映画『ベイビー・ブローカー』ネタバレ考察・ラストの意味 切ない真のメッセージを深掘り解説

  • 2024年4月19日
CineMag
どうも、映画ライターのシネマグです。今回は是枝裕和監督の映画『ベイビー・ブローカー』のメッセージを深掘り考察します!

『パラサイト半地下の家族』のソン・ガンホや、『空気人形』のペ・ドゥナなど豪華キャストが淡い光のような抽象的ヒューマンドラマをつむぎました。

作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価本作のメッセージやテーマ考察ラストのサンヒョンの行動の意味考察を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。好きなところから読んでください。)

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映画『ベイビー・ブローカー』作品情報・キャスト解説

公開・制作国・上映時間:2022/06/24・韓国・129分
英題:『Broker』『Baby, Box, Broker』ハングル:『브로커』
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督・脚本:是枝裕和
撮影:ホン・ギョンピョ
制作:ジップ・シネマ

監督は『万引き家族』(2018)でカンヌの最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和ですが、本作は韓国映画という位置付け。ただテイストとしては完全に是枝作品ですね。

ちなみに是枝監督の次作はほのぼの日常・文化系のNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』です。(こちらも傑作でした)

安藤サクラ・瑛太出演で2023年公開の映画『怪物』も素晴らしい傑作でした。

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映画『怪物』2023

撮影監督のホン・ギョンピョは映画『パラサイト 半地下の家族』や『バーニング 劇場版』邦画『流浪の月』などを手がけた超実力派。臨場感・説得力がすごいシリアスな映像を得意としています。

本作は第75回カンヌ国際映画祭で、エキュメニカル審査員賞(キリスト教(カトリックとプロテスタント)関係の審査員が素晴らしい人間ドラマに授与する賞)を獲得しています。

登場人物・キャスト解説

ハ・サンヒョン 役|cast ソン・ガンホ

ハ・サンヒョン 役の俳優ソン・ガンホ

サンヒョンは赤ちゃんを高値で売るブローカー。借金を抱えるダメおやじ。妻子とは別々に暮らしている。

ソン・ガンホの演技は説得力がすごい。完全に役にハマってました。

ガンホは本作の演技で2022年の第75回カンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を獲得!

ソン・ガンホが主演を務めたポン・ジュノ監督の映画『殺人の追憶』(2001)は衝撃的でした。

アカデミー賞作品賞を獲得した『パラサイト半地下の家族』の父・ギテク役も記憶に新しいですね。

ユン・ドンス 役|cast カン・ドンウォン

ユン・ドンス 役の俳優カン・ドンウォン

ドンスは教会の児童保護施設の職員で、サンヒョンに協力する人物。

自身も児童施設出身。

カン・ドンウォンは『MASTER/マスター』『新感染半島 ファイナル・ステージ』などで有名。

今作では、何気ない表情から彼のストーリー性が読み解けるような素晴らしい演技を見せてくれました。

ムン・ソヨン 役|cast IU(イ・ジウン)

ムン・ソヨン 役の女優イ・ジウン

赤ちゃんのウソンをポストの前に放置したワケあり女性。

冷たい表情×カメラワークで彼女の内面が浮かび上がっていました。

IUは2023年公開の映画『ドリーム 狙え、人生逆転ゴール』にも出演。

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アン・スジン刑事 役|cast ペ・ドゥナ

アン・スジン役の女優ペ・ドゥナ

スジンはサンヒョンらベイビー・ブローカーを現行犯逮捕しようと目論む刑事。

今作いちばん泣けたのはぺ・ドゥナのあのシーンでした。

ペ・ドゥナは『空気人形』やNetflixドラマ『静かなる海』などで有名。

ソン・ガンホとはポン・ジュノ監督の映画『グエムル-漢江の怪物-』(2006)でも共演していましたね。

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イ刑事 役|cast イ・ジュヨン

イ役の女優イ・ジュヨン

スジンの後輩刑事。

女優イ・ジュヨンはドラマ『梨泰院クラス』のトランスジェンダーコック・ヒョニ役でブレイク。映画『野球少女』では主演を務めました。

その他の出演者

ヘジン(施設の少年)|cast イム・スンス

シン・テホ(マフィア)|cast リュ・ギョンス

あらすじ

ベイビー・ブローカー

ドンスが勤めている福祉施設の赤ちゃんポストの前に生後数ヶ月の男児が捨てられた。

雨の中その光景を見ていたスジン刑事は、赤ちゃんをポストに入れる。

ドンスは闇売買をするためサンヒョンのもとへ赤ちゃんウソンを連れていった。

ウソンの母・ソヨンは考え直して施設に戻ってくるがウソンの姿はない。

ドンスは仕方なくソヨンをサンヒョンのもとへ連れていく。

裕福な家庭で育ったほうが幸せだと聞いたソヨンは、サンヒョンとドンスと養父母をめぐる旅に出るが…。

※以下、映画『ベイビー・ブローカー』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ベイビー・ブローカー』ネタバレ感想・評価

