映画『すずめの戸締まり』。女子高生が大災害を防ぐため子供用イスと全国各地を旅するロードムービーです!
作品情報・キャストCV、あらすじ、ぶっちゃけ感想・酷評ポイント、ストーリーネタバレ結末解説について知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
↓『すずめの戸締まり』の深掘り考察については下記記事へどうぞ↓
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映画『すずめの戸締まり』作品情報・キャストCV
原題:『Suzume』
ジャンル:青春・ファンタジー・ロードムービー
年齢制限:なし
監督・脚本:新海誠
原作:新海誠の同名小説
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
主題歌:RADWIMPS すずめ feat.十明
原作小説を読んでから映画を観ましたが、内容はほとんど変わりません。
ストーリー的にはやはり映画より小説版のほうが心理描写や風景描写が丁寧で心に残りました。
登場人物・キャストCV紹介
岩戸鈴芽(すずめ/主人公、田舎の女子高生):CV 原菜乃華(幼少期は三浦あかり)
宗像草太(扉を閉じる閉じ師):CV 松村北斗(ジャニーズ/SixTONES)
ダイジン(謎の白い猫):CV 山根あん
岩戸環(たまき/鈴芽の叔母で育ての親):CV 深津絵里
芹澤朋也(教員を目指す草太の友達。チャラい。):CV 神木隆之介
海部千果(愛媛の女子高生):CV 花瀬琴音
二ノ宮ルミ(道中で会うスナックのママ):CV 伊藤沙莉
岩戸椿芽(つばめ/鈴芽の母):CV 花澤香菜
岡部稔(漁協のスタッフ。環の同僚):CV 染谷将太
宗像羊朗(ひつじろう):CV 松本白鸚
あらすじ
九州・宮崎県の田舎で暮らす女子高生・岩戸鈴芽(すずめ)は、登校途中でロン毛のイケメン・松村草太と出会う。
草太は「この辺に廃墟はないか?扉を探している」と不思議な問いかけをした。
すずめは山の裏にあるかつて温泉街だった廃墟・上之裏(かみのうら)のことを教える。
すずめはいったん学校へ向かうが、廃墟へ向かった草太が気になり、山を登って現在は誰も住んでいないゴーストタウン・上之裏へ。
すずめはさびれたホテルへ。中庭にある骨組みしか見えないドームの下に水がたまっており、真ん中に不思議な木の扉が立っているのを発見。
扉を開けるとすずめが夢でよく見た満点の星空の草原が見える。幼い自分が母を探してさまよう夢だ。しかし扉の中に入ってもその場所へはいけない。
扉の側には凍っていて先がとがった石があり、すずめはそれを引き抜いてしまった。石は白猫に変身して去っていく。
一連の出来事を夢だと思ったすずめは高校へ行く。すると山から黙々と赤銅色の煙が上がっているのが見える。友達たちには見えていないようだ。
すずめは再び山を登りホテルの扉へ。扉からは赤黒い物体が吹き出し、草太が必死に扉を締めようとしていた。すずめも扉を押す。ミミズは外に出て街に降り注ぎ、地域で震度6弱の地震が起こる。
草太が鍵を差し、なんとか扉を閉めた2人。
“ミミズ”と呼ばれる巨大な物体が完全に解き放たれると、その地域で大災害レベルの地震が起きてしまうらしい。
草太は大学生で、“閉じ師”と呼ばれる仕事で全国の廃墟を回っており、後ろ戸と呼ばれる扉を閉めてその地域に常世(あの世)からの災害が降りかかるのを防いでいると言う。
すずめは自分をかばって腕をケガした草太を家に連れて行き手当てをする。
そこへ人語を話す白い猫・ダイジンが現れた。草太はダイジンによってすずめが小さい頃に使っていた子供用の椅子に姿を変えられてしまう。
椅子になった草太はダイジンを追いかけてフェリーに乗り込んだ。
すずめもあとを追いかけ、女子高生と椅子の大冒険が始まった…。
ネタバレなし感想・海外評価
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地震を鎮めるロードムービーで、景色が九州から四国、東京、東北へと景色が移り変わっていくのですが、なんか中だるみ感が否めません。いろんな要素を盛り込みすぎてもいます。
ちなみにSNSでは「君の名は・天気の子と似すぎている」と批判が続出していたみたいですが内容は過去作と全然違います。
ただ女子高生が主人公で災害がテーマになっている点は一緒です。
2011年の3.11東日本大震災がモチーフになっているので、何度もなる緊急地震速報や災害の映像などを見たくない人は注意が必要です。
おすすめ度 | 60% |
世界観 | 90% |
ストーリー | 65% |
IMDb(海外レビューサイト) | 9.6(10点中) |
映画『すずめの戸締まり』ネタバレ感想・酷評
設定と映像は最高!
