映画『1秒先の彼』。台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイク作品。岡田将生・清原果耶のW主演です!
果たして1秒早い男と1秒遅い女の恋は実るのか!?
作品情報・キャスト
あらすじ
ネタバレなしの感想
考察:なぜ主人公だけが「昨日を紛失?」、細かい伏線
主人公・ヒロイン 2つの視点/物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
ぶっちゃけ感想・評価・日本リメイクと台湾版との違い(ネタバレあり)
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
映画『1秒先の彼』作品情報・予告
制作国:日本
上映時間:119分
英題:『One Second Ahead, One Second Behind』
ジャンル:ラブロマンス・コメディ・ヒューマンドラマ・ファンタジー
年齢制限:G(年齢制限なし)
監督:山下敦弘
脚本:宮藤官九郎
原作:台湾映画「1秒先の彼女」(My Missing Valentine)
主題歌:幾田りらの楽曲「P.S.」
原作の台湾映画『1秒先の彼女』との違い
『1秒先の彼』は台湾映画『1秒先の彼女』(2020)のリメイクで、台湾版の男女のキャラクターを入れ替えた設定です。(台湾版だとヒロインが郵便局員)
邦画『1秒先の彼』キャスト
人より1秒行動が早い主人公・ハジメ(皇一/きさらぎ はじめ)役に岡田将生さん。カッコいいけど人との会話のテンポを無視して行動しちゃう感じが絶妙で笑えました。
岡田将生さんは近年は『さんかく窓の外側は夜』や『ドライブ・マイ・カー』など話題作に出まくってます。
イケメンですけど演技力はピカイチですよね。深みのある演技ができる印象です。
岡田将生さん出演作のレビュー記事↓
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幼少期のハジメ役は是枝裕和監督の映画『怪物』でブレイク中の子役・柊木陽太さん。子役なのに目つきがミステリアスですごい。
人より行動がワンテンポ遅いヒロイン・レイカ(長宗我部麗華/ちょうそかべ れいか)役は清原果耶さん。2023年時点でまだ21歳ですが透明感がすごいことに加え、本作では根暗っぽい演技がすごくハマっていました。
清原果耶さん出演作のレビュー記事↓
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2024年には広瀬すずや杉咲花と主演を務める『片思い世界』も公開されます。
台湾版と比較して「イケメンと美女がヒロインなのはどうなのか?」と不安もありましたが、劇場で鑑賞してみると岡田将生さんと清原果耶さんだから成立した面もあったと思います。
キャスティングは結果オーライでした!
映画『1秒先の彼』あらすじ
郵便局員のハジメ(岡田将生)は、幼い頃から人より行動がワンテンポ早く、周囲から浮いた存在だった。
郵便局の同僚・エミリ(松本妃代)に告白されて付き合うも、なんと26日間でフラれてしまう。見た目は100点だが行動や発言でどんどん減点されていったのが理由だった。
長屋に同居している妹・舞(片山友希)とその彼氏・ミツル(しみけん)は「見た目は100点。中身は0点!」とハジメのことを冷やかした。
最近になってわざわざ窓口で切手を1枚買って手紙を出す根暗な大学生・レイカ(清原果耶)が郵便局に来るようになった。しかしハジメは彼女のことを気にも止めない。
ハジメはストリートミュージシャンの桜子(福室莉音)を好きになりデートをした。
桜子は「父親が重病で治療費を稼ぐために風俗をやるしかないかも」と言う。今月は40万円足りないらしい。
ハジメは40万円を捻出するために「7月7日・日曜の宇治花火大会で開催されるカップルコンテストに出場して賞金を獲得しよう!」と提案。
そしてコンテスト当日。ハジメは朝起きてバスに乗り込んだ…。しかし、気づくとカリッカリに日焼けした状態で家の布団で目を覚ました。
郵便局に行くとなぜかみんな出勤している。もう月曜になっていた。ハジメは「昨日を紛失した」と交番に紛失届を出すが…。
ハジメは街の写真屋で自分の写真を見つけ、一緒にレイカが写っていることを不思議に思う…。
そんなとき郵便局に自分と同じようにカリッカリに日焼けしたレイカがやってきた。
ネタバレなし感想・海外評価
すれ違いの男女に七夕の奇跡が起こるラブストーリー…というティーン向けっぽい設定なんですけど、実際はスパイスが効いた大人向けの物語です。
岡田将生さん演じる主人公に起きた謎の出来事や伏線が、清原果耶さん演じるヒロインの視点で回収されていく過程がとっても痛快!
