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映画『ベイビー・ブローカー』ネタバレ考察・ラストの意味 切ない真のメッセージを深掘り解説

CineMag
どうも、映画ライターのシネマグです。今回は是枝裕和監督の映画『ベイビー・ブローカー』のメッセージを深掘り考察します!

『パラサイト半地下の家族』のソン・ガンホや、『空気人形』のペ・ドゥナなど豪華キャストが淡い光のような抽象的ヒューマンドラマをつむぎました。

作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価本作のメッセージやテーマ考察ラストのサンヒョンの行動の意味考察を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。好きなところから読んでください。)

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映画『ベイビー・ブローカー』作品情報・キャスト解説

公開・制作国・上映時間:2022/06/24・韓国・129分
英題:『Broker』『Baby, Box, Broker』ハングル:『브로커』
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督・脚本:是枝裕和
撮影:ホン・ギョンピョ
制作:ジップ・シネマ

監督は『万引き家族』(2018)でカンヌの最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和ですが、本作は韓国映画という位置付け。

ただテイストとしては完全に是枝作品ですね。

撮影監督のホン・ギョンピョは映画『パラサイト 半地下の家族』や『バーニング 劇場版』邦画『流浪の月』などを手がけた超実力派。臨場感・説得力がすごいシリアスな映像を得意としています。

本作は第75回カンヌ国際映画祭で、エキュメニカル審査員賞(キリスト教(カトリックとプロテスタント)関係の審査員が素晴らしい人間ドラマに授与する賞)を獲得しています。

登場人物・キャスト解説

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ハ・サンヒョン 役|cast ソン・ガンホ

ハ・サンヒョン 役の俳優ソン・ガンホ

サンヒョンは赤ちゃんを高値で売るブローカー。借金を抱えるダメおやじ。妻子とは別々に暮らしている。

ソン・ガンホの演技は説得力がすごい。完全に役にハマってました。

ガンホは本作の演技で2022年の第75回カンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を獲得!

ソン・ガンホが主演を務めたポン・ジュノ監督の映画『殺人の追憶』(2001)は衝撃的でした。

アカデミー賞作品賞を獲得した『パラサイト半地下の家族』の父・ギテク役も記憶に新しいですね。

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ユン・ドンス 役|cast カン・ドンウォン

ユン・ドンス 役の俳優カン・ドンウォン

ドンスは教会の児童保護施設の職員で、サンヒョンに協力する人物。

自身も児童施設出身。

カン・ドンウォンは『MASTER/マスター』『新感染半島 ファイナル・ステージ』などで有名。

今作では、何気ない表情から彼のストーリー性が読み解けるような素晴らしい演技を見せてくれました。

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ムン・ソヨン 役|cast IU(イ・ジウン)

ムン・ソヨン 役の女優イ・ジウン

赤ちゃんのウソンをポストの前に放置したワケあり女性。

冷たい表情×カメラワークで彼女の内面が浮かび上がっていました。

アン・スジン刑事 役|cast ペ・ドゥナ

アン・スジン役の女優ペ・ドゥナ

スジンはサンヒョンらベイビー・ブローカーを現行犯逮捕しようと目論む刑事。

今作いちばん泣けたのはぺ・ドゥナのあのシーンでした。

ペ・ドゥナは『空気人形』やNetflixドラマ『静かなる海』などで有名。

ソン・ガンホとはポン・ジュノ監督の映画『グエムル-漢江の怪物-』(2006)でも共演していましたね

イ刑事 役|cast イ・ジュヨン

イ役の女優イ・ジュヨン

スジンの後輩刑事。

女優イ・ジュヨンはドラマ『梨泰院クラス』のトランスジェンダーコック・ヒョニ役でブレイク。映画『野球少女』では主演を務めました。

その他の出演者

ヘジン(施設の少年)|cast イム・スンス

シン・テホ(マフィア)|cast リュ・ギョンス

あらすじ

ベイビー・ブローカー

ドンスが勤めている福祉施設の赤ちゃんポストの前に生後数ヶ月の男児が捨てられた。

雨の中その光景を見ていたスジン刑事は、赤ちゃんをポストに入れる。

ドンスは闇売買をするためサンヒョンのもとへ赤ちゃんウソンを連れていった。

ウソンの母・ソヨンは考え直して施設に戻ってくるがウソンの姿はない。

ドンスは仕方なくソヨンをサンヒョンのもとへ連れていく。

裕福な家庭で育ったほうが幸せだと聞いたソヨンは、サンヒョンとドンスと養父母をめぐる旅に出るが…。

※以下、映画『ベイビー・ブローカー』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ベイビー・ブローカー』ネタバレ感想・評価

