実写『リトルマーメイド』(2023)ディズニーの金とプライドをかけて制作した渾身の一作です。幻想的な映像美と最強の歌声が融合しました。
作品情報・キャスト
あらすじ
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
黒人アリエル問題:ポリコレキャスティングについて考察
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
実写映画『リトルマーメイド』作品情報・予告
制作国:アメリカ
上映時間:135分
原題:『The Little Mermaid』
ジャンル:ファンタジー・ヒューマンドラマ
年齢制限:G(年齢制限なし)
監督:ロブ・マーシャル
脚本:デヴィッド・マギー(『オットーという男』)
原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン「人魚姫」
撮影: ディオン・ビーブ
音楽:アラン・メンケン/リン=マニュエル・ミランダ
制作:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
ロブ・マーシャルはアカデミー作品賞を受賞した『シカゴ』(2002)、『NINE』(2009)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(2014)、『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018)などで有名な人物。
基本的には1989年のディズニーアニメ版がもとです。
実写『リトルマーメイド』キャスト
アリエル役:ハリー・ベイリー
世界的な歌手・ビヨンセに見いだされたハリー・ベイリーさんの歌唱力は本当にものすごい。
黒人である彼女をキャスティングしたことで公開前から賛否両論が巻き起こっていた本作。その是非についてはのちの項目で詳しく語ります。
その他キャスト
役名 | キャスト |
エリック王子 | ジョナ・ハウアー=キング(『ベラのワンダフル・ホーム』) |
海の魔女・アースラ | メリッサ・マッカーシー(『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』『ある女流作家の罪と罰』『ゴースト・バスターズ 2016』) |
海の王・トリトン | ハビエル・バルデム(『ノーカントリー』『DUNE/デューン 砂の惑星』 『愛すべき夫妻の秘密』 『シング・フォー・ミー、ライル』) |
グリムスビー | アート・マリックム(『007 リビング・デイライツ』『トゥルーライズ』) |
セリーナ女王 | ノーマ・ドゥメズウェニ |
カニのセバスチャン |
声)ダヴィード・ディグス |
魚のフランダー | 声)ジェイコブ・トレンブレイ |
カモメのスカットル | 声)オークワフィナ |
ヴァネッサ |
ジェシカ・アレクサンダー |
実写『リトルマーメイド』あらすじ
トリトン王の娘として天真爛漫に過ごす人魚のアリエル(ハリー・ベイリー)。今日も仲良しの魚のフランダーと沈没船がたくさんある海底へ。
アリエルはそこで人間が使っているものを集めコレクションし、まだ知らない地上へ思いを馳せていた。
ある日の嵐の日、アリエルは船から落ちた人間のエリック王子を助ける。アリエルは砂浜で歌いながら回復を待った。
エリック王子が目を覚ましそうになると海へと去った。
エリック王子のことを忘れられないアリエル。海の魔女・アースラにそそのかされて、「お前の声を奪って足を与え、3日間人間の体にしてやる。もし3日以内に王子とキスできなければ、お前はアースラのものになる」という契約をしてしまう。
漁師の網で引き上げられたアリエルはエリック王子の城へやってくるが、アースラの悪巧みによりキスしなければいけないことは忘れていた。
カニのセバスチャン、カモメのスカットル、魚のフランダーはアリエルを必死にサポートするが…。
※以下、実写『リトルマーメイド』のストーリーネタバレありなので注意してください!
実写映画『リトルマーメイド』ネタバレ感想・評価、赤字?!
