ディズニープラス独占配信の海外ドラマ『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』(ドープシック)。
鎮痛剤・オピオイド(麻薬)が巻き起こした社会問題・悲劇を描いたノンフィクション小説をもとに、名優マイケル・キートン主演でドラマ化しています
目を背けたくなるような現実に、心を打たれる作品です。
本作の感想・評価や、ストーリーネタバレあらすじ解説、マイケル・キートンの演技について書いていきます。
『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』キャスト・作品情報
制作:ダニー・ストロング
原作:ベス・メイシー著「DOPESICKアメリカを蝕むオピオイド危機」
主演:マイケル・キートン
出演:マイケル・スタールバーグ/ウィル・ポールター/ピーター・サースガード/ロザリオ・ドーソン/ケイトリン・デヴァー
ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
1996年:アメリカ・バージニア州の田舎フィンチ・クリークでは、町民のほとんどが炭鉱に従事していました。町医者フィニックス(マイケル・キートン)は、炭鉱で背中を怪我した若い女性ベッツの痛みを和らげるために最近紹介された新薬オキシコンチンを処方。それが悲劇の始まりでした…。
ベストセラーとなったノンフィクション小説を映像しただけあって、鎮痛剤ドラッグ・オピオイドによる副作用・依存性などが非常にリアルに描かれています。
主演のマイケル・キートンを筆頭にキャストの演技も真に迫るものがあり、ヒューマンドラマや社会問題が好きな人にはぜひ視聴してほしい作品!
ただし、エンタメ系コンテンツが好きな人には向かないでしょう。
おすすめ度 | 80% |
ドラッグ中毒のシリアス感 | 94% |
ストーリー | 85% |
IMDb(海外レビューサイト) | 8.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト | 批評家84% 一般94% |
※以下、ドラマ『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』ネタバレ感想・評価
©︎ディズニープラス+
- 製薬会社の策略
- 医者が抱き込まれて処方
- 中毒者が苦しむ様子
- 司法省や麻薬科の捜査
- フィニックス医師が炭鉱町の人々にオキシコンチンを処方し始めた1996年
- 司法省のリックたちがドラッグ中毒の捜査に乗り出す2002〜2003年
を軸に、時系列がコロコロ切り替わるのも特徴。
登場人物を全員把握するまではちょっと見にくいですが、良かれと思って処方した医者の判断→悲劇の結果がシームレスに映ります。
マイケル・キートン演じる善良な町医者フィニックスが騙され、炭鉱で働く人々の痛みを無くしたい善意からオキシコンチンを処方してしまう過程に考えさせられ、心を揺さぶられました。
善意が人を殺してしまう以上の悲劇があるでしょうか?
結果的に優しい町医者がヒトラー的な役割を担わされていると考えると、見ながら胸が苦しくなります。
『DOPESICKアメリカを蝕むオピオイド危機』は善意がドラッグ中毒患者を生み出してしまうやりきれない物語なのです。
マイケル・キートンやっぱりすごい
©︎ディズニープラス+
マイケル・キートン演じる町医者・フィニックスのキャラクターが絶妙だと思いました。他の人が演じたらドラマ『Dopesick』の臨場感はここまで上がらなかったでしょう。
平凡だけど情にあつい町医者を完璧に演じていています。具体的に言うと会話で伏し目がちだったり、間をたっぷり使って鈍臭さを出していた印象。
敢えてスムーズに喋らないので、現実に近いのです。
特に第2話で、喋りが得意でないフィニックスが炭鉱町の現状やオキシコンチンを処方して痛みが改善していることを心のままに語り、会場中の心をつかんでいるシーンは何回見ても素晴らしいです。
フィニックスがどれだけ町の人々のことを思っているのかがダイレクトに伝わりとても感動的でした。(こんなふうに自分の心を素直に語れる人が真のカリスマなのでしょう。)
