映画『怪物』ネタバレ感想「なぜ傑作?」キャスト登場人物,あらすじレビュー

  • 2024年3月13日

「怪物 だーれだ?」映画『怪物』子供のいじめ問題や親と教師の言い争いが予想外の展開を見せる!是枝裕和監督×坂元裕二脚本が織りなす濃密なヒューマンドラマ。

シネマグ
演技・映像・メッセージすべてにおいて期待以上!斬新な表現による感動の神作でした。評価やラストの意味たくさんの伏線を小説版もまじえて徹底解説していきます!

作品情報・キャスト・あらすじ

3つの視点で物語ネタバレあらすじ・全伏線・ラスト結末解説

本作のぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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是枝裕和 映画『怪物』

映画『怪物』作品情報・予告

公開:2023/06/02
制作国:日本
上映時間125分
英題:『Monster』
ジャンル:ヒューマンドラマ・サスペンス
年齢制限:G(制限なし)
監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二(『花束みたいな恋をした』)
撮影:近藤龍人
音楽:坂本龍一

音楽家・坂本龍一さんの遺作です。光の輪のような美しいメロディーが作品に彩りを添えていました。

脚本の坂元裕二さんは2023年はネットフリックス映画『クレイジークルーズ』も手掛けました。

是枝裕和 監督

ドキュメンタリーを多く手掛けていた是枝監督は『幻の光』(1995)で長編映画デビュー。『万引き家族』(2018)ではカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞して話題になりましたね。

2022年には韓国の人気俳優ソン・ガンホを主演に『ベイビー・ブローカー』を公開。

2023年には監修したNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』もすばらしい作品でした。

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Netflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』

本作『怪物』は、『万引き家族』や『ベイビー・ブローカー』など家族の形態というテーマを超えて、社会と人間という新たな領域に到達していたと思います。それくらい感動しましたし、圧倒されました。

映画『怪物』キャスト

安藤サクラ

安藤サクラ

シングルマザー・早織(さおり)を演じたのは安藤サクラさん。よくいるお母さんを超リアルに演じていて引き込まれました。喋り方のトーンとか絶妙ですよね。すごい演技力ですね。

安藤サクラさんは『万引き家族』もすごかったですが、『ある男』(2023)の未亡人役も印象的で、邦画になくてはならない存在だと思います。

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永山瑛太

永山瑛太

子供の担任の教師・保利を演じるのは永山瑛太さん。ハマり役すぎて、本人だとわかっているのに冴えない学校の教師にしか見えなかったです。安藤サクラさんはもちろん、演技に関しては瑛太さんも怪物ですね。

その他のキャスト

役名 キャスト
(みなと/早織の息子)

湊役の黒川想矢

黒川想矢
星川依里(ほしかわより/湊の同級生)

柊木陽太

柊木陽太(宮藤官九郎脚本の『1秒先の彼』(2023)にも出てましたね)
広奈(ひろな/保利先生の彼女) 高畑充希
教頭・正田 角田晃広
校長・伏見

校長役の田中裕子

田中裕子
清高(依里の父)

中村獅童

中村獅童(『怪物の木こり』)

映画『怪物』あらすじ

「怪物 だーれだ」

シングルマザーの早織(さおり/安藤サクラ)は、小学5年生の息子・湊(みなと)と一緒にアイスを食べながら自宅のベランダから向かいのビルで起きた火事の消化活動をながめていた

湊は「豚の脳を人間に移植したらそれは人間なの?」と変な質問を投げかける。

数日後、湊が突然ハサミで自分の髪を切った。最近、湊は元気がないことが多く、何かを悩んでいるようだった。靴を片方なくしていたりもした。

ある晩、湊がなかなか帰ってこないので早織は廃墟になった線路付近を探す。湊は廃墟トンネルの中にいた。

帰りの車で湊が急にドアを開けて外へ飛び出て事故にあう。幸い湊は軽傷で、路肩にぶつかった車も大したことはなかった。

ある日、湊がケガをして帰ってくる。早織が問い詰めると、「保利先生(ほり/永山瑛太)に殴られた」と答える。

早織は学校へ行くが、校長の伏見( 田中裕子)や教頭の正田(角田晃広)はことを荒立てないように冷静に取り繕うだけだった。

担任の保利がやってくるが「誤解があったようで…」と悪びれない様子で言う。早織は激怒した。

早織の告発で、教師の体罰問題はメディアによって世間に広まる

やがて早織は「湊はいじめられていたのではなく、依里という生徒をいじめている」と聞き、何が真実なのかを探っていく。そして衝撃の事実にぶち当たるのだった…。
※以下、映画『怪物』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『怪物』ネタバレ感想・評価

是枝裕和監督の映画『怪物』の評価は95点

是枝監督史上最高の神作です。坂元裕二とタッグを組んだことで想像を超えた傑作が誕生しました。

シネマグ
個人的に洋画や韓国映画も含めて今年ベストはほぼ確定で、ここ数年で見た何百本かの映画の中で1番おもしろいと感じました。

安藤サクラさん演じる母親、瑛太さん演じる担任の先生、子供たち(湊と依里)の3つの視点で物語が展開していきます。

物語が担任や子供たちの視点になったとき、本当は何が起こっていたのか明らかになるサスペンス的で緻密な作りも見事。伏線もモリモリです

それ以上に真実が明らかになるにつれて恐ろしさよりも普遍的なメッセージがあらわになり、言葉を超えた感動と斬新なメッセージが浮かびあがってきます

感想を語る犬
邦画史に名を残す傑作といっても過言ではないと思いました。個人的には『万引き家族』を超えたと思います。

2023年のカンヌ国際映画祭ではパルムドール獲得はならず、クィア・パルムドールの受賞でしたが、「この作品でパルムドール取れなかったら何が取れるの?」という所感です(パルムドール受賞作は日本未公開のジュスティーヌ・トリエ監督『アナトミー・オブ・ア・フォール』)。

