ポーランド映画『プライムタイム』(Prime Time)は、銃を持った青年がTV局に立てこもり生放送させろ!と要求する異色のサスペンス+ヒューマンドラマ!
社会的弱者のどうしようもない怒りなどメッセージ性は強いものの、ストーリー的にはイマイチでした。
- ネタバレあらすじ
- 感想・評価レビュー
- 主人公 セバスティアンと人質グジェゴシュの共通点
などを深掘り考察しています。
Netflix映画『プライムタイム』作品情報
公開・制作国:2021年6月30日 Netflix・ ポーランド
監督:ヤクブ・ピョンテク
脚本:ヤクブ・ピョンテク/ウカシュ・チャプスキ
主演:バルトシュ・ビィエレニア/ セバスティアン役
出演:マグダレナ・ポプワフスカ/キャスターのミラ役
出演:アンジェイ・クアク/警備員グジェゴシュ役
主演のバルトシュ・ビィエレニアは Netflixの ポーランドドラマ『1983』にも出演。
『プライムタイム』感想・評価レビュー
映画『プライムタイム』の評価は70点。
メッセージ性が非常に強い作品!というのを通り越して、メッセージ性以外はストーリーすら排除してしまった感があります。
物語としては、主人公 セバスティアンがTV局で立てこもって警察と交渉し、最後に捕まるだけですからね。
駄作ではないですが、正直面白いかと言われると微妙です。
エンタメが好きな人なら絶対に好きになれないタイプの映画でしょう。
デ・ニーロの映画『キング・オブ・コメディ』的な感じかと思ったら全然違いました。
ワンシチュエーション映画としても『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』のように計算された感じは受けません。
大きな見どころも見当たらず、強いていうなら女性キャスターミラが骨折したところくらいでしょうか。
よくよく考えると背後に セバスティアンという若者の葛藤や、彼が置かれた社会的状況がしっかり浮かび上がってくるのですが、それを加味してもちょっと退屈でした。
セバスティアンとパンケーキ,警備員グジェゴシュ
映画『プライムタイム』が何を言いたかったのか?
まず、 セバスティアンについては断綴性言語という、声を出すのが困難でスムーズに喋れない障害を持っていたことがわかります。
映画『ジョーカー』でホアキン・フェニックスが演じたアーサーみたいですね。
さらに、現場に来た父親 ダヴィドに“失敗作のパンケーキ”と言われます。
もちろんパンケーキとは息子 セバスティアンのことです。
父 ダヴィドとの会話から、 セバスティアンがひどい育て方をされたとわかりますね。
会話を聞いたグジェゴシュは父 ダヴィドに黙れ!と言いますが、
これは自分の人質としての立場が危うくなるからではなく、 セバスティアンに同情したからでしょう。
ただ、普通は自分に銃を突きつけている犯人がちょっと可哀想だからって同情しませんよね。
おそらく、グジェゴシュも セバスティアンと同じように、父親からひどい扱いを受けてきた人物なのでしょう。
だからこそ、 セバスティアンに強く同情したのです。
つまり映画『プライムタイム』は、
社会的弱者が行動を起こしたけど何も伝えられない悲しみを表現しているのです。
声を上げても揉み消される側の人間の苦しみとリアルな感情を伝えたかったのだと思います。
セバスティアンが本当に生放送したかったのは、スタジオでぞんざいに扱われた自分自身の姿だったのかもしれませんね。
自分の苦しみを世間に発信したかったのでしょう。
ポーランドの子供の虐待や障害者の問題などを踏まえつつ、
社会派の側面をあえて前面に出さずに、視聴者に強く意識させたという面では素晴らしいと思います。
『私というパズル』や『悪魔はいつもそこに』のように、最後に登場人物の抽象的な葛藤だけが残るような斬新な作品だと思いました。
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