映画『夜明けのすべて』感想ネタバレ「これは傑作」評価,ラストシーンの意味を解説

  • 2024年2月12日

映画『夜明けのすべて』松村北斗さんがパニック障害を抱える男性を、上白石萌音さんがPMSで怒りをコントロールできない女性を熱演!

シネマグ
胸があたたかくなって、誰かに優しくしたくなる映画です。

あらすじ・ネタバレなしの感想

物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

ラストシーンの意味やメッセージ考察

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『夜明けのすべて』作品情報

公開:2024年2月9日(金)
制作国日本
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ
年齢制限:G
監督:三宅唱
脚本:和田清人|三宅唱
原作瀬尾まいこの小説「夜明けのすべて」(2020)
撮影:月永雄太
音楽:Hi’Spec

キャスト

映画『夜明けのすべて』登場人物・キャスト

©︎公式サイト

山添孝俊|cast 松村北斗(SixTONES)(『ライアー×ライアー』『ホリック xxxHOLiC』『キリエのウタ』『すずめの戸締まり』)

藤沢美紗|cast 上白石萌音(『ちはやふる』『君の名は。』『スタートアップ・ガールズ』『カムカムエヴリバディ』)

辻本憲彦|cast 渋川清彦(『怪物の木こり』『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』『真犯人フラグ』)

大島千尋|cast  芋生悠(『ひらいて』『牛首村』『仮面ライダーBLACK SUN』)

岩田真奈美|cast 藤間爽子(『マイファミリー』『大名倒産』)

藤沢倫子|cast りょう(『西の魔女が死んだ』『さや侍』『ロングバケーション』)

栗田和夫|cast 光石研(『シン・ゴジラ』『カイジ』『アウトレイジ』)

映画『夜明けのすべて』あらすじ

夜明けのすべて 主人公とヒロイン

PMS(月経前症候群)をもつ藤沢(上白石萌音)は、生理の数日まえに怒りを抑えられない症状を抱えていた。そのせいで会社で上司に声を荒げてしまい、会社を辞めることに。

2年後、藤沢は栗田科学という教育用のプラネタリウムを扱う小さな会社に勤めていた。その職場でもPMSで怒りが抑えられないこともあったが、同僚たちはみんな理解をしてくれた。

栗田科学には大企業から転職してきた後輩の山添(松村北斗)がいた。山添はパニック発作を発症し、前の会社の上司・辻本(渋川清彦)の紹介でこの職場に最近やってきたばかりだった。

藤沢は山添が炭酸水のボトルを開ける音に耐えきれず、彼に怒りをぶつけてしまう。

後日、藤沢は職場でパニック発作を起こした山添を見る。そのあと藤沢は山添を家まで送り届けた。

藤沢は「自分はPMSを患っている。一緒に頑張ろう」と話す。

山添は「パニック障害とPMSを一緒にしないで」と理解のない言葉を返した。

そこからお互いに「もしかして自分なら相手の症状を理解してサポートしてあげられるのでは?」と思うようになる。

2人の奇妙な交流が始まった。

ネタバレなし感想・海外評価

映画 夜明けのすべて

感想を語る
めちゃくちゃ感動しました。面白かった。そして誰かに優しくしたいと思えました。

メンタルケアなどがテーマになる場合は説教くさい作品になりがちですが、本作はヒューマンドラマとして違和感なく楽しめたうえでさまざまな気づきも得られました。

松村北斗さんの演技も良かったですし、上白石萌音さんが急に怒り出す演技も迫真でした。

原作小説は未読なので何ともいえませんが、キャラクターの心情を説明セリフでなく映像でしっかり語っていた点が素晴らしいです。

シネマグ
多様性社会にある種の正解を示した点でも、全日本人に見てほしい作品です。
おすすめ度 94%
世界観 90%
ストーリー 86%
IMDb(海外レビューサイト)※随時更新 (10点中)

※以下、映画『夜明けのすべて』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『夜明けのすべて』ネタバレあらすじ解説

