Netflixオリジナルドラマ『忽然と』。姿を消した恋人を探すうちに、過去の事件が明らかになっていくサスペンスの良作です。
二転三転する過去についての謎と、トラウマと秘密を抱えた男女が織りなす味わい深さが魅力です。
ネタバレなしのキャストや見どころ、ネタバレあらすじ解説や素晴らしいポイント、ストーリーの抽象的な考察をしていきます。
ハイクオリティなサスペンスドラマを探している人におすすめ!
Netflixドラマ『忽然と』キャスト・作品情報
公開・制作国・原題:2021年8月15日/Netflixフランス『Disparu à jamais』
監督:フアン・カルロス・メディナ
原作:ハーラン・コーベン『Gone for Good』
主演:フィネガン・オールドフィールド/ギョーム役
出演:ナイリア・アルズーン/恋人ジュディス役
出演:ギャランス・マリリエ/ソニアとイネス役
出演:ニコラス・デュヴォシェル/フレッド役
出演:ギョーム・グイ/ダコ役
出演:/オステルタグ役
主演のフィネガン・オールドフィールドは映画『母との約束、250通の手紙』などで有名。
ネタバレなし感想・あらすじと見どころ
10年前のある夜に元恋人と兄を一度に失う経験をした主人公ギョームが、現在の恋人の失踪の謎を追いながら10年前の事件の真相を暴いていくストーリー。
フランスのニースなどの街並みも素晴らしく、見ているだけで旅行気分になれるメリットもあります。
同時期にネトフリで公開されたドラマ『ヒット&ラン追跡』と似たテーマですが、個人的に『忽然と』の方が断然おすすめ。
二転三転する、予想不可のハイクオリティなサスペンスで、個人的には同じくフランスドラマで評価の高い『Lupin/ルパン』より好きです。
45分×全5話なので、一気見にも丁度いいですよ。
※以下、映画『忽然と』のストーリーネタバレありなので注意してください。
『忽然と』ネタバレ感想・評価
Netflixドラマ『忽然と』の評価は89点。
2021年公開のドラマや映画の中でも完成度はトップクラスだったと思います。
同時期公開のサスペンスアクション作で比較すると、Netflix『ベケット』や『スイートガール』よりも全然面白かったです。
展開が読めないスリリングなストーリーと、登場キャラの過去のトラウマがバランスよく交錯しており感情移入できました。
毎話でどんでん返し的な事実が発覚するのも魅力!
人間関係もかなり複雑で、兄弟の絆、姉妹の絆、恋人との絆、親友との絆など多くのことが盛り込まれていて見応えがありました。
フランスのニース、イタリアのサルディニア島、スペインと、素晴らしすぎる景観の数々が堪能でき、まるでヨーロッパ旅行をしているかのようで楽しかったですね。
フランスに住みたくなります。
ラストの浜辺でギョーム、ノラ、アリスの3人で抱き合うシーンも印象的。
ギョームの兄フレッドが元恋人を殺害した事実を知り兄を撃ち殺してしまったギョームの激しい失望の中に、一筋の光が見えるような素晴らしいラストでした。
失望までひっくるめてアート的なカタルシスが得られるのは、フランス作品らしいですね。
芸術の都(これはパリですが)と呼ばれるだけあってか、フランス作は芸術的な感性に優れた作品が多い気がします。
ラストは兄への償い!悲劇の原因考察
主人公ギョームが長年抱いていた兄フレッドへの自責の念がラストシーンで表現されていたのですが、これがとても印象的で美しかったです。
兄に申し訳ない償いの気持ちが相手に伝わるには時間がたち過ぎ、悲劇を迎えました。
(同時期公開のNetflix仏ホラー映画『群がり』もそうですが、フランスの作品はメタ的な演出が巧みな気がします。)
では、本作の悲劇の原因はそもそも何だったのでしょうか?
