Netflix映画『ブロンド』(Blonde)は、永遠のセックスシンボル/マリリン・モンローの半生を描いた衝撃作!幼少期のトラウマから絶望の淵に至まで、彼女の苦悩と絶望をリアリティたっぷりに描きます。
主演は色気たっぷりの美人女優アナ・デ・アルマス。
Netflix史上初の18禁指定(NC-17)を喰らった作品でもあり、生々しい性描写・DV描写も多いです。
作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、忖度なしネタバレ感想・評価、ラストシーンの意味・入れ子の精神構造・メッセージ深堀り考察を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『ブロンド』作品情報・キャストと演技の印象
原題:『Blonde』
ジャンル:自伝的な映画・アート系
監督・脚本:アンドリュー・ドミニク(『ジャッキー・コーガン』)
原作:ジョイス・キャロル・オーツ小説「ブロンド -マリリン・モンローの生涯」(2000)
制作:PLAN B
出演者:アナ・デ・アルマス、エイドリアン・ブロディ、ゼイヴィア・サミュエル、ジュリアンヌ・ニコルソン
本作はジョイス・キャロル・オーツの同名ベストセラー小説がもとになっておりノンフィクション自伝でありません。細部はあくまでフィクションです。ただ大枠は史実と重なる部分も多少あります。
アナ・デ・アルマス
©︎Netflix
最近では『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のボンドガールとしても話題になったキューバ出身の女優アナ・デ・アルマス。美しさとキュートさを兼ね備えた表情は、マリリン・モンローにピッタリでした。ハマり役だと思います。
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さらに今作では脱ぎっぷりも大胆。
アナ・デ・アルマスは、キアヌ・リーブスの『ノック・ノック』や、ベン・アフレックと共演した『底しれぬ愛の闇』などで結構ガッツリ脱いで濡れ場を演じることが多いのですが、本作はさらに過激でした。
アナはインタビューで本作が18禁指定されたことについて、「もっと過激な作品はたくさんある」と不満を述べたそう。しかし本作は現実味が強い暴力描写が多く、正直18禁も納得の見ていて辛い内容です。
↓アナ・デ・アルマスの出演作品解説記事↓
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『ブロンド』のあらすじ
幼少期に精神を病んだ母から暴力を振るわれ、施設で育ったノーマ・ジーン。母親は有名人である父親に捨てられたようだ。
美しく成長した彼女は映画業界に興味を持った彼女はプロデューサーとマネージャーの言いなりになり、マリリン・モンローとして『ノックは無用』という映画でブレイク。
一躍大スターになった彼女だが、幼少期のトラウマと性的被害で心は崩壊してかけていた。
そんな中、チャールズ・チャップリンを父に持つキャスと恋愛をする。お互いに父親へのコンプレックスで共感し合い、心の傷を埋めていった。しかしある出来事がきっかけで、その関係すらも壊れていく。
どこかで父が見ていてくれると信じていた。ある日、父から手紙が届き、歓喜する。
付き人からホテルで大切な人が待っていると聞き、父が来てくれたと考えて駆けつけたマリリン・モンローだったが、そこにいたのは引退した有名野球選手ジョー・ディマジオだった。
ジョーと結婚するが、幸せな時間は長くは続かず…。
ネタバレなし感想・海外評価
大作映画にしては珍しいNC-17指定(日本でいう18禁)で、裸のシーン、性的虐待、暴力による虐待など生々しいシーンが多く見ているのが辛いです。
血がドバッと飛び出るとかそういう感じではないですが、DVのシュチュエーションが非常にリアル。そういったシーンが苦手な人は観るのをやめた方が無難です。
アニャ・テイラー=ジョイ主演の映画『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』(2021)も過激な性暴力描写に賛否両論湧きましたが、それと比較しても本作のほうが露骨で生々しく、痛々しいです。
映画『ラストナイト・イン・ソーホー』は、デザイナー志望の女子が夢で1960年代のロンドンへタイムスリップしてしまう話でしたが、浅く薄っぺらい印象で正直つまらなかったです。 美しい2人の若手女優、トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラ[…]
派手にスポットライトを浴びるマリリン・モンローの美しいショット以外にはエンタメ性もありません。好き嫌いハッキリ分かれるでしょう。
自伝映画の中ではマーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』のようなカタルシスのあるタイプではなく、ニルヴァーナのカート・コバーンの最後の狂った日々を淡々と描いた『LAST DAYS』(2005)に近いです。
アート系の作品や、気分が鬱になる胸糞作品が好きな人にはおすすめ。
おすすめ度 | 60% |
世界観・美しさ | 85% |
ストーリー | 40% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.3(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 52% 一般の視聴者 47% |
メタスコア(Metacritic) | 51点(100点中) |
※以下、映画『ブロンド』のストーリーネタバレありなので注意してください!