山添は元の会社の上司・辻本にテレビ電話をし、栗田科学のアットホームな雰囲気に馴染めないから復職させてくれとお願いした。

辻本は遺族の会に定期的に参加していた。姉が過労で死んでしまった傷が癒えていなかったのだ。そこに栗田社長も通っていた。栗田は30年前に一緒に働いていた弟が失踪して死んでしまったことの傷を抱えていた。

辻本はその会のつながりで、山添を栗田科学に託したのだった。

山添がパニック障害の発作を起こしたのを見た藤沢は、彼のことが気になって休日に家へ行く。

山添は髪を切ろうとしていた。藤沢が「私が切る」と言ってハサミを持つが、サイドを大胆にカットしてしまい盛大に失敗。

山添は不意なハプニングに爆笑してしまう。藤沢は山添が笑ったのを初めて見てほっこりした。

山添は彼女の大島と一緒に精神科に定期のカウンセリングを受けに行く、電車に乗れないなどの発作の症状を克服するためには、駅の近くまで行ってみるなど少しずつ段階を踏むことが大事だと言われた。

山添はいきなり電車に乗ろうとして発作を起こし、大島に介抱された。

次のカウンセリングで山添は精神科医からPMSに関する本を借りた。藤沢に恋愛感情はないが、彼女のことを理解してあげたかった。

年末の職場の大掃除。山添は職場でPMSによる怒りに襲われた藤沢を外へ誘導し、怒りがだんだんと静まるようにしてあげた。

年が明けた。山添は彼女の大島から「ロンドンの支社へ行くから」と別れを告げられた。

藤沢と山添は、近所の小学校で移動式のプラネタリウムを開催する際の原稿を一緒に作る。

山添は倉庫で、30年前に失踪して亡くなった社長の弟がプラネタリウムを説明しているテープを発見。それを参考にする。

仕事や人間関係に生きがいを見出した山添は、辻本に今の会社でやっていくと話した。辻本は感動して涙を流す。

プラネタリウムは大盛況だった。藤沢は最後に栗田社長の弟が残したメモを読み上げる。

後日、藤沢は足腰が悪い母の世話をするために地元に帰ってそこで就職することになった。みんな笑顔で送り出す。

山添は栗田科学で生き生きと働いていた。

映画『夜明けのすべて』ネタバレ感想・評価

誰かに優しくしたくなる良作!

映画『夜明けのすべて』の評価は90点

ジェットコースターのような起伏に富んだ物語ではないですが、めちゃくちゃ感動しました。

シネマグ
感動しただけでなく、見終わった後に誰かに優しくしたくなる素晴らしい傑作です!

PMSやパニック障害に対する理解も深まりました。そして何より人間はお互いがお互いの星になれるし、お互いの観察者にもなれるのだと思えました。

ネット社会になって生身の人間同士の関係性がどんどん希薄になっていくなか、北極星のように道標をしてくれる映画です。

プラネタリウムの機器を扱う会社が舞台なので星座や宇宙の話題が出てくるのですが、地球や宇宙が月日を経て移り変わることと、人間が少しずつ変化していくことの対比が美しく描かれていました

映像全体に若干のノイズが入っていたのもノスタルジーが漂う感じでグッド。光をたっぷりとり入れ、輪郭が少しボヤけるような映像が美しかったです。

感動の名シーンの数々!