細かい伏線も多く、注意して見ていないと訳がわからなくなります。
絶妙な笑いの演出もあるんですけど、最近のNetflixドラマ『離婚しようよ』などに比べると宮藤官九郎さんっぽさは抑えられており、思ったよりも台湾の原作映画に忠実な部分が多いです。
ただ、キャラや演技・演出・セリフは秀逸なので、オリジナル版を見ている人でも十分楽しめます。
長屋や小川の美しい風景、浮世離れした天橋立など、京都の魅力も満載で、旅行に行きたくなりますよ!
おすすめ度 | 80% |
ストーリー | 85% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新 | 批評家 % 一般の視聴者 % |
メタスコア(Metacritic)※随時更新 | (100点中) |
※以下、日本映画『1秒先の彼』のストーリーネタバレありなので注意してください!
1秒先の彼 考察(ネタバレあり)
ハジメだけ2日間停止
レイカとバスの運転手以外の人々の時間が停止した日、普通の人は1日だけ停止して解除されましたが、実はハジメだけ2日停止状態でした。
ハジメが警察に「昨日を無くした!」と言ったことや、ハジメは1日なくなった感覚があるにも関わらず、郵便局の同僚は日にちの感覚がズレていないことからもわかります。
バスに乗っていたハジメの父が「逆に時間を返さなくてはならない人間もいる」と言っていましたが、これはハジメのことを指しているのでしょう。
普通の人より生き急いでいたハジメは2日間も停止状態。時間停止がないレイカとは体感時間が2日ズレたことになります。
ラスト結末:なぜ363日後に再会!?
ハジメとレイカの再会になぜ363日もかかったのか?結論をいうと織姫と彦星が出会えるのが七夕だからです。しかし、より具体的な解釈もできます。
2人は時間が停止した数日後に再会を喜びあってもよかったはず。
ハジメがレイカのことを思い出すのが遅れても、レイカがトラックに追突されなければ再会を喜びあうチャンスはありました。
なぜレイカはトラックに事故に会い、再会が1年引き延ばされたのでしょうか?
理由はハジメが七夕を過ごしていなかったからでしょう。彼だけは七夕の日(日曜)も停止していたので織姫と彦星のパワーを受け取れなかったのではないでしょうか。
よって、ハジメもしっかり七夕を体感できる翌年の七夕に再会が持ちこされたのだと思います。
363日かけてパピコを届けた
ラストの郵便局のシーンは、人より行動が遅いレイカが363日かけてパピコを届けに行ったように見えて感慨深いです(ハジメの父が「パピコを息子に買ってあげて」とレイカに頼んだ約束を果たした)。
ハジメは行動が早すぎてレイカは遅い。
時間停止中の花火
レイカとバスの運転手、そしてハジメの父だけが動ける時間停止中の世界。
夜、3人はハジメをかついで彼の実家に行きましたが、このとき空に花火がありましたね(停止した花火)。
これは日中に花火師が試し打ちした瞬間に時間が停止し、夜になって火の明るさで視認できるようになったものでしょう。2人の花火師のシーンが伏線だったわけです。
恋愛の時差の話
『1秒先の彼』はどんなカップルにも起こりうる恋愛の時差の物語だと感じました。
せっかちなハジメと、トロいレイカの間でたくさんのすれ違いが起こっていたのです。
そもそも、ハジメが何度も窓口にきたレイカの手紙の宛先をチラッとでも見ていたら、彼女のことを思い出したはず。
また桜子がお弁当を渡した際、裏側を知っていたレイカは「桜子がハジメを騙している」と伝えようとしましたが、テンポの早いハジメに「切手でしょ?」と会話をさえぎられます。
映画『1秒先の彼』ネタバレあらすじ解説
主人公・ハジメ視点
宇治市のカップルコンテスト当日の日曜、ハジメは同居している妹の彼氏・ミツルからコンドームをもらう。ハジメはコンテストで賞金を獲得できなかったときのために、封筒に40万円用意してバスに乗り込んだ。