直接的な出来事は、兄フレッドが起こした殺人事件について、父親が親友オステルタグに罪をなすりつけ隠蔽したことです。
この殺人も故意ではなく、いじめられていたオステルタグのための仕返しがきっかけで、フレッドなりの善意が招いた結果です。
もとを正せば貧困と毒親が原因といえるでしょう。
根っこにあるのは、フレッドが父からテニスプレイヤーを強要されて精神的な虐待です。
さらにギョームに責任がなかったのか考えてみると、物語の奥行きが増します。
小さかったギョームは、兄が父に怒られている時にその場から逃げていますよね。
子供だから罪はないとしても、ギョームが止めに入っていたら兄フレッドは非行や裏家業に進んでいなかったかも知れません。
厳しい言い方をするならギョームが救えたはずの兄を救えなかったことは確かです。
ギョームが兄を撃ち殺してしまう悲劇のラストシーンとリンクしていて感慨深いですね。
ギョームは、最後にやっと兄の人生に介入できたのです。
子供時代の環境や悪意なき行動が、のちの悲劇に繋がってしまった物語と解釈できます。
どんでん返し考察
Netflix『忽然と』は、見応えのあるどんでん返しが豊富だった良質なサスペンスドラマだと思います。
- 10年前に恋人ソニアと兄フレッドを失う
- 今の恋人ジュディスが失踪
- 恋人ジュディスが殺人犯かもしれない
- ジュディスが売春婦だった
- ジュディスに子供がいた
- ジュディスは偽物で本名はノラ
- 生きていた兄とノラが知り合い
- 兄が元恋人ソニアを殺害していた
- 兄を射殺してしまう
数えてみると、どんでん返しが9個もあります。
自分が主人公だったらおそらく心が持たないでしょう(笑)
想定外がたくさんあるだけでなく、ストーリーとして違和感がないのもすごいですね!
ドラマ『忽然と』全話ネタバレあらすじ解説
1話「ギョーム」
〜10年前の2010年〜
ギョームは、元恋人・ソニアが住む隣家から銃声と叫び声とを聞き、兄・フレッドが謎の男性に撃たれて逃げてるのを目撃。
兄は撃たれて海に落ち、行方不明に。
ソニアの家に行くと、妹のイネスが庭のプールを見つめています。
ソニアが溺れ死んでいました。
〜現在(10年後)〜
ケースワーカー(貧困児童支援)の仕事をしているギョームは、母の葬式の日に同業者で恋人のジュディスにプロポーズします。
しかし、ジュディスは翌日から行方不明に。
ギョームは上司のダコと、独自で付近の捜索を開始。
警察から、イヴリーでマフィア2人が殺害され、彼らの爪からジュディスのDNAが確認できたと聞き、ギョームは愕然とします。
2話「イネス」
ギョームは死んだ母が、探偵を使ってずっと兄・フレッドを探し続けていたと知ります。
成長したイネスは、失踪したジュディスという名に心あたりを感じます。隠していた姉・ソニアの携帯を見て、2人が知り合いだったことをギョームに伝えました。
ソニアは過去に姉が殺されたトラウマもあって動揺し、しばらくギョームの家に泊まります。
ギョームはある探偵にジュディスの犯罪歴を調べてもらい、彼女が15年前に3度も売春で捕まっていると知り驚きます。
ダコを連れて元売春婦元締めのルイ・メニゲッティの家に侵入。地下で寝たきりのルイは、過去に顔を傷つけた売春婦に飼われているので助けてくれと頼みます。
ジュディスは当時、恋人だったある男性と逃げたようです。
その後、イヴリーにある駐車場でジュディスの撲殺死体が発見されたと連絡が入り、ギョームは失意の淵に落とされました。
3話「ダコ」
ギョームはジュディスの母・コンティと会い、ジュディスにアリスという子供がいることを知って驚きます。
ギョームとダコは記者・シャボーと会い「2人のマフィアが殺された事件の犯人はプロ暗殺者で、ジュディスの親族のDNAも部屋で発見されていたが公表されていない」と聞かされます。
マフィア殺害現場付近の薬局の監視カメラの映像を入手しようと、ダコは警備会社に務める旧友・ジェフに映像を見せるよう頼みました。
しかし、「組織を裏切った」と言われ断られます。
ダコにはネオナチに所属し、さまざまな人に暴行を繰り返した過去があったのです。
昔ジェフが妊婦に暴行を加え、唖然としたダコはその場に残って逮捕され、その後に改心したのでした。
ダコは消したい過去をギョームに知られ、涙を浮かべます。
夜、ギョームとダコは警備会社に侵入。
マフィア殺害時刻のストリートの映像を見ると、死んだはずの兄・フレッドとジュディスの娘・アリスが一緒に歩いています。
警備兵がやってきて乱闘になり、謎の男性の助けもあって2人はなんとか逃げることに成功。
謎の男性はオステルタグと名乗ります。
ダコは自分がファシストで人種差別主義者だった過去を、妊娠した恋人アワに話しました。
