Netflix邦画『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、初恋の女性が忘れられずに46歳になった男が25年分の人生を振り返る物語!
絶賛された同名原作小説を、森山未來・伊藤沙莉主演で映画化したもので、期待以上の傑作でした。
人間関係の終わりから始まっていくストーリーがとても切なく胸が締め付けられます。
記事ではぶっちゃけ感想・評価、物語のテーマ考察、原作小説との比較、ストーリーのネタバレあらすじ解説をしています。
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』キャスト・作品情報
英題:We Couldn’t Become Adults
監督:森義仁
脚本:高田亮(『まともじゃないのは君も一緒』『死刑にいたる病』)
原作:燃え殻 著「ボクたちはみんな大人になれなかった(2017)」
撮影:吉田明義
制作会社:C&Iエンタテインメント
キャスト|役柄
森山未來|佐藤誠
伊藤沙莉|加藤かおり
東出昌大|関口健太
高嶋政伸|恩田隆行
篠原篤|七瀬俊彦
平岳大|佐内慶一郎
SUMIRE|スー
片山萌美|いわい彩花
大島優子|石田恵
ラサール石井|大黒光夫
萩原聖人|三好英明
佐藤誠役|森山未來
主人公・佐藤誠はTV業界の映像テロップを作る会社の創業メンバー。46歳。20年以上前の初恋の女性かおりをFacebookで見て、当時を思い出します。
森山未來の演技はすごく引き込まれますね。ずっと見てられます。彼じゃなかったら原作のリアリティは出なかったと思います。
加藤かおり役|伊藤沙莉
ヒロイン・かおりは佐藤の元恋人。今は結婚して子供がいます。
90年代当時はサブカル大好き女子で、仲屋むげん堂でバイトをしていました。小沢健二やアニメが大好きです。
酒焼け?タバコ?女優・伊藤沙莉はハスキーボイスで、原作のヒロイン像とはちょっと違いましたが、悪くはなかったです。濡れ場もしっかりありました。
ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
あらすじ:2020年、旧友・七瀬と道でばったり会った佐藤誠。酒を飲みながら昔を思い出し、初恋の女性・かおりと過ごしたかけがえのない1990年代の日々を回想します。
燃え殻の原作小説は、大人の視点で過去の恋愛の傷を振り返る、めちゃくちゃリアリティのある傑作だったので、映画化でその葛藤・みずみずしさ・世界観を表現できるのか心配でしたが、森山未來の迫真の演技と構成の変更で、映画は映画でとっても素晴らしい傑作になっていました。
今年公開だと菅田将暉の『キャラクター』や木村拓哉の『マスカレード・ナイト』が面白かったですが、それらより良かったです。
時系列がだんだんさかのぼっていく構成により感動的でメッセージ性も深く、ぜひ視聴してほしいヒューマンドラマ。
おすすめ度 | 88% |
独特な世界観 | 87% |
ストーリー | 86% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.5(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト | 批評家67% 一般92% |
※以下、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』ネタバレ感想・評価
- 映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の学園祭前日を繰り返す話
- 中島らもの著書「永遠も半ばを過ぎて」で文字の幽霊により無意識に小説を書く話
僕たちはみんな大人になれなかった:考察
ラストの意味:大人になれなかった人こそ大人
「若い頃に想像した大人になれた人なんかいるのか!?」
誰もが考えたであろうその疑問に1つの答えを出したのが本作なのでしょう。
エンドロールの後にタイトルがタイプで打ち込まれますが、
「ボクたちはみんな大人になれなかった」から→「ボクたちはみんな大人_」に書き換えられます。
過去を受け止め、大人になり切れていない葛藤を抱えている人こそが真の大人だという逆説的な答えです。
若い頃に憧れたような大人になれていないという葛藤も持たずに生きてる人は、本当の意味で大人ではないのかもしれません。
また、ちょっと違う解釈として、映画のストーリー進行とエンドロールの答えを組み合わせて考えることもできます。
主人公・佐藤誠は過去を回想しながらさかのぼっていきました。
その時代時代の自分の感情を真正面から受け止めました。そして40歳を超えてやっと彼は大人になったのだとも取れます。
心の中の様々な時間軸のメタファー
佐藤が終盤で1人で歩くシーンで、脳内にいくつもの時計が入っているポスターと佐藤が重なりあうシーンがあります。
人の回想の際には記憶が逆再生されるわけでなく、過去のあるシーンを決めたらそれが順方向に展開されていきます。
人は頭の中に何個も思い出という名の時計を持っていて、無意識かつ同時にそれらのシーンが何度も刻まれ、繰り返されているのかもしれません。
原作小説の構造から導き出せるテーマに近い、印象深いシーンでした。
燃え殻・原作小説との違い解説
(著者・燃え殻さんの原作は最初にTwitterのつぶやきで話題になり小説投稿サイトcakesが大元になりますが、その後に書き直して正式出版された新潮文庫のほうと映画を比較しています。
構成
原作小説は主人公の回想が時系列を無視する形なのに対し、映画では現在から過去という一方通行です。
伝わり方は少し変わりますが、原作小説も映画版も両方素晴らしいと思います。
- 原作:元恋人・かおりへの想いを中心にした思い出の渦巻き
- 映画:かおりとの思い出を目指し、ゆっくりさかのぼっていく川のぼり
主観もありますが、こんな風な印象の違いを感じました。
原作小説は回想が年代順でなくバラバラで、回想の中の回想もあったりして複雑なのですが、逆にそこにリアリティがあり、味わい深かったです。
2人が別れた理由
映画だと、なぜ佐藤とかおりが別れたのか明確になっていません。
小説では自然消滅のようでありつつも、かおりに別の男性の影がチラつき、それを知った佐藤が別れの言葉をさりげなく口にして終わっています。
映画が小説の設定と同じだと考えると、かおりが駅と別方向に向かったのは、他の男性(のちの結婚相手の小沢)のところへ行ったのでしょう。
あとは、主人公佐藤がかおりにFacebookで友達申請してないというのも大きな違いです。
スーの3文字の愛の言葉
原作小説と映画で1番違ったのが、佐藤がかおりの後に出会ったSUMIRE演じるスーの存在です。
映画だとかおりと完全に別れたあとでスーと出会いますが、小説だと佐藤はかおりがインドに行っているときにスーに出会い深い関係になってます。
佐藤の気持ちもかおりから少しずつ離れていったとわかるのです。
さらに、小説版のスーは「日本初の南極探検隊に妻がたった3文字の電報を送った」というナゾナゾを出しました。
そしてその後、答えを知らないままの佐藤にそのナゾナゾの答えである「あなた」とさりげなく語りかけます。
スーが佐藤に救いを求めているのがより明確にわかります。
個人的に小説の中でもかなり好きだったシーンなので、映画で「あなた」がカットされていたのはちょっと残念でした。
七瀬の好き設定など
七瀬がゲイでバーをやっているのは一緒ですが、彼が佐藤を好きなのは映画オリジナルの設定です。
あとは、新潮文庫の小説だと大島優子演じる佐藤の婚約者・石田恵も出てきません。さらに歌手あいみょんのエッセイや、相澤いくえの漫画が収録されています。
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