『怪物』は確かに少年2人のLGBT(性的マイノリティ)の物語ですが、メッセージ性はLGBTQを超えた誰にでも当てはまる普遍的なものです。

本作には性的マイノリティをエンタメとして消費しているという批判があるようですが、そう単純な構造ではないと思いました。

マイノリティを安易に救済したかのような内容ではなく、マイノリティの葛藤で全員の問題点を露呈させた脱構築的な構造だからです。

昨今の「多様性の流れに乗っかった作品止まり」では決してなく多様性を普遍性にまで昇華した点、新しい古いではくくれない領域に到達したことがすごいと思います。

カンヌのクィア枠(LGBTなど性的マイノリティをテーマにした部門)の受賞はもちろん素晴らしいことですが、今後見る人たちの視点が固定化されてしまわないかは少し心配です。

クィア・パルムドール賞を取ったと宣伝しているのもLGBTQという革新的な部分のネタバレですし、LGBTQだけに強くスポットを当てた映画ではないと思います。

差別・マイノリティがテーマの映画は、マイノリティとマジョリティの対立→マイノリティの不遇と問題点の提示→最後に多数派に認められて和解!のパターンが多いと思います。

それらの作品がダメなわけでも悪くもないですが、結局はマイノリティとマジョリティの間の壁は取り払われておらず、根本的な解決にはなっていません。

対して本作は人間 VS 人間ではなく、真実をねじれさせる怪物を差別と対置させていました

湊が「僕はかわいそうじゃない」と言っていたことからも被害者と加害者、マイノリティとマジョリティの単純な二項対立の表現を避けていることがわかります。

劇中で何度も「怪物はだれか?怪物とは何か?」という抽象的な問題を投げかけ、真実の裏側にひそむ怪物をあぶり出したのです。

社会や価値観の歪(ひず)みに囚われた怪物は、安藤サクラ演じる母親にも、瑛太演じる先生にも、そして2人の少年の中にも潜んでいます。

母親、担任の教師、子供たちの3つの視点で物語が展開していき、それぞれに対するとらえ方にねじれがあることが判明。そのときに怪物が姿を表しているのでしょう。

自分こそがねじれを生み出している怪物だと悟った湊は、怪物の鳴き声のように管楽器を吹き、依里のところへ走っていきます。

差別を人と人の問題にするのではなく、自分と心の中の怪物に置き換えて考えることで本当の幸せがつかめるのです。

シネマグ

革新的なメッセージを抜群の演出で形にした是枝裕和監督の手腕も怪物だと思いました。

(映画『怪物』LGBTQの表現における問題については下記記事へ)

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映画『怪物』

脚本をつとめた坂元裕二さんの功績も絶大です。緻密なバランスの上で3つの視点を成り立たせる神技でした。カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しているのも納得です。

3つの視点で真実が明らかになるのは、ちょうど黒澤明監督の『羅生門』と逆パターン(羅生門はどんどん真実から遠ざかる)ですね。

『羅生門』がダークサイドだとすれば『怪物』はブライトサイド(明るいほう)といえます。

あとは、永山瑛太さんの恋人役の高畑充希さんが序盤で「男の大丈夫と女のまた今度は信用できない」という会話があり、中盤で教師の暴行問題が発覚すると高畑さんが「また今度ね」と言って去るなど、全体的に細かい伏線も多く、かつ効果的でした。

演技面では安藤サクラさんと瑛太さんがすごすぎるのはもちろん。子役の演技も光っていました。すごいナチュラルな感じで撮れていたと思います。子供のもろさ、打たれ弱さが画面いっぱいに広がっていたようでした。

2023年のカンヌ国際映画祭にも出品されて世界中の批評家から絶賛されています。ロッテントマトズでは批評家の高評価が97%です。

ちなみに同じく2023年カンヌ出品の役所広司主演『PERFECT DAYS』も素晴らしいクオリティでした。

CineMagの評価 95点
世界観 90%
コンセプト・メッセージ性 98%
ストーリー 94%
IMDb(海外レビューサイト) 7.5(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 97%
一般の視聴者 %
メタスコア(Metacritic) 80(100点中)

最後のまとめ

是枝裕和監督の邦画『怪物』は、多様性についてのテーマを普遍的なメッセージへ昇華し、廃墟の電車と線路など舞台や映像の美しさでまとめ上げた傑作でした。

3つの視点を巧みに組み合わせて観客に1つの視点の危険性を訴えるプロットもすばらしい。

想像以上のクオリティでまさに世界の是枝という印象。韓国やフランスで映画を撮るのもいいですが、やっぱり邦画で世界の頂点を狙ってほしいと思いましたし、狙えると思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『怪物』レビュー終わり!

2023年公開邦画レビュー記事↓

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