(ジブリ映画『君たちはどう生きるか』の考察記事は下記へ↓)
宮崎駿監督最新作・映画『君たちはどう生きるか』。宣伝が一切なかった本作を公開初日にIMAXで鑑賞してきました。 シネマグ いろいろな要素が詰め込まれたファンタジー!宮﨑駿監督の集大成というべき冒険活劇です!難しくて意味不明だ[…]
映画『君たちはどう生きるか』作品情報
制作国:日本
上映時間:124分
英題:『How Do You Live?』
ジャンル:ヒューマンドラマ・アニメ映画
監督・脚本・原作:宮崎駿
制作:スタジオジブリ
プロデューサー:鈴木敏夫
作画:本田雄
作画:武重洋二
音楽:久石譲
主題歌:米津玄師の楽曲「地球儀」
配給:東宝
予告動画・キャストも含めて一切の前情報がないことで逆に話題になりました。パンフレットも買おうかと思ったら、後日発売だそうです。
タイトルは吉野源三郎の教育小説『君たちはどう生きるか』(1937)から取られていますが、原作ではありません。(ただ通底するテーマはあります。)
宮崎駿監督
日本人ならだれもが知っているであろう宮崎駿。
もはや『となりのトトロ』を見たことがない人を探すほうがむつかしいでしょう。
本作『君たちはどう生きるか』は、冒頭の展開は『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』に似ています。
中盤以降の幻想的な世界観は『天空の城ラピュタ』『もののけ姫』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』をミックスしたかのようで、宮崎駿映画の集大成でした。
ただ内容はわかりにくいので賛否は分かれるでしょう。
今作で宮崎駿は監督・原作・脚本・絵コンテを担当し、作画は本田雄が担当していたとのこと。
登場キャラ・キャスト・声優
登場人物・役名 | キャスト・CV |
主人公・牧眞人(まひと) | 山時聡真(『ラーゲリより愛を込めて』) |
青サギ(アオサギ) | 菅田将暉(『キャラクター』『百花』『CUBE、1度入ったら最後』) |
夏子(ナツコ、眞人の母の妹。眞人の父の再婚相手) |
木村佳乃 |
炎使いヒミ | あいみょん |
正一(眞人の父) | 木村拓哉(『マスカレードナイト』) |
若いキリコ | 柴咲コウ(実写『ホリック xxxHOLiC』『月の満ち欠け』『沈黙のパレード』) |
大叔父(殿様・親方) | 火野正平 |
インコの王様 | 國村隼 |
怪我したペリカン | 小林薫 |
その他:滝沢カレン、竹下景子、風吹ジュン、阿川佐和子、大竹しのぶ(←召使いのおばあちゃん役でしょう)
※以下、映画『君たちはどう生きるか』のストーリーネタバレありなので注意してください!