『ベイビー・ブローカー』の評価は84点。抽象的で美しいメッセージをはらんだ佳作です。
「偽装家族が持つ真の愛情」のような『万引き家族』から引き継がれたモチーフをより抽象的に描いた作品
良くも悪くも『万引き家族』と比較して何を伝えたいかがフワッとしており、クロード・モネの印象派絵画を観るような感覚になりました。
登場人物それぞれの心情が急にあふれ出すようなシーンがいくつもあり、特にペ・ドゥナ演じるスジン刑事が夫に電話しながら泣く心情吐露の場面は感動的でした(泣いた理由などについては後述)。
『万引き家族』と比べると好みが分かれる作品でしょう。
ストーリーが理路整然と進んでいくというより、「家族になる」という人間の本質にスポットが当たっています
なのでワンシーンワンシーンをロジカルに考えすぎると本作の良さが薄れると思いました。
細かい疑問は結構多い作品ではありますが、登場人物それぞれに感情移入しつつ「人間はなぜ一緒に暮らすようになるのか?」的な、答えのない普遍的メッセージに思いを馳せるべき作品でしょう。
おすすめ度82%
メッセージ性87%
ストーリー80%
IMDb(海外レビューサイト)7.5(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)批評家 86%

ベイビー・ブローカー徹底考察(ネタバレ)

家族になってしまう人間の性

本作で是枝監督が描きたかったのは、個人と個人の絆というより一緒にいると自然と家族になってしまう“人間の性”だと感じました。

感想を語る犬
『万引き家族』の前日譚的なコンセプトですね。
ブローカーと母親で旅をする流れや、スジン刑事がそれを捜査する過程はなんか緊張感がなく、ツッコミどころや疑問も多々あります。
ただそれこそが是枝監督の狙いというか、人間って理由がなくても一緒にいると家族になっちゃうよねと伝えたかったのではないでしょうか。
捨てられた赤ちゃん・ウソンを巡って、ブローカーのサンヒョンとドンス、母親・ソヨン、施設の少年ヘジンが協力し合い、まるでそれが必然であるかのように距離が縮まっていくのです
そこに明確な理由はありませんが、その光景自体が尊いものであり、人間の本質であると訴えているように感じました。
ここにペ・ドゥナ演じるスジン刑事も加わります。
彼女は刑事でありながら犯行現場を取り押さえるために偽装夫婦を仕掛けるなど、自身がブローカーになっているような役回りに苦悩します。
是枝監督らしい、視点を変えると善も悪に見える構図は素晴らしいです。
それだけでなく、
  • スジン刑事も赤ちゃんを一緒に育てたかった
  • 偽装であっても笑い声があふれるサンヒョンたちの“家族”関係に憧れていた
という側面もあるのでしょう。
冒頭でウソンを抱いてポストに入れた時点で、ウソンが愛しくて仕方なくなったのかもしれません。
スジンはブローカー的な役回りでもありますが、バイヤー(買い手)の側面もあります。

スジン刑事については、なぜそれ程までに赤ちゃん人身売買事件に執着するの詳しくは描かれていません。

推測になりますがスジン自身が赤ちゃんを産めないのかも。

もしくは部下のイ刑事に夫を褒められたとき「あげようか?」と冗談ぽく言っていたのは半分本気で、夫が無精子症などで赤ちゃんを授かれないのかもしれないですね。

  • 子供を授かれないスジンが、子供を売ろうとしているサンヒョンやソヨンたちを憎しみから罰したい。
  • その反面、自分もウソンの世話をする仲間に加わりたい。
感想を語る犬
それらを踏まえてスジンが車中で夫に電話した理由・心の葛藤を考えると涙があふれてきます。

他人同士が集まって赤ちゃんを育てる是非は、現代社会の倫理で測れる枠を超えています。

常識や善悪だけで考えるべき作品ではないのでしょう。

私なりに解釈するなら本作『ベイビー・ブローカー』が伝えたいのは「家族の尊さは善悪の概念を超える」というメッセージだと思いました。

ラスト:サンヒョンの行動原理

『ベイビー・ブローカー』のラストシーンは、スジン刑事に育てられるウソンを、クリーニング屋の車に乗ったソン・ガンホ演じるサンヒョンが遠くから眺め、車で去っていくというもの。

サンヒョンはなぜウソンの前に姿を出さないで車で去っていったのでしょうか?