翌日ジュディスの葬式が行われ、棺を見たギョームは横たわっている女性が自分の恋人ではないことに驚きます。
4話「ノラ」
〜ノラの過去〜
ギョームがジュディスだと思っていた女性の本名はノラ。
彼女はアルジャントゥイユに住んでいましたが旦那からひどい暴力を受け、イタリアのサルデーニャ島に逃げます。
そこで、フレッドと妻のジュディス、彼らの娘・アリスと出会い仲良くなったのです。
しばらくして、ノラの旦那が居場所を突き止めてやってきて暴れました。
フレッドが彼を殴り、弾みで殺してしまいます。そして3人の逃亡生活が始まったのでした。
〜現在〜
ギョームは地元のギャングと取引し彼らの仲間が、恋人ノラ(ややこしいので以下本名のノラで表記)が、失踪する前に偽造パスポートを作っていたと知ります。
ギョームが空港近くのホテルへ行くと、恋人のノラが廊下に立っており、2人は激しいキスを交わしました。
ノラは姿を消した理由について、「フレッドが警察かマフィアに捕まれば自分も危険だから、彼に逃げろと言われた」と話します。
ギョームは取引として、1人の黒人少年の施設行きを取り消すようギャングに依頼されますが、約束を守らず殴られました。
最終回5話「フレッド」
ギョームがホテルに戻るとノラがいません。
〜フレッドの子供時代〜
プロテニスプレイヤーになるように英才教育を受けたフレッド。
やがて厳しい父のプレッシャーもあり、ドラックなど非行に走ります。
ある日フレッドは、親友・オステルタグを殴った少年を石で殴り殺してしまいました。
フレッドの父は、オステルタグのアル中の父親に金を握らせ、オステルタグに罪を着せてくれと頼みます。
数年後、成長して出所したオステルタグはアル中の父を殺しました。
フレッドはテニスのラケットを折ってプレイヤーを完全に諦め、同級生のケスレーやオステルタグと本格的にドラッグの運び屋などの裏家業を始めます。
スペインで活動していると、現地に留学してバイトをしているソニアを発見。
フレッドは金の工面に困っているソニアに運び屋のバイトをさせたのです。
〜現在〜
フレッドは「自分がオステルタグとケスレーの過去を知りすぎているから殺されそうになっている」とギョームに説明。
GPSから、オステルタグに攫われたノラがいる駐車場を突き止めました。
2人は現地へ向かいます。
フレッドは元商売仲間のケスレーを射殺。
オステルタグと撃ち合いになりますが、ノラが彼を殴り、ギョームが銃を構えます。
オステルタグは「あの夜何があったか本当のことを話せ」とフレッドに言います。
〜フレッドの過去(ソニアが殺された夜)〜
フレッドは昼間にドラッグ売買の事業がバレて警察に逮捕されます。
夜ソニアのところにやってきて「ケスレーとオステルタグを警察に売って2人で助かろう」と言います。
ソニアは断り、恋愛関係にあったオステルタグに電話。
パニックになったフレッドが「お前は負けたんだ」と言いソニアを庭のプールに沈めて殺します。
そしてやってきたオステルタグから銃撃を受けたのでした。
〜現在〜
フレッドはオステルタグに「お前は負けたんだ」と言います。
それはソニアが殺されたあの夜にギョームが聞いた言葉でした。
ギョームは兄フレッドこそがソニアを殺した犯人だと気づきます。
フレッドはオステルタグを撃とうとします。それを見たギョームは引き金を引き、フレッドの胸を銃弾が貫きました。
フレッドは倒れて血を流し息絶えます。ギョームはノラと抱き合い、涙を流しました。
ギョームは、オステルタグから解放されたアリスに会い、ノラと3人で暮らしていこうと決心しました。
Netflixオリジナルドラマ『忽然と』終わり!
ストーリーの補足
マフィア2人の殺害はおそらくフレッドが行い、そこにあったジュディスの親族のDNAというのは娘アリスのものでしょう。
殺されたマフィアはフレッドの旧友・ケスレーやオステルタグの関係者だと思います。
ジュディスと揉み合いになってフレッドが2人を殺害しましたが、恐らくジュディスは連れ去られて殺されてしまったのです。
また、ノラがケースワーカーとして働こうと思ったのは、フレッドから弟・ギョームについて聞かされており興味を持ったから。
最後のまとめ
フランスドラマ『忽然と』は、彼女の失踪から過去の悲惨な事件が紐解かれる見応え抜群の作品でした。
サスペンス的なオチが毎回ありはっとされてくれました。
リミテッドシリーズなのでシーズン2がないのが残念ですが、同じ制作陣で他のドラマも見てみたいですね!
Netflixドラマ『忽然と』レビュー終わり!
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