Netflix映画『ゼイ・クローン・タイローン/俺たちクローン?』(They Cloned Tyrone)。ジョン・ボイエガ、ジェイミー・フォックス、テヨナ・パリスというスターたちが大集結し、おバカなSF展開で黒人の生き様を見せつけます。
作品情報・キャスト
ネタバレなしの感想
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
ストーリーの意味や斬新な点を考察
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『ゼイ・クローン・タイローン』作品情報・予告
制作国:アメリカ
上映時間:119分
原題:『They Cloned Tyrone』
ジャンル:SFコメディ・ミステリー・黒人問題・社会風刺
年齢制限:16+(汚い言葉使い、暴力描写)
監督:ジュエル・テイラー
脚本:トニー・レッテンマイヤー|ジュエル・テイラー
監督のジュエル・テイラーは映画『クリード2/炎の宿敵』の脚本を務めた人物です。
『ゼイ・クローン・タイローン』キャスト
フォンテーン|cast ジョン・ボイエガ
ジョン・ボイエガはスターウォーズ新三部作のフィン役で有名。『デトロイト』『パシフィック・リム: アップライジング』にも出演しています。
ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』がDisney+で配信開始!ということで、続三部作/シークエル・トリロジー(『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』)を見直しました。 改めてディズニー傘下になってからの、続三部作[…]
スリック|cast ジェイミー・フォックス
名優ジェイミー・フォックス!『Ray/レイ』や『コラテラル』『ジャンゴ 繋がれざる者』、ピクサー『ソウルフル・ワールド』では声優も務めていました。
Netflixではヴァンパイアハンター映画『デイ・シフト』で主演。
映画『デイシフト』(Day Shift)。ジェイミー・フォックスがお茶目なヴァンパイアハンターに扮し、吸血鬼を殺しまくります! CineMag グロい+スタイリッシュなアクションは最高。ギャグもなかなか。しかし中身は[…]
ヨーヨー|cast テヨナ・パリス
テヨナ・パリスはマーベルドラマ『ワンダヴィジョン』『マーベルズ』のモニカ・ランボー役で有名ですね。
キャストその他
役名 | キャスト |
ニクソン | キーファー・サザーランド(『24』) |
アイザック | J・アルフォンス・ニコルソン |
ジューンバッグ | トレイス・マラキ |
映画『ゼイ・クローン・タイローン』あらすじ
ドラッグの売人・フォンテーン(ジョン・ボイエガ)は、ナワバリを荒らすアイザックの部下を車でひいて足を骨折させる。
フォンテーンはドラッグの下請けでポン引きのスリック(ジェイミー・フォックス)からの金が入っていないことに気づき、彼がいるモーテルへ行く。そしてスリックから金をぶんどった。
しかし帰ろうと車に乗ったところで、アイザックとその部下に報復されて銃撃を受ける。
翌日、スリックは傷ひとつないフォンテーンを見ておどろいた。
フォンテーンは昨晩に自分が銃撃を受けたことを覚えていない。売春婦のヨーヨー(テヨナ・パリス)からも「確かに撃たれていた」と聞いて首をかしげた。
フォンテーン、スリック、ヨーヨーは、昨日見かけたバンが止まっている無人の家を発見して中を探索した。すると謎のエレベーターがある。
エレベーターで地下へ行くと謎の研究施設があった。街を巨大な陰謀が包んでいる…。
ネタバレなし感想・海外評価
ストーリーはSFというより、『アンダー・ザ・シルバーレイク』のように不条理です。しかし、一応ちゃんとした結末があります。
ずっとバカバカしい会話が続くのですが、社会風刺や差別への問題提起としては非常に高度なことをやっているのが特徴。
社会問題に興味がある人にはイチオシです。
海外レビューサイトの評価は、特にロッテントマトでは超高得点です(まあ黒人問題を扱う作品は高得点になりやすい傾向があるのですが)。
ただ、王道のコメディを求めている人には不向きだと思います。
おすすめ度 | 75% |
社会への問題提起 | 95% |
ストーリー | 65% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.4(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 93% 一般の視聴者 100% |
メタスコア(Metacritic) | 74(100点中) |
※以下、Netflix映画『ゼイ・クローン・タイローン』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ゼイ・クローン・タイローン』ネタバレ感想・評価・考察
映画としてすごくおもしろかったか?と言われれば、そうでもないというのが正直なところ。
しかし風刺モノとしては時代の最先端を突っ走っており、社会に対して一定の真理も含んでいる構造がすばらしいと思いました(考察の項目で詳しく語ります)。
冒頭の「2パックを見た!マイケル・ジャクソン見た」という変な会話や、ところどころに貼られている行方不明者のポスターがうまいこと伏線になってます。
主人公たちが最初に研究室へ行ったときに白人っぽい研究者がマイケル・ジャクソンの曲で踊ってるのですが、これも実は“ホワイトウォッシュされた黒人”だとラストでわかります。
おバカなシーンのひとつひとつに文化的な自嘲や皮肉が込められているのです。私も読み取れていない点がたくさんあると思います。