あらすじとネタバレ少なめの解説はこちら←
映画『君たちはどう生きるか』ネタバレ・ラスト結末の解説
異世界へ
塔から異世界に連れてこられた眞人は、ペリカンの大群に追いやられて「我を学ものは死する」と書いてある金の門を開けてしまう。だれかの墓のようだ。
そこに若返ったキリコが船でやってきて、魔法のムチでペリカンを追い払い、呪文で墓の主が起きるのを止めた。
眞人はキリコと大海原に乗り出し、巨大な魚を釣り上げる。キリコは魚を命なき人々がいる巨大廃船へと運んだ。眞人はキリコと一緒に魚をさばいた。
ワタワタという白い妖精たちが魚のはらわたを吸収する。
夜、眞人は栄養を吸収しおえて天に登るワタワタたちを見る。キリコは「違う世界で新しい命に生まれ変わる」と言った。
ペリカンが飛んできて天に登るワタワタを食べている。ヒミという炎使いが現れ、ペリカンを追い払った。
1羽の大怪我を負ったペリカンが「私たちはいくら天に向かって飛んでも、島に戻ってしまう」と言って死んで行った。
青サギと再会した眞人は、夏子がいる塔を目指して冒険した。
途中で、インコたちの縄張りに入る。大きな包丁で殺されそうになったが、なんとか逃げ切った。眞人と青サギは炎を使える少女・ヒミと出会う。
夏子がいる塔は、屋敷の離れにあった塔と似ていた。すべての塔はつながっているらしい。
現実世界
眞人と夏子、そして老婆・キリコがいなくなった屋敷。父・正一は、経営する工場の部下たちと一緒に必死に3人を探していた。
召使いの老婆たちは、「塔は大昔に宇宙から降ってきた、大叔父(おおおじ)がその塔を住めるように作り変え、中で大量の本を読んで頭がおかしくなり跡形もなく消えた」と話す。
正一は塔へ向かった。
塔で夏子を発見、大叔父
眞人、青サギ、ヒミは塔へ到着。時の回廊にたくさんの扉があり「132」を開けると、塔に向かってくる正一たちの姿が見えた。
しかし眞人は夏子を助けるために扉を閉める。
インコの兵士たちがウヨウヨしている中、ヒミに案内されて夏子が寝ている産屋(うぶや)へ。
眞人は、白い紙に囲まれて寝ている夏子に話しかける。しかし白い紙に邪魔をされた。夏子は眞人を怒鳴りつけ、元の世界へ帰らせようとする。眞人は「夏子お母さん」と叫んだ。
義母・夏子と本当の家族になれた感動的なシーンでした。
眞人が気がつくと、この世界の主人のところに来ていた。彼は昔、塔に住んでいて跡形もなく消えた大叔父だった。
大伯父は宙に浮いているストーンを指差し、「血がつながっているおまえに、この世界の秩序を保つ役目を継いで欲しい」という。
ラスト結末
意識を取り戻した眞人は夏子のところへ行く禁忌(タブー)を犯したとしてインコたちに捕まり、包丁でさばかれそうになっていた。
青サギがやってきて眞人を助けた。さっき大叔父と話したのは夢だったのか?
インコの王は、捕らえたヒミを大叔父のところへ連れて行き、世界秩序に関しての交渉をしようとする。眞人はインコの王を追うが、途中で木の階段が崩れ落ちて埋もれてしまった。
眞人はやっとの思いで、塔の主人・大叔父のところへ。
大叔父は宙に浮く石や積み木を見せ、「私を継いでこの世界の秩序を保ってほしい」と話す。この世界は石との契約で成り立っているらしい。
積み木を積んでいけばいいと説明されるが、眞人は積み木から邪悪な力を感じる。
大叔父は何の力も宿っていない積み木を渡し、「3日に1個ずつ、合計13個を積むように」と言った。
その様子を監視していたインコ王は、「約束が違う」と積み木を勝手に積み上げる。しかし積み木は崩れ落ちた。インコ王は積み木を剣で真っ二つにした。
異世界がガラガラと音を立てて崩れていく。
眞人は青サギと夏子とヒミと時の回廊へ。ヒミは「あなたのような子を産めるなんて幸せ」と言った。ヒミは別の扉に入る。
眞人と夏子、青サギは現実世界へ。正一が眞人と夏子を迎えてくれた。扉を通ってたくさんのインコが糞をして、みんな糞まみれで笑い合う。
青サギは眞人が小さなキリコの人形と積み木を持っているのを見て、「普通は異世界のことは忘れる。早く忘れたほうがいい」と言った。異世界の積み木を持っていると記憶が残るらしい。
キリコは老婆の姿に復活する。
ジブリ映画『君たちはどう生きるか』終わり!