同時に、視聴者はこのスピーチがどれだけ怖い意味を持っているのかわかり、フィニックスの善意がそのまま悪意に変換されてしまうような悪寒を覚えました。
これほど感情移入できる名シーンを作り出したマイケル・キートンは本当に素晴らしい俳優だと思います。
また、町医者フィニックスにオキシコンチンを紹介する製薬会社の営業・ビリー(ウィル・ポールター演)も印象的です。
フィニックスの誠実さに触れることで良心が葛藤するビリーの心の機微も見応えがあります。
ドラマ『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』全話ネタバレあらすじ解説
ドラマは年代がごっちゃになっていますので、わかりやすくするために時系列に分けて解説します。
1996年
アメリカの大手製薬会社パーデューの経営者・リチャード(マイケル・スタールバーグ)は鎮痛薬MSコンチンの専売ができなくなることを危惧し、会社の命運を賭けて10年前から開発に注力していたオピオイド系新薬・オキシコンチンの販売に乗り出しました。
バージニア州の田舎フィンチ・クリーク診療所で、町民たちの怪我や病気を献身的に治療する、人の良い医者フィニックス(マイケル・キートン)は、パーデューの営業ビリー(ウィル・ポールター)に新薬オキシコンチンが中毒性1%以下で革新的だと勧められます。
フィニックスは炭鉱で働き背中に怪我をした女性ベッツや、他数名にオキシコンチンを処方。疼痛(痛み)に対しての効果はてきめんでした。
フィニックスはビリーの誘いで、オキシコンチンを広めるための大規模なセミナーへ行きます。尊敬する医者ラッセル・ポルトノイも公演していました。
フィニックスもオキシコンチンを処方している町医者としてスピーチすることに。アメリカを支える炭鉱夫たちの痛みを取り除きたいという彼の誠実なスピーチに、会場中が心打たれました。
ベッツはレズビアンであることを両親に理解してもらえず、彼女のグレイスとユリーカ・スプリングスへ移動したいと考えていました。オキシコンチンの副作用で吐き気が出始めています。
製薬会社パーデューは突出痛という言葉を作り出し、耐性が出来て効果が薄くなった患者には量を倍にしろと推奨。
ベッツに薬を処方してから4週間経過し、フィニックスは量を減らそうと言います。しかしベッツはすでに中毒状態でした。
意識朦朧の中で仕事し、メタンガスのチェックをミスりって炭鉱が爆発。エディという男性が右腕損傷の重傷を負います。
ワシントンにいたフィニックスは炭鉱爆発の治療のため車を走らせますが、事故に遭い肋骨を骨折。オキシコンチン20mgを処方されました。
1999年
DEA(麻薬捜査局)のブリジット・マイヤー(ロザリオ・ドーソン)は、街の病院にオキシコンチン処方箋目当てで患者が溢れているのを目の当たりにし、何かおかしいと感じ始めていました。
ブリジットは処方箋を強奪しようとする中毒の青年に出会い、ことの重大さを実感します。
ブリジットは恋人にプロポーズされ、舞い上がっていました。そんな中、ある薬局に強盗に入った男性がオキシコンチン中毒で死亡し、麻薬課の上司に相談。
上司はブリジットの訴えを退け、流通課への異動を命じます。
2002〜2003年
オキシコンチン中毒が進んだベッツは落ちぶれ、壊れた車で体を売って生活していました。
司法省のリック(ピーター・サースガード)やラムザイヤーは、オキシコンチン中毒による過剰摂取で死者が出ている現状を危惧し、本格的に捜査を開始。
FDA(食品医薬品局)を調べると、オキシコンチンについて中毒性が低い研究などはされておらず、認可したカーティス・ライトという人物は今パーデューに天下りしていると知ります。
販促用のビデオで出演者たちがオキシコンチンと商標名を口にせず、あとで見出しで追加されているのも変です。
癌の手術を受けたラムザイヤーは、病院でオキシコンチンを推奨されたことに憤りを感じました。
司法省のリックの訴えの一部が認められ、パーデュー製薬の販促資料が公開されることになります。
フィニックスは参考人として招致されました。
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