Netflix映画『ジャズマンズ・ブルース』ネタバレ感想・考察/ラストの哀愁が凄すぎる!あらすじ解説(2022)

  • 2022年9月25日

Netflix映画『ジャズマンズ・ブルース』(A Jazzman’s Blues/2022年)。1930年代の黒人青年は運命の恋をつかみ取れるのか。立ちはだかるさまざまな壁、それを乗り越えた先に待っていたのは…

切ない恋愛と黒人差別の問題が高いレベルで融合した期待以上の作品でした!

CineMag
なぜジャズやブルース音楽は哀愁をまとうのか?その理由がわかる秀作です!

作品情報・キャスト・あらすじ、ストーリーのネタバレ感想・ぶっちゃけ評価ラストのメッセージ深掘り考察!を知りたい人向けに徹底レビュー!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『ジャズマンズ・ブルース』作品情報・キャストと演技の印象

公開・制作国・上映時間:2022/09/24・アメリカ・128分
原題:『A Jazzman’s Blues』
ジャンル:ラブロマンス・ヒューマンドラマ・人種差別
監督・脚本タイラー・ペリー
キャスト:ジョシュア・ブーン、アミラー・ヴァン、ソリア・フェイファー、オースティン・スコット、ライアン・エッゴールド、ミローナ・ジャクソン

映画『マデアおばさんのドタバタNY事件簿』で監督・主演で老婆・マデア役を務め、俳優としてはレオナルド・ディカプリオの映画『ドント・ルック・アップ』などに出演しているタイラー・ペリーが本作の監督・脚本です。

黒人と白人のよくある対立構図だけでなく黒人家庭内のトラブルなどリアルな問題も描き、美しいストーリーとマッチさせた手腕が素晴らしいですね。

あらすじ(ネタバレなし)

映画『ジャズマンズ・ブルース』

©︎Netflix

1987年、市長候補のジョナサンはハティ・メイという黒人の老女に押しかけられ、大量の手紙を渡される。宛名はリアン・ハーパーで、なんとジョナサンの母だった。

ジョナサンは手紙を読み、40年以上前の母にまつわるストーリーを知るのだった。

1937年。ジョージア州サマービルに住んでいた17歳の青年・バユは、16歳の女性・リアン(母親に捨てられて祖父の家で暮らす)に恋をする。

バユがリアンにデートを申し込もうとすると、彼女の祖父がすごい剣幕で怒り、敷地から追い出された。

夜、家の中に紙飛行機が飛んできた。リアンが家の外にいる。バユとリアンはその日から毎夜、夜中から明け方まで密会を重ねた。

ある日バユの父でブルースギタリストのバスターは、母ハティと喧嘩して急にシカゴに行くと行って出奔してしまう。バユの兄でトランペット吹きのウィリーも父の後を追った。

リアンにはある秘密があった。バユはそれを知ったうえで愛の告白をする。

しかし後日、リアンの母がやってきて彼女を連れ去ってしまった。

バユは母・ハティとホープウェルに引っ越してからもリアンに手紙を出していたが返信はない。

それからしばらく経ち、2人は思いがけない形で再会を果たすが…。

ネタバレなし感想・海外評価

黒人差別の歴史の生々しい問題提起が根底にありつつ、悲哀を描いた恋愛映画としても秀逸で見応え抜群です。

ライアン・ゴズリングの『きみに読む物語』に、テッサ・トンプソンが“白人になりきる黒人”を演じる『PASSING 白い黒人』(2021)のテイストを加えたイメージ。

Netflixにはチャドウィック・ボーズマンの遺作『マ・レイニーのブラックボトム』というブルースマンの悲劇を描いた良作もありますが、これらの作品が好きな人に本作『ジャズマンズ・ブルース』はうってつけ!

感想を語る犬
ウイスキー片手に、ブルースの哀愁と悲劇的な人間ドラマに浸りましょう。
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さらに、ところどころでブルースやジャズの素晴らしい演奏が挿しこまれ、ブラックミュージック好きの私としてはドンピシャの作品でした。

シネマグ
ブルースやジャズはなぜこんなにも物悲しいのか、その理由が映像でヒシヒシと伝わってきます。
おすすめ度 80%
人種差別の問題提起 90%
ブルースやジャズの魅力 88%
ストーリー 70%
IMDb(海外レビューサイト) 5.6(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 64%
一般の視聴者 78%
メタスコア(Metacritic) 65(100点中)

※以下、映画『ジャズマンズ・ブルース』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ジャズマンズ・ブルース』ネタバレ感想・評価