アリエルを演じるハリー・ベイリーの超絶美声と、美しいく幻想的な映像の数々に大満足でした(黒人キャスティングの問題は次の項目で詳しくやります)。
そこそこ上手い歌手がそこそこ綺麗な背景をバックに歌ったミュージックビデオ的な作品とはレベルが違います。
ストーリーについては1989年のアニメ版と大きな流れに相違はなく、アリエルとエリック王子がボートに乗りセバスチャンたちが歌うシーンなどアニメの構図をそのまま実写にしたシーンもたくさんありました。しかしCGのクオリティがものすごいので改めて感動。
特に海の魔女・アースラの紫色のビジュアルなんか芸術的でうっとりしてしまいました。
ラストは実写版では人間になったアリエルがエリック王子と船に乗って旅立ち、人間たちも人魚もみんな仲良くなって見守るという多様性をより強調した改変。
ただこれも船上の結婚式をみんなで囲んで海には人魚たちがいるアニメ版と大きく変わるコンセプトではなかったと思います。
アニメを実写化したのでストーリーが短絡的すぎるのはありますが、もともと大人向けの作品ではないので仕方ないですね。
その他には目立ってダメだった点・ひどい点などはありませんでした。
近年のディズニー実写化映画は可もなく不可もなしみたいなものが多いですが本作は完成度としてはトップレベルに成功した!といってよいでしょう。
ただ興行収入的にはアメリカでの滑り出しは順調なものの、キャスティングの賛否によってか客足がかんばしくない国もあり、最終的に赤字になる予測が出ています。
私としては余裕で黒字だと思っていたのでびっくりです。
あとは余談ですが、『ノーカントリー』の殺し屋役の印象がある強面のハビエル・バルデムが海中でぷかぷかし、最後には海から顔を出すシーンはシュールでちょっと笑ってしまいました。ずいぶんと丸くなりましたね(笑)。
CineMagの評価 | 87点 |
世界観 | 94点 |
ストーリー | 75点 |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.2(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 68% 一般の視聴者 94% |
メタスコア(Metacritic) | 59(100点中) |
実写『リトルマーメイド』考察:黒人アリエルの問題
ポリコレの壁を超えた天才
結論からいうと黒人女優のハリー・ベイリーさんをアリエル役に抜擢したのは大正解だと思います。
私がそう思う理由をみなさんもうお分かりかもしれません。キャスティングが成功したと考える1番の理由はシンプルに超絶歌がうまいからです。
ミュージカル映画において歌のうまさは演技と同じくらい重要です。
主役のアリエルにハリー・ベイリーさんを抜擢したのはポリコレ的な意味合い以上に、歌唱力が評価されたのだと感じました。
1989年のアニメ映画版が好きな人は「ならアニメよりの容姿の白人で歌が上手い人を探せば良かったのでは?」と言うかもしれません。
歌唱力にはさまざなファクターがあるので一概には言えないですが、ハリー・ベイリーさんのうまさは桁違いなので、歌唱力が同じレベルで容姿がキュートな人を探すのは非常に難しいと思います。(ほぼ無理レベルでは?)
私は音楽好きなので洋楽を毎日聴きまくってますが、本作の幻想的なバラードをハリー・ベイリーより上手く歌えそうなアーティストは思いつきません。ビブラート、倍音、力強い部分と繊細な部分のダイナミクス、緩急のつけ方など、黒人歌手の中でも天才的な部類に入るのではと思います。
知名度や好みはともかくハリー・ベイリーの声には、たとえばビヨンセより優れている要素がいくつもあると思いました。
本作のミュージカル映画としての完成度はハリー・ベイリーさん抜きにしては語れないというのが私の見解です。決して多様性だけのためにキャスティングされたお飾りではありません。
いっぽうでディズニー映画には、ちょっと無理やり白人以外のマイノリティ俳優を起用した作品も多々あります。
しかし実写『リトルマーメイド』のアリエルには、実写『ピノキオ』(2022)で坊主にした意味がわからなかったブルーフェアリーのような場違い感はありませんでした。そしてキャスティングの歌唱が映画の完成度に間違いなく貢献しています。
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本作では人魚のプリンセスたちに欧米系・黒人・アジア系など全人種を入れ込んでおり、さらにエリック王子の養母は黒人。
この人種の多様性は現実的に考えると違和感ですが、この辺はファンタジーなのでそこまでツッコむ必要はないでしょう。
2023年にディズニープラスで公開された実写『ピーターパン&ウェンディ』も、ネバーランドのロストボーイズにいろんな人種がいましたね。
その作品のリアリティライン(どこまで現実を反映するか)に沿って多様性に富むキャスティングをするのは悪くないと思います。
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実写はアニメ原作のビジュアルに合わせるべき?
黒人など有色人種のキャスティングについては「差別うんぬん関係なしに原作に合わせるべき!」という声も多くあります。
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私の考えは本作のアリエルのように、原作のビジュアルと違っても映画の完成度に貢献しておもしろくなればOK!というものです。
原作をどこまで忠実に再現するべきかは議論がわかれるところですが、実写化で挑戦的なキャスティングをするのはありだと思います。それで作品がおもしろくなるのであれば。
ただ、ハリウッドのポリコレ枠を満たすためだけの意味のないキャスティングや改変は逆にマイナスになるのでやめてほしいです。
今作の場合も、仮にハリー・ベイリーさんの歌唱力が“まあまあ上手い程度”であれば、私はキャスティングを評価しなかったと思います。
『リトル・マーメイド』のアニメが大好きな原作主義の人が「イメージと違うので違和感がありすぎ!」というのは、もはや価値観や好みの領域でもあり「反対意見は多様性をないがしろにする差別的なものだ!」とまでは言えません。
最後のまとめ
『リトルマーメイド』は、海底で魚たちが踊る幻想的な映像、地上でのラブロマンス、そして最高の歌声がシンクロしたすばらしい実写化映画でした。
映画は映像が命なのでキャストの人種が問題になるのは仕方ない面もありますが、ハリー・ベイリーさんが起用された理由に見た目以外の可能性を考えることも必要だと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。実写映画『リトルマーメイド』(The Little Mermaid)レビュー終わり!
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