韓国ドラマ『未成年裁判』考察:失敗のラスト結末
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『未成年裁判』は最終回やそのラストが特に微妙だったと思います。
ラストシーンは、第1話で友人の少年殺害を隠蔽しようとしたソンウが、また何らかの罪を犯して審理を受けに法廷に立つ結末です。
そもそもソンウの母親は罪の大きさにしっかり気づいたはずで、ウンソクも親が更生の鍵を握っていると言っていました。
大元のシステムが破綻していれば、判事たちの思想や頑張りも焼け石に水になってしまうでしょう。かなりモヤモヤのラストです。
韓国では保護監察官が1人あたり100人を見ているなど、システムの欠陥(マクロな視点)が劇中でしっかり指摘されています。
それもあって、うがった見方をすると何も解決されないまま同じ問題を繰り返しているラストに思えてしまうのです。
もちろん現実的には更生は難しいので、少年事件裁判の判事が何度も相手をしないのもわかります。
しかし実際はラストで意外性を持たせるためにソンウを出したような印象です。
あと最終回10話については、そもそもインジュンとドヒョンは顔も体も16歳に見えないですし、美人局で大人たちを脅迫して金を奪ったり、性行為を録画して動画編集して売却したり、16歳にして半グレ組織を束ねていたというのもリアリティがないです。
韓国で社会問題になったチャットルームを使って女性の性的画像を流布した「n番部屋事件」が元になっているのでしょうけど、手口を詳細に描いたわけでなく、売春・美人局までごっちゃにして現実味が欠けた印象でした。
かつて殺人事件を起こしたインジュンとドヒョンが今もつるんでいるのも、「普通はお互い連絡取れないようになっているのでは?」と疑問に思いました。
韓国の少年法システムの問題の欠陥のせいでしょうか?
だとしても殺人事件の共犯同士が今も一緒に遊んでいるのはドラマだとしてもやりすぎな気がします。加えて本作では方向性すら示されなかった法改正や制度改革による更生システムが最優先事項だという証明であり、判事が人間として立ち向かうラストが、少年犯罪全体では不十分だと浮き彫りになっている印象。
また、ドヒョンがウンソクをナイフで刺しておきながら、インジュンのために裁判所に証人としてやってくるのもよくわかりません。普通ノコノコとやって来るでしょうか?
少年法・少年犯罪のテーマに対しての答えは?
少年法や青少年の更生などどうしていくかが、結局は個人の頑張りや面会でのケアに帰結しており、社会派ドラマとして底の浅さを露呈していたと思います。
ドラマ内では世論も青少年を取り巻く環境なども何も変わっておらず、変わったのはウンソクとテジュが少年法についての本を出版したことくらい。
もちろん、カン判事が試験漏洩問題を揉み消そうとしたのはダメですが、それを見過ごせないウンソクの綺麗事のせいで苦しむのは青少年たちですよね。
理想やこれから現状を変えるというパワーは必要です。
ただ、今この瞬間に苦しんでいる少年・少女たちに具体的に何をしてあげられるかの視点が弱いと思いました。
『未成年裁判』は青少年犯罪のテーマがまったく解決しておらず、大人が納得しただけに見えてしまうのが残念でした。
韓国ドラマ『未成年裁判』ネタバレ感想・評価
わりと法廷劇が好きなので厳しめの評価なのはご了承ください。
全体的に人間ドラマとしてはそこそこ楽しめました。しかし感情とロジックがせめぎ合う法廷モノの醍醐味がないのが残念。
サスペンス性も薄く、法廷特有のどんでん返しもインパクト少なめです。
主人公ウンソクの過去やテジュとカン部長判事の関係など感動できる展開はありますが、全体的にはあまり深くないヒューマンドラマで終わってしまっています。
司法制度への問いかけや問題提起が多く描かれていながら、個別案件のフワッとした解決と理想論に帰結した印象ですね。
少年犯罪は個人だけに責任を問えず、親や周囲の状況にも目を向けなければなりません。
しかし、その環境改善や社会問題について今後どうすべきか触れられていないのが、青少年犯罪を扱うドラマとしては不十分だと感じました。
ウンソクも少年犯罪で息子チャンを失っており、遺族について描く意義があるのはわかります。
ただ、ウンソクの物語と比較すると罪を犯した子供たちが今後どう生きるかに十分な時間が割かれず、少年更生のテーマがすごく小さくみえました。
それに関連しますが、殺人・DV・試験問題漏洩・過失運転致死・強姦など、罪の重さや解決への道筋が違うものをたった10話にいくつも詰め込んでいるので無理が生じている面もあります。
