Netflixオリジナル映画『彼女』(英題:Ride or Die)は女優・水原希子と ゲスの極み乙女のドラマー・さとうほなみが主演を務めた官能ヒューマンドラマ。
水原希子の意見でインティマシーコーディネーターを導入して撮影されたラブシーン・濡れ場やヌードシーンが過激すぎだった。グロいシーンもある。
中村珍の漫画『羣青(ぐんじょう)』が原作です。
映画にはLGBTQの青春・愛・葛藤の他に、かなり危険なメッセージが込められていたと感じたのでその辺を深く考察していこうと思う。
LGBTQのテーマの裏に結構危険な思想が込められた問題作!雰囲気に浸る作品が好きな人は楽しめるだろう。
映画『彼女』ネタバレ考察!過激なメッセージ!
「 愛する人のために死ねます!」これはよくあるメッセージだが、映画『彼女』の場合はさらに踏み込んだもっと過激なメッセージだった。
それは「 愛する人のために人を殺せます」というもの。
レイが七恵に「この人のために人を殺してもいいと思える人とセックスできた」的な発言をしていたし、レイの兄嫁・悠もレイの気持ちを汲み取り、家族のためだったら人を殺せるだろう!とハッキリ言っていたのも印象深い。
冷静に考えると、かなり過激で危険な思想だ。
「あなたのために死ねます」という自己犠牲は美談になり得るが、「あなたのために人を殺せます!」は、自らが加害者になり被害者を出す最悪の結末である。
倫理的にも完全にアウトだろう。
人は 愛する人のために殺人を犯せるのか?
イ エスという答えは許されない。ただ人の心の闇に目を向ければ、そういう部分があるのかもしれない。
道徳の授業では決して許されないメッセージを断言した点は、斬新で評価できると思う。
『彼女』は子どもに見せて大丈夫!?
過激なラブシーンを抜きにしても、「あなたのために殺人を犯せます!」というストーリーは、教育上はちょっと良くないと思う。
革新的なメッセージという点では素晴らしい作品だが、自分で判断できない子どもにはまだ視聴させるべきではないかもしれない。
映画『彼女』ネタバレ感想・評価/LGBTQ苦悩とラブシーン考察
評価は80点/LGBTQ レズビアンの問題提起
映画『彼女』は序盤の殺人シーンはグロかったものの、中盤以降はわりと明るい雰囲気も多いLGBTQ問題提起のヒューマンドラマ+ ロードムービーだった。
(※LGBTQとは、 レズビアン・ゲイ・バイ・ トランスジェンダー・性に疑問を持つ人の総称)
個人的な評価は80点くらいで、思っていたより全然楽しめた。ただし、別にテーマやメッセージの深さが重要ではない人からすれば、全く逆の「つまらない!」という感想になるだろう。
ロードムービーお決まりの刹那的で自暴自棄な雰囲気がしっかり描かれ、リアルで美しい情景の数々が二人の感情を浮かび上がらせていた。
水原希子は実写版映画『進撃の巨人』などより、こういうシリアスなヒューマンドラマとかの方が断然向いていると感じた。
水原希子の濡れ場やヌードがエロ過激すぎ
あとは、濡れ場が結構過激で驚いた(家族では見れないだろう…)。
水原希子も さとうほなみも、乳房はモロ見えで下だけはかろうじて見えないヌード。
『全裸監督シリーズ』並みのモロ出しですね。
そして二人の レズビアンの性行為描写が具体的(手を使ってお互い交代で攻め合うなど)で、時間が割かれていたこともあり、 レズビアンをよりリアルに感じることができた気もする。
また、アート的で素晴らしかったのは、ベッドでレイが七恵の旦那を殺すときに、乳房が血で染まるシーン。
グロさと美しさを兼ね備えていた。
LGBTQの悲哀が狂気につながってしまった
レイの彼女・美夏の「あなたと付き合っていたとき、生まれて初めて同性愛者になれてよかったと思った」と言う電話越しのセリフも考えさせられた。
LGBTQの人は、劇中でレズビアンのレイが他の女子から噂されていたように、ありのままでいようとすると偏見の目で見られることもあるだろう。
しかし真実の愛があれば、それを超越した喜びに辿り着けるのかもしれない。
ストーリーを考えると、10年前の七恵はすでにレイを好きだったようだが、彼女は偏見から素直に行動できなかったのだろうか?
もしかすると、自分自身をレズビアンだと認められなかったり、性に疑問を持っている段階だったのかもしれない。
七恵は、LGBTQでいうと「Q(ク エスチョニング)」という自分の性がわからない状態なのだろ。『彼女』はシンプルな レズビアン映画ではなく、もっと多様性をはらんでいるのが素晴らしい。
あのとき七恵が素直になれていれば、その後の殺人劇は起こらなかったかもしれない。
『彼女』はそんな強烈なストーリー&メッセージでLGBTQを肯定した興味深い映画だった。
ベッドシーンやヌードを多用することの是非
映画『彼女』は、「こんなに水原希子のベッドシーンやヌードを入れる必要ある?」と批判を受けるかもしれない。
Netflixで誰でも観られるので子どもが見る可能性も高いだろう。
ただ本作はインティマシーコーディネーター(ベッドシーンで俳優に配慮しつつ演出を考慮する専門家)が日本で初めて起用された作品だ。
一応はインティマシーコーディネーターである浅田智穂さんが(篠原涼子主演『金魚妻』でも担当)、撮影時に水原希子やさとうほなみに精神的苦痛が及ばないように配慮して撮影されている。
ベッドシーン、ヌードシーンが必要かどうかの話に戻るが、ストーリーから見ても、レズビアンのリアリティを増すために裸やエロシーンはあって正解だったと思う。
仮に今作が“ヌードなし”で描かれた場合、レズビアンの悲哀や苦悩の重要なメッセージが伝わりにくく、味気ない作品になってしまったことだろう。
まあ脱ぐ脱がないの是非は時代と共に変わるので難しい議論ではあるが…。
ただ一方で、先ほど述べたように「 愛する人のために人を殺せる」危険なテーマがあるので、そういう意味で子どもは見ない方がいいかもしれない。
本当にやってる?
この記事は「映画『彼女』が本当にやっているのか?」というキーワードで検索されることが多いのでそれに回答しておくが、インティマシーコーディネーター(俳優に配慮して濡れ場の演出を考える専門家)が起用されているので本番をしている可能性はないだろう。
仮にインティマシーコーディネーターが起用されていないとしても、現代の制作現場で本番を撮影させることはまずありえない。これは日本だけでなく世界共通だ。
他の映画との比較
映画『彼女』は同性愛者問題+ ロードムービーの構造。
差別と ロードムービーを一緒にした『グリーン・ブック』や、差別と同性愛と貧困を描いた『ムーンライト』などに似ていると思いきや、殺人を犯して簡単に逃げるストーリー自体は、それほどリアルを追求していない。
どちらかというと、メッセージ性に特化した作品だった。
序盤はおしゃれなバーで始まり、夜の幹線道路を走るシーンやレズビアンの女性の殺人という展開から『マルホランド・ドライブ』を意識しているのかと感じたが、シリアスなサスペンスではなく、明るい雰囲気の現実逃避をメインにしたのが印象に残る。
感情を吐露するようなシリアスなシーンは少なめで、 YUIの『CHE.R.RY』を歌い出すなど常に現実逃避しているので、雰囲気は全然違うものの ジム・ジャームッシュの傑作『ダウン・バイ・ロー』を思い出した。
総合すると映画『彼女』は、明るさと暗さの コントラストに優れた作品だといえるだろう。
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