ポン・ジュノ監督の映画【母なる証明(마더)】を観賞。
母子の絆が垣間見える完成度の高いサスペンスである一方、人間の持つ深い闇を描き出していた傑作だった。
この記事では、
- ストーリーネタバレあらすじ
- 感想やテーマ
- トジュンは知的障害か?
- 農薬・石の意味
などを徹底考察・解説しています!
母と知的障害の息子の禁断の関係がヤバ過ぎる!!
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トジュンは知的障害ではない?ネタバレ考察!
※映画『真実の行方』のネタバレを少し含みます。
母なる証明の考察記事でよく見かけるのが、トジュンは知的障害ではなく高IQの殺人者だ!というもの。
結論を述べると、これは不自然な解釈だと思う。
なぜなら、知的障害でなく通常思考ができる場合、わざわざ自分で罪を認めて拇印を押すことは絶対しないからだ。
殺人を犯して、空き家の屋上にワザワザ死体を引っ張り上げる説明もつかなくなるだろう。
トジュンが高IQの殺人者というのは、さすがに飛躍しすぎだろう。
彼が知的障害であったことは間違いない。
ただ、そういうシナリオだったらと想像するのは全然アリだけど。
ちなみに、“トジュンが実は知的障害ではなかった”というタイプオチの映画がリチャード・ギアとエドワード・ノートン主演の映画『真実の行方』。
トジュンの知的障害の原因は農薬
トジュンがなぜ知的障害になったのか。
生まれつきという可能性もあるが、もしかすると、農薬を飲まされたのが原因で知的障害になってしまったのではないか。
そして衝動的に殺人事件を犯した。負の輪廻といえるだろう。
母親がトジュンを溺愛しているのも、自身の行為で息子が障害を持ってしまったという負い目からの感情からかもしれない。
母親が必死にトジュンの罪をかばうことでさえ、過去の心中という罪の意識を覆い隠すためだともいえる。
ドス黒い罪の意識を抱えた母親は、トジュンを溺愛することでしか心身のバランスを保てないのだ。
トジュンと怪物グエムルはイコール!?
農薬につながる話だが、同じくポンジュノ監督の映画『グエムル』では、薬品が下水に流れ、怪物が誕生する。
この映画では、米軍の圧力で漢江に流した薬品ホルムアルデヒドで怪物ができるのだが、貧困で母親が子どもに毒を飲ませてのちに殺人鬼になってしまう『母なる証明』と関係性が似ている。
ポンジュノ監督にとって、社会の悪い部分が集積したものの象徴が、トジュンでありグエムルなのだろう。
アジョンの生活から見える貧困の負の連鎖
母なる証明で起きた一連の事件は、貧困という社会問題が根本にあると言える。
アジョンがなぜ売春をしているか?理由は、認知症で酒飲みの祖母を養うためだ。
アジョンがマッコリ(酒)について語るシーンがあるので、好きで売春していたのではないとわかる。
貧困はアジョンが悪いわけではない、しかし自分の心をボロボロにしながら援助交際を続け、殺人事件の被害者となってしまった。
トジュンについても、農薬を飲ませられたせいで知能障害になったとしたら、親世代から負の遺産を受け継いで今回の事件を起こしたことになる。
さらに言えば、親世代が悪いわけでもない。社会の貧困のせいなのだ。
母なる証明は、だれも悪くないにも関わらず、貧困が原因で事件に巻き込まれて命を落とす人の存在を教えてくれている。
映画『母なる証明』石の意味を解説
アジョンがトジュンに向かって投げた石の意味はなんだろうか?
石については、同じくポンジュノ監督の『パラサイト半地下の家族』でも、メタファーとして使われている。
解釈はいくつかあるが、重い石は上の世代から背負わされた業(ごう)のメタファーだと考えるのが自然ではないか。つまり石とは“カルマ”なのだ。
そう考えると、アジョンが祖母から背負わされた業(ごう)を石に見立ててトジュンに投げつけたとなり、筋が通る。そして石の意味は映画パラサイトとも通底する。
母なる証明のメッセージ考察/母子の無意識の罪と愛(ネタバレ)
母なる証明のメッセージは一体なんだったのか。
結論を言うと、母子の無意識の罪と愛がテーマだったのだと思う。
母親はトジュンに農薬を飲ませた罪の記憶に蓋をした。そしてドジュンも殺人の記憶や母親の殺人を忘却している。
母子はお互いに罪人だと気づきなら、その出来事にフタをした。大切に想い合いながらも、ドス黒い感情を覆い隠すためにこれからも相互依存していくのだ。
愛が罪を覆い隠しているのか。
罪が愛を呼び覚ましたのか。
母なる証明は、上質なサスペンス映画でありながら、禁断のメッセージが込められた映画なのだ。
この映画と対照的に、ドス黒い感情になすすべもなかったのがソン・ガンホ主演の『殺人の追憶』。刑事たちが追っていたのはドジュンなのかもしれない。
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