バスの中で金を数えるハジメ。その後ろでスリの男性が封筒を狙っている…。
ハジメが気づくと、カリカリに日焼けした肌で布団に寝ていた。
寝坊した!と思い桜子にメールを打つが既読がつかない。
ハジメは郵便局へ行く。すると日曜のはずなのに、みんな窓口で勤務していた。
ハジメが「今日は日曜だ!」と言うと、「いや、月曜だよ!」とみんなが笑う。
パニックになったハジメは花火会場へ行く。おじさんたちが花火大会の後片付けをしていた。花火は昨日だと言われる。
ハジメは写真館に自分の写真が飾られているのを発見。写真館のおじさんにその場所はどこかとたずねる。おじさんは「たぶん日本三景の天橋立じゃないか?」と答えた。
郵便局にレイカからの最後の封筒があった。宛先は天橋立の郵便局の私書箱だった。
ハジメはバイクをすっ飛ばして天橋立の郵便局へ行く。私書箱の鍵は開かない。もしやと思い実家に帰って棚にあった鍵を持っていくと私書箱が開いた。レイカからハジメ宛にたくさんの手紙や写真が入っている。
ハジメは写真の場所を発見し、レイカのことを思い出した。
ヒロイン・レイカの視点
レイカは幼い頃に親が運転する車で交通事故に遭い、病院に運び込まれた。事故で両親は死亡。レイカも重傷を負っていた。
そんなレイカを励ましてくれたのが隣の病室にいたハジメだった。ハジメが退院する日、2人は「私書箱(レイカの父のもの)で文通しよう」と約束した。
レイカは天橋立付近の親戚に引き取られたため毎週私書箱を見に行った。しかしハジメは手紙を見にきていないようだった。
天橋立は京都の中心地から遠く離れているため、子供のハジメが見にこられるはずがない。
成長したレイカは大学に入り、7回生になっていた。写真部の部室に住んでバイトを掛け持ちしている。
最近になってバスでハジメを見つけたレイカは、ハジメが勤める郵便局で天橋立の私書箱宛で手紙を出すようになる。しかし彼は自分のことを覚えていないようだった。
レイカは郵便局に来ていたストリートシンガー・桜子が裏で美人局(自分に言いよってきた男をヤクザに脅させて金を巻き上げる)をしているのを目撃。
桜子は弁当を作ってきた男をヤクザに囲ませて、「キモッ」と言っていた。
桜子は弁当を自分が作ったことにしてハジメに渡していた。レイカは弁当と桜子のことをハジメに忠告しようと思ったが、話をさえぎられる。
レイカはデート中のハジメと桜子をストーキングし、宇治花火大会でのカップルコンテストの話を聞いた。
2人が別れたあと、レイカは桜子に「ハジメをだますな」と居酒屋で水をぶっかける。レイカは川に突き落とされた。
レイカは大学の屋上で寝て朝起きた。蚊が空中で止まっている。
時間が止まっており、学生たちはみんな静止していた。街の人たちもみんな止まっている。バスの運転手・ミクルベ(荒川良々)だけが静止せずに動いていた。
レイカはバスの中で静止しているハジメを発見し、運転手に「天橋立に連れていってほしい」と頼む。
天橋立の砂浜で、レイカはハジメと写真を撮影して幸せなひとときを過ごす。
帰りのバスで、後部座先からくしゃみが聞こえる。静止したフリをしていたその男性はハジメの父親だった。
ハジメの父親は「時間が24時間停止するのを体験するのは2度目で、ハジメの家族から逃げて自殺する瞬間に時間が止まって思いとどまったことがある」と話す。
バスはハジメの実家へ向かった。ハジメの父は母親の手にみょうが(「みょうがを買ってくる」と言って失踪した)を握らせた。
レイカは、ハジメと母親と父親を座らせて3人で写真を撮る。夜空には花火が上がっていた。
ハジメの父は「息子にパピコを買う約束をしていたから、代わりに買ってあげてくれ」と言って去っていった。
レイカはハジメを家に連れて帰り、布団に寝かせる。キスをしようとするが思いとどまった。バスの乗客にスられていた40万円をレンジの中へ入れた。
翌日、レイカはカリッカリに日焼けした状態でハジメがいる窓口で天橋立あての封筒を出し、「ありがとう」と言う。
