映画『ライトハウス』(The Lighthouse)は絶海の孤島で灯台守をする若者と老人が、ある秘密に溺れていく超個性的なクラシック風ホラー!
ロバート・パティンソンとウィレム・デフォーが、歴史に残る怪演を繰り広げます。
本作のぶっちゃけ感想・評価、ストーリー意味の独自考察、灯台・人魚の人形のメタファー、ネタバレあらすじ結末解説を知りたい人向けに記事をまとめました。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです)
映画『ライトハウス』キャスト・作品情報
原題:『The Lighthouse』
監督:ロバート・エガース
脚本:ロバート・エガース/マックス・エガース
撮影:ジェアリン・ブラシュケ
編集:ルイーズ・フォード
製作:A24/リージェンシー・エンタープライズ
ロバート・エガース監督
ロバート・エガース監督はアニヤ・テイラー=ジョイ主演のホラーファンタジー映画『ウィッチ』(2015)で絶賛された若手実力派!
遠い過去を舞台に、クラシックムービーっぽく仕上げるのが好きな監督です。
ロバート・パティンソン|イーフレイム・ウィンズロー役
イーフレイム・ウィンズローは、新米灯台守。若いのになぜ絶海の孤島に来たのかは不明。
『トワイライト』エドワード・カレン役で有名になり、クリストファー・ノーラン監督の『TENET』、Netflix『悪魔はいつもそこに』に出演。『THE BATMAN/ザ・バットマン』(2022)でブルース・ウェイン役を務めることで話題に!
ウィレム・デフォー|トーマス・ウェイク役
トーマス・ウェイクはベテラン灯台守。元船乗りの酒飲みで、新米のウィンズローに辛く当たる。
ウィレム・デフォーは顔が良い意味で怖すぎる性格俳優。個人的には大好きです。『ワイルド・アット・ハート』や『処刑人』『永遠の門 ゴッホの見た未来』、など代表作多数。
2021年は『スパイダーマンノーウェイホーム』、2022年にはウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』にも出演。
ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得したヨルゴス・ランティモス監督×エマ・ストーンの映画『哀れなるものたち』にも出てましたね。
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ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
あらすじ:絶海の孤島で4週間の灯台守の仕事についたイーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)は、ベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)とウマがあわず、海以外に何もない環境に精神的に追い詰められていきますが…。
詳しくジャンル分けすると抽象的なシーンが多い不条理ホラーです。
古典映画の雰囲気を出すために全編モノクロ。1920年代に使われた正方形に近い広がりのない画角で、古い映画をそのまま見ている印象も受けます。
個人的には大好きですが、不穏な音楽の中、意味不明な展開が続いていく、完全に見る人を選ぶ映画です。
おすすめ度 | 74% |
クラシックホラーの世界観 | 95% |
抽象度 | 92% |
ストーリー | 72% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.5(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家90% 一般72% |
※以下、映画『ライトハウス』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ライトハウス』ネタバレ感想・評価
登場人物は2人ながら、関係性の変化・怪演・衝撃的なラストと終始引き込まれました。
また、メタファーを散りばめた映像・モノクロで古風な世界観・古典映画の正方形画角に、写真集を眺めているような充実感を覚えました。
ロバート・ニール・エガース監督の映像センスは群を抜いて素晴らしいですね。
芸術・神話・名作映画など様々なオマージュもあり、それらを発見していく楽しさもあります。
さらにロバート・パティンソン演じる主人公が狂っていくストーリーの裏側に、自分なりの解釈を真剣に考察したくなる作品でした。
ストーリーを考察しないと面白味が半減するタイプの映画なので見る人を選ぶでしょうが、個人的には『ライトハウス』は傑作だと思います。
タイプは少し違いますが、デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』のように、シュールなシーンのバックで機械音が流れていたのも印象深いです。
ロバート・ニール・エガース監督はリンチの影響を受けているのかもしれません。登場人物二人ともトーマスという名前で、『マルホランド・ドライブ』のように同一性が感じられるのも見逃せませんね。
公式サイトにによると1800年代に2人の灯台守のうち一人は死んで、もう一人は気が狂って発見された実話がモチーフになっているようです。