『ベイビー・ブローカー』の評価は84点。抽象的で美しいメッセージをはらんだ佳作です。
「偽装家族が持つ真の愛情」のような『万引き家族』から引き継がれたモチーフをより抽象的に描いた作品
良くも悪くも『万引き家族』と比較して何を伝えたいかがフワッとしており、クロード・モネの印象派絵画を観るような感覚になりました。
登場人物それぞれの心情が急にあふれ出すようなシーンがいくつもあり、特にペ・ドゥナ演じるスジン刑事が夫に電話しながら泣く心情吐露の場面は感動的でした(泣いた理由などについては後述)。
『万引き家族』と比べると好みが分かれる作品でしょう。
ストーリーが理路整然と進んでいくというより、「家族になる」という人間の本質にスポットが当たっています
なのでワンシーンワンシーンをロジカルに考えすぎると本作の良さが薄れると思いました。
細かい疑問は結構多い作品ではありますが、登場人物それぞれに感情移入しつつ「人間はなぜ一緒に暮らすようになるのか?」的な、答えのない普遍的メッセージに思いを馳せるべき作品でしょう。
おすすめ度 82%
メッセージ性 87%
ストーリー 80%
IMDb(海外レビューサイト) 7.5(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 86%

ベイビー・ブローカー徹底考察(ネタバレ)

家族になってしまう人間の性

本作で是枝監督が描きたかったのは、個人と個人の絆というより一緒にいると自然と家族になってしまう“人間の性”だと感じました。

感想を語る犬
『万引き家族』の前日譚的なコンセプトですね。
ブローカーと母親で旅をする流れや、スジン刑事がそれを捜査する過程はなんか緊張感がなく、ツッコミどころや疑問も多々あります。
ただそれこそが是枝監督の狙いというか、人間って理由がなくても一緒にいると家族になっちゃうよねと伝えたかったのではないでしょうか。
捨てられた赤ちゃん・ウソンを巡って、ブローカーのサンヒョンとドンス、母親・ソヨン、施設の少年ヘジンが協力し合い、まるでそれが必然であるかのように距離が縮まっていくのです
そこに明確な理由はありませんが、その光景自体が尊いものであり、人間の本質であると訴えているように感じました。
ここにペ・ドゥナ演じるスジン刑事も加わります。
彼女は刑事でありながら犯行現場を取り押さえるために偽装夫婦を仕掛けるなど、自身がブローカーになっているような役回りに苦悩します。
是枝監督らしい、視点を変えると善も悪に見える構図は素晴らしいです。
それだけでなく、
  • スジン刑事も赤ちゃんを一緒に育てたかった
  • 偽装であっても笑い声があふれるサンヒョンたちの“家族”関係に憧れていた
という側面もあるのでしょう。
冒頭でウソンを抱いてポストに入れた時点で、ウソンが愛しくて仕方なくなったのかもしれません。
スジンはブローカー的な役回りでもありますが、バイヤー(買い手)の側面もあります。

スジン刑事については、なぜそれ程までに赤ちゃん人身売買事件に執着するの詳しくは描かれていません。

推測になりますがスジン自身が赤ちゃんを産めないのかも。

もしくは部下のイ刑事に夫を褒められたとき「あげようか?」と冗談ぽく言っていたのは半分本気で、夫が無精子症などで赤ちゃんを授かれないのかもしれないですね。

  • 子供を授かれないスジンが、子供を売ろうとしているサンヒョンやソヨンたちを憎しみから罰したい。
  • その反面、自分もウソンの世話をする仲間に加わりたい。
感想を語る犬
それらを踏まえてスジンが車中で夫に電話した理由・心の葛藤を考えると涙があふれてきます。

他人同士が集まって赤ちゃんを育てる是非は、現代社会の倫理で測れる枠を超えています。

常識や善悪だけで考えるべき作品ではないのでしょう。

私なりに解釈するなら本作『ベイビー・ブローカー』が伝えたいのは「家族の尊さは善悪の概念を超える」というメッセージだと思いました。

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