映画『ザ・マスター』は、第二次世界大戦のPTSDに苦しむ主人公と、カルト宗教の教祖の親愛や友情を描いた映画で、人の距離感などが寄らず遠からずで、とても独創的な作品だった。
ポール・トーマス・アンダーソン監督、ホアキン・フェニックス主演、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムズ出演でキャストの演技も見どころだ。
映画『ザ・マスター』ネタバレあらすじラスト解説
あらすじ1:PTSDのフレディとコーズ
第二次世界大戦で日本軍と激戦を繰り広げ、PTSD(精神的トラウマ)を抱えてしまったフレディ・クエル(ホアキン・フェニックス)は突如襲ってくる怒りを抑えきれず、デパートで写真を撮る仕事や農場での仕事を渡り歩き、一文無しでとある客船へ侵入。
その船は、コーズという宗教団体の教祖・ランカスター(フィリップ・シーモア・ホフマン)がチャーターし、家族で結婚祝いを開いていた。ランカスターはフレディが作る特性の酒の味を気に入り、彼に“プロセッシング”という退行催眠を経験させる。
フレディはランカスターの人間性に惹かれ、彼の家族と一緒に、ヘレン(ローラ・ダーン)という信者女性の豪邸に住みつく。
あらすじ2:ランカスターの逮捕
しかし、ランカスターが医師免許なく治療を行なっていたことで逮捕されてしまった。その際にフレディも警察に対して暴れたため逮捕された。
フレディは釈放されるが、意識の中で過去にタイムトラベルするというランカスターの教義に疑問を持つようになる。ランカスターや妻のペギー(エイミー・アダムス)は、コーズの修士課程をフレディに課し、彼は見事にそれをクリアした。
ある日、ランカスターが砂漠でバイクに乗り、遠くへ行ってまた戻るという遊びを始めた。
フレディはそのバイクに乗り、そのままずっと帰っていなかった故郷へと走った。
ラスト結末:フレディとランカスターの別れ
フレディは両思いだった女性の家を訪ねるが、彼女はすでに結婚していた。
しばらく経ち、フレディはランカスターに呼ばれ、コーズのイギリス支部に行く。ランカスターはそこでフレディに別れの歌を歌った。
フレディは飲み屋であった女性を抱き、ランカスターが自分にしたような質問をして、笑い合った。ずっと抱えていた心の荒ぶりが治っている。
映画『ザ・マスター』完。
映画『ザ・マスター』ネタバレ感想・考察
なかなか難解
ポール・トーマス・アンダーソン監督の作風なのだろうけど、『ザ・マスター』はしっかり捉えるのが難しい映画だと感じた。
ランカスターはフレディ・クエルを性的な目で見ていたという説が一般的だが、仕草までよく観察していないと、そこまで捉えるのがちょっと難しい。
妻のペギーがランカスターに忠告するシーンなどでも、フレディではなく女遊びに対しての忠告とも捉えられるのだ。
ランカスターがフレディに性的な興味を抱いているとしっかり言及されておらず、そんなシーンも全くない。
フレディに対して親愛や友情の念が強いと考えることもできるのだ。
あとは、妻のペギーとランカスターの関係も、もう少し丁寧に描いてくれたらわかりやすかったと思った。
ポール・トーマス・アンダーソン監督は、読者に解釈を任せるというより、別に明確なメッセージなど受け取ってくれなくてもいい!という印象すら受ける。
ジョーカー並みの狂気
ホアキン・フェニックス演じる主人公フレディ・クエルは、よく衝動的に暴れ出すのだが、その際の演技の狂気が半端じゃない。ホアキンの狂気の演技は映画『ジョーカー』(2019)で開花したと思ったが、『ザ・マスター』からキレッキレである。ニヤケかたとか暴れる時の手足のバタつかせ方とか、とにかく狂っていて見応えがあるのだ。
映画『ザ・マスター』テーマ考察(ネタバレ)
映画『ザ・マスター』で唯一のトラウマを抱えた男性がカルト宗教と出会って、心の傷が癒えるというもの。
テーマを抽出するなら、異常な集団であっても人を救うことができるという、人間が持つ集団の本質を描いた映画だと思う。
独自解釈してさらに噛み砕くなら、「カルトだって友だちだ!」という作品。ランカスターとフレディの、家族のような関係が目立つ。
しかし一方で、カルトと信者の交流を友だち付き合いのように描いた斬新な作品だと思った。
映画『ザ・マスター』キャスト解説
『ザ・マスター』の出演者が超豪華。個人的に、大好きな俳優・女優が集まった。キャストそれぞれの役柄と代表作を紹介していく。
