映画『真実の行方』(原題: Primal Fear )は、 リチャード・ギア主演の法廷サスペンス映画。話がわかりやすく、登場人物も多くないので、裁判などもすんなり観れる。
弁護士と検事の対決も楽しめるが、それ以上に素晴らしかったのは、容疑者役の エドワード ノートンの演技力!
また、全体的に映画としての完成度が高く、登場人物それぞれに感情移入できる作品だった。
そして、作りとして「うまい!!」と感じた部分は、やはりラストのオチ!
大どんでん返しというよりはヒネリが効いていた印象で、今回はその点についてメスを入れてみようと思う!
映画『真実の行方』あらすじと予告動画
カトリック 大司教が惨殺され、現場から血だらけの容疑者アーロン( エドワード ノートン)が逃走し逮捕された。
アーロンが犯人だと誰もが思うなか、マスコミからのバッシングも辞さない野心家のマーティン・ベイルが彼の弁護士として名乗りを挙げる。
果たして、犯人は本当にアーロンなのだろうか!?
映画『真実の行方』見どころは!?
1 エドワード ノートンの怪演
もともと レオナルド・ディカプリオが演じるはずだったアーロン役を演技力で勝ち取ったのがこの エドワード ノートン。
容疑者役の青年の表情や喋り方、歩き方まで徹底する凄まじい怪演を見せつけてくれる。
個人的には ファイトクラブの ノートンよりこちらの方が断然好き!
映画史上でも最高クラスの容疑者役であり、彼の演技を目撃するために映画を観ても良いくらいだ。
2 マーティン弁護士の人柄
もちろんマーティン弁護士役のリチャードギアも負けてはいない。
今回の彼はセリフや行動で目立つというより、作品を際立たせるため、ちょっとした目配せなどの表情や仕草に重点をおいた素晴らしい演技をみせてくれ、思わず感情移入してしまう。
ノートンの怪演ばかりに目が行きがちだが、リチャードギアの本心や、心情の変化がなければこの物語は成立しない。
3 裁判の仕組みや倫理的観点
僕は裁判に詳しいわけではないのでこの映画の裁判についての描写が正しいものであるかは判断できないが、裁判内外についての説明もしっかりあり、法廷劇もそれなりに楽しむことができた。
設定やア イデア、世界観
映画の設定やアイデアは普通。
世界観や映像のオリジナリティーは特にクセがなく、とても観やすい。
真実の行方の評価は86点。観るべき?
真実の行方は86点!
言うまでもなくサスペンス・ミステリー映画好きは見た方がいい傑作。
サスペンス好きでなくとも、シリアスな映画やヒューマンドラマが好きな人はそれなりに楽しめる。
ちなみに序盤はかなり”痛い”シーンがあるので覚悟が必要だ(笑)
2時間10分と少し長いが、8割くらいの人間は楽しめるだろう。
映画『真実の行方』2段オチや伏線の考察
真実の行方はサスペンス映画の名作と言われているが、その由縁たる素晴らしい工夫が施されている。そのの場面はどこか!?
答えはラストのロイの告白で、ここが“2段オチ”になっている。
本作のオチを大まかに考えると意外と単純で、
犯人が2重人格の演技をして、弁護士も法廷も騙したよ!
というもの。これだけだと結構ありがちだよね。
しかし、本作は単純にアーロンが殺していた!というオチでなく、映画でほとんど登場しなかったロイの人格しかなかったというスパイスを同時に加えることで、観ている人は「裏切られた!素晴らしいラストだ!」と感じるように工夫されているのだ。
簡単にいうと、アーロンが演技してました!だと、観てる人は「単純で普通のオチだ!」と感じる。
しかしロイが演技してました!だと「なんか騙された感が半端ねえ!」となるのである。
理由は、観てる我々が終盤までアーロンが実際に存在していると思っているから。
アーロンという名前自体が最大の伏線になっている。
つまり結論を言うと犯人が演技していた+アーロンは存在しないというダブルパンチ・2段オチを受けたのだ。
二つの人格が存在してない時点で、アーロンだろうがロイであろうが名前は関係なく、凶暴な犯人がひ弱な容疑者を演じたという事実は変わらない。
しかし物語の主軸であったアーロンの方がいなかったとなると、受ける印象が全くと言っていいほど違ってくる。
名前の違いによる効果が計算されていて素晴らしい。
我々はラストの短い時間で2回のどんでん返しを喰らっているのだ。作り手の巧妙なトリックといって良いだろう!さすがである。
映画『真実の行方』ネタバレあらすじラスト解説
大司教殺人事件
血まみれで逃走し捕まったアーロン( エドワード ノートン)はおどおどした口調で、自分は司教惨殺の犯人でないとマーティン弁護士(リチャードギア)に告白。
