ロドリゴ、農場の息子で金持ちのザック、ケイレブとランチを食べながら誰が犯人かで盛り上がっていました。
翌日、殺されたジャクソンの追悼式の準備をしていた生徒会長ケイティが、教会でナイフで頭を刺され、縄で吊るされて死亡していました。ケイティが「白人至上主義は正しい」とポッドキャストで配信したヘイトスピーチの音声が流れています。
警察は連続殺人事件とみて捜査を開始。
パーティーでの第三の殺人
マカニはみんなに内緒で、ソシオパス言われているオリー(オリバー)と付き合っており、車でカーセックスをしていました。
金持ちのザックが自宅でパーティーを開き、地元の高校生はみんな参加。みんな秘密を打ち明けることになり、アレックスとロドリゲスはお互いを好きだと告白し合って、別の部屋でセックスをします。
みんながいる場所に戻ったロドリゲスは、自分が依存している鎮痛剤が床にぶちまけられているのを見て動揺します。停電が起きて自分の顔のマスクを被った人物が現れ、ロドリゲスは逃げますがテーザー銃で動きを止められて、ナイフで殺されました。
狙われたマカニの秘密
3人の高校生が死亡し、学校は一時休校して再開。犯人は警察のテーザー銃を使っているので兄が警官のオリーが犯人だと噂されています。
マカニの祖母は夢遊病の治療をするため、睡眠障害センターに入院することに。
マカニはオリーとトウモロコシ畑へ行きますが、彼の車にテーザー銃が入っているのを見て動揺しました。
家に帰ると、ハワイで自分が大火傷を負わせてしまった先輩で親友のジャズミンの写真があちこちに貼ってあります。
マカニは家に侵入していたマスクマンにテーザー銃で動きを止められ、ガソリンをかけられます。そのときアレックスがやってきて、マカニは助かりました。
マカニもやはりオリーが犯人だと考え、警察はオリーを逮捕します。
マカニは病院で、アレックスたちに「ハワイの高校で先輩たちにビーチでいびられ、先輩で友達のジャズミンを押したら彼女がキャンプファイヤの中に突っ込んで全身火傷を負って、起訴された」と話します。
そのせいでマカニの両親は離婚していたのです。
燃えるトウモロコシ畑と犯人の正体
後日、サンドフォード(ザックの父)がトウモロコシ畑に迷路を作り、住民たちを集めます。高校からバスが出発し、マカニは高校に1人残されました。
釈放されたオリーがやってきます。マカニは彼を見て校舎の奥へ逃げると、そこにいたケイレブがマスクマンに刺されました。
オリーが駆けつけ、マスクマンはマカニにナイフを渡して逃げます。
ザックから電話で「トウモロコシ畑が放火で火の海になっている」と聞き、マカニはオリーやアレックスたちと現地へ向かいました。クラスメイトたちを助けるため、火の中に車で突っ込み、道を作ります。
トウモロコシ畑の中では2名ほど刺殺されていましたが、アレックスがクラスメイトらを火に囲まれた場所から誘導して助けます。
マカニとオリーはザックを助けるためにさらに奥へ行くと、農場主のサンドフォードがマスクマンに頭を刺されて殺されました。マスクマンは仮面を取ります。
正体はなんとザックでした。
彼は「金持ちの農場主の息子として生まれ、散々罵声を浴びせられてきた。みんなの仮面も剥いでやった」と言い放ちます。そしてオリーを刺します。
マカニは隙をついてザックを刺し、胸にナイフを突き立てて殺害しました。
少し時間が経ち高校の卒業式、マカニは元気になったオリーと写真を取ります。そしてハワイにいるジャズミンに電話をしました。
Netflix映画『サムワン・インサイド』END!
最後のまとめ
Netflixオリジナルのホラー映画『サムワン・インサイド』には、複雑な社会への痛烈なメッセージが込められていた一方、ホラーとしては怖くもなく、緊張感もなく、オチもイマイチという残念な駄作になってしまいました。
主人公マカニや他の生徒たちの秘密を暴露しながら殺していくアイデアは良かったので、もっと良作になった気がするのに残念です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。『サムワン・インサイド』レビュー終わり!