ドキュメンタリーの内側へ
行方不明になった子供の家族だけでなく、中村倫也さん演じる砂田や新人の三谷(小野花梨)ら報道にたずさわる人物の心の動きもヴィヴィッドにとらえられていました。
ドキュメンタリーを撮られる側だけでなく撮る側にも感情移入することができ、鑑賞者がドキュメンタリーの内側にほうりこまれるようなつくりがとても興味深かったです。
母・沙織里は「しょせん娘を見つけたい温度が違う!」と記者の砂田を責めます。
砂田は「何か進展がないと放送しても視聴率がとれない」と上司に言われ、コミュ障の圭吾を取材しますが、結局なんの罪もない圭吾を追い込むことになってしまいました。
ドキュメンタリーは真実をもとにしているとはいえ、ストーリー仕立てになっていないと誰も興味を持ってくれません。
母・沙織里も記者の砂田も、だんだんとTV映りを意識するようになり、娘・美羽の誕生日を前撮りしたりします。
果たして“前撮り”は真実でしょうか?
TV的な演出が入りこみ、双方の純粋な想いがだんだんとねじ曲がっているような怖さが感じ取れます。
問題提起の仕方が本当に秀逸ですね。
実際のドキュメンタリーでも、こういった微妙な演出は避けられません。
そもそも編集次第でストーリーを作り替えることもできますからね。
映画『ミッシング』では非常に微妙な放送倫理の問題が浮き彫りになっており、学ぶことが多い作品でした。
SNSの問題点!
娘が行方不明になって悲しみに暮れる母親にさえ最悪なコメントが飛んでくるSNS。
最近は訴えるケースも増えているらしいですが、調べてみると個人だと慰謝料はせいぜい数十万円。犯罪歴なしなら執行猶予がつくので刑務所にいれることはほぼ無理なよう。
映画では豊が裁判所に訴えて悪質なコメントを書き込んだ男が逮捕・送検されたっぽかったですが、普通は悪質なコメントだけで逮捕されることはほとんどないそうです。書き込む人が1人ではない場合は対策が難しいですね。
私もブログ書いていると結構ひどいコメントが来たりしますが、相手の年齢も身分もわからないので相手にしないようにしています。
もしかしたら子供かもしれませんし、怒ってコメント返ししてもしょうがないです。
ネットやSNSにはやられ損的な面があります。名前が少しでも広まってしまえば見知らぬ人から悪口を言われても何もできないのです。
映画『ミッシング』から、何かを書き込むとだれかが傷つくことになると伝わってきました。
最後のまとめ
石原さとみ主演の邦画『ミッシング』は、登場人物の演技、演出、リアルな行方不明、放送倫理への問題提起が絶妙なバランスで交錯した完成度の高い作品でした。
映画『ミッシング』作品情報・石原さとみ主演
制作国:日本
上映時間:1時間59分
ジャンル:ヒューマンドラマ
年齢制限:G制限なし
監督:田恵輔(「空白」)
脚本:田恵輔
原作:原作なし、映画オリジナル脚本
音楽:世武裕子
キャスト↓
石原さとみ(実写『進撃の巨人』)
青木崇高(『ゴジラ-1.0』)
中村倫也(『仮面ライダーBLACK SUN』)
森優作
小野花梨
小松和重
細川岳
カトウシンスケ
山本直寛
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