マーティンは第 三者が現場にいた可能性と、殺された司教が住宅開発計画を巡る争いに巻き込まれたというを武器に裁判で元カノの検事ジェーン( ローラ・リニー)と舌戦を繰り広げる。
同時にマーティンはアーロンの精神鑑定も依頼していた。
アーロンとロイ
大司教の死体に刻まれた数字が教会施設の図書館の本を表していると見抜けなかったマーティンら弁護側は劣勢になるが、 大司教がアーロンと彼の彼女(リンダ)や友達らに、性的な行為を強要していたビデオテープを発見。
アーロンに問い詰めるとロイという凶暴な性格が現れ、二重人格だと判明。
マーティンとアーロンの別れ
マーティンはアーロンの精神異常を法廷で演出し、違う人格が犯行に及んだということで裁判に勝ち、アーロンは罪を免れることができた。
裁判のあと、マーティンはアーロンと面会し勝利を喜びあったが、そこでの会話でアーロンのちょっとした言動の食い違いを指摘し問い詰める。アーロンは「もともとアーロンは存在しない、ロイだけだ。
リンダも俺が殺した」と不敵に笑うのだった。
茫然自失となったマーティンは、マスコミのいる正面玄関でなく裏口から去る。
映画『真実の行方』終わり。
映画『真実の行方』好きなシーン
裁判中盤で劣勢となって酒をガブ飲みするマーティン
裁判の中盤でこのままだと負けると感じたマーティンはバーで酒をガブ飲みし自暴自棄になりながら、自分を追いかける記者にベラベラ喋りかけるのだが、ここで彼が持つ信念が垣間見れる。
飲んだくれても決して気品は失わない。素晴らしい演技をしたリチャードギアに乾杯!
最後のロイのクズっぷり
最後ロイが弁護士であるマーティンだけに真実を話すときのクズへの変貌っぷりがすごい! エドワード ノートンは本当すごい役者だ!
映画ではしっかり語られていないが、ロイはアーロンを何年も前からずっと演じていた可能性もあり、そう考えると感慨深い。
マーティンは正面から堂々と出れず裏口から
金儲けだと笑われワイドショーに出ようと、自らの正義の信念を持ち続けていたマーティン。ロイから告げられた真実により茫然自失となり、今までなら正面玄関から堂々と出入りしていたはずが、裏口からひっそり帰ることを選択。
絶望して誇りを失ったマーティン弁護士の気持ちが痛いほど伝わってくる名シーン!
一つだけ、この映画矛盾している点を解説
真実の行方のラストのオチは、結局アーロンという人格は存在せず、すべてロイの演技だったということだが、そこで一つ疑問が生じる。
凶暴だが冷静で演技派であるはずのロイが、なぜ血まみれで事件現場から逃走したのか!?という点だ。
マーティンのような凄腕弁護士が来てくれるとは限らないし、わざわざ現場から逃げ出せば、死刑になる確率の方が明らかに高くなる。
身を隠したり、現場から逃走しないという選択肢がロイに浮かばなかったのが不思議である。
ロイが気づいていないだけで、アーロンのような人格が存在しているという推測もできるが、ちょっと無理矢理であろう。
映画『真実の行方』作品情報・キャスト
公開年/制作国 | 1996年・アメリカ |
監督 | グレゴリー・ホブリット |
脚本 | スティーヴ・シェイガン |
キャスト | リチャード・ギア エドワード・ノートン ローラ・リニー |
音楽 | ジェームズ・ニュートン・ハワード |
興行収入 | 約112億円 |
グレゴリー・ホブリット監督はクライムサスペンス映画が得意で、 デンゼル・ワシントン主演の「悪魔を憐れむ歌」という映画も有名。
容疑者役の エドワード・ノートンはご存知「 ファイトクラブ」でも主人公を務めている実力派! アカデミー賞作品賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)にも出演して話題に。
この映画にはウィリアム・ディールが書いた原作小説があり、どおりでストーリー上で各登場人物の設定がしっかりしていると感じた。
音楽面ではダークナイトなど、数々の名作を担当しているジェームズ ニュートンハワードが盛り上げてくれる!
最後に感想まとめ
真実の行方がなぜ傑作なのか?リチャードギアや エドワード ノートンの演技、観る者を感情移入させるようなセリフと場面。ラストは気づきにくいが2段オチになっていることなど、様々な魅力が伝わったと思う。
容疑者が多重人格を演じるというやり尽くされたストーリーであっても、工夫次第で素晴らしい映画になる!
真実の行方はそのお手本といってよいだろう。
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