実話からインスピレーションを得て古き良きをとことん追求しつつ、アーティスティックなショット・俳優2人の怪演・何重にも解釈できるストーリーでホラーの進化系ともいえる作品に仕上がっていました。
ライトハウス考察・さまざまな解釈
(公式サイトに載っているのでセクシャリティや父殺しなどの観点の解釈は省き、オリジナルの考察をもとに進めます。)
狂いゆく過程を主観で描く
映画『ライトハウス』は、ストレートに解釈するとロバート・パティンソン演じる主人公トミーが狂っていく過程を主観で描いた物語でしょう。
ウィレム・デフォー演じる上司トーマス・ウェイクの日誌には、トミーが仕事をせず痴態に耽っていたことが細かに書かれています。
視聴者はトミーの視点・思考で見ているので、「トミーは一生懸命働いていたはずなのにどうして?」と疑問に感じますが、我々がトミーの狂いゆく思考と映像を見せられていたとすれば納得がいきます。
トミーは狂人になる過程で、自分に都合の悪い記憶は排除し、視聴者は中盤まで“不都合な部分が”排除された映像を見ることになります。
トミーは木こりをしていたときに、ウィンズローを見殺しにしたことに良心の呵責に耐えきれず、灯台の寂しさも重なり、狂ってしまったのでしょう。
モチーフとなった実話を加味するとこの解釈が1番素直に受け取れます。
さらに深掘りすると、トーマス・ウェイクは序盤ですでに死んでいて、それを見て狂ったトミーの一人芝居なのかもしれません。
ただ、これが正解という訳ではなく、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』のように、いろいろ考察していくと楽しいタイプの映画でもあるので、次はより踏み込んだ私なりの解釈を紹介していきます。
ウィレム・デフォー演じるトーマスの謀略
ウィレム・デフォー演じるトーマスが、意図してトミーを狂わせていたと考えることもできます。
トーマスの前の助手は、おかしくなって死んでしまったと言っていました。トーマスは人里離れた灯台で、どうやって相手を精神的に追い詰めるか熟知していたのではないでしょうか?
灯室(頂上の灯りがある部屋)に入るなと意味不明なことを言い、自分の身の上については嘘を教えてトミーを混乱させ、酒を大量に飲ませます。
任務が4週間というのも、嘘かもしれません。そして迎えは来ず、トミーの精神を病ませることに成功。
伏線への観客のチープな想像を投影
もっと抽象的な見方をすれば、『ライトハウス』は観客による伏線に対するチープな想像を具現化した映画だと感じました。
まずウィレム・デフォー演じるトーマスが、「灯室に入るな!カモメと敵対するな!」とトミーを叱ります。
視聴者には「灯台とカモメが伏線になる!」とインプットされるわけです。
ロブスターの籠についても、中に何か入っているのでは?と想像しますよね。
このような伏線が、かもめの大群が現れたり、ロブスター籠に生首が入っていたりと、ある面短絡的な、そのまんまのシンプルな演出で回収されます。
もちろん普通のホラーでも伏線は回収されますが、本作のように多くの要素がミスリード(意表を突く)を交えず、誰もが想像できる演出になることは稀です。
病んでいる主人公=チープな想像をする我々と捉えると皮肉とユーモアが効いていて面白いですね。
奇才ロバート・ニール・エガース監督なら、メタ的なジョークとしての一面を紛れ込ませている可能性もあるでしょう。
灯台にあったのは?人魚やカモメの意味
ラストの灯台で、主人公が見たものとは?
ラストはトミーが灯室に入ると灯の扉が開き、気が狂ったようにショッキングな音楽が流れた後、カモメに喰われている映像に切り替わります(この結末もイレイザーヘッドっぽいといえばそうかも)。
この灯台ですが、バベルの塔とパンドラの箱が融合したようなコンセプトになっていると感じました。
灯室をパンドラの箱だとしましょう。
ここで先ほど解説した、ウィレム・デフォー演じるトーマスがすでに死んでいる説を考えると、主人公トミーはあの部屋で何を見たのか推測できます。
パカっと空いた灯りの中には、トミーが殺したトーマスの死体が入っていたのではないでしょうか。
主人公トミーが死ぬほど気が狂う事実は何か?それは自分でトーマスを殺害していた事実に気がつくことです。
人魚の人形は
トミーに性的な想像をさせた人魚の人形ですが、“意識のフタ”としての役割も果たしている気がします。
終盤でトミーはこの人形を破壊しました。そしてトーマスと争い、灯室の扉を開けるという流れ。
人魚の人形で性的な想像をして記憶を誤魔化していましたが、人形が破壊され、それができなくなったのでしょう。
意識のフタが破壊され、トミーは真実や自分の醜さと対峙して崩壊しました。
カモメはヒッチコックのオマージュ
トミーが鳥に腸を喰べられる衝撃のラストは、逃げる途中で終わったヒッチコックの『鳥』のラストが続いたらどうなるか?の一つの回答かもしれません。
公式サイトにあるようにトミーはギリシャ神話のプロメテウスを象徴しているので、鷲に内臓を喰われるラストは神話をモチーフにしているのもあるでしょう。
それだけではなく映画『鳥』とリンクしているようで面白いですね。
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