横断歩道を歩いていたレイカは、ハジメにパピコを買おうと思い出して立ち止まり、突っ込んできたトラックに轢かれた。
ラスト結末
それから363日後。
レイカのことを思い出したハジメは、天橋立への異動を希望して現地の郵便局で働いていた。
そこへレイカが松葉杖をつきながらパピコを持って現れる。ハジメは泣きそうな表情で「なんで?」と言った。
映画『1秒先の彼』ネタバレ感想・評価・リメイクと原作の違い
良い点・残念な点
台湾の原作と日本リメイク版をどちらを先に見るかで評価が変わるかもしれませんね。
私は台湾の原作映画を先に見ていたので、どちらかといえばそちらのほうが感動は上だったような気がします(見る順番が逆だったら分かりませんけど)。
台湾の原作版は明らかにイケてないヒロインとちょいキモめな男で、それがはぐれもの同士の恋愛として感動を誘っていました。
しかし本作の場合は岡田将生さんも清原果耶さんもイケメンと美女だったので、はぐれものの要素は薄かったです。岡田将生さん演じるハジメは喋らなければモテる男で彼女もいた設定でしたからね。
ただ岡田将生さんは相手のテンポを無視して勝手にしゃべり出しますし、清原果耶さんもイモっぽいヴィジュアル全開で、なぜ2人が世間から浮いているのかにしっかり説得力を持たせていたと思います。
男女を逆転させたことでバスの運転手も静止した時間の中を動ける人物として必要になり、2人だけの世界観が崩れているような気もしましたが、まあ許容できる範囲です。
残念だったのは、男女を逆転させて舞台を日本にした以外の大筋のストーリーはほとんど台湾のオリジナルと変わらない展開だったこと。
忠実なリメイクといえばそうなんですが、オチや大枠の流れを完全に一緒にする必要はないですし、もう少し変更点があってもよかった気がします。
日本版のほうがわかりやすく説明してくれてはいましたが。
もともと、主人公とヒロインの2つの視点で物語をひも解いていく『1秒先の彼女』のプロット自体が宮藤官九郎の作品っぽいので、大きな変更は必要なかったのかもしれませんね。
(さらにいえば日本のリメイク版から見る人にとっては大きな変更点がないことはマイナスになりません。)
演出について
ハジメが笑福亭笑瓶さんのラジオ番組に電話するシーンで、母親がハジメに電話してきて、母親と笑福亭笑瓶さんがスマホ越しに話し出すアイデアはさすがだと思いました。このシチュエーションおもしろすぎでしょ。
時間停止のシーンは合成しているところと、俳優やエキストラが動きを止めて撮影している部分がありました(衣服だけ風で動いていたり、手が微妙にプルプル震えていたりしましたもんね)。
俳優が動かないだけという力技のストップモーションは、ウェス・アンダーソン監督が映画『フレンチ・ディスパッチ』でも使われていましたね。
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最後のまとめ
邦画『1秒先の彼』は、原作『1秒先の彼女』に忠実なストーリーと、キャストの演技、抜群の演出が組み合わさった良作でした。
台湾版では同居人が下着の臭いを嗅いでる、ヒロインがバスの中でセクハラされそう、ヒロインが時間停止している最中に男が担いでいろんなポーズをとらせるシーンなど、生々しさや危険な感じがありました(それが魅力)。
日本リメイク版の場合、下ネタはAV男優・しみけんさんの出演と、彼がコンドームを渡してくるくらいでしたからね。
他にも台湾のオリジナル版ではヒロインの妄想でヤモリ男が登場するなどおかしなシーンがありましたが、本作にはそういった要素はなかったですね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。日本映画『1秒先の彼』レビュー終わり!
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