第7話では「レンタカー窃盗死亡事故」、最終回では「n番部屋事件」など韓国で実際に起こった青少年犯罪をモチーフにしていて問題提起としては素晴らしいですが、今後の方向性まで示されていません。
同じ少年犯罪でも倫理的には全く別物なので全体的に統一感がなく、どれも表面上の解決で終わってしまった印象です。もう少し犯罪の種類を絞り、解決の糸口を掘り下げた方が良かったでしょう。
ミクロ視点(個別案件)のみで、マクロ視点(法制度やシステム)については悪く言えばスルーした感があります。
本作では偶然が目立っていたのも難点です。少年・少女の弁護士はいつもホ・チャンミだったり、因縁のある部長判事ナ・グニも偶然赴任してきたり、などなど。
法廷ドラマには高いリアリティラインが求められますが、『未成年裁判』は全体的にその水準を若干下回っていた印象です。
本作に出てくる少年刑事合意部や刑事合議部は、韓国の実際の司法システムをもとに作られた架空の部署だそうですが、リアリティの面でもそれが正解だったとは思えませんでした。
『イカゲーム』や『地獄が呼んでいる』『今私たちの学校は』のように、Netflix韓ドラブームには続かないと思います。
登場人物・キャスト・印象
シム・ウンソク|キム・ヘス
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シム・ウンソクは、ヨンファ地方裁判所少年部に赴任してきた判事。大きな心の傷と秘密を抱えており…。
女優キム・ヘス 代表作:映画『コインロッカーの女』、ドラマ『シグナル』『愛の群像』
チャ・テジュ|キム・ムヨル
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チャ・テジュはウンソクの相部屋の判事。少年たちは更生できると理想を持っています。過去に大きな秘密が…。
俳優キム・ムヨル 代表作:ドラマ『バッドガイズ2 悪の都市』、映画『悪人伝』
カン・ウォンジュン|イ・ソンミン
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カン・ウォンジュンはヨンファ地裁の部長判事。
俳優イ・ソンミン 代表作:ドラマ『アラン使道伝 』『 記憶 愛する人へ』 『ミセン』
ナ・グニ|イ・ジョンウン
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ナ・グニは、ウンソクと因縁のある部長判事。
女優イ・ジョンウン代表作:映画『パラサイト半地下の家族』ムングァン役、ドラマ『椿の花咲く頃』『ロースクール』
その他の登場キャラ・キャスト
ペク・ソンウ(未成年殺人犯)|演 イ・ヨン
ソ・ユリ(DVを受ける少女)|演 シム・ダルギ
コ・ガンシク刑事|演 パク・ジョンワン
ジュ・ヨンシル|演 イ・サンヒ(参与官)
ソ・ボム(地裁事務官)|演 シン・ジェヒ (『今、私たちの学校は』チャンフン役)
ウ・スミ|演 パク・ジヨン (『ホテルレイク』『犯罪の女王』)
オ・ソンジャ(プルム回復センター長)|演 ヨム・ヘラン(『悪霊狩猟団:カウンターズ』)
ホ・チャンミ|演 キム・ヨンア(『ある日 真実のベール』)
オム・ジュンギ(国会議員)|演 ユ・ジェミョン(『梨泰院クラス』デヒ役、『ヴィンチェンツォ』)
ウ・ミンギョン(プルムで更生中の女子)|演 オ・ヘス(『今、私たちの学校は』)
イ・ナムギョン(不良グループのリーダー)
Netflix『未成年裁判』作品情報
原題:『소년심판』英題:『Juvenile Justice』
監督・演出:ホン・ジョンチャン(『彼女の私生活』『ディア・マイ・フレンズ』)
脚本:キム・ミンソク(『モンスターズ』『超能力者』)
配信:Netflix
制作:ギルピクチャーズ/ジティスト
ホン・ジョンチャン監督は、少年事件を担当する判事たちの信念のぶつかり合いをテーマにしたようです。
最後のまとめ
Netflix『未成年裁判』は答えを出すのが難しい少年犯罪を扱ったディープな作品になると思いましたが、解決感のなさやご都合主義が目立ち、引き込まれませんでした。
個人的には続編・シーズン2はなくていいと思います。韓ドラなら本作より『ロースクール』の続編が見たいです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『未成年裁判』レビュー終わり!
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