藤沢が山添の髪の毛を切ろうとして失敗し、ずっと笑わなかった山添が吹き出してしまうシーンでめちゃくちゃ感動しました。

人と人の交流って内容が大事というより、交流することそれ自体が大切なのだと実感。

山添はずっと1人だったらあんなに笑うことはなかったでしょう。

シネマグ
予測不可能ことが、たとえ失敗であっても山添の救いになったのです。

山添がもとの元上司・辻本に「会社に復職せず栗田科学に残ります」と言ったシーンもめちゃくちゃ泣けました。

山添が自分の病気や状況を受け入れて前に進んだシーンでもあるのですが、実は辻本の救いにもなっています。

辻本は大切な人を失った遺族の会で、死んだ姉の労災が認められたと言っていました。

辻本は姉を救えなかったことを後悔しており、それもあって山添に目をかけていたのでしょう。

山添が前に進んだ。救われたのを見て辻本は思わず泣いてしまったのです。

姉を救えなかった後悔が、後輩の山添を救えた喜びに昇華された最高のシーンでした。

感想を語る犬
渋川清彦さんのくしゃくしゃの表情を見て思わずもらい泣きしてしまいました。

登場人物がみんないい人だけど面白い

登場人物に嫌なヤツは誰1人として出てきません。

そういう作品は無難で満足感も低い作品になりがちですが、本作は「みんないい人」という設定が活きており、人生に活力をもらえる内容でした。

メンタル面に不安を抱える本人たちはすぐには変われません。しかし理解を深めようとすれば社会は優しくなれます。そんな前向きなメッセージを受け取れるのです。

また栗田科学の人たちもときどき口論などをしており、持病のない人もPMSなどの症状を抱える人も、星空のような広いな視点でみたら大差ないと示されています。

もちろんPMSやパニック障害などの症状を抱える人たちをケアするのは大事ですが、「この人はメンタルに持病を抱えている」など、変に区別しちゃうようなレッテル貼りはいらないということです。

お互いに理解と観察とサポートをしつつ、根っこは変わらない人間なのだとみんなが気づくことが幸せな社会のために大切なのかもしれません。

本作では、社会がどんな風に変わっていけばみんなが幸せになれるか?その答えが明示されていました

現実に希望を与えられる意味でも素晴らしい作品だと思います。

言葉で説明しすぎない良さ

状況をペラペラ説明しちゃういわゆる説明ゼリフをしっかり削ぎ落としていたのも本作の魅力です。

たとえば山添が彼女にフラれる流れなんかは、イチイチ別れのセリフなどのシーンを入れずに「外に出て話そう」だけで終わらせ、2人が別れたことがわかるようになっています。

近年の邦画では(邦画に限らず漫画やドラマなど)言わなくてもわかることをいちいちセリフで語っちゃう作品も多いなかにあって、本作は一味違います。

山添が自転車で公園のそばを走るシーンなどでも、映画らしく映像に語らせていました。抒情的な映像、詩的な映像が多いといえばわかりやすいかもしれませんね。

映像自体が心象風景で、言葉では説明しても仕切れないのです。

映画『夜明けのすべて』考察レビュー(ネタバレ)

ラストシーンの意味

ラストシーンでは栗田科学の駐車場で社員たちがキャッチボールをしたり、社長が植木に水を与えていました。

まずキャッチボールは地球などの星が動いていることのメタファーに見えました。

その上で、栗田科学の社員たちが星座のような関係に思えました。

星座というのは人間が勝手に想像した星と星との連なりです。想像で決めたことなので星と星とが一緒にくくられる理由はありません。

栗田科学の社員たちも一緒です。この人たちが同じ職場で働かなくてはならない理由はありません。それでも夜空に浮かぶ星座のように意味のある関係を築くことができています

山添はこの職場にやりがいを持ち、一員になることができました。

退職して地元に戻った藤沢も、栗田科学という星座の一員であることは変わらないでしょう。星と星に比べたら、同じ日本にいることはものの距離にはなりません。

そう捉えるとこの映画は壮大なハッピーエンドだと思いました。

『夜明けのすべて』タイトルの意味は!?

本作は藤沢がPMSで苦しんだり、山添がパニック障害で離職して最初はイヤイヤ栗田科学で働いていたりと、暗いパートから始まります。いわば夜から始まる物語というわけです。

そこから藤沢と山添がお互いの症状への理解を深め合い、仕事や人間関係に生きがいを見つけていきます。栗田科学のみんなが庭で楽しく過ごしている結末は、夜明けのようでした。

『夜明けのすべて』という映画自体が、夜から夜明けまでを描いているのです。

夜が明けるまでの心理描写を凝縮したような作品だからこのタイトルになったのでしょう。

暗い夜それ自体も夜明けの一部であるとの希望のメッセージが見えてきます。

悩んだり、落ち込んだりの暗い過去も、夜明けという光を浮かび上がらせるために必要なのです。

最後のまとめ

『夜明けのすべて』は、メンタルに不安を抱える男女がお互いを気遣うことで大切なものに気づいていく良作でした。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『夜明けのすべて』レビュー終わり!

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