考察はいろいろできるでしょう。

4千万ウォンを巡ってマフィアのシンを殺してしまったから逃げてる」のかもしれません。

しかしそれが真相かは不明。

それより大事なのは、サンヒョンがどんな心の葛藤を抱えているか掘り下げることだと思います。

私の意見ですが、サンヒョンは「自分がいなければ、みんなが家族として幸せに暮らせる」と心の奥底で考えたのだと思いました。

サンヒョンは終盤で娘と会い、「ママがもう会いに来ないでと言ってた」と縁を切られてショックを受けます。

自分は血の繋がった家族にとって不要な存在となりました。

ベイビー・ブローカーであるサンヒョンは、皮肉にも自らの娘まで手放すことになったのです。

そのあとソヨンから「生まれてきてくれてありがとう」と言われますが、サンヒョンだけはその言葉を素直に受け止め切れていないように感じられます。

サンヒョンはウソンを囲むもう1つの大切な家族についても、「不幸の原因は自分では?自分がいなければ丸く収まるのでは?」と連鎖的に考えるようになってしまったのではないでしょうか。

シネマグ

家族という名のパズルに自分だけハマらないと気づいたのでしょう。

『ベイビー・ブローカー』のラストは、ドンス、スジン刑事、ソヨンらは第2の人生をやり直そうとしている中で、サンヒョンの傷は癒えていないという明暗の対比をはっきり描いたものだと思いました。

ポジティブに考えるなら、サンヒョンが「生まれてきてくれてありがとう」という言葉を素直に受け取り、ウソンの前に姿を表せる日が近いのかもしれません。

しかし前向きなメッセージだけでなく自分を許せない気持ちや、取り返しがつかない過去に対する苦悩はなかなか癒えないというリアルな解釈も同時に存在している気がします。

元妻と娘に縁を切られ、借金過多。さらに赤ちゃんを闇で売買するサンヒョンは、決して良い人間ではありません

赤ちゃんを世話しているときに「自分は良い人間だ」と言い聞かせていた側面もあるのでしょう。

ドンスやソヨン、ヘジンなど偽装家族と一緒にいる間は魔法がありました。

しかし本当の家族に捨てられ、自らの悪事を直視して自分を肯定できなくなったとき、その魔法は解けたのです。

サンヒョンは「クズな自分がいなくなることで、せめてみんなは幸せになってほしい」そう思ったのかもしれません。

擬似家族だったけどお互いがお互いを必要していたと確信していた『万引き家族』とは構造的に対になる悲哀に満ちた結末です。

『万引き家族』がお互いを必要としながらバラバラになったのに対し、『ベイビー・グローカー』は再集結するも1人だけそこにいられないという切なすぎるラスト。

感想を語る犬
『パラサイト 半地下の家族』とも共通するものがありますね。ソン・ガンホも脚本書いてる(笑)?

視点を広げると、赤ちゃんポストや子育てや児童施設の問題の根幹にあるのは、自分の存在を肯定できないことなのかもしれません。

シネマグ
映画だからと明確なハッピーエンドにしないで、あえて人生をやり直す難しさ、家族になる困難をも同時に描いた意義深い作品だと思いました。

おまけ:動画レビュー

『ベイビー・ブローカー』の考察を動画でもアップしました↓↓

最後のまとめ

映画『ベイビー・ブローカー』は、社会的に追い詰められた人々が必然的に家族になる過程を抽象的に描いた美しいヒューマンドラマでした。

是枝監督の中で、複数視点の解釈ができるようにフワッとした作りにするという明確なコンセプトがあり、そのぶん受け手が想像力を張り巡らせる必要があると感じました。

メッセージも演出も日本的ですね。

フワッとした部分が多いので世間的な評価は分かれるかもしれませんが、是枝監督にはぜひこの路線を突き進んでほしいです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『ベイビー・ブローカー』レビュー終わり!