映画『君たちはどう生きるか』意味不明な理由
映画『君たちはどう生きるか』を視聴して意味不明だと感じる方も多いようです。
それは当然だと思います。
宮﨑駿監督自身もインタビューで「自分でもわからない部分がある」と語っていました。こういう視聴者へのブン投げはアート系の映画ではよくあります。デヴィッド・リンチの映画に答えを出すことができないのと同じです。
映画『君たちはどう生きるか』は一種のアート映画に分類してもよいでしょう。
例えばアオサギは眞人の心の葛藤を表現したキャラであり、友達でもあります。抽象的なフェーズで眞人の深層心理と心の成長を体現したキャラだとまとめることもできますが、論理的に考えて正解を出すことはできません。
キリコやインコ、異世界の意味なども同じです。
異世界は、夢や潜在意識、死の世界、天国や地獄など表面的なフェーズから抽象的なフェーズまでさまざまな解釈をつけることはできますが、「これだ!」という正解は出せません。
ピカソの絵を見て何を表現しているのか論理的に解釈できるか?という問いに似てますね。
絵画の歴史や、ピカソの生い立ち、その絵をかいた経緯からのアカデミックな解釈もできます。それも大事ですが、それだけでは“なぜこんな絵になったか”すべてを説明することは不可能です。
『君たちはどう生きるか』には、「宮﨑駿の脳内アイデアを生のまま炸裂させた!」的なところがあります。生の素材を調理するのは観客それぞれです。
意味不明なのは大前提で、自分なりにパズルのピースを組み合わせて頭の中で咀嚼してみましょう。監督の唯一の想いは「自分の頭で作品を考えてくれ」だと思います。
映画『君たちはどう生きるか』ネタバレ感想・評価
良かった点
階段を走るシーンの躍動感、青鷺の不気味さ、塔の幻想的なデザインと宮崎駿イズムが詰まっています。
序盤数分で見にきて良かったと思いました。
ストーリーは主人公がどんな世界であっても今を一生懸命生きるという普遍的なもので、子供だけでなく、私のような大人にも深く突き刺さるものがありました。
80歳を超えてなお素晴らしいアイデアを見せつけてくれた宮﨑駿監督に感服です。
青鷺(アオサギ)など魅力的なキャラクター!幻想的な風景など、劇場で観る価値は十分です!
『君たちはどう生きるか』のタイトル通り、鑑賞者それぞれが自分で考えるべき抽象的なストーリーも魅力。
(逆に自分で考えるのが嫌な人にとっては「何のこっちゃ?」となるかもしれません)。
ダメだった点
本作に特段ダメだったりひどい点はありません。
ただ気になる箇所はいくつかあります。
まずジブリの過去作っぽいデザインやオマージュ、いくつかのテーマと、いろんな要素が詰め込まれすぎていて、咀嚼に時間がかかること。
さらに今回は背景が印象派っぽい雰囲気で、画家のゴッホがよくモチーフにする糸杉(死の象徴)まで出てきます。
いろいろ考えながら見ると注意散漫になってしまう作品でした。
『崖の上のポニョ』みたいに、むつかしく考えるなってことでしょうか。
いろんなテイストが多すぎて本作がどんな作品だったのか、ひとことで語るのがむつかしい…何回も見ないと全貌を把握できなそうです。
要素がたくさんあるとそれだけ多くのテーマが発生し、受け取るメッセージは複雑になります。
あと、私はIMAXで鑑賞して超満点の迫力を堪能。ただ巨大な画面だと若干キャラのカクカク動きが気になる箇所がありました。
CineMagの点数 | 88点 |
世界観 | 95% |
ストーリー | 70% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.4(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 % 一般の視聴者 100% |
メタスコア(Metacritic)※随時更新 | (100点中) |
最後のまとめ
見応え抜群のシーンも多く、アイデアも豊富。しかし、いろんな要素が詰め込まれている割にストーリーは抽象的で難解でした。
『千と千尋の神隠し』のように観る側がどう受け取るか問われる作品なので、今後世間の評価がゆっくりと定まってくるのではないでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『君たちはどう生きるか』レビュー終わり!