映画『ゼイ・クローン・タイローン』ネタバレ考察:黒人問題の新しい表現
『ゼイ・クローン・タイローン』は黒人 VS 白人の構図ですが、暴動を起こした黒人を正義の使者ではなく野蛮でおバカな感じに描いているところがとても斬新です。
お調子者で衝動的で、チェーン店でバカ笑いして…こういうステレオタイプな黒人の日常を「白人に洗脳されている」とすることで、タブーともいえる問題の根深さに切り込んでいると思いました。
白人に虐げられたためにドラッグ、金、売春婦をようする黒人街(ゲットー)と文化が形成されてしまった反面、正義を執行しているはずの黒人たちは普通に暴動をイベントとして楽しんでいます。
「暴動を起こしてパワーバランスを逆転させたからと言って、黒人はそんな急に支配者側にはなれないよ。やりたい放題やる文化だからね」
そんな自嘲と共に、社会はすぐには変わらないという真理をも伝えていたように感じました。
これは何も黒人だけでなく、世界の貧富の差にも通じます。良いか悪いかわは別として、その日暮らししているようなコミュニティが急に支配層にはなれません。なれたとしても、統治の仕方が極端になりすぎて社会が崩壊するかもしれません。
キーファー・サザーランド演じる支配者側のニクソンは、それをわかっているからこそ分断でなく白人文化に同化させる研究をオリジナルの老人・フォンテーンにさせているわけです。
黒人文化を白人に同化という概念も本当に怖いです。
これも世界中で起こっていますよね。グローバル社会という名のもとに、アメリカや欧米の文化に日本も染まりきっています。
黒人だけでなく、私たち日本人もホワイトウォッシュされていることは否定できないでしょう。
黒人文化が白人に同化される問題については、ジョーダン・ピール監督が『ゲットアウト』で黒人の若々しい肉体に憧れる白人の老人たちを描き、その異質さを鋭く切り取っていましたけど、本作の表現もシャープでした。
地下に研究施設があって…という流れもジョーダン・ピール監督の『US/アス』に似ていますね。
コメディとホラーでジャンルは全然違いますけど、リアルすぎる問題提起をしているという共通点があります。
映画『ゲット・アウト』(Get Out)が最高のホラーである理由を深堀り考察しています! 『Us/アス』(2019)や『NOPE/ノープ』(2022)の奇才ジョーダン・ピール監督が2017年に世に送り出して高く評価された本作。その恐怖[…]
映画『Us/アス』は、『ゲット・アウト』(2017)や『NOPE/ノープ』(2022)の監督ジョーダン・ピールが2019年に送り出したサスペンスホラー。 サスペンスホラーの王道の要素を多く含みながらも、セリフやシーンの生々しさ、予想で[…]
映画『ゼイ・クローン・タイローン』ネタバレあらすじ解説
フォンテーンは過去に幼かった弟・ロニーが警官に銃殺されたと、仲の良い近所の子供に話した。
フォンテーン、スリック、ヨーヨーはエレベーターで地下に降りる。すると研究施設があった。
スリックは怪しい粉薬をなめ、ハイになって研究員を1人殺害。
フォンテーンは銃で撃たれた自分の死体があるのを見つけ、俺はクローンだったと落ち込む。
フォンテーン、スリック、ヨーヨーはチキンショップや床屋に潜入し、スパイスやヘアクリームに実験室にあった怪しい粉が振りかけられていると知った。
チキンを食べた黒人たちは陽気に笑い出している。
スパイスやヘアクリームを配っているバンを追いかけると教会についた。教会では洗脳の薬によって神父がハイになっている。
教会にはエレベーターがあった。下に降りると、巨大な研究施設があった。3人はそこで実験されている黒人たちを見る。さらにスリックは自分のクローンがカプセルの中に入っているのを発見。
施設から出た3人は施設のリーダー・ニクソン(キーファー・サザーランド)に見つかる。
ニクソンは、ダンスフロアで洗脳した黒人たちにフォンテーンたちを囲ませて「ロサンゼルス、シカゴいろんな場所に洗脳とクローンの研究設備がある。おまえは黒人の貧困街を維持するために作られた」と笑った。
ニクソンにオリンピアブラックと言われると、フォンテーンは動けなくなり、命令通り銃をくわえてしまう。ニクソンは笑って去っていった。
フォンテーンは白人に支配されている虚しさはあったが、何もできないとあきらめる。しかしいつも寝室にいる母の正体がテープレコダーだったと知ってブチ切れた。
ヨーヨーは研究施設の記事をこっそり投函するが、見つかって施設に監禁される。
フォンテーンは研究施設にいる黒人たちを解放するため、アイザックに撃たれて死んだフリをして施設に潜入。
スリックは街の黒人たちを率いて施設に侵入した。
フォンテーンは遺伝子研究のリーダーを見つける。なんと老いぼれた自分だった。
老いたフォンテーンは「弟・ロニーが警官に殺されたような社会を変えるために、数世代で黒人を徐々に白人に同化させる研究をしている」と言った。
フォンテーンは黒人の警備兵をあやつり、老いたオリジナルの自分を射殺させた。
研究施設は開放され、街には裸のクローン黒人たちがあふれかえる。
ロサンゼルスの自宅でTVをつけニュースでその様子を見ていたタイローンと友人は、クローンの中に自分と全く同じ容姿の人物がいるのを見ておどろいた。
映画『ゼイ・クローン・タイローン』終わり
最後のまとめ
Netflix映画『ゼイ・クローン・タイローン』は、前衛的なコンセプトでアメリカの人種問題や文化の違いを切り取った興味深い作品でした。
映画自体はそこまでおもしろいとは感じませんでしたが、こういう個性的な映画は大歓迎です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『ゼイ・クローン・タイローン』(They Cloned Tyrone)レビュー終わり!