Netflix『ブロンド』ネタバレ感想・評価
アナ・デ・アルマス扮するマリリン・モンローの絶望の表情を、アート的な映像と共にまざまざと見せつける非常に挑戦的な作品。
モノクロとカラー、画角、トーンなど映像の雰囲気がシーンごとにコロコロ切り替わり、そのツギハギ感自体がそのままマリリン・モンローの人格崩壊を表現しているようでした。
マリリン・モンローという永遠のセックス・シンボルの裏側を描き、男性たちに搾取される悲惨な女性を美しすぎるカットの数々で捉えているのは素晴らしいです。
まず、性暴力描写や家庭内暴力のシーンがひどすぎます。
序盤ではマリリン・モンロー(本名ノーマ・ジーン)が幼少期が描かれ、母親が精神崩壊して助手席にいるノーマの頭を叩きつけます。そして裸にして風呂に入れ、首を締めて溺死させようとしました。
さらに成長した彼女は、映画業界に入るにあたって関係者との面接でいきなりその場で性行為を強要され、感情を殺して生きていくようになります。
他にも裸でいるところを夫のジョー・ディマジオに殴り飛ばされるなどなど、挙げればキリがありません。
もっと激しい暴力や、グロテスクな映画はたくさんあります。
しかし本作『ブロンド』は文脈・シュチュエーションが非常にリアルなのが特徴でそのぶん衝撃度は大きいです。NC-17指定も当然かもしれません。
『ブロンド』は一応フィクションですが、実際マリリン・モンローには数々の悲惨な出来事が噂されており、彼女の人生をリアルに映像化すると今作のようになるということが十二分に伝わってきました。
大スターの悲劇をリアルに伝えるという意味では成功でしょう。いっぽうで現実味がありすぎて視聴してショックを受ける人もいるでしょうし、その辺りも評価が分かれると思います。
アナ・デ・アルマスのヌードシーンについてもあんなに必要だったかも正直わかりません。アートという意味でも美しく性的搾取をされる側ということでリアリティが増す意味はあるかもです…。
ただ見方によっては、エンタメ業界での女性の性的搾取を告発する映画が、逆に性的消費される面をも孕んでいるといえるでしょう。ここを挑戦的と取るか、やり過ぎて矛盾していると取るかで意見が分かれそうです。
ストーリーはわりと淡々と進み、随所で半強制的な中絶手術、不慮の流産など悲惨な展開が挿入されてきます。
絶望は痛いほど伝わってくるのですが、すでに序盤でマリリン・モンローの人格は崩壊しているため感情移入できるというわけでもありません。
彼女以外の登場人物の内面描写もほぼナシ。彼女以外にはスポットが当たっていないのです。
マリリン・モンローと、彼女を取り囲む搾取する男という構図で、男たちは人間というより記号的に機能しています。
男性の搾取をこれほどドライに描いたことは特筆すべきでしょう。
よって人物同士の関係性を描くヒューマンドラマというより、悲惨な女性をひたすら観察する作品といったほうが近い。
後半になるとケネディ大統領に呼び出され、彼の電話中に口で性欲処理をさせられる屈辱。そこからは妄想と現実の境目も曖昧になり…、また妊娠して中絶手術を受けさせられるシーンも現実か妄想か不明です。
性差別の問題提起もありますが、解決の糸口を提示するというより悲劇的な展開でひたすら視聴者を鬱にしてきます。
全体を通して美しさと影という明暗の対比を、映像表現も含めてアートに昇華するコンセプトなのでしょう。
ただ内容的にはぶっちゃけつまらないと思いました。芸術性を無視すれば結構ひどい映画といえるかもしれません。2時間47分というのも少し長すぎる気がします。
テイストとしてはロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)みたいな作品が作りたかったのかなという印象。
あとは後半にマリリン・モンローがバスローブ姿で電話が鳴るのを怖がり、ベッドで終焉を迎えていく様はデヴィッド・リンチ監督の傑作『マルホランド・ドライブ』にかなり近いものを感じましたが、その作品ほどのインパクトや意味不明さがあるわけでもありません。
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映画ブロンド 考察(ネタバレ)
ラストの意味