『ジャズマンズ・ブルース』の評価は87点。
シネマグ
愛の悲劇・人種差別問題・過去から受け継がれたメッセージの3つがブルース・ジャズを通して融合した秀作です。

『ロミオとジュリエット』『タイタニック』など世代を超えた名作に通じる王道の悲劇的な恋愛が上手に描かれていて感動しました。

17歳の頃は夜中に抜け出して2人で朝まで語り合っていたバユとリアン。初々しくて応援したくなる恋から始まります。

それがリアンが祖父から性的虐待を受けていた事実にゾッとさせられます。見ていて辛いです。

それでもリアンを受け入れ、「結婚してくれ」と熱く告白するバユ。2人の愛に感動です。

しかしリアンは実母に連れ去られて混血だった彼女は白人のフリをして金持ちの白人と結婚させられ、バユと偶然再会するという悲運。

バレたら殺される環境の中、それでもバユとリアンは密会を重ねます。結局バレてバユはシカゴに逃げる羽目に。

そこからジャズ歌手として成功したバユはリアンを連れ戻しにやってきます。しかし弟に嫉妬しさらに麻薬中毒患者になった兄・ウィリーが白人に告げ口したせいでバユはリアンの目の前で暴行され吊るされ殺されるという悲劇。切なさと恐怖がごちゃ混ぜになる苦しい結末です。

悲劇の恋愛については美しく描きつつ、黒人差別問題は生々しいのも特徴です。

アメリカ南部での黒人の扱いって当時は相当酷かったでしょうし、バユのように殺されて事件にもならずにそのまま闇に葬られた黒人は多かったのではないかと、改めて人種差別の残酷さに衝撃を受けました。

シネマグ
数々の苦難を乗り越えたバユに待っていたのはリアンとの幸せな生活でなく、リンチされて死ぬ結末。不条理すぎます。

音楽については、主人公・バユの甘美なジャズ歌唱も素晴らしいし、バユの母・ハティのパワフルなブルースもインパクト抜群。ずっと聴いていたいと思いました。

庭で家族でブルースを奏でるシーンなんか最高でしたね。

はつらつと歌うバユやハティ。しかしその歌詞には日々の苦労が、歌声からは奴隷として連れてこられた暗い歴史が滲んでいるようでした。

なぜブルース音楽が誕生したのか。血にまみれた歴史が濃さを増したからなのでしょう

悲観的な見方をすれば、今日本にいる私が当時の黒人奴隷問題についての見識を深めたからといって、過去は変えられません。バユのような人間は戻ってきません。

シネマグ
単純な感動・悲しさだけでなくあきらめに近い感情、蒸留酒を飲んだ後のようなズッシリとした重みが残る映画でした。

考察(ネタバレ)

差別の愚かさをバラードで包み込んだラスト

40年後、差別的な考えを持つジョナサンがバユの母・ハティからの手紙を読んで母リアンの過去を知り、リアンと見つめ合って瞳を潤ませます。

ジョナサンは1人外のベンチへ行き呆然とします。そこで美しいバラードが流れるラストシーンは最高でした。

母の悲しい過去に心を打たれると同時に、差別是正政策を否定した自分に黒人の血が流れていると知って呆然とするジョナサン。

シネマグ
差別の愚かさを皮肉で包み込んだ秀逸なラストでした。

実際、祖先が全員白人だと思っている人々の数パーセントに、黒人の血が混じっている(祖先に黒人がいる)というデータがあるようです。

つまり本作のジョナサンのような差別主義的な人の中にも、黒人の血が流れている人が一定数いるわけです。

そう考えると人種差別の愚かさが浮き彫りになってきます。

差別主義者はそうとは知らず自分のルーツを否定していることになるのですから。

差別の根底には憎しみよりも愚かさがあると本質を突きつけられる結末でした。

ラストシーンでかかるエンディング曲(ルースBのPaper Airplanes)も素晴らしい楽曲なのでぜひ聴いてみてください↓↓

暗黒の性的搾取の歴史

まず序盤で17歳のリアンが祖父から性的暴行を受けていることが判明。

さらに終盤ではバユとウィリーが父違いであることがわかりますが、バユの父親はわかりません。

ウィリーはバユのことを混血と言っていたので、おそらくバユには白人の血が混じっているのでしょう。

バユの母・ハティは性的暴行を受けてバユを出産したのかもしれません。

加えてバユはそのことを知る父と兄からいじめられ続けます。差別の負の連鎖が親族トラブルの原因となっているわけです。

歴史的にアメリカでは黒人女性が性的暴行の被害に遭うことが非常に多かったようです。

『ジャズマンズ・ブルース』では黒人差別の多種多様な問題点が赤裸々に描かれていました。

既視感の理由

『ジャズマンズ・ブルース』の個人的に唯一イマイチだった点は、いろんな名作映画の要素を融合したような“既視感”です。

最後に実はバユの息子だったジョナサンが、手紙をアルツハイマーの母・リアンに渡すシーンは『きみに読む物語』にちょっと似てる感じがしましたし、白人になりすます黒人についても『PASSING 白い黒人』(2021)で扱っていた題材でした。

まあ、それらの要素が上手く融合して誰にでも黒人の血が流れているという今まであまり見たことがないメッセージが伝わってきたので融合が成功していたといえばその通りですが。

最後のまとめ

Netflix映画『ジャズマンズ・ブルース』は、悲劇の恋愛が生むカタルシスにリアルな差別の実態が加わった素晴らしい作品でした。

タイラー・ペリーは監督としても俳優としても脚本家としても才能抜群ですね。これからも彼の動向に注目したいです!

ここまで読んでいただきありがとうございます。『ジャズマンズ・ブルース』レビュー終わり!

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