監督/ポール・トーマス・アンダーソン
ポール・トーマス・アンダーソン監督は、カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭、3つすべてで監督賞を受賞した唯一の人物。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『インヒアレント・ヴァイス』『ファントム・スレッド』などが代表作。
フレディ・クエル/ホアキン・フェニックス
フレディ・クエルは映画『ザ・マスター』の主人公。第二次世界大戦で日本軍と戦い、終結後に帰還。PTSDで社会生活が困難になりそうなところ、コーズという宗教の教祖ランカスターに出会う。
フレディ・クエルを演じた俳優のホアキン・フェニックスは、DCコミックスの映画『ジョーカー』(2019)でアカデミー主演男優賞を獲得した超実力派・個性派俳優。
他にも、リドリー・スコット監督の『グラディエーター』、M・ナイト・シャマラン監督の『サイン』、『her/世界でひとつの彼女』への出演で知られている。
ランカスター・ドッド/フィリップ・シーモア・ホフマン
ランカスター・ドッドは、カルト宗教団体コーズの教祖。ペギーとは再婚。気のいい中年男性で、フィレディが作ったドラッグ入り?の酒を気に入り、彼を家族に迎え入れる。
ランカスター・ドッドを演じた俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンは2005年の映画『カポーティ』で、アカデミー賞主演男優賞を獲得した実力派。『ミッションインポッシブル3』や『マネーボール』への出演でも知られている。2014年、46歳の早すぎる死に多くの人が涙した。
ペギー・ドッド/エイミー・アダムス
ペギー・ドッドは、コーズの教祖・ランカスターの妻。ランカスターとの間に娘が一人いて、第二子を妊娠中。ランカスターを精神的にコントロールしている人物。
ペギー・ドッドを演じた女優のエイミー・アダムスは、『魔法にかけられて』『ビッグ・アイズ』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』や、『アメリカン・ハッスル』、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』など数々の大ヒット映画に出演。
個人的には、エイミー・アダムスが主人公を演じた『メッセージ』は、生涯TOP10に入る最高の映画だった。
ヘレン・サリヴァン/ローラ・ダーン
ヘレン・サリヴァンは宗教団体コーズの熱心な信者。彼らを家に住まわせている。ランカスターが2冊目の本を出版した時に質問するが、怒鳴られてしまった。
ヘレン・サリヴァンを演じたローラ・ダーンは、『マリッジ・ストーリー』でアカデミー賞助演女優賞を獲得した人物。日本ではスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『ジュラシック・パーク』に出演していた女優として知られている。
デヴィッド・リンチ監督映画の常連で、『ブルー・ベルベット』『ワイルド・アット・ハート』『ツイン・ピークス/ザ・リターン』、『インランド・エンパイア』への出演でも有名。
ヴァル・ドッド/ジェシー・プレモンス
ヴァル・ドッドはコーズの教祖・ランカスターの息子。父の教義をデタラメだと言って信じていない。
ヴァル・ドッドを演じたのは俳優のジェシー・プレモンス。海外ドラマ『ブレイキング・バッド』のシーズン5への出演が有名。ドラマ『FARGO/ファーゴ』ではメインキャストを務める。妻は女優のキルスティン・ダンスト。
クラーク/ラミ・マレック
クラークは、ランカスターの義理の息子。コーズの教義を信奉している。主人公のフレディと一緒に、宗教上の訓練を行う。
クラークを演じたラミ・マレックは、世界的大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じた俳優。『ザ・マスター』の主人公もフレディなので、「フレディ」と名前が出た場合、誰かわからなくなった。
他には『ナイト・ミュージアム』への出演でも知られている。
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