さびしげな廃墟の水面に不思議な扉がポツンと立っている。この絵だけでご飯3杯くらいいけそうです。
考えうる最高のシュチュエーションでしょう。
ノスタルジーと謎がせめぎ合い、その映像を見ているだけでワクワクが止まりませんでした。
『君の名は。』の飛騨の町や御神体がある山の風景、『天気の子』のビル屋上にポツンとたつ鳥居などもそうですが、新海誠監督は幻想の入り口となる場所に対する想像力が抜群だと思いました。
その想像力の究極系が『すずめの戸締まり』の扉ではないでしょうか。
映像面で素晴らしかったところを挙げるとキリがないですが、他には鈴芽が海を前面に自転車で坂を下っていくシーンなんか最高ですよね。ある種のミラクルが感じられます。美しすぎて映画館でため息が出ました。
詰め込みすぎ+ご都合主義
設定と映像は完璧だったわけですが、ストーリーに没頭できたまではいきませんでした。
まず、さまざまな要素が詰め込まれすぎです。
- 今は人が住んでいない廃墟へのノスタルジー
- 女子高生の初恋
- 呪いにかけられた恋人
- 過去の自分との出会いと自己肯定
- 旅先の一期一会の絆
- 地の神・大災害・地震
- 神道・古代の遺産
- 日本各地の美しい景色を堪能できる冒険
これらの要素がある程度まとまってはいるのですが、ベクトルとしてどこに重きを置きたいのか注意散漫になってしまった印象です。
天岩戸など神話がモチーフですが、ごちゃ混ぜになっているからか神話が活きている感じもしません。
『秒速5センチメートル』のような狂おしいほどのみずみずしさや、何かの感情に特化したキラめきとかがないんですよね。
映画『秒速5センチメートル』は『君の名は。』で一世を風靡した新海誠監督が2007年に公開した、心を貫くような切ない恋愛を斬新な視点で描いた3話構成の物語です。シネマグ初恋を題材にしながら、かなりとがったストーリーなのがす[…]
あとはファンタジー要素がいくらなんでもご都合主義すぎ。
アニメ映画だしファンタジーなのでご都合主義なのはある程度は仕方ないですが、それでも多すぎました。
特に終盤に東北でミミズと戦う場面で、すずめと草太が要石になったダイジンたちを抱える場面では、急に空から落下してうまいことミミズの頭と尾に着地します。
- ミミズと戦う場面でなぜ何もかもがうまくいくの?
- 常世(あの世)へ踏み入った副作用はないの?
- そもそも後ろ戸を閉める難易度はどれくらいなの?
この辺がご都合主義プラスふわっとしていて、ストーリーに緊張感がみじんも感じられませんでした。
東日本大震災という現実の大災害と遺族の葛藤をテーマにしているのですから、ファンタジー要素にもある程度ルールを設けてほしかったです。
土地に対する敬意・鎮魂という意味ではジブリの『もののけ姫』とも共通する部分があります。しかし本作は重いテーマに対してやっていることが一貫して大変さがイマイチ伝わってこない戸締まり。シリアスさが全然違います。
ルールなし・設定フワフワのご都合展開で物語から緊張感が抜け落ちてしまっているのです。
また、椅子になった草太はイケメンに戻ってめでたしめでたしという結末も、驚きや意外性がありませんでした。
自分と一緒に暮らしたいと願ったダイジンが自ら要石になったことをすずめはどう思ったのでしょうか?その描写は必要だったと思います。
キャラクターの魅力が薄い
声優を務めた松村北斗さんは本職ではないながら才能を発揮していたと思います。ただ声の引き出しが本職の声優さんに比べると多くなく、感情表現が一辺倒で深みが足りなかったです。
椅子になったワケアリイケメンという超むつかしい心理描写を担うなら、やはりプロの声優が良かったと思います。
また、椅子自体に絵的に表情がないのも問題だと思いました。表情から気持ちがくみとりづらいです(動きから多少は読み取れますけどヒーローとしては不十分な気が…)。
なので、すずめが草太に一目惚れするまではなんとか理解できるのですが椅子になった草太を身を呈して救おうとなった心境の変化がイマイチ伝わってこず、「草太さんのいない世界が怖い」うんぬんで感情移入ができませんでした。
子供椅子のパートナーというトリッキー過ぎる設定のせいで一目惚れから本物の愛に変わる過程がボヤけてしまったと言い換えることもできます。
(普段から椅子や物の気持ちを考えている感性が超豊かな人なら、また違った受け止めかたができるのでしょうけど)
すずめが草太に亡き母を重ねて「絶対に救いたい」と思ったことはわかります。
ただ、2人の恋愛についてはうまく描けていたとは思えませんでした。
あとは草太の個性ってなんでしょうか。寝起きが悪いくらいしかないのでは?
すずめのパートナーとして作られた感があり、没個性だと思いました。
『もののけ姫』のアシタカなら背景は詳しく語らずとも、さまざなな描写から人間味がすごい伝わってくるのですが、草太に関してはそういうものが感じられません。
映画では細かい心理描写、風景描写などが時間の都合上はしょられていることもあり、原作小説のほうが楽しめました。
↓『すずめの戸締まり』のラスト結末解説は2ページ目へ↓
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