ベッドの上でマリリン・モンローが死亡(薬による自殺)するラスト。
撮影さながらのとびきりの笑顔の霊体が横たわる死体と分離しましたがこれは何を意味するのでしょうか。
死んで世間の注目から抑圧された。
ノーマ・ジーンとマリリン・モンローという人格がやっと分離した。などなど解釈はいろいろできると思います。
個人的にはマリリン・モンローというイメージは死んでもアイコン・象徴として生き続けるが、もとのノーマ・ジーンという女性のことなど誰も覚えていないと表現しているのだと思いました。
死体の足だけが数秒映って暗転。意味深かつ切ないラストシーンでしたね。
映画として眺める入れ子構造
映画『ブロンド』がどんな作品かを言葉で表現するのは難しいですが、ひとつは演技と現実の境界線崩壊を描いているのでしょう。
序盤、マリリン・モンローがプロデューサーに部屋でいきなり強姦された件については、完成した映画の接待シーンを試写で彼女自身が眺めることで“映画内のことだった”と記憶を騙し、なかったことにしているようでした。
電話中のケネディ大統領に卑猥な行為を強要されるシーンも、脳内で映画館での映像に変換されています。
このように彼女は不幸な経験については、「私は演技をしている、これは映画だ」と捉えて自分自身を納得させていました。
そして抑圧されたトラウマが積み重なって内面が侵食されて日常生活までが苦しくなり、日常でも演技を始めます。
そして素の自分と演技との区別がつかなくなってしまったのです。
結果マリリン・モンローとノーマの間でバランスが保てなくなり、自我崩壊から自殺してしまったのでしょう。
人生での出来事を映画として眺める入れ子構造の崩壊でもあります。
スポットライトなしでは生きられない
本作で特に強調されていたのがスポットライトです。
マリリン・モンローは序盤のオーディションシーンから「精神が壊れている」と言われていましたが、スポットライトを浴びる瞬間の彼女は輝いています。
ライトを浴びて演技をしているときは役になりきり、暗い現実から逃避することができたのでしょう。
スポットライトが彼女の明るい面をすくい出しているようにも見えました。
金魚が水なしで生きられないように、マリリン・モンローはスポットライトなしでは生きられない女性なのだと伝わってきました。
永遠のセックスシンボル=女性差別の象徴
永遠のセックスシンボルと謳われたマリリン・モンローですが、その実態が性的搾取の被害者なのが恐ろしいです。
セックスシンボルでありながら、同時に女性差別の象徴でもあるのです。
顔や体で男性を虜にして名声を得ているかと思いきや、実態は性的な対象であることを強要された人生。
彼女の存在に、ジェンダー問題の全てが集約されているようでした。
登場人物はマリリン・モンローと彼女の母親以外はほぼ全員が搾取する男性たちで、女性はほとんど出てきません。
その構図からも、マリリン・モンローは世の中の女性がすべて投影した存在であることがうかがえます。
世の女性の中には彼女のように苦しんでいる人もいるというメッセージが伝わってきました。
太宰治の「人間失格」みたい
幼少期に母親からDVを受けたトラウマや、ハリウッド業界で性的被害を受けたトラウマのせいで、本当の自分と演技をしている“マリリン・モンロー”の区別がつかなくなっています。
なんだか太宰治の「人間失格」の設定と似ています。“お道化”を演じる主人公・葉蔵みたいなパーソナリティですね。
映画『ブロンド』と小説「人間失格」の雰囲気は全然違いますが、人格の崩壊・人生の崩壊を淡々と見せつけられるという点では通底するのもがあると感じました。
最後のまとめ
Netflix映画『ブロンド』は、映画界を席巻する女優アナ・デ・アルマスが大胆な演技を見せつけ、映像技法からもアート的なこだわりが感じられました。
しかし、リアリティのあるDV描写と心の崩壊を延々と見せつけられ、ジェンダー差別の問題提起的なメッセージはありつつも、面白みがなくシンプルに見るのが辛い映画になってしまったと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。『ブロンド』レビュー終わり!
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